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死神といっしょ!
作:是音



第72話 死神と新学期


 夏休みも終わり、今日は始業式。
 始業式の日ってさ、まだ本格的に授業開始じゃなくて三時間程度で帰れるって場合があるから嬉しいよね。休みボケした気持ちを元に戻すリハビリ?みたいな感覚だ。

 ま、年中変わらないボケがオレの周りには数人居るんだけどね。

「新学期だよ美香ちゃーーーん!」

「新学期だよ死神ちゃーーーん!」

 こいつらすげぇ元気良いな。

 現在地教室。
 この教室に入るのも別に久々というわけではない。
 何故ならオレは文化祭の準備なんかで夏休み中も度々学校へ呼び出されていたから。ちなみにサボり癖の強いオレも、毎年ちゃんと通っていた。

 美香の脅迫で。

 一年の頃、いっぺんマジでコイツに対抗してやろうと思ってファンタズマを動かした事もあったのだが・・・。

 見事撃沈。

 美香ともう一人の友人とやらにやられてしまったらしい。
 だけどその日オレはのんびりと家でサボることには成功したよ。一日だけの勝利だ。

 あぁ、ちなみに今年ウチのクラスが文化祭で出す出し物は《演劇》らしい。

(三笠は《毛乳頭刺激活性化実験》を提案したが却下された。当たり前だ)

(美香は《クラス全員スキンヘッドで光反射実験》を提案したが却下された。当たり前だ)

(死神は《全員生け贄》を提案してくれとオレに頼んだが却下した。死人出るから却下した)

 今年の文化祭はなかなか忙しくなりそうだよ。オレはクラスの出し物の他にも色々と駆り出されるからである。

 今から気が重い。

 さて、そんな事を説明しているうちに皆体育館へ移動しはじめたのでオレも移動する。
 校舎裏へ。

 死神は美香と三笠が面倒をみてくれるだろう。何かあったら高坂先生も居るしな。

 校舎裏へ行くとやっぱり既に七、八人集まっていた。

「よー里原」

「おぅ。何話してたんだ?」

「ん?あぁ、《ピーターパン》について」

 そりゃ夢があって良いね高校生。
 こいつらの談話を聞きながら寝るのはもはや習慣になっている。

「オレこの間ピーターパン見たぜ!」

「スゲー!」
「やべー!」
「どこで!?」

「《駅前のパン屋》で」


 あ、こいつピーターパン知らねぇわ。

「・・・」

「・・・」

「ヤッベー食いてー!」

「マジ食いてー!」

 確かに夢物語よりパンの方がインパクト強ぇけどさ。

「あれ?でもピーターパンの敵って誰だったっけ?」

「うーん」
「うーん」

 たしか海賊船の船長だったよな。

「あっ!」
「思い出した!」

「《右フック船長》!」
「《左フック船長》!」

 どっちでも良いだろ!

「右フックだ!」
「いいや左フックだ!」

「おいおい、喧嘩するなって」

 周りの連中が止めに入る。

「間をとって《頭突き船長》でよくね?」

 よくねぇよ!
 間とってねぇよ!
 つーか日本人でそう呼ばれてる漁師とか居そうだよ!

「ハッ。お前さぁ、頭突きって・・・」

「うん・・・センス良すぎ」

 センス良いの!?



 そして相変わらずジッポライターを開け閉めしている奴が何かを思い出した顔をした。

「そういえばピーターパンで思い出したんだけどよー。高坂先生チョー綺麗じゃね?」

 オレはどう頑張ってもピーターパンと高坂先生の接点を見つけることはできないね。

「ピーターパンといえば」
「高坂先生だよな」

 もうこいつらぶっ飛ばしたくなってきた。
 しかも全員が頷いている。これじゃあオレが異常みたいじゃねぇか!

・・・。

・・・。

 あっ。
 《いつまでも子供》みたいな性格って事か。なるほどなるほど、気付くのが遅かった。

「あぁ、あんな《ピーターパンなハイヒール》見せ付けられたらたまらんぜ」

・・・。

『てめぇら《ピーターパンなハイヒール》をいっぺんオレに見せてみろコラァァァァ!!』

「やべー!里原がキレた!」
「逃げろー!」

――――――――

―――――

 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・。

 し、新学期早々何をやってんだオレは。

 ちなみにこの息切れは連中を追い掛けたからではない。

 逃げたからである。

「なぁ〜里原ぁ〜、新学期早々何をやってんだかねぇお前は〜♪」

 現在廊下。

 高坂早苗先生に後ろ襟を引っ張られ、引きずられて移動中です。
 しかも捕まったのオレだけ。アイツら逃げ足早すぎ。

「里原ぁ、お前は校長先生のありがたーい(と思ったことは一度もねぇけど)お話の最中に元気いっぱい鬼ごっこってか?」

「ち、違いますよ」

「違うのか?」

「はい。先生の《ピーターパンなハイヒール》を一生懸命探していたんですよ」

「嘘つけ。ピアス引きちぎるぞ」

「・・・っ!! ごめんなさい」

「・・・まぁ、無くしたけどさ」

 え、ハイヒール実在!?

「私は《派手ヒール》と呼んでいる」

 ダサッ。ちょっと見てーよ。

 そんで、やはり連れていかれたのは保健室。
 しかも体育館へ行ったはずの死神が何故かソファでテレビを見ていた。

「あっ!準くんも捕まったの!?」

 また何かやらかしたらしい。
 多分校長だ。
 多分毛髪関連だ。

「この死神、まぁた校長先生のカツラにイタズラしやがった」

 言いながら高坂先生が死神の頭をポンと叩く。

「ぬ〜っ、チョット色を付けたり固めたりしただけだもん!」

「アハハハハ、チョットか。だが校長先生は今後最低でも一ヵ月は《ヘヴィメタル校長》と呼ばれるだろうね」

 校長マジでゴメーン!!

「それから一緒に立っていた教頭のズラを剥がして頭に《ギター担当》と書かないように」

 教頭マジでゴメーン!!

「はぁい。でもドラムとベース誰にしようか考えてたら早苗ちゃんに捕まっちゃったの」

 危なかったね。

「うむ。迷いもなく三笠の所へ飛んでいったところを確保したってわけ」

 危なかったね三笠。


 死神が不服そうに口を尖らせる。

「むー。あとチョットでヘヴィロックバンド《メタルヘッド》結成だったのに」

 名前は格好良いのに由来がわかったら涙が出そうになる。

 その後、やっぱりオレと死神は先生にこっぴどく叱られたのだった。

「ふぅ、じゃあ里原と死神には私がお土産をあげよう」

 あぁそうだった。夏休み中は旅行に行ってたんだもんなこの人。
 死神が凄まじいハングリー精神をむき出しにして両手を挙げた。

「欲しー欲しー!」

「よしよし。ほらっ」

ズゥン!

・・・。

 先生は巨大なサンドバッグをベッドの上に乗せた。

「・・・なんですかコレ?」

「お土産だ」

「サンドバッグが?」

「ちげーよ馬鹿」

 先生はオレにデコピンしながら袋を開けた。

・・・。

・・・。

 うわぁ・・・。

「旅行先、京都で見かけた土産屋全ての木刀を買い占めてきた」

 うん、もうごっそり木刀の束だもんね。
 修学旅行でも外人以外あんまり買われない木刀をあえて買い占めてきたか。

 死神は大喜びだ。

「わはー!サムライブレードだー!」

 典型的な外人用語だね。
 すっかりサムライ気分な死神はサンドバッグっぽい袋の中から木刀を一本取り出して振り回していた。
 こいつに木刀なんて持たせたら危ねぇよ。

「てか先生、こんなに沢山木刀貰っても・・・」

「テメー里原、わざわざ私が買ってきてやった土産が受け取れねぇってか?」

 うっわ怖っ。
 目ぇ怖っ。
 オーラやばっ。
 ネイルアート派手っ。
 つーかすんな。なんて言えない。

「早苗ちゃんありがとー!」

「おーよしよし死神、お前は良い子だな〜♪」

・・・この巨大サンドバッグを持ち帰れってか?
 ベッドからはみ出してるぞ?

「じ、じゃあ持ち帰りますんで、死神と一緒に帰りまで預かってて下さい」

「うむっ」

キーンコーンカーンコーン

 ここで丁度終了の鐘が鳴った。

「アハハハハ!《金困寒婚》だってさ!」

 縁起でもねぇ事言うんじゃねぇよ。

「早苗ちゃん、今日は何見る〜?」

「そうだねぇ、木刀関連で時代劇でも見ようか?」

「やったぜー!」

 駄目だ高坂先生、間違いなくコイツは影響を受けるから。
 そんな事お構いなしの先生はDVDを取り出した。

「よし、やっぱり《ぶった切り居候先主人》だな」

 オレは忍者のように保健室から逃げ出した。

――――――――

―――――

 教室に戻ると美香と三笠が居た。

「あっ!マグサイサイ!」

 誰!?

「聞いてよマグサイサイ!」

 だから誰!?

「ふふっ、里原くん。《マグサイサイ》とはフィリピンに実在した政治家ですよ。約四年間大統領を務めた事もあります」

 スキンヘッドに手の形をした日焼けを光らせながら三笠が語ってくれたが、正直どうでも良い。

「で、なんだよ?」

「聞いてよマキシモウィッチ!」

 名前変わったよ。長ぇし。

「ふふっ、里原くん。《マキシモウィッチ》はロシアの植物学者です。日本植物も多数採集、命名したとされ・・・」

スパァァァァァン!!

 すまん三笠。手が勝手に動いた。

「あのね、死神ちゃんがまた高坂先生にさらわれたの!」

「あぁ、アイツは保健室に居るよ」

「違うのよ!」

 ?

「《校長と教頭が組んでCDデビュー》するらしいのよー!」

 激しく予想外だったぁぁぁぁぁぁ!!!!

「ま、マジなのか三笠?」

 隣のスキンヘッドは頷いた。

「マジですよ。なんでも二人は天の声を聞いたらしいです。『《メタルヘッド》でデビューすれば金も髪もどっさりよ♪』と」

 間違いなくアホ神の囁きだよね。

「それを聞いて僕も参加しようかななんて思・・・」

ピシャァァァァァン!!

 美香がビンタを極めてしまいそうだ!

「ほら馬鹿な事言ってないで大掃除行くわよ三笠くん! オロスコも早く!」

 オロスコ!?

「ふふっ、里原くん。《オロスコ》はメキシコの画家です。土俗的な内容を近代的表現によって・・・」

 ピシャァァァァァン!!

――――――――

―――――

「さ、里原くん大丈夫ですかー?」

「頑張れ準くん!」

 帰り道。木刀が大量に入ったサンドバッグを背負って歩くオレ。
 一緒に歩く渡瀬と死神の手には一本ずつ木刀が握られており、二人で振って遊んでいる。

「刀だぜ由良ちゃーん!」

『刀。切れの良さでは最高の部類に属する武器。しかし悲しいかな、切れの良い人間の頭はついに刀より強い武器を作り出してしまった。私は思う。本当の悲劇は人間の頭の切れ味が中途半端だった事なのかもしれないと。だって作り出した武器の使い方、目的さえ明確にできないのだから。中途半端は一番いけないのです・・・』

 わけがわかんねぇよ渡瀬。
 長ぇよ渡瀬。

「すぴー」

 ほら見ろ死神が寝ちまったじゃねぇか。

「すぴぃー」

 荷物の上で。

「すーすー」

 オレの背負う荷物の更に上で。

「渡瀬」

「はい?」

「責任とって手伝えよ」

「はぁい」

 渡瀬にちょっと手伝ってもらいながら、オレはなんとか帰宅した。渡瀬にはお礼に木刀を一本あげたり。

「しっかしこれだけの木刀、一体どうしたもんかねぇ」

 居間に放置したサンドバッグと、その上で爆睡する死神を見ながらオレはため息を吐いていた。

・・・考えるのもめんどくさい。

「すーすー・・・むゃ!出たな《48刀流剣士》め!・・・すぴー」

 お前は毎回夢の中でどんな強敵と戦闘訓練してんだよ。

「ムニャ・・・さすが準くん・・・ムニャ」

 オレ!?

 オレなの48刀流!?


なんとこの度、小説紹介サイト《小説家になろう プラスアルファ》から恐縮ながらインタビューをお受けしました。後から伺ってみたところ、サイトでは作家様投票なども行われているようです。 以上、報告でした♪











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