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位置が高いほど魔力の濃い世界で、空の彼方に生まれました~航空機チートによる物流革命~ 作者:八針来夏

第三章『陰謀編』

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第十話『近接火力支援』

「叔父さぁん、来たよぉ?! お客さんやよぉ!」

 そして船の下部分、開いたハッチからぽわぽわした綿毛みたいな髪の女の子が身を乗り出し、念話で誰かと話して――こっちを見る。同時に念話が頭の中に聞こえてくる。顔立ちと同様、なんだか可愛らしい声が脳裏に溢れる。

『今からワイヤー降ろすんよぉ、馬さんに乗る時みたいなあぶみが付いてるから、それに足入れて乗ってぇねぇ?! ほな降ろしま~す』
「うわぁ……二人の守護天使(ヘクセ)に加えて、今度は脱出のための船まで来てくれるとは、ホント大判振る舞いだよねぇ……人生の幸運の貯蓄からどの程度持ち出したか」

 キスカが連戦で隠し切れない疲労と共に、安堵と歓喜を込めて呟く。
 レグルスも頷いた。

「……そうさな。九死に一生を得た。……よし、傷を受けた奴からだ! ここまでお膳立てしてもらったんだ、全員で生きて帰るぞ!」

 からからからから……鉄製のあぶみが金属音を立てながら降りてくる。それが地面へと接触すると共に、再び念話で声が聞こえてくる。

『ほんなら行くよぉ、巻き上げまーす』

 ぽわぽわ綿毛の子の気の抜ける声と共に、再度ワイヤーが巻き上げられていく。
 怪我をしているとはいえ、彼らも冒険者。その動きに合わせて足をあぶみに差し入れ、そのまま起重機に引き上げられていく。

「大将、また来たぜ!」

 仲間の声に振り向けば、ルコッチャと彼らに散々痛めつけられたはずの魔獣はなおも執拗に追いかけてくる。
 外皮に岩石めいた装甲を纏い、鋭い牙を煌かせながら突進してくる爆走猪(スタンピードボア)
 レグルスは、これが最後の踏ん張りどころと気合を入れようと前に進みでたが……その時、ちょうど脳裏に響き渡る声がした。

 強力な念話。それもレグルス一人だけではなく、この場にいる全員が聞こえているようだった。

『貴方達の視界を貸してもらえるか?』

 念話はこういう時、イメージという曖昧な形であっても伝える事ができるから、実に便利だ。
 視界を貸すことによってどうなるのか? その疑問は――頭の中に浮かぶ、『奴らが全部ぶっ飛ぶ』というイメージによって返答された。
 レグルスは笑みを浮かべた。
 先ほどから何度となく魔獣どもに追い掛け回され、命からがら逃げ出してきた。そんな相手に、反撃の一矢を叩き込むことができる? それは想像するだけで実に痛快な事だった。
 思わず、叫ぶ。

「俺達の命を狙う魔獣に思いっきり痛い目を見せてやれるのか? 痛い目を見せてやれるのだな?!
 ならば何も迷う事はない、思う存分に使え!」

 レグルスの心の底からの叫びは、キスカを初めとする全員の心の代弁だった。
 その言葉に頷く少年の思念と共に、レグルスは遠方からこちらへと飛来する高速の飛行物体の音を感じ取った。

『貴方達からの視覚で敵の位置情報は確認できた、感謝するよ。
 ……本機ザスモーは友軍の撤退のため、近接火力支援を開始する。
 降下爆撃。弾頭は爆砕の弾幕(クラッシュバラージ)。攻撃軌道に突入』

 そして遠方の飛来物体が引き起こすもの凄まじい轟音は恐ろしいほどの勢いで近づき――レグルスは、見た。
 空を飛ぶ鳥の全てが鈍足と感じる、圧倒的な速度で突入する黒い影。

『爆音が凄いぞ、耳を塞いで口を開いておくんだ』

 その黒い魔女(ヘクセ)は、脚部からオレンジ色の光弾を山ほど発射しながら飛びぬけていく。
 光弾の着弾地点付近にいた魔獣は悲惨の一言であった。
 ドッドッドッ……!! 幾度も繰り返される発射音。オレンジ色の光弾が地面に激突するたび下腹に響き渡るような連続した爆炎の轟音が炸裂していく。
 あれほどまでに自分達を苦しめ追い詰められていた魔獣たちが、光弾一つが地面に着弾する際の大爆発で空中に吹き飛び、爆破され、四散し、宙へと舞い上がり、落下し、そして死ぬ。
 まるで灼熱の花道。軍の人間達が魔女(ヘクセ)を『我らが守護天使』と呼ぶことは知っていたが――なるほど、これは天使とでも呼びたくなる。敵にとっては恐るべき破壊天使。我らにとってはまさに守護天使だ。
 自分達の命を脅かす脅威が、見る見るうちに駆逐されていく。自分達を窮地に追い詰めていた敵が、一転してぶっ飛ばされる光景は――ああ、痛快極まる!

「ざまぁ見ろぉ!! いいぞぉー! もっとやれぇぇぇえぇ!!」

 沈思黙考が基本な寡黙な男であるという仲間たちの評価を覆す勢いでレグルスは歓声をあげた。
 空を飛びぬけ、空中で旋回しながら再度の爆撃コースに乗るあの黒い魔女に手を振って叫ぶ。
 ここまで仲間の命を預かってきたという過酷なプレッシャーからようやく解放され、もう命の危険がないのだと思えば叫ばずにはいられなかった。 もはや追いたてられ、追い詰められていたもの達の関係は逆転する。
 凄い、凄いぞ。レグルスは生まれて初めて受ける、魔女の近接火力支援の頼もしさを実感していた。……野外での魔獣との戦いに、常にあの魔女たちの航空支援があれば、自分や仲間、この世にいるすべての冒険者たちの生き残る目が大幅に増える。
 それに自分達を助けに来てくれた、空中にふわふわと浮く飛翔船(バードシップ)だって、地味だが物凄い。
 今までは活性水や魔獣の遺骸から剥いだ金になる戦利品は換金できるお宝であると同時に、体力と移動速度を奪う重荷でもあった。
 けれども、すべての重荷を、空中に浮いた状態で回収してくれる飛翔船(バードシップ)が担いでくれるとすれば、自分達冒険者は持ちうるすべての力を魔獣の撃退に費やすことができる。
 帰り道の体力配分を考えず、飛行機械の中で安心して他の都市へと帰ることができる。

 空を見上げれば、自分を助けたあの黒い魔女騎士(ヘクセリッター)が、地上から見上げるレグルスたちに答えるように空中でくるくると左右に回転(ロール)しながら翼を振って挨拶していた。


 何かが変わろうとしている。
 自分達の人生を、より良い方向に変えようとする新しい風が吹いている。
 そしてその好ましい変化の源泉は、あの魔女騎士(ヘクセリッター)であることは疑いようがない。

「ちょっと」

 ……背中から彼の肩をとんとん、と叩くキスカの声に……言いようのない感動の中にいたレグルスは、ようやく振り向いた。

「あんたの番さね、レグルス」

 キスカが指差す先を見れば、仲間達全員が、既に空中で浮遊する飛行機械の中に収容され、自分ひとりを残すのみとなっていて。
 レグルスは、慌てた様子でワイヤーに捕まり、ようやく回収されたのであった。

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