五幕、任務・スチールドラゴン討伐
「ハーハハハハハハ!!皆殺しだぁぁあ!!!」
………。
「グギェェエェ!!」
「ヒャヒャヒャヒャ!!死ね死ね死ね氏ね(←?)えぇぇ!!」
………最初にいっておくが、これは俺の声ではない。いくら暗黒騎士でももう少し品がある。
「……ジンは戦いになるとこうなのか?」
「あ、あぁ……」
「こ…怖い……」
そう。あれはジンだ。いつも気がつけばポテチを貪っている、あの陽気な武闘家だ。
「死ャ亜亜亜亜亜亜!!」
うん。もはや人かどうか疑わしいが、とりあえず信じろ。
………
「さて、まだいるかね?」
スチールドラゴンの屍で埋め尽くされている岩場。
俺達は例の岩壁へとたどり着き、スチールドラゴンの群れに襲い掛かられたのだが…
「おそらく警戒しているのだろう。これ以上出て来る様子はない」
「ふーん。まぁ元々臆病だからなスチールドラゴンて」
血まみれのジンに対し、ルーファスは平然と話し掛けている。
俺もこいつの豹変ぶりは知っているが、慣れるまで随分かかったものだ。そこはルーファスの冷静さに舌を巻く。
が、ロメオは……
「…………」
絶句か。仕方あるまい。確かにあれは仏が鬼になったようなものだ。ドラゴンでさえ警戒する。
「うむ、そのうち慣れる。こういう奴もいると思っておけ…」
「は、はひ……」
一応肩を叩いてやったが、震えてたな。大丈夫だろうか。
「さて…」
ルーファスが周りを見回して言う。
「今ので随分減ったが…増殖したという割には数が少ないな。もっとも今ので隠れてしまったようだが」
「ハハハ、ちょっとやり過ぎたかしら?」
武闘僧の禿げた頭をポリポリかくジン。自覚はあるようだが、別に何とも思っていないらしい。
「……少し、考えたんだが」
ルーファスは顎に手を当てて喋り始めた。
「生物の急な増殖の原因と考えられるのは、何らかの捕食、披食関係がバランスを崩した場合が普通だ」
俺達はフムフムと頷く。
「が、村人の話では特にそんな様子もない。突然の急増殖だ。となると他に考えられるのは…」
「誰かが増やしたとか?」
「その線も有り得なくはないが、可能性は低い。スチールドラゴンの利便性はそこまで重宝されるものではないからな」
とすれば、原因は突発的なものとなるだろう。
つまり……
「となると……異常に繁殖力の高い個体が現れたわけだな?」
「ん?…あぁ、そういうことだ……」
…?ルーファスが何故か意外そうな目でこちらを見ている…なんだろう。
「どうかしたか?」
「いや…」
と、今度は定めるように上下に俺を見ると、急にふっと笑った。
「……暗黒騎士というのは欲しか見えない、頭が悪いものだと思っていた。それだけだ」
「…………」
…何故?
「あ、それちょっとあるよな。なんか恐持ての能無しみたいな」
「確かに、力だけに頼るイメージはありますよね…」
しかもお前らまで。ちょっと待て、一体暗黒騎士を何だと思ってるんだ。
俺は思わずため息をついた。
「…言っておくが。暗黒騎士は自身の利益を追求するための智恵と」
「つまり悪知恵な」
「……。そして闇を生き抜くための深い洞察力、判断力を兼ね備えていなければ」
「要は他人を騙すのが得意なのだろう」
「………。そ、そして立ち塞がるものを退ける強い力が」
「ぼ、暴力は、あまりよくありませんよ」
…………。
間違ってない。うん。間違ってないよお前達は。
「でもさ、Kは暗黒騎士ってもんな悪い奴じゃないから」
……なんだかなぁ。一応暗黒騎士として見てはくれているようだが。
ルーファスもロメオもそこはジンの言うことを認めたようだ。
「…まぁ貴様が役に立つならそれ以外はどうでもいい。話を戻すぞ」
「むぅ……」
少々納得いかんが仕方ない。ここでまた何か言えば、なんかさらに視線が冷たくなるような気がする。
ルーファスは再び平然と論を述べた。
「つまり、スチールドラゴンの中に通常より繁殖力の強い、女王が現れたと思われる」
「女王様?」
ジンが何かをしならせるような仕種をする。多分その女王は鞭を持っていないと思うが。
「えぇと……あ、森の神様ですか!?」
「だろうな。突然変異の女王となれば大きさも相当だろう。村の人間がその個体を見て神と勘違いしたのかもしれん」
確かにそれなら納得がいく話だ。
「じゃ、その女王様を倒せば異常繁殖は止まるわけだな?」
「あぁ、恐らくな」
「ではその女王というのを探さねばならんな」
…というわけで俺達は岩壁周辺の捜索を始めた。ジンのお陰で辺りからスチールドラゴンの気配は消えていた。
………。
ちょっとここでスチールドラゴンの説明をしようか。
スチールドラゴンは、ドラゴンと言っても下級類だ。その名の通りスチール程度の硬さの鱗で、外見はどちらかと言えば巨大トカゲに近い。
大きさは前述したように人間の大人程度。
性質も比較的臆病で群れをつくる。そして岩場等に巣穴を作って繁殖するという生態系だ。
しかし今回のように女王がいるかもしれないなど、魔物なのでわからないことはまだ多い。
「お、なんか発見ー」
ジンが何か見つけたようだ。
俺は急いでそちらに向かう。
「む、洞窟か」
「く、暗いですね…」
「…恐らくここが女王の巣穴だろう」
そこは岩壁の一箇所に空いた大きな穴だった。
普通のスチールドラゴンの巣穴はこんなに大きくはない。せいぜい通り掛かりにちょっと見える位の小さな穴だ。
ルーファスは辺りを観察しながら続けた。
「動物の骨が散らばっている。しかもやけに大量だ。繁殖の為に摂取が必要なのだろう」
「よし、じゃ行くか」
ジンは何を危惧する様子もなく堂々とその洞窟に入って行った。
「隊列は先頭にジン、次に私、ロメオの護衛にKがまわるように。行くぞ」
ルーファスも早口に指示を出しながらジンに続いて行った。
……あれ?隊長ってどっちだっけ。
「あ、あの、Kさん…」
「うむ、行くとしよう」
まぁいい。俺はこの白魔導士を護衛するのだ。
…あまり戦えないがまぁ仕方ないか。
俺は背中にロメオを引っ付けながら洞窟へ脚を踏み入れていった。
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