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第76話 開局!《死神ラジオ》
 文化祭の開始(一般開放)は午前九時からだ。

 生徒のみで体育館で行われる盛大なオープニングセレモニーも無事終了し、全校生徒は急いで自分達の出し物の最終準備をするべく散った。

 この準備中のワクワク感って結構良いかも。

 オレと死神は急いで〈放送室〉へ向かう。

 普通の人には見えない死神がどうやったら文化祭に参加できるのか皆で考えた末、三笠が出したアイデアが《死神ラジオ》だった。

 確かに声なら気合いでなんとかなるらしいので、これはかなり良い案である。丁度オレも美香も三笠もクラスでは大道具係で当日は暇だったし。

 で、一か八か文化祭実行委員会に掛け合ってみたところ、

『いいねーそれ』

 の一言でOKが出た(オイ)。

 てなわけで放送室の提供を許され、晴れて文化祭特別企画《死神ラジオ》開局である。

 渡瀬も誘ったのだが、あいつのクラスは《ヤクザ喫茶》という確実に流行らないであろう出し物であるらしく、手が放せないのだそうだ。

「いいなー由良ちゃん、《ヤクザ喫茶》いいなー」

「いいのか? 客来ないだろ」

「だって、《お帰りなさいやし、お嬢!》とか《お勤めご苦労さまです、組長!》とか言われるんだよ?」

・・・。

 後で覗いてみよう。

――――――――

 放送室では既に美香と三笠が準備に取り掛かっていた。
 ちゃんと我が校には防音ブースが備わっている。

「おや、やっと来ましたね」

「もうっ、遅いぞ二人とも〜!」

 二人は何やらポストみたいな箱の中から紙を取り出している。

・・・。

 あー。思い出した。ラジオをやるにあたって全校生徒に事前に呼び掛けて手紙を入れる箱を作ったんだった。
 ちなみにパソコンにはBBSも設置してあり、携帯からリアルタイムでメッセージ・感想をこちらへ送る事もできるというシステムだ(管理:三笠)。

 ラジオDJは主に死神と美香で、オレと三笠は送られてきた便りの管理や音響の係である。

「うわぁ〜、私ここで喋っていいの〜!?」

 死神が広めな防音ブース内を駆け回る。

「死神ちゃんがメインだよ〜♪」

「死神さんにはクラスの準備を手伝って頂きましたからね。僕達からささやかなお礼ですよ」

「やったぜー!」

 良かったな。

 ちなみにオレは放送室に誰も入ってこないように見張る役目もある。

「里原くん、そろそろマイクテストを」

「そうだな」

 オレはブース内の死神と美香に呼び掛けた後、一旦放送室の外へ出た。

ピンポンパンポーン

【ン〜マママママイクテスト、マイクテ〜スト! ベイベェ♪】

 普通にやれ。
 校舎中に流れてるぞ。

 中へ入る。

「どうでしたか?」

「・・・まぁ、大丈夫だろ」

 ブース内ではしゃぎまくる二人には不安を感じるがな。

「そろそろ九時になりますね」

 三笠に言われ、外からマイクで中の死神達に呼び掛ける。

『よーし死神、美香、もうすぐ九時だ。スタンバイしとけよー』

『はーい』
『はーい』

 オレも用意されたCDを確認して、準備OK。
 九時になったら校門が開放されて更に騒がしくなるぞ〜。


――――――――

―――午前九時

 時計を見たオレは音楽を流した。
 校舎中に大音量で音楽が流れる。
 それを景気づけに多くのクラスが盛り上がり始めた。

『よし二人共、頑張れよ』
『頑張ってください』

 ブースの中でガラス越しに二人が手を振る。

『あいあーい!』

『任せて〜!』

 さて。《死神ラジオ》のON AIRだ。

――――――――
――――(放送中)

美香:【グッドモーニング!】

死神:【文化祭特別企画!】

美・死:【《死神ラジオ》の始まりでーーす!!】

美:【さぁさぁラジオDJを務めますのは私《七崎美香》と、このラジオのメイン・・・】

死:【私、死神こと《ロシュケンプライメーダ・ヘルツェモナイーグルスペカタマラス七世》だよー!】

美:【さてこのラジオでは文化祭催し物の宣伝と、私達二人の雑談、お寄せ頂きましたお便り等を紹介していきます!】

死:【いきまーす!】

美:【なお、事前に皆様にお配りしたアドレスには、携帯からメッセージを送る事もできますので・・・】

死:【よろしくぅぅ!】

――――――――
――――――――

 うん、上々の滑り出しだ。

「里原くん、里原くん」

 パソコンを覗いている三笠がオレを呼ぶ。

「どうした」

「見てくださいコレ!早速反響がありますよ」

 パソコン画面にはBBSが表示されている。
 開始早々、コメントが届いているぞ。

―――――

〈おっ?死神ラジオ?〉

〈名前長ぇー!〉

―――――

 まぁ最初はこんなもんだろ。

――――――――
―――――(放送中)

美:【まずは催し物の紹介です!】

死:【演劇の部!】

美:【はぁい、演劇の部の紹介です。第二体育館では午前九時半より《3年8組によるコメディ劇》が始まります。急いで足をお運び下さい!】

死:【演示の部!】

美:【はぁい、演示の部の紹介です。中庭大庭園広場では《2年5組によるダブルダッチショー》が現在執り行われております!】

死:【二本の大縄跳びなんて凄いよね〜!】

美:【そうね、学園祭演示の部では大賞候補のクラスなんだよ!】

死:【すごーい!みんな頑張れー! それでは展示の部!】

美:【はぁい、展示の部の紹介です。第二体育館の隣に位置しております教会では《教職員による悪魔教会》が営業中です!なお、展示の部は屋台、喫茶等も含まれておりまーす】

死:【悪魔教会の見所は高坂早苗先生の特殊メイクだね!】

美:【へぇ、そんなに怖いの?】

死:【むしろ怖がらないと殺されちゃいます!】

美:【嫌〜! おばけ屋敷ってさりげなく死体隠しやすそうだよねっ】

(コラ)

死:【美香ちゃん、ウチの音響係が凄い睨んでるよっ!】

美:【キャー!こわっ! そ、それではここで一曲挟みまーす】

死:【《メタルヘッド》のデビューアルバム《ズラ・リジェクト》より二曲続けてどうぞ!】

(!?)

――――――――
――――――――

 なんとなく三笠から手渡されたCDはなんと、校長と教頭のデビューアルバムだった。

 つーかもうアルバム出すの!?

 休憩で死神と美香がブースから出てくる。

「楽しーーい!」

「雑談楽しみだね死神ちゃん!」

 ジュース片手に二人は上機嫌だ。
 三笠が印刷した紙を美香と死神に手渡す。

「はい美香さん、死神さん、寄せられたお便りです」

「おっけーい」
「りょうかーい!」



 なかなか好調な流れだ。死神も美香も楽しんでいるみたいだし、三笠も音響のオレの隣で満足そうにしていたし。

 しばらく休んだ後、二人はスキップでブース内に入る。
 そろそろ音楽があけるな。

『二人共、音楽あけるぞ』

――――――――
―――(放送中)

死:【さぁ聞いて頂きました曲はいかがでしたでしょーか!?】

美:【校長と教頭が無謀にも音楽業界に殴り込んだ結果、どうなるかが楽しみねっ】

死:【百枚売れたら良い方じゃなーい?】

美:【それもそうね。アハハハハハ】

死:【アハハハハハ】

(貴様が原因だろうが死神)

死:【さて、ここからは《お便り紹介・雑談コーナー》の時間でーす!】

美:【いぇーい!】

(おっと、ここでBGMだ。危ない危ない)

美:【死神ちゃん、まずはコレお願いしまーす】

死:【はいはーい。始めのお便りは、1年3組[尾野]君から頂きましたー♪】

美:【ありがとーう!】

(ありがとーう)

死:【《皆さんこんにちは。文化祭でラジオ放送をするという事で思い切って書いちゃいました》】

美:【生意気!】

(え!?)

死:【《実は僕、悩みがあるのです》。 へー、お便りっぽいねぇ! ふむふむ・・・】

美:【なにかな〜?】

死:【《逆上がりができません》】


美:【ガキか!】

死:【餓鬼か!】

(ガキか!)

死:【《どうしてもできないのです。どうしたら逆上がりができるようになりますか?》 という、しょーもないお便りなんですけど。どうかな美香ちゃん?】

美:【諦めなさい】

(コラ)

美:【そもそも私は逆上がりなんてやった事もないわよ?】

(小学生とか絶対にやらされるだろ)

死:【そうなの美香ちゃん?】

美:【えぇ。私の本能が鉄棒を拒否したの。 だから私の入学する学校の運動場には鉄棒が存在しないわ】

死:【ま、まさか・・・】

美:【引き抜いちゃった♪】

(コイツすげー!)

美:【だから尾野君、あなた1年よね? 心配ないわ、運動場を御覧なさい。
そもそもこの学校には『鉄棒が無いのだから』】

(悩み解決ーー!!)

死:【凄いね美香ちゃん!】

美:【さりげなく鉄棒って無くても気付かないわよね♪】

死:【盲点、盲点〜♪ はい、では次のお便りでーす!】

美:【ありがとーう!】

(ありがとーう)

死:【落語研究会の2年生[大竹]さんからお便り頂きましたー♪】

美:【英語にすると《ビッグバンブー》ね】

(どうでもいい)

死:【《こんにちはDJの皆さん》。 はい、こんにちわー!】

美:【こんにちわー!】

死:【《私は落語研究会に所属していて、皆さんのように声で人を楽しませています。なんだか応援したくなってしまったのでメッセージ送りました!》】

美:【応援メッセージね!ありがとー!】

死:【落語研究会かぁ〜。楽しそう!】

美:【私達もやってみる?】

死:【やるー!】

美:【じゃあお題出すねっ♪ 《天狗の鼻》!】

死:【うーん、《天狗の鼻》とかけましてぇ〜・・・】

美:【天狗の鼻とかけましてぇ〜?】

死:【《高台の桜》と、とく!】

美:【ほう、そのこころは!?】

死:【どちらも《はな》が高い!】

美:【おぉ〜っ、うまい!】

(うわぁ、普通に巧い・・・)

美:【凄いじゃないの死神ちゃーん!】

死:【えへへー。 さて次のお便りでーす!】

――――――――
――――――――


 死神達の雑談はまだまだ続くが、オレの仕事は当分なさそうだな。
 パソコンを操作したり音質を調整したりしている三笠の肩を叩く。

「三笠、みんなの昼飯買ってくるから細かい仕事は任せて良いか?」

「はい。今の時間なら僕だけでも十分手が回りますから、お願いします」

 こうしてオレは放送室を出て、屋台へ向かいながら出し物を軽く見る事にした。

 当たり前なのだが、校舎中に死神と美香の声が響き渡っている。
 廊下を歩きながら耳を澄ましていると、なんだか不思議な感覚だ。

『興味深い話よね〜!』

『でね、でね、準くんたら《外は危ないから一人で買い物は駄目だー!》なーんて言うの!』

 何で話題がオレなんだよ!!

『やーん、里原くんたら過保護〜っ!』

・・・。

 視線が、周りからの視線が凄い。今までこんなに廊下が歩きづらいと感じたことは無ぇぞ。

『次はどんな里原くんの暴露話なの〜?』

『えっとねぇ、この間ゴキブリが三匹同時に出現した時の・・・』

 それ以上言ったらぶっ殺すぞテメェェェ!!

『・・・』

『・・・どうしたの死神ちゃん?』

『た、多分ね、今どっかで準くんが《ぶっ殺すぞてめぇ》って思ってるから・・・』

『ありゃー、じゃあここまでにしときましょ♪』

 おそるべし死神ラジオ・・・。

 しっかしよぉ、まさかラジオで喋っているアホ娘が本物の死神だとは誰も思うまい。

 さてさて、我が校の文化祭は二日間かけて行われるという事は説明したと思う。演劇も演示も、本番が二回あるというなかなかのハードスケジュールってわけだ。

 一日目、つまり今日はデモンストレーションみたいなノリで生徒中心に楽しむ感じ。

 そして問題は休日に行われる二日目。

 一応一日目も一般開放はされているが、二日目は今日の比ではない。
 廊下も易々と歩けないだろうし、混雑するのは確実である。

 更に明日のフィナーレはもう一つの学園祭名物、生徒・一般参加イベントである格闘大会
《ぶっ飛ばせ!クレイジーナックル》
 という、もうこの学校にピッタリすぎなネーミングの行事が行われる。

 だが問題はそこではない。

 混雑も、アホな大会も問題ではない。

・・・。

 明日、冬音さんと彩花さんが来る事に比べたら。


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