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死神といっしょ!
作:是音



第50話 ウサギのウワサ


段々と暑くなってきた六月下旬。死神を保健室の高坂先生の所に預けたオレは、午後の授業は全校生徒が体育館に集まってわけのわからん講義を聞く授業だった為、校舎裏でサボっていた。
勿論同じような先客が既に七人くらい集まっていたが。

「お前煙草やめたんだっけ?」

一人が煙を吐きながら隣に座る男に顔を向けて言う。コイツが吸っているのはアメリカ産の煙草だ。

「とっくにやめた。つーかお前が吸ってるそれ、ブラックストーンだったか?甘ったるい匂いだな」

「バニラとチェリーの二種類だぜ!」

「そういやぁよぉ」

同じくタバコを吸っているヤツが話す。

「この前道歩いてたら他校のヤツと肩がぶつかったんだよ」

「おー、何か言ってやったか?」

「モチ言ってやったさ!
《おいコラてめぇ!どこ見て歩けばいいんですかぁ!》ってな!」

ダメダメじゃねぇか。

「ギャハハハハ!で、相手はなんて?」

「《こちらこそー!》」

「ギャーハハハハ!!」

頭パーじゃねぇの?

・・・とまぁ、いつものように途方も無い会話をしながらサボるのだが、今度はなにやら深刻そうな顔をした別のヤツがオレ達に話題を持ちかけてきた。

「なぁ里原、みんなも。聞いたかあの噂?」

・・・?

噂。なんとなく知ってるような・・・。
他の連中は首を傾げている。

「噂?知らねぇなぁ」


いつものようにボーッと会話を聞くオレ。
話題を持ちかけた男は続ける。

「《通りオカ魔》の噂だよ」

気でも狂ったか。

他の連中は興味津々だ。

「通りオカ魔!?」
「スゲー!」
「ヤベー!」

確かにスゲーしヤベーな、それは。

「ホントだって!オレも見たんだぜ!」

他の連中同様、オレも聞くことにした。

「昨日の夜中に街を歩いてたんだけどよぉ、おもちゃ屋のショーウィンドウの前で全身白いスーツを着た背の高いヤツが黙って立ってたんだよ」

「ふむふむ、確かに怪しいな。・・・ん?でも何でそれがオカマなんだ?」

「頭が《ウサギ》だったから」

ブハッ

「スゲー!」
「ヤベー!」

それはマジでスゲー!!

・・・まさかとは思うが死神業者の類じゃねぇだろうな?という悪寒が背筋を走った。

「身体細かったけど、絶対アレはオカマだって!」



「なんで?」

「オレが隠れて観察してたら、しばらくショーウィンドウの中を覗いてたんだけど、『参考になりましたホホホホホ』って言って消えちまったんだよ!」


オカマだーーー!

なんだその奇人っぷり爆発のウサギ野郎は!

「しかもウサギの被り物がメチャ可愛い」



うわー見てー!

しばらくその場はウサギ頭の話題で持ちきりだったが、授業終わりのチャイムが鳴ったので解散した。

上手いこと体育館から戻る生徒に混ざりながら保健室へ足を運ぶ。

しかしウサギ頭の奇人とは・・・。でも死神業者は常人には見えないし・・・

・・・。

あそこでサボっている連中の中に一体常人は何人いるだろうか?
そう考えてみればあながち死神業者説もありえるかもな。

いろいろ考えているうちに保健室に着いていた。

扉を開ける。

ガチャ

「高坂先生、死神の面倒ありがとうございまし・・・」

『ウサギ見に行きたいよ準くーん!!』

ぅお!

保健室へ入るなり飛び付いてきた死神はどうやら例の噂を聞いたらしい。
コイツに厄介な事を口にした張本人をオレは軽く睨んだ。

奥でベッドに寝そべる金髪保健教師[高坂 早苗]は、オレに向かって〈スマン口が滑った〉と口だけを動かし、片目をつむってジェスチャーした。

まぁ、いいか。

「ねー、いいでしょ!?そんな変人見てみたいもんっ!」

オレはお前達だけでも十分なんだが・・・。

「ねぇってばぁ」

「わかったわかった」

「やったぜー!」

溜め息を吐くオレと、はしゃぐ死神。
するとベッドに寝転んでいた高坂先生が身体を起こし

「仕方ない。里原、私も付き合うよ」

意外な事を言った。

「早苗ちゃんも行くの〜!?」

さ、早苗ちゃん!?冬音さんより年上だぞこの人!!

「ん〜、まぁ死神に噂を漏らした責任ってわけじゃないが。私も興味があるんでな」

ニヤニヤしながらそんなことを言う。

というわけで、今晩オレ達は商店街に集合することになった。


――――夜十時 商店街入口

保健室での一件でウサギ野郎の噂を確かめるべくこんな夜中に商店街にポツンと立つオレと死神。以前死神をおぶって来たことのあるクレイジー商店街の店は当然本日の営業を終え、ほとんどがシャッターを閉めている。

シャッターを閉めていないのは・・・玩具店だけだ。

商店街の入口で待つこと数分。

ヴォン!

『よう里原、死神!』

バイクに乗った高坂先生が現れた。ライダースーツに身を包んでいる。いつも白衣で気付かなかったが、結構華奢な体付きだ。

「こんばんは早苗ちゃん!」

高坂先生はバイクから降りるとヘルメットを外し、タバコを吸い始めた。

格好良すぎだろ。

「で、どうすんだ?待つのか?」

「そんなわけないじゃん準くん!」
「そうだぞ里原!」

どうやら二人はそんな気は無いらしい。

「よし、行くか死神」
「了解!ウサギぃー、どこだぁぁぁ!!」

死神と高坂先生は商店街の奥へ走って行ってしまった。

元気いっぱいだなぁ。

バイクと共に残ったオレは急に静かになった暗い商店街をスタスタと歩いて噂にあった玩具店の前に立ってみる。

ショーウィンドウの中は人形やアンティークの玩具が飾られていた。

「へぇ・・・こういう玩具を置いてるのか」

『えぇ。素敵な外観には不思議な力さえ感じますよ』

「アンティークは温かみがあるもんな」

『ホホホホホ、わかってらっしゃる。さすがさすが』


・・・。

ん?

・・・うん。

!!!!

「誰だテメーはコノヤロォォォォォ!!」

勢い良く横へ向くと、隣には夜だと余計目立つ真っ白なスーツが立っていた。
靴も、手袋も白。ネクタイだけが紫。

ウサギの被り物も白だった。

・・・。

噂どおり可愛いな。

『ホホホホホ、里原様。夜中に叫ばれては皆様が起きてしまいますよ』

!?

オレの名前を知ってる!?やっぱ死神業者かよ!

そしてオレの声を聞き付けた死神と高坂先生が戻ってきた。

「うひゃぁ〜!ホントにいたよウサギー!!」

「大丈夫か里原!?」

死神はウサギ野郎に近づくと、フサフサのウサギ頭を触った。

『ホホホホホ、死神様も情報通りの性格ですね』

「? 私を知ってるの〜?」

死神の返事と同時に間髪入れずに動いたのは高坂先生だった。

「お前が変質者かぁ!ちょっと可愛いじゃねぇか!」

高坂先生の信じられない程に速い廻し蹴りをウサギ野郎は高く跳躍して回避し、玩具店の屋根の上に立った。


『ビックリしましたよ!危ない危ない。私、別に怪しい者ではございませんのに』

ウソつけ。

ウサギ野郎はカードを一枚投げ落とした。死神がそれをキャッチした時、既にウサギ野郎の姿はなかった。

『ではまたお会いしましょう。パッパパヤパヤパヤパヤパヤ〜♪パッパパヤパッパ〜♪ホホホホホ!!!』

謎の歌だけを残して。



「準くん、アイツこんなの落としていったよ」



死神は手の中のカードをオレに見せる。トランプの様な図柄の裏には名刺のような文字が・・・というか、名刺だった。

――――――――

魔導会社マジック・コーポレーション

代表取締役
[ラビット・ジョーカー]

――――――――

ふーん、代表取締役。

・・・。

ん?

代表取締役?

つーことは

・・・。

!!!!

ア、アイツが魔導社の社長ーーー!?


「アハハハハ、ラビット・ジョーカーだってさ準くん!ホホホホホ!!」

笑い方移ってるぞ。

あの奇人ウサギが魔導社の社長だったとは、ビックリだ。
つーことは以前、迷惑な人形を送ってきたのはあの人か。
高坂先生は渋い顔でラビット・ジョーカーの立っていた屋根を見上げている。

「あの、高坂先生?確かに只者じゃなかったとは思いますが・・・」

「可愛い・・・」


は?

「なんだあの可愛すぎるウサギの頭はぁ!!反則だろうが!」

何に怒っているのかがさっぱりわからん。

「いやぁ〜、収穫収穫♪今夜は来て良かったなぁ。ウサギかぁ。ハハハ!よし、じゃあ私は帰るよ。じゃあな二人共、気を付けて帰れよ〜」

満足そうだな先生。あの時のニヤニヤはこれを予期していたんだろうか?
高坂先生はバイクにまたがり、ヘルメットを被った。

「バイバイ早苗ちゃ〜ん!」



走り去る先生を死神が手を振って見送った。
やれやれ、ウサギの噂はホントだったわけだな。

「準くん、私達も帰ろうよ。眠い〜っ」

「そうだな」

既に死神はふらふらだ。そろそろ十一時だしな。仕方ないか。

「死神・・・背中、乗ってくか?」

「ん〜、いいの?」

どうせ放っておくと道端で寝ちまうだろうからな。

「あのウサギさん面白かったね〜。魔導社の社長なら今度魔列車見せてもらおうかなぁ」


背中の死神はトランプの名刺をひらひらさせながら眠りにつこうとしている。

魔導会社。それに代表取締役、ラビット・ジョーカーか。

またヘンテコな連中が出てきたな。

・・・。

あのウサギ、個人的に結構好きかも。


こんにちは読者の皆様!作者の是音でございます。なんと気が付けばあっという間に50話です。皆様に愛読して頂き、涙が出そうな程たくさんの有り難い感想を頂いたお陰でございます!まだまだ書きたいお話がいっぱいですっ笑。どうぞこれからも宜しくお願い致します。是音ゼノンでした!











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