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作者:みずめ
痛い。

拳を溝落ちにぐっと押し込まれたような、
平手で胸を叩かれたような、
硬式野球のボールがワンバウンドして下から突き上げてくるような、
痛み。

今は夜か、朝か、昼か、、
夜であれ、夜であれと願ったが、鳥が鳴いている。
この間隔で電車が通るということは、きっと朝だ。
それも通勤ラッシュの時間帯だろう。
一日で最も不得意な時間。
いや、そもそも得意な人などいるのだろうか。
などとどうでもよい、
誰にも頼まれていないようなことを考えていた。
自分の吐く息でジュクジュクと湿った布団の中で考えていた。
何時間が過ぎただろうか。
途中、一瞬眠った気がしたので、一時間は過ぎているだろうか。
光を見るのが怖い。
朝のひんやりとした空気を感じるのが怖い。
家の前の砂利道を鳴らしながら健康そうに歩く人の気配が怖い。
隣の家のベランダからの視線が怖い。
下らない話を叫ぶようにして自転車で駆け抜けていく学生の存在が怖い。

全て、自意識過剰というやつだ。
光はいつも通りそこにあって、突き刺してくるわけでもない。
空気は季節ごとに変容はするが、だたそこら辺に漂っているだけで気管を痛めつけてくるわけでもない。
大腕を振ってウォーキングする人は自分の健康維持に必死で、こちらのことなど気にも留めていない。
隣の家の人からは覗き込まない限り、部屋の中は見える角度ではない。
今日も下ネタを叫んでいる学生は、自分たちの世界の中にいて、こちらの存在には全く無関心だ。

なのに、怖いんだ。
どうしようもなく、怖いんだ。

いつも正しい考えを。
いつも正しい判断を。
いつも正しい行動を。
いつも正しい眼差しを。
いつも正しい表情を。
いつも正しい発言を。
いつも正しい目的を。
そればかりを気にしていた。
無意識にいつも気にしていた。
それが当たり前で自然なことと思っていた。
だけど、数ミリのズレがどんどん大きくなって、
引っ張っても、引っ張っても、もうつなぎ合わせることができないほどの歪みができていた。
遅かった。
夜の闇は深い。

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