だれ
おいおいおい。
このご時世、不法侵入という言葉を知らない人が多いのか?
翔といいこのおじさんとおばさんといい…。
まず目に入ってきたのは堅実そうで優しそうなおじさん。歳は40代~50代くらいだろう。180センチくらいありそうな背の高さだ。私は座っているが、きっと立っても見上げることになるだろう。いや、きっとというか絶対というか。
下のフレームだけない眼鏡が一層知的な感じを醸し出している。
でも何だろう。目じりの下がった感じが心配している顔を作っている。
うーん。
課長!とか呼ばれてそう。
次に目に入ってきたのは疲れ切った顔をしているおばさんだった。一瞬見ただけではおばあさんにも見えてしまいそうなやつれた顔をしていた。
髪の毛は白髪が混じっており、あまり整えられているとは言えない。
二人とも、どうしてそんな顔をしているのか私にはわからなかった。
何者や。っていう感想が漏れそうになっただけ。かろうじて声には出さなかった私をほめてほしい。
「翔気!どうしてこんなとこにいるんだ」
おじさんが口を開いた。こんなところという表現は私の家に失礼な気がするが口をはさめそうな雰囲気ではないので目をそらしておいた。翔気もおじさんから目をそらしたようで、私と目が合ってしまい気まずそうだった。いや、なんかごめん。
「ダチんち」
声が低すぎて怖いんですけど。翔気君。私はこの場からさっさといなくなりたい。
「坂田、美羽さんですよね」
おばさんの目が私をとらえている。というか私もなんか巻き込まれてるんですけどー!
っていうかこの人たちは翔の・・・なに?
やばい。頭がフル回転して突っ込みまくってるのに肝心なところがパニクってる。
「急に、来てしまい申し訳ありません」
深々と頭をさげたおばさん。私は何といえばいい。
いえ、どうぞというのも違う気がする。というかどうぞではない。
「私、翔気の母です」
「あー」
つい声に出てしまったが、翔がちらっとこっちを見ただけでおばさんはあまり気にしていないようだったから気にしない。
わかった。翔を連れ戻しにきたわけね。とりあえず、そこだけ分かったわ。