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位置が高いほど魔力の濃い世界で、空の彼方に生まれました~航空機チートによる物流革命~ 作者:八針来夏

第三章『陰謀編』

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第五話『期待値36分の1』

 今日は僕がスヴェルナ商会に依頼した新型飛行機械の試作一号機がようやく完成し――これから初の仕事に就くこととなる。
 ギュスターヴは二階の手すりに身を預け、自分が操ることとなる新型飛行機械に視線を向けた。

「良い船だな」
「そうなるように努力は惜しまなかったつもりだ」

 彼の独白に僕は呟き返す。

「名前はなんだ?」
「上下右斜め横などへ自由自在に空を飛ぶから、縦横無尽(フリーヴィ)号と名づけた」
「いいな。早そうな名だ」

 スヴェルナ商会の協力を得て設計した新型飛行機械、縦横無尽(フリーヴィ)号は、白色に塗られた円盤型の胴体に、四方にサブエンジンを四つ搭載した船だ。
 四方に設置した軽くて強力なサブエンジンは可動式。これらを動かし、推力の噴射角度を調節してヘリのような垂直離着陸、ホバリング機能を実現している。格納スペースは円盤型船体の中央より少し後ろ側。ここからハッチを開いて物資の搬入を行う。
 また内部には起重機を搭載しており、ワイヤーロープを下ろしてホバリングしながら物資を下ろしたり、逆に物資を回収したりする事も可能だ。
 船体の重量割り当てはエンジンをはじめとする推進機関が6割、貨物倉庫が3割、操縦者の生活環境が1割。

「くっそ狭い通路にくっそ狭いベッド。四人で限界一杯な操縦席。こいつで夜を明かすより、地上に降りてテントを張ったほうが良く眠れそうだな」
「居住性に関しては伊達に銀河最速のガラ○タ(ミレ○アムファル○ン)を参考にしてないよ?」
「お前がナニを参考にしたのかはたぶん永遠に分からんのだろうが、できればそいつの居住性の悪さは参考にして欲しくなかったかな」

 ギュスはやれやれ、と肩を竦める。

「ま、この図体にあれほど巨大なエンジンを積みもすれば、どこかで無理をさせる必要も出てくるだろう」

 そう言いつつ、僕とギュス、そして途中で走ってやってきたメーコちゃんは、船体下部に設けたハッチから荷物を搬入する職人さんに目を向ける。

「なぁなぁシオンく~ん。ザスモー、もって行くん?」
「……念には念をね」
「あの辺は魔獣も出る。念のための戦力は必要だろうな」

 と、そこでザスモーと一緒に搬入される見覚えのない飛翔甲冑(メイル)に気づく。

「アレ……あの白い飛翔甲冑(メイル)は?」

 そう呟く僕に後ろから声がかかった。

「わたしの飛翔甲冑(メイル)白銀嶺(シルバービュー)ですよ、シオン。
 今回は連合の一大事ゆえ、わたしがフェズン公爵の全権大使として火蜥蜴の氏族の方々と交渉する事になります」
「エクエスも来るのか。と、なると乗組員は僕とギュスターヴ。メーコちゃんにエクエスか。
 コクピットシートの定員ギリギリだな」
「あの……それがシオン」

 と、僕の呟きの言葉にエクエスは何か凄く申し訳なさそうな表情を浮かべる。
 どうかしたのだろうか、と思った僕に対して……どこぞから声が聞こえてきた。

「だーかーら、ウチんとこの会社にアンタが結婚したがってる凄い美少年には心当たりがあるんやけど、紹介もなしに会わせられへんねん」
「そ、そんなはずない! わたし、あの子に『一緒にきて』と聞いたらいいよって言ってくれたもん!」
「それをどうして結婚という意味に取り違えるねん! あかんあかん、アレはウチのメーコの若旦那なんや!」

 押し問答の声が遠くから聞こえる。
 どうやら格納庫の入り口辺りでカルサさんとやり取りしているらしかった。

「聞こえない聞こえない昨日の人がまだこんなところにやってくるなんてそんな訳がない……」
「し~お~ん~く~ん……」
「そ、そんなつもりじゃなかったんだ、困っているから助けようと思っただけなのに」

 頭から両耳を押さえて何も聞こえないフリをする僕であったが、真後ろから聞こえるのはおどろおどろしいメーコちゃんの声である。
 操縦者用のフライトスーツに着替えつつ、ギュスターヴがなんとも言えない微妙な顔をしていた。

「お前が良く分からんところから女の縁を引っ張ってきたのは、この際自業自得だろうがな。
 ……あの娘も連れて行くんですかね、エクエス」
「ええ」

 エクエスの言葉に僕は思わず反応する。

「ええっ?!」
「……驚くことじゃなかろうが。この連合首都で当てもなくお前一人を探し出せるわけがねぇ。だとすりゃ彼女に教えられたとしか思えないからな」

 ギュスターヴの予想に言葉に詰まった。あの長身の褐色娘さんまで操縦席に詰めては大変狭苦しいことになってしまう!
 そこにメーコちゃんが口を挟んだ。

「でもシオンくんはお顔が綺麗やから、この辺の人に『物凄い美少年を探しています』とか聞き込んだら案外探し出せそうやね」
「プライバシーがない!?」

 僕の憤然とした声に、エクエスはいたって真面目な顔。

「あの後、彼女と話をしました。
 何でも新しく発見した岩塩鉱床の位置を知っているのはあの女性、ルコッチャしかいないそうでして……もう連れていくより選択肢がないのです。
 時間もありません。行きますよ」

 そう言ってエクエスは押し問答を続けているカルサさんとルコッチャの仲裁に向かい、見覚えのある彼女を連れてくる。
 カルサさんは『ええぇ……』と何かもの言いたげな表情であったが、しかし最終的には彼女を通してしまう。そうしていれば、ルコッチャは野生の俊足でこちらに駆け出してきた。

「はぅっ! みつけた! 昨日のお婿さん! 小さくて可愛いから一目でわかった!」
「なんだとこの女!」

 小さいと言われて僕は喉の奥からがるるるると威嚇音を発しながらギュスターヴの影に隠れた。
 そんな僕の反応にルコッチャはきょとん、と首を傾げる。

「ど、どうして隠れるの?」
「昨日はよくもお持ち帰りしようとしたな! 絶対にゆるさない!」
「その勇ましい台詞を俺の影から発さなきゃ、もう少し格好いいのになぁ」
「うるさい! 親切心で接しただけでお婿さん扱いする女の子と接するのは怖いわ!
 それに僕は僕より身長が高くて見下ろしてくる相手に対してはなんだかイラッとする度量の狭い性格なんだ!」
「うっ……」
「シオンくん、エクエス様がダメージ受けてるんよぉ!」

 なんでエクエスがそんな顔をしているのであろうか。確かに彼女は僕より身長が高いが。
 だけどもそんな僕の言葉にルコッチャはほっと安心した顔。

「ううん。違うの。……シオンがお婿さんになってほしいのは、わたしのいもうと」
「あれ?」
「婚活に来た。それは妹の嫁入りのための持参金を稼ぎたいから。
 エクエスの頼み聞くと、お金たくさん。上の妹は優しい旦那様と一緒。下の妹も14で、優しい旦那様が欲しい。
 シオン、小さくて可愛い。妹、小さくて可愛い。きっとお似合い」
「決め付けるな」
「一日一度、わたしに抱き締めさせてくれると、なおいい」
「やめろ!」

 不満そうな僕にルコッチャは大きい胸を張った。

「持参金たくさんあげる!」
「金には困ってないんだ……」
「やらしい旦那様でも、いい」
「きききき、決め付けるな!!」

 僕はちょっと、いやかなり言葉に困った。
 最初こそルコッチャの行動の動機を、男を誘拐する蛮族か、と思ったが……どうもそれなりに理由のある話らしい。

「だがどうする? 座席は四人乗りだ。一人余るぞ」
「だいじょうぶ。わたしの膝に乗せる」

 膝の上に乗せるだと? 僕はルコッチャを見つめた。
 ……思っていない。あのおっぱいに密着するなんて、なんという幸せな、などと思ってはいない。
 ギュスターヴはとりあえずルコッチャのその豊満な体型を上から下までじろりと見てから言った。

「俺が膝の上に乗ろがふぁ!!」

 即座にエクエスの肘鉄を食らうギュスターヴ。同じ男として気持ちは分かるが。

「ギュスターヴは操縦に専念してもらわねばいけませんから、そんな冗談はさておきまして。わたしも彼もそれなりに背丈があります。
 ここは小柄なシオンとメーコの二人で決めてもらっては?」
「いややああぁぁぁぁぁぁ~~~!!」

 だがここでメーコちゃんから全力の拒絶の声が来た。ふるふると唇を震わせ、半分泣きそうな顔でルコッチャの胸と自分の胸を見比べて愕然としている。
 まさか自分の膝に乗せることに本気で嫌がられると思っていなかったルコッチャは慌てた様子で落ち着かせようとした。

「ど、どうしたの? わたし、お腹は硬くて割れてるけど、太ももとおっぱいは柔らかいよ? いいクッションだよ?」
「その柔らかなクッションの存在を飛行中延々と感じさせられるとウチが惨めになってくるんよぉ~!!」

 半分泣きながらつるぺたメーコちゃんは僕に縋りつく。

「お願いやよぉシオンくん、あの人の膝の上に乗ってぇ!」

 ここで「任せろ!!」と大声で同意するとタダのスケベ野郎になってしまうのでそれは堪えた。
 僕は目を泳がせ、さりげなさを装いながら答える。

「ぼ、僕だって? そんなのきょ、きょうみない、し? せ、正々堂々? じゃ、じゃんけんで決めよう?」
「ううっ確かにシオンくんも、昨日誘拐されかけた女の人と密着するのはいややろうし、ええよ?」

 メーコちゃんは頷くとじゃんけんに応じてくれた。
 きた、とうとう来た! ここで負けることができれば僕は『おっぱいに密着したいスケベ野郎』の汚名を着ることなく、おっぱいに密着することができる! 仕方ないだろう、今の僕は思春期なんだ! おっぱいに興味がある年頃なんだ! 文句のある奴はかかって来い!!
 隣で胡乱なものを見る目でギュスターヴとエクエスが僕を見下ろしているが今はどうでもいい!
 負ける、ここで負けて僕は合法的におっぱいと密着する権利を得るのだ! 確率は二分の一、だがここで引かずしてなんとする!

 ダイスの神よ、我に勝利(敗北)を!!

「それじゃいくんよぉ? 最初はぐー……」

 我が手に一ゾロ(ファンブル)をおぉぉぉぉぉぉ!



 こうして僕らは、後ろの席でルコッチャに抱きすくめられながら膝の上に乗ってえぐえぐと泣き声を溢すメーコちゃんと。
 興味のないフリをするので必死な、副操縦席の僕という妥当な席順に落ち着くのであった。

 経験点50点、欲しかったなぁ……。
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