「あっれ〜?」
「菜々、だから言ったのよ! この道怪しいからやめようって!」
「だ、だって……。近道しようと……」
今日は、4月2日の春休み。今日は、親友の佐々木琴音と一緒にデパートに行く予定だったんだけど……。近道しようと思って、細い道に入ったら、迷路みたいな道に入っちゃって、迷子になっちゃったの。
「はぁ……。まぁ、仕方ないわね。お母さんに、電話するわ」
琴音は、携帯を取り出した。しかし、次の瞬間、琴音の顔は、半泣きになっていた。
「け、圏外になってる……」
「ええっ!?」
琴音は今にも泣きそうな顔だ。わたしは、あせってあたりを見回した。すると、わたしたちから少し離れた場所に、一軒のお店が建っていた。
「琴音、お店があるよ!」
「え!?」
琴音は、涙を拭き、わたしが指差している方を見た。琴音の顔がみるみる明るくなっていく。
「行こう!」
「うん!」
そして、わたし達は、全速力でお店の方へ走った。
「ここらへんは、いりくんでいるからね。じゃあ、地図を書いてあげるから、椅子に座ってて」
お店は、雑貨屋だった。若いお姉さんが、お茶を入れてくれて、地図を書いてくれている。わたし達は、座らずにあたりをうろちょろした。
「菜々、これ見て! かわいー!」
「どれどれー? うわぁ!」
琴音が指差しているのは、小さなお花のコスモスの形のした小物入れとクローバーの形のした小物入れだった。
琴音は、クローバーが好きで、わたしはお花のコスモスが大好きなんだ。
「地図、書けたよー」
お姉さんの声がした。わたし達はそれぞれ小物入れを持ってお姉さんの所に走った。
「ありがとうございます! あの、これ買いたいんですけど……」
わたし達は、地図を受け取り、小物入れをお姉さんに渡した。
「おや? 値札がついてないね。こんな物あったかしら? いいよ。タダであげる」
「ほ、本当ですか! どうもありがとうございます!」
「いえいえ。久し振りのお客様だからね。じゃ、気をつけて帰りなさいね!」
「はい。どうもありがとうございました!」
わたし達は、ルンルン気分でお店を出た。お店を出ると、小物入れをとりだした。
「ああ。いい人だったねー」
わたしが言うと、琴音もうんうんと頷いた。
「ねぇねぇ。せーので開けようよ!」
「うん。せーの!」
パァァァ!!!
とたんに、すごい光がわたし達を包み込んだ
「☆○▽×〜!?」
琴音が意味不明の言葉を叫んだ。わたしは琴音の手を掴まえようとした。しかし、あと少しの所で琴音が消えてしまった。
「いやぁぁー!」
目を開けると、なんだか下に落ちているような感覚がした。下を見ると、その考えは不幸にも的中していた。
「ぎゃあ!」
ど〜ん! いてて……。ああ。目の前に、ひよこと星が見える〜。
「う〜ん……」
「あ! 人間だ〜!」
わたしが唸っていると、前から、走り寄る音と、水のような澄んだ声が聞こえた。
「ほぇ?」
前を見ると、大きな、しずくの姿形をしている変な物体が立っていた。目も口もあり羽も生えている。その子が、わたしに手を差し出していた。
「はい」
「あ、どうも」
わたしは、その手を借り起き上がった。
「……。って! しゃべった!? しかも、あんた何者!? ここはどこ!?」
慌てて、その子から距離を置く。あたりを見回すと、あきらかに、日本の風景ではなかった。いや、地球のどこを探しても、こんな場所はないだろうと思った。
わたしの周りには、綺麗な、透明の水の川が何本も流れ、人が誰もいない。木や草がたくさん生えていて、雲は水色で、雲か空か区別がつかなかった。
「ここは、雨の世界だよ。そして、僕は水の妖精メアト」
雨の世界?水の妖精メアト? どちらも菜々は聞いた事もない世界と妖精だった。
「ここ、人間界じゃないの?」
「うん。妖精の世界だよ。人間界じゃないよ」
「な、なんでわたし、妖精の世界へ来ちゃったの!?」
わたしが慌てて聞くと、メアトは、ため息をついて答えた。
「いたずら博士のいたずらだよ。いたずら博士が、お花のコスモスの形のした箱とクローバーの形をした箱に、妖精の世界へ瞬間移動できる光の粉を入れた箱を作ったんだ。それを、いたずら博士が、いたずら心で人間界に置いてきたんだ。その箱を、君は開けちゃったみたいだね。だから、今ここにいるんだよ」
「そ、そんな…。で、でも、もちろん、人間界に帰れる光の粉もあるよね?」
「ないよ」
メアトがあっさりと答えた。
「へっ?」
「いたずら博士は、人間界へ瞬間移動できる光の粉をつくらなかったんだ。ていうか、人間界に瞬間移動できる光の粉をつくる実験に失敗して、変な病気にかかって亡くなっちゃったんだ」
メアトがさらりと答えた。
「そ、そんな…。わたし、帰れないの!?」
菜々が、おそるおそる聞いた。
「帰れないよ」
メアトがまた、さらりと答えた。
「本当に?」
「うん」
「まじで?」
「うん」
「なにがあっても帰れない?」
「うん。でも、もしかしたら、帰る方法があるかもねー。ないと思うけど」
菜々は、、ポケットから小型ハンマーを取り出した。
「夢よね♪」
「じゃー、それで頭を叩いてごらん♪」
「うん。これは、夢。覚めなきゃいけないの〜!!」
ご〜〜〜〜〜ん。ハンマーで頭を叩いたとたん、ものすごい痛みがはしった。ピヨピヨ
「バーカ。ドージ」
メアトが、菜々を嘲るように笑った。
「お嫁にいけない……」
菜々は、叩いた所をさすさすとさすり、ぽつんと呟いた。
「そーだネ」
メアトが楽しそうに、さわやかに言った。
「そんな、さわやかと……」
菜々は、メアトを睨んだ。メアトはその視線を避け、のんびりと言った。
「じゃあ、僕の友達に知らせに……。もしかしたらだけど、帰る方法があるかもしれないし。ないと思うけど」
走ろうとしたメアトの足を、菜々は掴んだ。
「いいわ! これ以上、この問題を大きくしてられないもの! それに、あんたの友達なんて会いたくもない!」
「いいのぉ〜?」
メアトがのんびりと答えた。
「ええ。でも、あんたは手伝ってよね! それじゃあ、ここにいる時はあんたの家に、お邪魔させてもらうわ!」
そういい、メアトをせかして、走り、メアトの家にたどりついた。
メアトの家は大きく、部屋が空いていたので、菜々はそこを借りることにした。メアトはむっつりとしているが、菜々の分のご飯なども作ってくれた。
ある日、雨の世界を歩いていると、地面に、ハートのかざりがついている杖と手紙が落ちていた。
「見つけた人にはあげます…」
手紙にはそう書かれていて、普通の人なら、不気味で、そのまま置き去りにしてしまう物を、菜々は喜んで手に取った。菜々は貰える物は、なんでも貰ってしまう人なのだ。
「アハハ! よ〜し、もーらおう!」
メアトの家に戻ると、メアトに気付かれないように部屋に戻ろうとした。菜々は、雨の世界にずっと、住みたいとだんだん思うようになった。雨の世界には、学校もないし、いつも遊んでいられる。それに、水がとてもおいしく、メアトの料理も一流レストランの料理みたいに、最高においしいのだ。
部屋を開けるとメアトが菜々の部屋で遊んでいた。
「帰る方法見つかった〜?」
メアトは菜々をちらっとみていった。
「きょ、今日は、探すの休みだから! このルービックキューブで遊ぶの!」
菜々は、キューブを持って答えた。メアトは、そのキューブを菜々の手から取り窓から外に投げた。
「NO〜!」
菜々は、窓から飛び出し、キューブを掴んだ。
「アハハ〜」
菜々は満面の笑みを浮かべた。しかし、下を見たとたん、菜々の表情が固まった。ごーん。ピヨピヨ
「菜々……」
メアトは窓から、すたっと飛び降りて、綺麗に地面に着地した。と、そこへ、大親友のおにぎりの妖精ぷよよんが現れた。
「この人大丈夫? てか、人間?」
「大丈夫、大丈夫♪」
「そんなさわやかに……」
そして、2匹の妖精たちは菜々を置いて、ゲームをしにメアトの家に行ったのだった。
「う〜ん……」
ある日、菜々にしては、めずらしく考え事をしていた。
「どうしたの?」
雨の妖精メアトが、聞いてきた。
「何か、忘れている気がして……」
「ふ〜ん」
「なにかで、頭をぶつけると思い出すって本当かな〜?」
「知らない。ま、やる価値はあるんじゃない?」
「じゃあ、やるね!」
そして、菜々はトンカチを取り出した。
「こんな時はこれよね!」
菜々はそう言い、力をこめてトンカチで頭を叩いた。
カーン! トンカチで頭をぶつけると、鐘のような音がした。
ピヨピヨ
(本当にやったよ。この人……)
「あ! 思い出した! わたしの親友の琴音って言う子が、クローバーの箱を買ったんだよ!」
「え! 本当に? うそでしょ! なな、嘘は言わない方がいいよ! てか、治るの早いね」
「うそじゃぁない! 琴音を探さなきゃ! メアト行くわよ!」
「どこに!」
メアトが叫んだが、菜々は無視してずんずんと森の方へ歩いて行った。
「ちょっと!」
「菜々!!」
メアトと女の子の声が重なった。
菜々はゆっくりと後ろを振り向いた。そこには、メアトに似ている星の髪飾りを頭の上につけた子と、琴音が立っていた。
「琴音! ここにいたのね!」
菜々が、琴音に抱きついた。
「ええ。菜々、無事でよかった」
二人でひとしきり会話したあと、メアトに星の髪飾りをつけたような子に話しかけた。
「こんにちは。名前はなんて言うの?」
菜々が言うとその子は少し菜々を見つめた。
「メアトの友達のルリノアです」
「かぁわいー!
「あのね、菜々、帰る方法、1つだけあるみたいなの」
琴音が菜々に言った。
「そうなの? 帰る方法は?」
「いたずら博士の子供が、光の粉を作れたんだって。あと……。まぁ! 菜々、その杖どうしたの?」
「へ? このハートの杖? 落ちてたんで、貰ったの」
菜々が言うと、琴音は目を丸くした。
「その杖を持って、光の粉に掲げて見て。そうしたら帰れるよ!」
琴音がニコニコしながら、菜々を急かす。菜々は黙ってメアトを見つめた。
「どーしたの? 帰りたいんでしょ?」
「う、うん」
菜々は口をモゴモゴさせる。
「どうしたの? あ……。……帰っても、忘れないよ! だって、友達だから! だから、元気を出して」
メアトが答えた。
「う、うん! わたしだって、あんたの事、忘れないから!」
菜々は、涙をふいた。そして、ルリノアが1つの箱を持ってきた。
「元気でね……。バイバイ」
お別れのあいさつをすると、ルリノアが涙をこぼしながら箱を開けた。
フッ
菜々と琴音は、箱を開けた場所にいた。
「どんな事があったって、忘れないよ。また、会える日が来るよね」
菜々と琴音が空に向かって話しかけた。空には、メアトの形をした雲とルリノアの形をした雲があった。
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