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長い眠りから醒めました。
四十九幕、任務・伝説の霊剣を入手せよ6
「タイタンの腕だ! 今救い出してやるぞ!」

今、やはり俺は大きな岩の手に体を締め付けられているらしかった。イハがルーイン語を口走ると同時に、彼のロックゴーレムが動き出す。

鈍重な見かけ通りゆっくりとした四肢の動きだが、その破壊力こそ見かけ倒しではなく、ゴーレムは俺を掴んでいたタイタンの腕の付け根部分を地面から砕き割ったのだ。

そしてゆるんだ腕から脱出し、俺は地面に落とされた。

「ぐぅっ……がはっ!」

「大丈夫かK!?」

「あぁ、問題なぃ――ぐほっ!!」

しかし呪縛から解放されたのもつかの間、なんと再び同じ岩の手が地面から飛び出し、俺を押し上げ洞窟の天井に抑え付けたのだ。

「こ、これはッ――!?」

その時横に見えたのは、あの無数の人骨である。俺は苦しみながらも、この異様な光景の意味を理解した。

「まさか、この贄は皆このタイタンの仕業か……っ!?」

「くそぉ……手をいくら壊しても無駄ボーンなのか!」

ボーンとか言っとる場合かぃ。

「ぐっ……イハッ! 何とか、ならんのか……ゲホッ!」

「タイタンが地中に隠れているんだ! 本体が出てくれば、奴のハートを打ち砕けばタイタンは即死するはずなんだ!」

えぇい、心臓と言え! 純情タイタンか!

……などとツッコミを入れる余裕もない。段々と俺自身も圧迫されてきて、いよいよ声を出すことすら難しくなってきた。

「っ本体は……どうすれば、出て来るッ……!?」

「え、えぇと――そ、そうだ!」

イハはゴーレムに指示を出し、こちらへ近づく。

「力ならゴーレムだってどっこいどっこいだ! この腕を引っ張りあげればタイタンを釣れるかもしれない!」

そしてゴーレムは俺を押さえ付ける岩の腕を掴み、そこから繋がっているであろうタイタンの根を地面から引き抜こうとした。

が、そう上手くいくはずもない。何せ岩の巨腕は上向きに俺を圧しているのだ。これ以上力ずくで引っ張り上げたところで、天井が砕けるだけ――

……天井……洞窟の天井か!

「イハ! この天井を、ゴーレムにっ……ッ割らせろ!」

「え? あっ、よし!」

俺の意図を察したイハは、ゴーレムをタイタンの腕から離した。岩の巨人はそのまま体勢を変え、俺がはりつけとなっている石天井にむけてその拳を構える。

「や、やるぞっ!」

イハの掛け声と同時に、鉄筋をぶつけたような衝撃が天井に伝わった。

その瞬間、なんとヒビが入る間もなく、貫通したかのように洞窟の岩が崩落したのである。

「うわわわわ!?」

「ぬおぉ……!」

ガラガラと、まるで膜が破れたかのような崩れ方だった。そして俺は自分の体が、さらに上へと持ち上げられていくのを感じた。タイタンの腕がまだ俺を押し上げようとしているのだ。

「K、こっちへ飛び降りろ!」

「!!」

俺はイハの叫び声にしたがってタイタンの手の平を這い、下へ落下した。

ゴーレムの両手が、落ちた俺を受け止める。今度こそタイタンから逃れたらしい。

「ぐっ……!」
「しっかりしろ! また気絶したのか!?」

「アァーッ! 大丈夫だから兜を脱がそうとするな!」

咄嗟に兜を引っ張ろうとするイハをはねのける。違う意味で油断できん……!

「わ、きた、ついにタイタンが出て来るぞ!」

息を整えた俺はなんとか体勢を取り戻し、イハの指差す地面に目を向けた。

『オォォオォ――!!』

「おぉぉおぉ……?」

「な……!」

その現れ方に圧倒される。さっきの腕の付け根から地面が盛り上がってきたかと思えば、そこからもう一本の腕が生え、まるでこの洞窟の一部分であるかのように大きな岩山が突き出してきたのだ。

そしてその頭頂部に『ギラッ』と現れた、二つの黄色い光は眼に当たるのか。と、タイタンは俺達を目視した途端に、二つの巨腕を振り回してきた!

「ゴ、ゴーレム!」

バガァン! と凄まじい音によって、ゴーレムはタイタンと取っ組み合うような形で腕を合わせる。

が、やはりパワー負けしているのか、その構えはかなりグラついていた。

「援護するぞ!」

俺は闇の剣から暗黒を走らせ、タイタンの片腕を狙った。

岩の片腕が地に落ちると同時にゴーレムが圧し返し、タイタンの腹部に強烈な一撃を喰らわせる。するとその衝撃で崩れた奴の体から、何か不気味に光るものが垣間見えたのだ。

「! あれは!?」

「あれがタイタンの心臓だ! あそこを壊さないと何度でも――ぎゃあ!?」

とその時、イハの足元から再びタイタンの腕が飛び出した。俺が救う間もなく、その手は彼の華奢な全身を容赦なくつかみ絞め上げる。

「イハァッ!」

「いぎぎ……! かはっぐはっ……!!」

いかん、内臓が破裂している! 早く――

「か……核、こわして……!」

「!」

イハは掠れるような声で言った。と同時に、今俺が切り落としたはずの片腕が再生するかのごとくタイタンから生えてきた。その腕から放たれた不意打ちに、ゴーレムがのけぞる。

「くそっ、待っていろ!!」

俺はイハに叫びながら闇の剣に力を込め、岩の悪魔とむかい合った。もはや今すぐ核を破壊するしかない!

『オオオォオ!!』

「ぬっ、くぉっ! っつ!」

だがタイタンは暴走するように荒れ狂い、洞窟の壁からは次々と巨腕が突き出してきた。まるでこの洞窟と一体化しているような動きを何とかかわしながら、俺は核にむけて突進する。

そして目前まできた瞬間、タイタンは再生した片腕をふるい、俺を弾き飛ばそうとした。

『グオォォオオ!!』

「!」

――だがその手は、イハのゴーレムによって遮られた。岩の召喚獣はその体でタイタンの一撃を受け止めたのだ。

「ぬぅおあぁぁぁ!!」

その一瞬を逃さず、俺はゴーレムを台にしてタイタンの核へと飛び込んだ。

暗黒の魔導を、放たず闇の剣に纏わせる。自ら暗黒の刃となった黒刀は、すでに再生したタイタンの体内におおい隠されようとしていた光にむかってズブリと突き刺さった。

『オ――アァアァアァァアアアァアァ――!!』

「うぉっ!?」

意外なほどの弱い手応えは、しかして確実にタイタンの心臓を破壊したのだった。凄まじい魂の叫びをあげながら、タイタンの核は命を放出するように発光し、俺は剣を握ったままその勢いに吹き飛ばされた。

そしてすっかり光を失ってしまうと、魔物はただの岩石と化してその身体を崩壊させはじめたのである。

「うっ……」

「イハ!」

イハをつかんでいた腕もだらりと崩れ落ち、俺はすかさず彼のもとに走り寄った。が、上手くキャッチ出来ず、イハは俺を下敷きにする形で落下した。

「ぐはっ!!」

「ぐっ……! いだい……」

「むぅ、無事かイハ? ……いや無事ではないな」

「タイタンは……?」

「あぁ……ゴーレムのおかげでなんとか退治できたぞ」

振り返ると、先程までの脅威が嘘のように洞窟は静まり返っていた。残っているのはタイタンの残り屑、もとは洞窟の一部であった岩の山だけだ。

「さ、すが黒鬼だな……きっと村の伝説になる……っいぎ……!」

「それは光栄だな、だが俺は暗黒騎士だ。無理をするな、内臓がやられている。すまんが俺では治療できん」

「はは……まさに肉を斬らせて骨を割ったな」

骨が割れたのはお前だ、と苦笑しつつイハを肩で支え立たせる。骨は断つものだとツッコむ余裕もない。

なんとか撃退したが……タイタン、恐ろしい相手だったな。俺も体力がほとんど残っていないし、全く満身創痍だ。

「さて……どうやら上が正解だったようだが」

ゴーレムの叩き抜いた、遥か上まで続く空洞を見上げる。人間が登れるはずもない岩壁を、一体どうしろというのだ?

「ゴーレムに、任せておけば……大丈夫だ」

「む?」



この巨漢ゴーレムが……もしや手でロッククライミングでもするというのか?





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