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第45話 死神と準と宴会
ここは地獄旅館の客間《針の間》。

「おつかれ冬音姉さぁん!」

「ハハハ!死神コノヤロー、結構痛かったぞ!」

死神と冬音さんがじゃれあっている。

『ったく、相変わらず強ぇなぁお前は』

『嫌味』

閻魔さんとヴァルキュリアさんは一緒に酒を飲み合っている。兜を外したヴァルキュリアさんはそれはもう色白な英国美人でしたよ。冷たい表情だけど・・・。

あっ、そうそう。あの後の話をしなきゃな。


 


最後の二人の戦いは閻魔さんが勝利して終わった。闘技場が壊れるんじゃないかってくらいの激戦で、オレは死神を抱えて何度も緊急回避をしなければいけなかった。
決め手となったのは意外にも魔剣である。結局最後の最後でやっと本気を出した魔剣ドミニオンが、いつもの性格からは考えられない程の恐ろしい本気さを発揮してヴァルキュリアさんの鎧を粉砕しちまった。
まぁそれも一瞬で、決着がついたらすぐにヘラヘラと聖剣の心配をしてたけどな。

んでもってオレ達はというと、最上階《百鬼夜行》で優勝インタビューを受けた。《百鬼夜行》は変な部屋で、壁に大量の彫刻が施されただけの用途不明な部屋だった。死神もよく知らないらしい。

もちろんマイクを持って現れたカキぴーをオレと死神が笑顔でボコ殴りにしたのは言うまでもない。

−−−−−−

〈イタタタタ!え?え?意味不明だぜシュガーレスーー!〉

〈そのシュガーレスってのが意味わかんねぇんだよ!〉

〈アハハハハ!カキぴーの派手野郎〜!〉

〈カ、カキぴー!?オレは《GAKI・P》だぁぁ!!〉

−−−−−−

死神はさんざん中継用カメラの前でカキぴーをイジリ倒し、オレはというと、はしゃぎながらオレの腕を引っ張る死神と一緒に苦笑いで放映されていたらしい。

そうだ、十階が最上階で八階でケリがついちゃったから九階を見てなかったのだが、九階は存在しなかった。というか、天守閣にあたる十階を支えるための支柱が九階だった。


で、今ここ《針の間》で行われているのは勿論《お疲れ様パーティー》である。

死神は冬音さんと早口言葉の発表会(まさか定期的?)をし合っている。

「死神!隣の竹垣に・・・?」

「竹立て掛けたのは《武 豊》騎手!!」

競馬ネタはよせ。

別の席ではデーモンとナイトメアがいる。

『メア、仕事は頑張ってるか?夜叉がサボり気味で困ると嘆いていたぞ』

「う、ごめんなさい・・・」

『ワハハハハ!構うもんか、気にするな。お前くらいの年頃は遊びたい盛りだからな。オレも昔はそうだったよ!』

あぐらをかいて座り、完全にお父さん化したデーモンさんと、その足の上に乗ったナイトメアが親子会話みたいなノリでいた。

「こらバンプ〜!私達の見せ場が無かったじゃない!!」

「ご、ごめんよ彩花さ〜ん」

「フフッ、まぁいいわ。楽しかったし」

そういえば彩花さん達とは会わなかったな。
だがこのペア、《エリート餓鬼最多撃破記録》を更新して、別のジャンルで表彰されたダークホースなのだ。

で、オレは今夜叉さん、白狐さん、カブキさんと座って話している。

『里原殿、お見事でしたな』

本物の鬼に誉められたら超照れるぞ。

『そうね、モニターで貴方達をマークしていたけど作戦といい、戦闘力といい、優勝するのは十分納得できたわ』

《漁夫の利作戦》やら《ゲルさん爆薬》とか卑怯作戦ばっかですけどね白狐さん。

『いやー、こりゃ《アジア三強》の名も明け渡すかなぁ?』

これ以上肩書きはいりませんよカブキさん。と、オレと同様に肩書きに反応した冬音さんがやってきた。

「なぁ準。優勝者に与えられる肩書きってなんだったんだ?」

・・・それを聞くのか。

「教えろコノヤロー!」

「痛だだだだだ!《う、うちょ・・・》」

「何?聞こえないぞ!?死神、なんだって?」

「アハハハハ!《閻魔公認・有頂天カップル》だよ冬音姉さん!!」

「ギャハハハハハ!なんだそりゃ!」

だから言いたくなかったんだよ。

しばらくツボに入った冬音さんにいじられつづけ、気が着けばアジア三強は彩花さんとヴァンパイアの所へ話しに行ってしまい、死神と冬音さんはナイトメアを交えて遊んでいる。
んで次にオレの所にやってきたのは頂上決戦を繰り広げた二人だ。

『里原、やったな!』

「閻魔さん、オレ達を見逃してくれたんでしょう?」

『んなわけあるか!』

『閻魔私との戦闘にムキになっただけ』

『う、うるせぇよヴァル!』

『事実』

『〜〜〜〜っ!』

そういえば閻魔さんってヴァルキュリアさんに惚れてんだっけ?

『優勝、お見事』

意外。誉められた。

「あ、ども」

『あの剣撃はやり過ぎね。ごめんなさい』



「いやいや!そんなの全然気にしてないです」

この人も熱くなっていたんだろうな。《謝罪。》じゃなくて《ごめんなさい》って言ってくれた所でこの人の内面が見えた気がする。つーかマジで鎧ボロボロじゃん。

『よっと』

ドスンと大きな音をたてて座ったのはデーモンさんだ。支部長三人に囲まれた。すげ−怖いよ?

『また会ったな。ロシュがこんなに元気でいるのはお前のおかげなんだろうな、感謝するぞ』

「いえ。デーモンさんは死神やメアちゃんとかなり親しいみたいですね」

『ワハハハハ!まぁ昔からあいつらの親代わりみたいなもんだったからな!』

あいつらを一人で面倒見てたのかよ!尊敬!いつかコツを教えてもらいたいもんだ。

その後何故かオレは三人から地獄の事情や最近の事件(地獄の中でも事件はあるらしい)等々を聞かされた。支部長同士の近況報告の意味もあったんだろうな。

『おっと、オレは仕事があるからそろそろアメリカ支部へ帰るよ』

デーモンさんは立ち上がり、手を振る。天井に角が付きそうなくらい大きな身体だ。

「えー!デーモンさん行っちゃうの!?」
「嫌ですー!」
「もう少し居ればいいじゃんか!」

死神とナイトメア、ヴァンパイアに尻尾を掴まれたデーモンさんは困った顔をする。

『うーん、すまんなぁロシュ、メア、バンプ。久しぶりに元気な姿が見られて嬉しかったぞ』

魔王は三人の頭を撫でた。
や、優しすぎる・・・!三人に好かれるのは当然だし、おそらくアメリカ支部での支持も凄いだろう。

『じゃあ、三人のこと宜しくな』

その言葉に真っ先に手を上げたのは変人女子大生だ。

「バンプの事は任せなさぁい!もちろん死神ちゃんやメアちゃんもよ!」

彩花さん、アンタが一番心配だ。
冬音さんも軽く手を上げ、オレも頷いた。
それを見たデーモンさんは笑顔?で部屋を出ていったのだった。
 

『我々も帰還』

ヴァルキュリアさんも立ち上がり、壁に立てかけられた二本の剣の一本を手に取った。

『エクスカリバー、帰還』

〈・・・了解。なんつって!アハハハハハハハ!!〉

聖剣と聖騎士の性格が正反対だ!

〈じゃあねドミニオン〜〉

〈あっ、まだ合コンの打ち合わせが・・・〉

今まで口説いてたのかよ魔剣!
ヴァルキュリアさんは吸血鬼の元へ行く。そういえばバンプは元ヨーロッパ支部所属だったな。

「あ、ヴァルさん。その・・・ごめんなさい、僕なかなか帰れなくて・・・」

『今の貴方とても活き活きしてる。あの女性のおかげ』

「え?」

それだけ言うとヴァルキュリアさんは背を向け、部屋の襖に向かった。

が、

ドテッ

『・・・転倒』

聖騎士コケたーーー!
恐らく酒に弱いんだろう。鎧をガシャガシャさせながらおぼつかない足取りだ。
そんなヴァルキュリアさんに聖剣がハッパをかける。

〈ねぇヴァル、本当はバンプがいなくて寂しいんじゃないの〜?〉

『・・・図星』

あっさり認めた!
掘り進めれば良い味を出しそうなヴァルキュリアさんは部屋を出て行った。たまにでも会いに来てくれればいいさ、ヴァルキュリアさんもデーモンさんも。

 
さて、人数も減ったことだし、そろそろお開きかな?

『そうだな、みんな今日はお疲れさん!!フハハハハ!!』

閻魔さんは酔いが回ってハイテンションだ。

『閻魔、これから旅館の修理作業の手伝いが待ってるわよ』

『えぇ!?』

閻魔さんは白狐さん他アジア三強に引っ張られながら連れて行かれる。

『嫌だー放せー!オレ様は閻魔だぞ!』

ボカ!!

うわー!閻魔が気絶したー!

『全く、エリート餓鬼達も一生懸命働いてるのよ!!』

『ささ、ドミニオン殿も行きますぞ』

〈しかたねぇな、アホな持ち主をもつ魔剣も大変だぜ〉

『アッハハハハ!合コン誘うの失敗したのによく言うぜ!』

〈それ言うなよカブキ〜〉

ほんとに仲が良いんだな地獄の連中は。死神達は爆笑しながら見送っていた。
閻魔さん達と入れ替わりにエリート餓鬼が一人入って来る。

『皆様、本日はまことにお疲れ様で御座いました。既にお帰り用のワープゲートをご用意致しております。どうぞこちらへ』

−−−−−−−
 

ワープゲートで送られたのは何故か学校の前だった。もう夜か。

ん、あれ?

「何でメアちゃんもワープしてきてんだ?」

「準くん、私、冬音さんの所に連れていかれるみたいなんです・・・」

何!?

「ハハハハハ!私この子気に入ったから持ち帰ることにしたのさ!夜叉にはちゃんと話つけといたから(脅し気味に)大丈夫だよ」

と冬音さん。嫌な予感がするのだろうか、ナイトメアは不安そうな表情だ。

「やっぱり私地獄に・・・」

「もう遅いぞメアよ!じゃあな準、死神!それに須藤とバンプも!」

そう言うと冬音さんは問答無用でナイトメアを脇に抱えて行ってしまった。死神と彩花さんはケラケラ笑いながら見送っていた。

それからマンションまで四人で喋りながら帰り、彩花さん達とは部屋の前で別れた。

−−−−−−−

部屋に戻ったオレ達は崩れるように居間に倒れ込む。

「ふぃ〜、疲れたねぇ準くん」

「全くだ」

でもまぁ・・・

「楽しかったよね!」

だな。体中が痛いけど。



「うーっ!一回寝そべると動きたくない〜!」

死神はうつ伏せの状態で足をパタパタさせている。

「そうか。じゃあ晩飯は・・・」

「食べるーー!」

食べるのかよ!
それじゃあ、支度するかね。

「死神〜、何食べたい?好きなもん作ってやるぞ〜」

「本当〜!?」

優勝できたのはお前のおかげだからな。

「じゃあね〜、・・・《マリモ》?」

「よし《マリモ》な。ちょっと待ってろ」

「・・・」

「・・・」

「え、あっ、ちょっと準くん冗談だよ?ちょっと!水槽行かないでよ〜!!」

 
結局その日の晩飯はカレーでした。

「もぐもぐ・・・うゅんひゅん!(準くん!)」

飲み込むのを待ってから返事をする。

「なんだ?」

「一万人突破だよ!」

遅っ!もう企画終わるぞ!

「だがまぁ、さすがにびっくりだな」

「一万回も私の美貌の虜に・・・」

どういう理屈と計算だ。

ともかく、これからも・・・げふぅ!

「あ、スプーンが・・・。アハハハハ!準くんの口のなかに入ったぁ!スナイパー死神だね!アハハハ・・・むぎゃっ」

スプーンを三本死神の口に突っ込む。
お返しだバカヤロー。

「むーっ!むーっ!(ありゃ?困ったわ、抜けない!)」

・・・。

どうぞこれからも宜しくお願いします。

「むー!むー!(準くん抜いてー!)」

やれやれ。

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「ふぃ〜っ。これからも宜しくですっ!」

涙目で親指立てても格好わるいだけですよ死神さん。


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