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第89話 死神と花火(季節はずれ)
 だんだんと冷える時期になってきたね。布団も分厚くなったし、部屋内で移動するスリッパなんかもモコモコしたタイプに変わった(死神選択)。

 うーむ。朝と晩に水を触りたくないと思うようになったりするよ。

 学校から帰ってきたオレはすぐに晩飯の支度に取り掛かる。でもって死神はというと、なにやらゴソゴソと居間の押し入れの中を漁っている。なにやってんだろ?

「頭が高ぁ〜い♪頭が高ぁ〜い♪控えよろ〜! ・・・って、黄門様の両隣に居る護衛の方が頭が高いっつぅの〜!アハハハハ」

 長年続く時代劇の触れてはいけない部分を歌うんじゃねぇ。

「あーーーっ!」

 嫌な予感のする叫び声だよね。

ドタドタドタドタ

「《平成のエリマキトカゲ》くーーーん!」

 ぶちのめすぞ。

「・・・なんだ」


 アホ神はバタバタとオレの周りを走り回りながら手に持ったモノを振り回している。

「花火見つけたー!」

 あぁ、そういえば夏に買ったまま忘れてたな。

「花火やろーぜー!」

 予想通りの発言ーー!

「花火やろーぜー!花火やろーぜー!」

 うっせぇ。

「そもそもだな、そんなに小さな余り花火じゃあやったとしてもすぐに終わ・・・」

「はぁぁぁぁなぁぁぁぁびぃぃぃぃボンバァァァァァァ!!」
「わかった。お前の花火がやりたい気持ちはすんげぇわかった」

 花火ボンバーとまで叫ばれては連れていくしかないだろう。

――――――――

―――――

 夕飯を食べる間も死神はしきりに居間に置いた花火が気になって仕方がないらしく、ただでさえ速いのにいつもの倍速で食事を終えた。

 さて、死神に手を引かれながらまず向かったのは、隣の須藤彩花さん宅。

 スキップでドアの前に立った死神はインターホンを押した。

ピンポーン

 中から声が聞こえる。

『バンプ誰か来たわよー!出てー!』

『ぼ、僕普通の人には見えないよ!?』

『馬鹿ねぇ、ウチに来る人で普通の人なんか居ないわよ♪』

『それもそうだね』

 さらっとすげぇ会話をしている。

ガチャ

「あっ、ロシュと準くんかぁ!やっぱり」

 何がやっぱりなんだ吸血鬼よ。
 バンプに続いて彩花さんも出てくる。

「あら、里原くんと死神ちゃんじゃない!どうしたの?」

 満面の笑みでバンプの頭に後ろから手を乗せる彩花さんに、死神が花火を見せた。

「花火しよー!」

「あら、そういえばうちにも花火あったわよねバンプ?」

「うん!」

 なんと、花火の量が増えたぞ。



 死神、バンプ、彩花さん、そしてオレは季節はずれもいいとこな花火を抱えてマンションを出た。

 うわ、さぶっ!

 もう夜の風は冷たくなりはじめている。日中は割りと暖かいのに。まぁこのギャップが今の時期の特徴なんだろうな。

 四人で近くの小さな公園へ向かう。最強猫と死神、メアちゃんが初対決をしたあの公園だ。
 先頭を歩く死神とバンプは二人とも夜の闇に溶け込んでしまいそうな黒い服装の為、金髪と銀髪が目印だ。

「ねぇバンプ、昨日アレ見た?」

「見た見た!《天パ》でしょ!」

 なんだそれ。

「いつ見ても格好良いよね!」

「僕は《笹の葉空挺団》に入るのが夢なんだぁ」

「私も《笹の葉空挺団》好きー!」

・・・何の話だ?テレビか?

 笹の葉。

 空挺団。

 天パ

・・・?

「やっぱり主人公の《天空パンダ》が一番よ!」

 略して《天パ》だーーー!!

「えー!僕は断然、隊長の《天然プラチナ》が一番だと思うなー!」

・・・。

 略して《天ぷら》・・・。

 そんな二人をニコニコと後ろから見る彩花さんの両手には花火の入った袋が下がっている。夏祭りで余ったものを無理矢理パクって来たらしい。しかしやはりその半分は幼稚園に寄付したらしい。

「やろうやろうと思って、結局やらなかったわよ〜」

「すごい余りっぷりですね」

「ロケット花火もあるわよ〜♪」

 出た。花火イタズラの基本。

「里原くんも昔はロケット花火の撃ち合いやらなかった?」

 いや、オレ達の場合は手筒花火・・・いやいや。

 よい子は真似しちゃいけません。

 悪い子はいっぺんやってみよう。面白ぇから。服に穴が開くから。

【※よい子も悪い子も駄目です】

「あら、じゃあ《変な子》はどうなのかしら?」

「彩花さん、誰に向かって話してるんですか?」

 そんな話をしているうちに公園に到着。夜の公園だなんて、昔を思い出すよ。

 死神とバンプはいそいそと花火を取り出し、オレと彩花さんに早く火を点けろと急かす。
 用意した蝋燭にオレがライターで火を点けると、真っ暗な公園の中心だけぼんやり明るくなった。
 袋から花火を選んでいた死神がこちらを振り向く。

「あれぇ?準くん、なんだか高そうなライターだねっ」

「気にすんな」

 死神とバンプは手持ち花火に火を点けた。

 季節はずれの花火は妙に明るく感じる。死神とバンプも時間が経つにつれて色が変わる鮮やかな光に見とれていた。

 のだが

「待てぇバンプーー!」

「やめてよロシュー!危ないよー!」

 花火を持ったまま追い掛けっこを始めやがった。二人とも耐熱加工の服を着ているから大丈夫だろう。

「うふふ、狙撃♪」

ピュー!ピュピュー!ピュー!

 あんた何ロケット花火連射してんだよ!

「うわぁぁぁぁぁ!」

 さすがバンプ、死神に追い掛けられながらも彩花さんの放つロケット花火を全弾回避している。

 オレは一本の手持ち花火を持ちながらベンチに座り、公園内を走り回る二人を笑いながら見ていた。

「あのライター、ちゃんと持ってたのね♪」

 彩花さんが隣に座る。

「昔《神楽かぐら》ちゃんから貰ったやつでしょ?」

「ええ。妙にオレの健康を気遣ってた癖に。意味不明な贈り物ですよ」

 確かアイツは今も海外だったな。

「里原くん、死神ちゃんが来てからピッタリ吸わなくなったのね」

「はは、まぁ・・・何故か」

「彩花お姉さんは心配してたのよ〜?」

 毎日禁煙ガムを大量に手渡されたから本当なんだろう。

「・・・ふふっ(神楽ちゃんが帰ってきたら、佐久間さん達も含めて修羅場ね♪)」

「んぁ、なんか言いました?」

「なーんにも♪さぁさぁ、狙撃よ狙撃ー!死神ちゃんも狙っちゃえー!」

ピュー!ピュピュー!ピュー!ピュー!ピュピュー!ピュー!ジャイコ!ピュー!ピュピュー!ピュピュー!

 うわぁ、すげぇ弾幕・・・。

「うわぁぁぁぁぁ!」

「みぎゃぁぁぁぁ!」



 バンプと死神が穴だらけになっちまうー!

「踊り狂うのよ二人とも♪絢爛舞踏よー!」

ピュピュー!ピュー!ピュピュー!ピュピュー!ピュー!

 誰かー!この人止めてー!

ピュー!ピュピュー!ピュピュー!ピュー・・・

「あら?弾切れね」

 やっと彩花さんの放つロケット花火の弾が切れた。あれだけ大量にあったロケット花火を全て他人に向けて撃ちまくる彩花さんは恐ろしいが、それを死に物狂いで回避した死神とバンプも十分凄い。

 そして二人の反撃が始まる。

「彩花さん危ないにゃぁぁぁぁ!」

「やったなーーー!」

 両手に手持ち花火を装備した二人は彩花さんを追い掛ける。

「あらあら♪ちょっとした冗談・・・って、熱っ!キャー熱い熱い!イヤァー!」

 今度は三人で追い掛けっこが始まった。自業自得だよ彩花さん。

・・・。

 ネズミ花火を三個ほど放ってみたり。

シャァァァァァッ♪

「むゃぁぁぁ!ネズミ花火が来たー!」

「準くん縦にして転がしたなぁぁぁ!」

「さ、里原くん!彩花お姉さんは結構必死なのよ♪」

 ホントに夜の公園か?ってくらいの盛り上がりを見せる三人。そんな三人を見ながらオレは線香花火を楽しんでいたり。

 うん。

 実はオレ、線香花火が結構好きだったり。

「一人だけでまったりすんなぁぁぁぁ!」

「くらえ準くん!」

「うふふ、空爆♪」

・・・。

 う、うわぁぁぁぁぁ!手持ち花火を投げるんじゃねぇぇぇぇ!



――――――――

―――――

 花火でイタズラを始めるとキリが無くなるという事をよく理解したオレ達は、残り少ない花火をおとなしく楽しんでいた。

 ま、線香花火しか残ってなかったけどね。

「バンプ、どっちが長く続くか勝負よ!」

「のぞむところだよ!」

 死神とヴァンパイアは自分の線香花火を穴があく程睨み付けている。

「バンプ合体♪」

 彩花さんが自分の線香花火をバンプの線香花火にくっつけた。赤く光る二つの火種がくっついて大きな火種になる。

「あー!駄目だよ彩花さん!火種が落ちやすくなっちゃうじゃん!」

「アハハハハ!これはもう私の勝ちが確定したようなもの・・・」

ぴと♪

 余裕をこいていた死神の線香花火と、隣に居たオレの線香花火が融合してしまった。

「あーっ!準くんの馬鹿ぁぁぁ!」

「はははっ、油断してっからだ」

「こうなったらもう四本合体ね♪」

 彩花さんとバンプがオレと死神の線香花火にくっつけた。
 四本分の火種は大きくてすぐに落ちてしまったが、なかなか面白かった。

「おぉ、面白い!」

「次は六本で試そう!」

 死神とバンプは蝋燭を囲み、夢中で花火に火を点けている。
 オレは後ろに立ってそれを見ていた。彩花さんが隣で伸びをする。

「んーっ。寒い寒いっ!こんな中での花火も〈おつ〉よねぇ」

 ぶるるっ、と身震いすると、何かを思い出したらしく手をポンと叩いた。

「そうそう、ラーメン作ったのよ!食べましょうよ♪」

・・・。

「いつ作ったんですか?」

「一時間前♪」

 間違いなく伸びちゃってるよね。

「ふふっ、私は《伸び伸び》とした性格だから♪」

 うん、別に上手くないですよ。

 花火が無くなってしまい、寂しそうな顔をしている死神とバンプの手を取った彩花さんは満面の笑みを二人に向けた。

「さ、早く帰って暖かい《闇ラーメン》を食べましょう♪」

・・・!!

「ひっ!」

「わーい!闇ラーメン!」

 恐怖で顔面が蒼白になるバンプに対して死神ははしゃいでいる。

・・・。

 オレも食べるの?

 《闇ラーメン》。

・・・。

・・・。

「に、逃げるぞバンプーーー!」

「激しく了解です!」

 バンプと共に公園から逃げ出すオレ。

 背後の暗闇には、悪魔女子大生のギラギラ輝く二つの眼がこちらを見据えていた。

「・・・あらあら、里原くんとバンプは運動をしてお腹を減らしたいみたいね♪」

「そーなの?」

「そうよ♪きっと何杯もお代わりがしたい食いしん坊さんなのよ♪」

「夜の追い掛けっこー!」

「ふふふっ♪・・・犠牲者は多い方が楽しいわ」

「何か言ったー?」

「なーんにも!さぁ、追い掛けるわよー!」

「はーい!」

 その次の日、オレとバンプと死神、そして彩花さんは丸一日寝込むことになる。(おい)


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