ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第69話 準とナイトメア・2 後編

 オレの見る限り、そいつはでっけぇトカゲだった。
 いや、そのトカゲは見上げるほどでかくて、更に翼がくっついてて、身体が赤くて、呼吸するたびに口から炎が漏れて・・・って、それはもうトカゲとは言わねぇじゃん!

 炎魔獣サラマンダーだとよ。こいつの所為で大騒ぎってわけか。

「準くん危ないです!」

 ん?

 うおぉぉぉぉ!?

 目の前には迫り来る火柱。オレは横へ飛び退いた。

「マジで炎吐きやがったぁぁぁぁ!」

「炎魔獣なんだから当然ですっ!」

〈ハハハハハ!さすがは《元素族》の魔獣!ハンパなく強いな。・・・よし、倒すぞ里原!〉

 無茶言うな!

〈お前体力に自信は?〉

「ま、まぁあります」

〈よし、仕方ないから魔力の代わりに体力を貰うぞ!〉

「は?」

〈魔剣が能力解放するには代償が必要なんだよ。だから閻魔にしかオレは扱えねぇ。吸収する魔力が膨大だから〉

 そんな吸収力でオレの体力を持っていくつもりですかい?
 魔剣は有無をいわさずオレに剣の柄を握らせた。

・・・。

 あの、すんげぇ勢いで体力が減っていくんですけど・・・。

〈ゆっくりとチャージしてやっから。なぁに、魔獣程度ならオレの一撃で沈められるさ。だが問題は・・・〉

 問題はチャージしている間の無防備なこの状況である。

「準くん、私が引き受けます」

 オレの前にダークピエロが立った。

〈悪ぃなメア、頼む〉

 ま、まさかのサラマンダーVSナイトメアだ。

「動きを止めます!」

 放たれる炎を躱しながらナイトメアは自分の周囲に五つの黒いブラックマター・ボールを浮かべた。

「ブラックマター・ボール連携・・・《五重奏{クインテット}》!!」

 ナイトメアが炎魔獣を指差すと同時に五つの黒い球が飛んでいく。

「《1{ウーノ}》!
 《2{ドゥーエ}》!
 《3{トレ}》!
 《4{クアットロ}》・・・」

 次々に球体が魔獣を囲んでいく。
 そして

「《5{ティンクェ}》!!」

 五つで魔獣を囲んだ瞬間、黒い結界が魔獣を包み、閉じ込めてしまった。

 スゲェぞメアちゃん!



 つーか解説しているオレは凄く呼吸が荒くなってきた。長距離を一時間走り続けた時くらいに疲労度が激しい。
 おそるべし魔剣ドミニオン!

「今です準くん、ドミニオンさん!」

 ナイトメアの張った結界の中ではサラマンダーが暴れ回っている。

〈まぁこんなもんだな。よし里原!オレをアイツに向かってぶん投げろ!〉

 む、無茶言うな・・・。この疲労度で・・・。

〈メアの結界がもたねぇ!〉

 こ、この・・・。

 何故かオレは今スゲェ目の前の炎魔獣に腹が立った。まったりな買い物を邪魔されたからだ。

「だぁらぁぁぁぁぁ!!」

 フルパワーで魔剣をぶん投げる。

〈ナイス里原!いくぞコラァァァァ!〉

 魔剣は一瞬スパークし、黒い光を放った。
 その中で黒いレザーのコートを来た背の高い人物のシルエットが浮かんだ。なにやら鎖みたいなのがジャラジャラ垂れ下がっている。エクスカリバーがやっていたように、ドミニオンも人型バージョンというやつか?

 よく見えねぇ。


〈里原の体力の質なら十分な威力が期待できるな・・・〉

 オレもナイトメアもシルエットだけになったドミニオンを見上げている。
 そいつは胸の前に黒いエネルギーをため出した。

 おいおい、周囲の空間が歪んでるよ。

〈魔剣ナメんなよ!くらえぇぇぇぇ・・・〉

 エネルギー球が放たれる。

〈最終審判《ドゥームズ・デイ(弱めに調節♪)》!!〉

バガァァァァァァァン!

 黒いエネルギーは炎魔獣に直撃し、ナイトメアの結界を粉砕して中の怪物を廊下の端まで吹き飛ばした。

 魔剣すげぇ・・・。

〈フッ、これがオレのエクスカリバーへの愛の力・・・届けこの想い・・・〉

「死ねです。帰れです」

〈ぅおいテメー!愛バカにすんなよー!〉

 いつの間にか剣バージョンに戻ったドミニオンとナイトメアがまた言い争いを始めた。

 が

ガラガラ・・・

 廊下の瓦礫に埋もれたサラマンダーが起き上がったのだ。

「えー!まだ動いてるですー!」

〈おーっ、弱調節とはいえオレの《ドゥームズ・デイ》くらって起き上がるとはさすがだなー!〉

 のんきな事言ってる場合か!
 相当なダメージを受けてフラフラになった魔獣はどうやらブチギレたらしく、口の中から真っ赤なエネルギーが溢れだしている。

〈おわーっ、フォトン(光子)系の攻撃かよ!〉

「ヤバいです!魔獣の魔力でそんなもの放ったら大規模な被害がでますー!」

「その前にオレらが死ぬだろー!」

 あたふたする二人と一本。

 そんなオレ達にはお構いなしとばかりに炎魔獣が口を開きかけた

 まさにその時だった。

『パチン♪』

 どこからか指を鳴らす音が聞こえたかと思った瞬間・・・

 バァン!!

 サラマンダーが横に吹き飛ばされ、再び廊下の壁に叩きつけられた。
 相当な威力だったらしく、そのまま炎魔獣気絶。

『ホホホホホ!皆様、この度は我が社の不手際でご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした』

 廊下の奥から出て来たのはウサギ頭のシルエット。
 魔導社の社長であるジョーカーさんだった。

「あーっ!ウサギさんですー!」
『ホホホホホ!ナイトメア様、お久しぶりですね』

〈おー、ラビットか。助かったぜ〉
『ドミニオンもお元気そうで。里原様の体力を代償にするとは考えましたね』

 ジョーカーさんの後ろからは大量のパペットが走ってきてサラマンダーを運んでいってしまった。
 更にはエリート餓鬼の集団もやって来たので・・・

〈ぅおっ、やべぇ!じゃあオレはもう行くわ。じゃあな!〉

 魔剣ドミニオンは逃げるようにその場を去った。

 パペットやエリート餓鬼達が協力して廊下の修復作業に取り掛かる中、ジョーカーさんはオレとナイトメアと一緒にテーブルに座っていた。

『今回は我が社も魔獣の魔力を甘く見ていました』

「私サラマンダーなんて初めて見たですー!」

『それは良い機会でしたね、ホホホホホ♪ 実は私の従兄弟が趣味で魔獣管理の仕事もしておりまして、そこへ搬送中に逃げ出してしまいましてね。経由地点の地獄で運悪く外へ出てしまったらしいのです』

 それからジョーカーさんは色々な事情を説明してくれた。
 アジア三強も大した怪我ではなかったらしい。
 というか、オレ達と戦ったサラマンダーはあの時点で既にボロボロな状態だったそうだ。そりゃあアジア三強とエリート餓鬼軍団を相手にして無事で居られるわけがねぇ。

・・・なのに、それでもあの戦闘力かよ。

――――――――

―――――

―――



 その後オレとナイトメアはアジア三強の様子を見に医務室へ向かった。

「いやー、でもメアちゃんのおかげで助かったよー。ビックリだ」

「体力吸い取られたのにもう回復してる準くんの方がビックリですってば!」

 そんな会話をしながら医務室の扉を開いた。

・・・。

『テメーどこ行ってやがったのよ閻魔!』

『閻魔殿!これは笑い事ではありませんぞ!』

『アッハハハハ!閻魔バーカ』

ボカスカボカスカ!

『ぎゃぁぁぁぁ!悪かった!今回の件は俺様が悪かったー!』

 閻魔さんが三人にリンチされていた。

『あら?里原くんにメアじゃないの』

「こんにちはです白狐さん」

『おぉ、ラビット殿から聞きましたぞ。二人で魔獣の捕獲に協力してくれたようで』

「まぁ成り行きですよ夜叉さん」

『アッハハハハ!このバカ閻魔とは大違いだぜ!』

『痛てー!カブキ、超痛てーよ! 閻魔様が地獄を満喫♪みたいな!』

『一辺死んどけボケ支部長!』×3

ドカァン!ボカベキ!パコ♪ベキッベキベキ!

『ぃぎゃぁぁぁぁぁぁ!』

・・・。

 皆元気そうじゃん。

 オレとナイトメアは顔を合わせて頷き合い、医務室から退散した。
 中からは断末魔の悲鳴が響いてくるが、自業自得だぜ閻魔さん。

「ん〜っ!楽しかったですねー!」

 ナイトメアが隣で伸びをする。

「オレは死ぬかと思ったがな」

「お買物もいっぱいしたし、美味しいもの食べたし、大満足ですー!宅配輸送システムは便利ですー!」

「はははっ!よく食ったからなぁメアちゃん」

「えー!あれでも抑えた方ですよ!」

「マジかぁぁぁ!」

「マジですぅぅ!」

「うん、でもまぁ満足できたなら良かった良かった」

「はい!」

――――――――

―――――

 オレとナイトメアは人間界に戻り、マンションの前に立った。

「準くん、今日は有難うございました!楽しかったです〜」

「正直オレも楽しかったなぁ今日は」

 サラマンダーの事を思い出していると、ナイトメアがオレの服の裾を握った。

 ?

「えと・・・その・・・」

「?」

「ま、また誘っても良いですか?」

「おー。また誘ってくれよなっ」

「はいです!じゃあさよーならです準くん!」

 ナイトメアは元気よく手を振りながら帰っていった。

・・・良い子だなぁ。うん。

 おっと、もう死神が帰って来てるだろうから飯作らないと!
 何作ってやろうか?

 そうだ、今日ナイトメアと食べたミネストローネが超美味しかったから作ってやろっと。

 きっと喜ぶぜー。
今回、私が前々から書きたかった事を色々合わせてみたお話でしたっ(笑)


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。