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ダンジョンを作ろう。

少女達の部屋割りを終えた俺は一度食堂に戻り、エリエゼルに声を掛けた。


「皆が戻ってきたら掃除や食堂について教えておいてくれ。俺はダンジョンを作ってくる」


俺がそう言うと、エリエゼルは頷いて微笑んだ。


「お任せください。しっかりと教育しておきます」


頼もしいエリエゼルの言葉に頷くと、俺はまた居住スペースに戻った。


廊下を進み、奥にある俺の部屋へと向かう。


部屋に入った俺は部屋の中を見渡し、良さそうな壁を見つけた。


隠し扉と通路を作ろう。


忍者屋敷などの掛け軸の裏に通路も憧れるが、やはりきちんと蓋が出来る方が良い気がする。


最初に作ったダンジョンへの入り口は床下だったが、あちらは開けるのが面倒臭い。


床を開いて迫り上がるエレベーターとかにするか。


俺はそんなことを考えながら、本棚に手を置いた。


漫画やら小説やら旅行雑誌やらが雑多に並んだ本棚に触れて、俺は目を瞑る。


イメージを固め、念じる。


出来た。


目を開いて見ても、一見本棚に変化は無い。


だがこの本棚、実は真ん中の仕切り板を手前に引くと、観音開きに開くのだ。


本棚が重いため、片手で引っ張っても開かず、両手で引っ張る時は左右に分かれることを意識しなければ開かない。


仕切り板が半分に分かれるからな。


俺は開いて左右に分かれた本棚と、その奥に続く通路を見て一人頷いた。


石畳にレンガの壁、アーチ状の天井。


照明は点々と壁についているランプ風の照明だ。色合いは赤みの強いオレンジ色にしてあるため、この通路が一番ダンジョンらしいのかもしれない。


通路の中に入り、裏から本棚を模した扉を閉める。


踵を返した俺はその通路を歩いていき、角を曲がった。何となく五十メートル程度の直線と直角に曲がる角、そこからまた五十メートルという形で通路を作ったのだが、意外に五十メートルというのは距離がある。


そして、最奥の突き当たりには、九つのボタンがある。携帯電話の一から九までのボタンと同じように縦三列と横三列だ。


ボタンといってもレンガ造りの壁の組違いのレンガがボタンになっているので、触ってみるまで分からないようになっている。


そのボタンになっているレンガを三箇所、壁の奥へと押し込むと、地底湖までの隠しエレベーターが現れる仕掛けだ。


押し込むレンガは携帯電話のダイヤルボタンで言うと、四、五、九。


地獄である。


押し間違えたり四つ目のボタンを押したりすると、床に穴が空いて地底湖よりも深く落ちることになる。


俺はしっかり、間違えないようにレンガを押し込んだ。結構重い。


レンガを押し込むと、硬い石の上に岩が倒れるような重々しい音が鳴り、行き止まりだった壁は頭上まで持ち上がっていった。


壁が無くなった先は、黒い金属っぽい箱のような部屋だった。


人数は二十人は入れそうな大きなものだ。窓は顔の高さほどに四方向全て備え付けられている。


秘密基地みたいで大変楽しい。


俺はウキウキしながら黒い箱のような大きな部屋へ入った。


部屋の一番奥まで行き、壁にある窪みに手を触れる。


すると、部屋は音も無く僅かな揺れのみを俺に感じさせ、降下を始めた。


速度はかなり速いはずなのだが、全く速度を感じさせない。


と、そんなことを考えていると、もう窓の外の視界が開け、明るく発光する天井の岩肌を通り過ぎて大空洞が見えた。


広い大空洞の中に、陸地と石畳の道、そして青く澄んだ地底湖が広がる。


石畳の道の先は湖の上を橋が通り、作りかけの塔へと繋がっていた。


地下三階に辿り着いた俺は、エレベーターを降りる。


エレベーターは俺が降りると暫くして岩肌に模した扉で塞がれて見えなくなった。


ここを開けるのも同じく、岩肌に模したボタンを押し込んで、数字で地獄と打つ。読み方を間違えると四国なのだが、その覚え方は間違いである。


さて、そんなこんなで地下三階についたのだが、今日の魔素を全て塔に使っても良いのだろうか。


毎日少しずつ魔素の消費を抑え、魔素貯蓄をした方が良いのかもしれない。


いざという時のためである。


俺はいつもより少しだけ賢くなったような良い気持ちになり、作りかけの塔の前に移動した。


さあ、塔である。


天井まで、約高さ五十メートル。この高さをほぼ埋めることの出来る塔を作らなければならない。


俺は目を瞑り、イメージを固めた。


罠はまた次回作れば良い。


とりあえず塔本体の形や材質である。各階層は天井までの高さ五メートルで、10階建ての塔だ。材質は石造りに見えて中は鉄筋コンクリートで作る。


外が見える場所は少なめで、外が見える場合は漏れ無く転落の危険性があるような手摺無しのバルコニーだ。


まあ、落ちても大概は湖の中である。


よし、イメージは出来た。


俺は強く念じ、目を開いた。


すると、目の前にはイメージ通りの塔が建っていた。


石造りに見える、四角い塔だ。


ただ、大空洞の天井まで伸びているため、どちらかというと巨大な柱に見えなくもない。


デザインはパリのサン・ジャックの塔。


ゴシックデザインの豪華で装飾過多な塔である。上層部へ行くに従い段々に細くなっていき、塔の角には彫刻もある。


実際のその塔は一階の一部が縦に長いトンネル状に空洞となっているが、こちらはしっかりと壁面で覆われている。


ちなみに塔の中は先程作った隠し通路の雰囲気が気に入ったため、石造りの床や壁にランプ風の照明が延々と続く。


そして、最上階と最下層はそれぞれ広間となっており、ボスを配置する予定だ。


まだ暫く予定のままだが。


後は湖にも巨大生物を放し飼いにしたい。


ロマンのために。


そんなことを思いながら、俺は湖を眺めた。


立体的なあみだくじといった形で塔の迷路を設置する。


ある程度の間隔は置くとしても、この広い湖の中に巨大な塔が二十から三十は建てられるだろう。


今、俺が塔の上部を作った感覚から計算すると、一日に一つの塔を建てることが出来そうだ。


だが、罠があるとはいえ、迷路ばかりでは防衛にならないのではないか。


「もう一人か二人、戦える仲間がいるか」


俺はそう呟き、湖に聳え立つ塔に背を向けた。


聞いたところによると、フルベルドは真祖のヴァンパイアということでかなり強いらしい。


戦闘力が数値化出来れば良いのだが、それが出来ないからやはり不安が残る。


まずは時間稼ぎの塔を作りつつ、魔素貯金が貯まったらモンスター召喚。


これでいくか。


俺はそんな曖昧な方針を固めると、食堂へと戻ったのだった。



次回!

王都で衝撃のニュースが流れる!

あの大物貴族が変死!?

一夜にして起きた惨事とは!?


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