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第79話 死神と秋
 若干風が冷たくなってきたけど、日中はまだまだ暑い。一応秋に入ったのだろうか?微妙なところだ。

 秋。
 この季節は四季の中であっという間に過ぎ去ってしまう季節だと思う。
 春は新しい環境に浮き立つし、夏も長い猛暑が続いて大変。冬はなにより雪や新年という印象が強い。
 秋は結構印象が薄い季節だ。

 残暑を気にしながら、
〈秋か?秋に入ったのか?〉

 なんて思っているといつの間にか、
〈寒っ!冬が近いなぁ〉
 なーんて気付けば秋は過ぎている事がある。

 まぁ、大して気にする事でもないとオレは思うのだが何故こんな話をしてんのかっていうと・・・。

 秋を全力で満喫しようとする奴が、ウチには居るからである。

「サンマー!準くんサンマぁー!」

 キッチンテーブルで茸料理を口に運びながら更に注文を言いつける死神。

 オレはキッチンで大忙し。

「ま、待ってろ!今焼けたから!」

 換気扇を回しても追い付かないほど煙が出ている。

 オレは焼けたサンマを取り出すと、既に料理でいっぱいになっているテーブルの上に並べた。

「美味しー!」

 秋に入ったと判断した途端に奴は『食欲の秋だぜー!』と叫びだし、こうしてオレは食費泣かせの大量調理をさせられているわけだ。

「むぐむぐ。準くん!」

「なんだ」

「秋って他にすることあるの?」

 こいつの中には《食欲の秋》というイメージしかないらしい。

「うーんそうだなぁ。食欲の秋と、他には・・・」

「他には?」

「《お手伝いの秋》だな」

「マジで!?」

「これは常識ってやつだぜ」

 まぁ嘘だけど。

「秋キライ!秋キライ!」

 そんなに手伝いがイヤか貴様。

「地獄では何も言わないのか?食欲の秋以外で」

「うーぬ。何か夜叉さん達が言ってたような・・・」

 こいつの場合、食欲の秋しか耳に入らなかっただけだよね。

「あっ!《ドクロの秋》!」

 うん《読書の秋》ね。

 紅葉の木の下に転がる大量の頭蓋骨が目に浮かんでしまったよ。

「あとは〜、《閻魔の秋》!」

 絶対に言ったの本人だよね。

「《秋が俺様の為にあるのだフハハハハ!》だってさっ」

 アホ大将キター!

「・・・あれぇ?でもこの間は《冬音の秋》って聞いたよ?」

 絶対に言ったの本人だよね。

「《秋が私の為にあるのだワハハハハ!》だってさっ」

 アホ変人キター!

「つーか意味が違ぇよ。秋は誰かの物って意味じゃなくて、秋といえば何をするのかって感じじゃないか?」

「なるほどー」

 それから少しの間死神は腕を組んで考え込み、

「食欲の秋!!」

 再び料理をがっつき始めたのだった。

―――――

「ふいー、お腹いっぱい♪」

 冷蔵庫空っぽ♪

「準くん私ね、秋について考えてみたの」

 ほー。あの食事風景では考え事をしているとは思えなかったが。

「秋って、葉が紅く染まったりして赤いイメージがあるじゃない?」

・・・。

「おう」

「ならこの街を血で真っ赤に染め上げて・・・」

 ふざけんな。

「そんなに頑張って考えなくても、のんびりするのも秋の風情ってもんだぜ?」

「そうなのー?」

「うん。だからあっという間に過ぎ去ってしまうと感じるのかもな」

 死神は皿を片付けながら、オレは皿を洗いながら言う。

「じゃあのーんびりとゲームしようぜー!」

 やだよ。
 お前とゲームするとのんびりできねぇもん。

―――――

 テレビの前に座るオレと死神。

 画面に映っているゲームタイトルは
《浮気戦略!修羅場ババーン》
 である。

 一応恋愛ゲームである。

 多分恋愛ゲームである。

 前に死神が欲しがっていたから買ったソフトで、プレイヤーは主人公の男になって目指すのは何人の彼女とバレずに付き合えるのかという、かなり女性を敵にまわしそうなゲームなのだ・・・。

 それをオレと死神の二人で頑張って考えるのもどうかと思う。

 ちなみにセーブしてあるデータではなんと現在五人まで成功させている。
 ほとんど死神の悪知恵による成果なのだが。

 死神がデータをロードして続きから始める。

――――――――

彼女A:【もう、遅いぞっ!】

(待ち合わせのシーンだ)

男:【あぁ、ごめん。ちょっと大学の図書館でな・・・】

(大学の図書館で彼女Bと会っていたんだっけか)

彼女A:【仕方ないなぁ。今日の行き先覚えてる〜?水族館で〜・・・】

男:【あ、えーっと】

(ここで選択肢が表れた)

1、【イルカのショーを見るんだったよね】

2、【イルカのふれあい体験に行くんだったよね】

3、【あれ?】

(うーん、3番は確実に無いよな。確かこの彼女Aは以前《イルカのショーが見たい》と言っていた。なら答えは1番か?)

(違うよ準くん)

(へ?)

(この日彼女Aとの約束は水族館なんかじゃなくて《買い物》だよ。彼女Aはカマかけてるんだよっ)

(そ、そういえば)

(だから正解は3番だねっ!)

男:【あれ?そうだったっけ?】

彼女A:【うっそーん♪本当は買い物に行くんだよね】

(あ、危ない危ない)

(準くん、ちなみにこの日、水族館には彼女Cが友達と行っている筈だよ)

(!)

(もし予定変更で水族館にも行く事になったら間違いなく《修羅場モード》に突入してたよっ)

(危機一髪か)



(ショッピングモールでの買い物シーンだ)

彼女A:【ねぇ、私コレ欲しいなぁ〜】

男:【ん〜?】

彼女A:【《コシヒカリ》】

(米!?)

(準くん、彼女Aはフリーターでギリギリな生活なんだよ)

(買い物って普通に食材の買い物なのか!?)

(そうだよー。主人公は財布代わりにされてる傾向があるね)

(別れないのか?)

(うん。この子修羅場モードでは結構押しが強いから便利なの)

(・・・全く恋愛の考え方じゃねぇよな)

彼女A:【私お腹空いちゃった〜】

男:【何か食べようか。あっ】

(ここで選択肢が登場)

1、【近くにファーストフード店があるよ】

2、【近くにレストランがあるよ】

3、【近くに悪霊が居るよ】

(霊媒師!?)

(3番はありえないとして、1と2のどちらを選ぼうか)

(準くん準くん)

(ん?)

(調べではファーストフードでもレストランでも彼女Bの友人が働いているはずだよっ)

(あ、そうだったな)

(ややこしい事になるから避けようぜっ)

(じゃあ・・・3番しかねぇじゃん)

男:【近くに悪霊が居るよ】

彼女A:【じゃあお昼ご飯はそれで決まりね♪】

(食うのか!?)

(悪霊を食ってしまうのか!?)

(人間をやめるのかぁぁぁ!?)


彼女A:【いっただきまぁす!】

悪霊:【や、やめろ!やめてくれぇぇぇ!】

〈バリボリ、ゴリッ、ブシャァ!〉

悪霊:【ぃぎゃぁぁぁぁぁ―――】

(・・・う、うわぁ)

(・・・は、はわわわわわ)

彼女A:【ふぃー、お腹いっぱい♪】

(死神が画面を見ながらガクガク震えている)

(こ、これじゃあホラーゲームだよぉ・・・)

男:【味はイマイチか?】

彼女A:【うーん、そうね。呪詛収束率が足りないわ】

(何このカップル)

(あっ!大変だよ準くん!)

(二人が道を歩いていると前からなんと彼女Dがこちらへ歩いてきているではないか)

(どうする死神!?)

(アイテムボックスを使おうっ!)

(RPGか!)

(うわぁ、マジでアイテムボックスを開いた選択肢が出てきた)

【道具を選んで下さい】

1、携帯電話

(あぁ。電話を理由に隠れるのか?)

2、スタンガン

(コラ)

3、呪符

(陰陽師!?)

(よし、スタンガンだぜー!)

(何でも気絶させて解決しようとすんな!)

男:【悪いな、気絶してくれ】

彼女A:【え?】

〈バチバチバチィ〉

(うわぁ。裏路地に隠れてやるってのが妙にリアルだ・・・)

男:【ヤッホー、超偶然じゃなーい?】

彼女D:【あら、本当ね】

(彼女Aは裏路地に放置かよ!最低だろ主人公!)



彼女E:【あっ!○○く〜ん!】

男:【!】

(!)

(ありゃ!彼女Eまで現れたよ準くん!)

(まずいな)

(どーしよー!)

※【主人公は全力で思考を巡らした】

(よし、頑張れ主人公。いや、むしろ見つかっちまえお前)

男:【うーん・・・】

(頑張れー頑張れー!)

男:【・・・】

(頑張れー頑張れー!)

※【考えてもどうにもならない事もあるさ】

(オイ!)×2

彼女D:【ちょっと○○くん、そちらは誰かしら?】

彼女E:【ちょっと○○くん!?】

男:【あぁ、いや、その・・・】

※【《修羅場モード》突入】

(・・・説明しよう。このゲームの特徴でもある《修羅場モード》とは、文字通りいかに主人公がその口の上手さで修羅場をくぐり抜けるかという、とてもみっともないモードなのである)

(なのであるー!)

男:【えっと彼女D、こっちの子は・・・】

※【言い訳ルーレット・スタート!】

(・・・説明しよう。言い訳ルーレットとは、文字通りルーレットによって単語を並べて文章を完成させるものなのである)

(なのであるー!)

(ルーレットを止めるのははコントローラーを握っている死神だ)

タラタラタラタラタラ・・・

(ていっ)

ガシン

男:【その子は《いつも》・・・】

(ていっ)

ガシン

男:【《ご飯を作ってくれる》・・・】

(てぇーいっ)

ガシーーン!

(・・・)

男:【《お母さん》だ】

(嘘ってバレバレー!)

(あれー、ミスっちゃったーっ)

彼女D:【お母さん!?】

彼女E:【誰がお母さんよ!】

(ヤバイヤバイ!)

(うーん、これはちょっとマズイよねー)

男:【あわわ・・・】

※【言い訳ルーレット・スタート!】

(た、頼むぞ死神。起死回生だ)

(う、うんっ)

タラタラタラタラタラ・・・

(ていっ)

ガシン

男:【《君達!》】

(おっ、フォローするか?)

(ていっ)

ガシン

男:【《僕はねぇ》・・・】

(頼むぞ死神!)

(てーいっ)

ガシーーン!

(・・・)

男:【《甘党なんだよ!》】

彼女D:【知るかぁぁぁ!】
彼女E:【知るかぁぁぁ!】

(うわぁもう最悪)

男:【ギャァァァ痛い痛い!】

※【彼女D・彼女Eに振られた】

(えーん!)

(当たり前だ)

――――――――

―――――

 結局その後も普段運が良い筈の死神は言い訳ルーレットをことごとく外し、ついには全員に振られ、スタンガンでの傷害罪で主人公は逮捕され、GAME OVERになってしまった。

 バッドエンドなのか、ハッピーエンドなのか・・・。

 死神はコントローラーを振り回して悔しがっている。

「チキショー!やっぱ浮気は最低だねぇー!駄目だよ〜♪」

 テメー楽しんでたじゃねぇか。

・・・。

 あっ。

「そうだ死神、秋といえば《芸術の秋》ってのもあるぞ」

「忍術の秋!?」

 意外に格好いいけれども・・・。

「じゃあ絵描こうぜー!」

――――――

「ふんふふーん♪」

 死神は居間で絵を描いている。この方がおとなしくしてていいや。

「準くん」

「なんだ?」

「・・・」

「?」

「なんでもなーい!ほら見て見てっ、紅葉だよーん!」

 変な奴だなぁ。
 色赤ばっかりじゃん。

「秋も赤だけじゃないんだぜ、黄色とか、な?」

 オレがベランダの方を指差すと、死神はそちらへ駆けて行く。

「ほんとだー!」

 ベランダから見下ろす景色。
 遊歩道の木の色は、だんだんと変わり始めている。

 気付けばいつの間にか全部色が変わり、気付けばいつの間にか葉が落ちてしまうんだよな。

 秋ってやつは瞬速だねぇ。

「あぁ!大変だ準くん!!」

「ど、どうした?」

「まだ焼き栗と焼き芋食べてなぁい!!」

 まだ食うのかよ!!
季節の変わり目、風も冷たくなってまいりました。まったり秋が過ぎ行くのを感じるも良し、残さず満喫するも良し、忙しくてそれどころではないというのもまた一興♪四季に楽しみの要素が沢山ある日本は贅沢な国ですね(笑)ついついこんな事を書いてしまいましたっ(汗)


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