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良いことを思いついた。

結局、兵士達は生ビールを一回お代わりして帰っていった。


他の客達も閉店を告げると帰ったので、今はもうダンジョン内に外部の者は居ない。


俺は食堂に集まったエリエゼルや少女達と豚肉の野菜炒め定食を食した。


「お、美味しいです!」


少女達からそんな感想を貰いつつ、俺は皆を見回す。


とりあえず、今日の様子だと皆一ヶ月で一通りのことを出来るようになりそうである。大変優秀なことだ。


まあ、ピアノを覚える予定のソニアとクーヘはまだ暫く客前で演奏することは出来ないだろうが。


そんなこんなで店は問題ないのだが、別のというか、本来の問題が今まさにのし掛かってきている気がする。


そう、ダンジョンマスターは基本的に駆逐される存在なのだ。


今はまだ此処に住んでいる少女達にすら知られてはいないが、いずれバレる日が来るだろう。


問題は、食堂を運営している時に先程のように兵士達が雪崩れ込んできた場合である。


果たして、逃げ切れるだろうか。


俺がそんなことを思っていると、ようやく居住スペースの方からフルベルドとレミーアが揃って出てきた。


二人は俺たちの食事風景を見て何処か物欲しそうな顔をこちらに向ける。


「おはようございます、我が主よ」


「お、おはようございます」


二人に挨拶をされ、俺は苦笑しながら口を開いた。


「ああ、おはよう…っていう時間じゃないけどな。二人はこれくらいの時間にしか起きられないのか?」


俺がそう尋ねると、フルベルドはあっさり首を左右に振った。


「いいえ、かなり前に起きていましたとも。ただ、どうやら外部の者が多くこちらへ来ていたようなので顔を出さずにおりました」


「ああ、そうか。その方が良いだろうな。レミーアもタムズ伯爵と一緒に歩いているところを見られているかもしれないし」


フルベルドの言葉に俺がそう同意すると、レミーアが難しい顔で頷いた。


「はい…私はボルフライの館からタムズ伯爵の館まで無理矢理連れて行かれています。馬車を使って移動したとはいえ、何人かには見つかっているかと…」


「なるほど。そういえば、今日来た兵達も別に明確な誰それを探しているという雰囲気は無かったな。怪しい場所を虱潰しに探しているってところか…」


俺はそこまで口にして、ふと、あるアイディアを閃いた。


この店以上に怪しい場所を作ってしまえば良いのだ。


むしろ、もろにダンジョンという入り口を作れれば、そこに人は集まるだろう。


ダンジョンをどう繋げるか。


いや、まず入り口を何箇所も作れるのか。


その辺りはしっかり考えてみないといけないが。


俺がそんなことを考えていると、レミーアが悲しそうな顔で少女達の食事風景を眺めていた。


「ああ、お前達も同じ食事で良いな?」


俺はそう言って二人の料理を用意すると、フルベルドとレミーアは破顔して席に座った。


その様子を近くで見ていた金髪金眼の少女、ピッパが不思議そうに俺を見た。


「何度見ても、私の知る魔術とは根本から違うように思えます。いったいどういう原理の魔術なのでしょうか」


と、ピッパは俺を見上げてそう言った。


前回、物を創り出した際にピッパから向けられた視線はかなり猜疑心というか、様々な感情の入り混じった目を向けられたものだったが、今は純粋に疑問を感じて俺に尋ねているといった雰囲気だった。


こういった所にもエリエゼルの施した契約の影響が出ているのだろうか。


俺は首を捻りながらピッパを見返した。


「俺だけの特別な技だな。ピッパは魔術が使えるのか?」


俺がそう聞くと、ピッパは残念そうに息を吐いた。


「そうですか…確かに、一子相伝の魔術なんてものもあるそうですからね。私はまだ見習いですので、大した魔術も使えませんが…」


「へぇ、そうなのか」


俺はピッパにそう返事をして他の少女を見回す。


「他にも魔術が使える者はいるのか?」


俺がそう尋ねると、三分の一程度の少女達が手を挙げていた。


何故かフルベルドが一番自信有り気に挙手していたが。


手を挙げた少女達を一人一人眺めて、最後にエリエゼルを見る。


エリエゼルも自信有り気に挙手していた。


「意外と魔術を使える者は多いんだな」


俺がそう言うと、エリエゼルは手を降ろして頷いた。


「この世界では大体四人に一人が魔術の素養を持っています。その中で魔術士として戦えるようになるのは十人に一人。一流と呼ばれる魔術士になれるのは千人に一人ほどでしょうか」


「ふぅん。一流の魔術士とかが仲間にいると助かるけどな」


俺がそう言うと、先程まで挙手していた少女達の何人かが反応を示した。


ピッパもその中の一人だ。


俺は口の端を上げてそれだけ確認すると、皆を眺めて口を開く。


「さて、今日は疲れただろうから、とりあえず皆は風呂に入って寝なさい。明日も頼むぞ」


俺がそう言うと皆は良い返事を返してまた食事を再開し始めた。


「エリエゼル。ちょっと話がある」


「私ですか?」


俺が名を呼ぶと、エリエゼルは首を傾げながらも立ち上がった。


「食器類は洗っておいてくれ」


俺は少女達にそう言い残し、エリエゼルを連れて居住スペースに移動した。


俺はエリエゼルと寝室まで移動すると、エリエゼルは何を勘違いしたのか訳知り顔で深く頷いていた。


「ご主人様ったら、もう…」


謎の微笑を讃えながら意味深長な言葉を吐くエリエゼルを放置し、俺はさっさとダンジョン内に入る裏口を開く。


本棚が両開き扉になった瞬間エリエゼルが目を剥いたが、俺は気にせずに隠し通路に足を踏み入れた。


「な、なんですかコレ!?」


「緊急避難用隠し通路だ」


混乱するエリエゼルに俺がそう告げると、エリエゼルは唖然とした顔で俺の後を付いてきた。


「あ、扉は閉めておいてくれ」


「は、はい…あ、閉めやすい」


エリエゼルのそんな声を聞き、俺は笑って先を進む。


そして、エレベーターに辿り着いた時、エレベーターの中に乗り込んだ俺を見てエリエゼルは引き攣った笑みを浮かべた。


「…エレベーターですか。信じられませんね、本当に」


そんなことを言いつつエレベーターに乗り込んでくるエリエゼルを眺めつつ、俺は地下三階のボタンを押した。


まあ、今のところそこまでしか無いのだが。


地下大空洞に着いた俺達は湖の前に立ち、湖の底から聳え立つ塔を眺めた。


俺は塔の入り口と湖の水面を眺めながら、エリエゼルに対して口を開く。


「ダンジョンへの入り口は増やせるか?」


「え? 入り口ですか? きちんと全ての場所に辿り着けるのなら作成可能ですが…」


「危険が増すか?」


俺がエリエゼルの台詞の先を読んでそう聞き返すと、エリエゼルは神妙な顔で頷いた。


「はい…入り口を増やすということはそれだけ多くの冒険者の侵入を許すことになります。ダンジョンマスターの中には複数の入り口を持ったダンジョンを作った方もいますが、大体そういった方は冒険者に殺されてしまいましたね。複数の入り口があるダンジョンはやはり大型のダンジョンが多いので、冒険者側もかなり本腰を入れて攻略に乗り出してしまいますから」


「ああ、いや、今のところダンジョンの入り口は俺達が営業している食堂だけだろう? だから、分かりやすいダンジョンの入り口を作れば皆がそっちに目を向けるんじゃないかとな」


俺がそう言うと、エリエゼルは顎を引いて唸った。


「…そうですね。しかし、何処に入り口を作るのですか?」


エリエゼルが俺の案に対して疑問を発し、俺はエリエゼルに笑みを向けた。


「タムズ伯爵の持っていた敷地の中とかどうだ?」


俺がそう言うと、エリエゼルは目を瞬かせて動きを止めた。



異世界転移後、一週間で建国してしまいました…

の方と交互に更新しようかと思います!

良かったら読んで見てください!

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