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前回の続きです
第42話 開幕!死神業者最強決定戦
カキぴーのカウントダウンに合わせて周囲もカウントを始め、モニターを見る死神も同じく叫ぶ。

『three!!』

「すりぃー!」

『two!!』

「つぅー!」

『one!!』

「わぁーん!」



『《KING OF HELL》!!、STARTォォォォ!!!』

旅館内の音楽が一気に大大音量のヘヴィロックに変わり、それにも負けない凄まじい歓声と共に大会が開始した。

「行こう準くん!まずは最上階へ登る階段探しだよっ!」

今大会はワープゲートとエレベーターの使用は禁止され、ランダムに配置された普段ほとんど利用されない階段が唯一最上階へ登る手段である。

ちなみにここの最上階は本来七階であるが、それは客用であり、真の最上階は十階なのである。つまり《百鬼夜行》へ辿り着くにはそれだけ登らなければいけないわけで、もちろん登っていく程強い敵と遭遇する確率は高まる。

オレと死神は部屋から身を乗り出して応援する観客達に身体を叩かれながら小走りで移動した。
廊下の至る所に中継用カメラが浮遊し、天井にモニターが設置されている為、楽に状況が把握できるってわけだ。

さぁて、まずはうるさい観客のいない場所へ移動しようかね。

「行くぞ死神」

観客に手を振り返す死神を連れて客間区画を離れる。あんたらは部屋のモニターで応援してくれよな。



「無駄な戦いは避けようね準くん!」

お、コイツにしてはまともな意見だ。

広い廊下をオレは小走り、死神は浮きながら進んでいくと、なんだか見覚えのある場所に出た。

廊下が丸く広がり、テーブルが多数設置されている。そう、以前死神と冬音さんから身を隠すために訪れたオープンカフェである。そういえば八大温泉の餓鬼と鉢合わせたよな。

とその時

「隠れて準くん!」

死神に言われ、とっさにテーブルの下に潜り込む。すぐに理由がわかった。

〈ちぃ!エリート餓鬼とは厄介な連中に遭っちまった!〉

〈切り抜けるしかあるまい!〉

テーブルに隠れながら様子を見ると、明らかに力が自慢の大きな鬼と速さが取り柄の小柄な鬼のペアがエリート餓鬼五人に取り囲まれていた。

さっそく勃発かよ。

同じく廊下中にカキぴーのやかましい実況が響き渡る。

『おぉーっと!!東の区画では早速バトルが始まったみたいだぞ!?その他各区画でも同様に戦闘が勃発だぁぁぁぁぁ!』

近くのモニターに目を向けるとランダムに様々な戦闘シーンが映し出されていた。

ん?

今のは・・・。

まさかな。

「準くん準くん!」

「なんだ?」

「見てよアレ!」

死神の指差す方を見ると二人の鬼とエリート餓鬼がハイスピードな戦いを繰り広げている。
両者全力のようで、相当疲労しているみたいだ。

「ふふふ〜」

この邪悪な笑みは・・・

「《漁夫の利》ぃ!!」

飛び出しやがった!!
無駄な戦いは避けるんじゃなかったのかよ!

鎌を持って暴走した死神を追うようにオレも飛び出す。

『なっ、お前ら!』

『しまった!同業者が来たか!!』

エリート餓鬼五人を片付けた二人の鬼は一斉にこちらを振り向いたが、死神の方が早い。

が、オレは死神の癖を忘れていた。

「ひっさぁつ・・・
《{婆さんや、飯はまだかの?}
{お爺さん、さっき食べたじゃありませんか}
{おぉ、そうじゃった。ところで婆さんや}
{なんですかお爺さん?}
{飯はまだかの?}
{お爺さん、さっき食べたじゃ・・・}
》」

エンドレスは長ぇよバカヤローー!

『馬鹿め!技名が長すぎるわぁ!くらえ・・・えっと・・・』

『テメー技名忘れてんじゃねぇよ!』

ズドォーーーン!!

死神の斬撃がヒットし、大きいほうの鬼が吹き飛ばされた。
・・・どっちもどっちだ。

『うわー!番鬼ーー!』

相方の名前を叫ぶ小柄な鬼だったが、隙だらけだ。

「悪いな」

『なっ、いつの間に・・・げふっ』

小柄な鬼の顎を軽く殴って気絶させる。
鬼にも三半規管があって良かったぜ。
あ、ちなみに三半規管というのは平衡感覚をつかさどる器官ね。



「やるねぇ準くん!」

「お前の暴走っぷりの方がすげぇよ」

なにはともあれ、オレ達の周りには計7人が気絶しているわけで、死神の策は大成功ってわけだ。

『さぁ皆様御覧ください!今大会、物凄いルーキーが参加しておりました!!開始数十分で7人を撃破してしまった驚異の実力!』

カキぴーだ。
モニターにオレと死神の姿が映し出される。

『《里原・死神》ペアだぁぁぁぁ!!』

死神はカメラに向かってはしゃぎまくっている。

「見て見て準くん!私たちだよっ」

「ハハハ、良かったな」

するとモニターが切り替わった。

『おや!?同じように早速頭角を表しはじめたペアがいるぞ〜っ!!こいつらも多数撃破だぁーー!』

モニターに映ったのは

《閻魔・夜叉》ペア
《白狐・カブキ》ペア

さらに・・・

やっぱり来てたか。

《彩花・ヴァンパイア》ペア
《冬音・ナイトメア》ペア

だ。冬音さんとナイトメアが組むとは意外だな。

その他も実力派揃いらしく、注意すべき連中がわかる。
だが、油断はできない。モニターに映るような力を誇示するペアも注意がいるが、あえて戦闘を避けて映らないようにしている連中もいるはずだ。そういうのが一番怖い。

「あ〜っ!メアと冬音姉さんだ!」

と驚く死神の頭に手を置く。

「負けられないな」

「うん!」

−−−−−−
 

オープンカフェで味を占めた死神は、その後も戦闘を繰り広げる連中を隠れて眺め、両者が疲労した所で襲い掛かるというなんとも狡猾な作戦で進んでいた。

ちなみに作戦は良かったのだが、毎回死神は技名でタイムロスしやがるので専らオレが奇襲係を務める。
オレが片方を仕留めた頃、呪文詠唱のような死神の技名が言い終わるので、死神がもう一人を仕留めるという形だ。

で、ただいま地獄旅館三階です。

「アハハハハ!楽勝!!」

廊下を進む死神は上機嫌だ。

『あらロシュ、ご機嫌じゃない。何か良い事でもあったのかしら〜?』
『おぉ、準。もう遭っちまったか』

!!

後ろを振り返ると《冬音・ナイトメア》ペアが立っていた。

「メア!冬音姉さんも!!」

「ここで会ったが百年目よロシュ。覚悟なさい」

さぁて、まずいぞ。早くも避けたかったパターンに遭遇だ。このペアこそ漁夫の利作戦で撃沈したかったのだが・・・ってうわぁ!!

「いくぞ準!ファンタズマのリーダー新旧対決だ」

相変わらず速い。一瞬で間合いに入ってくるんだもんなぁ。
あ、ちなみにこの人も恐ろしい怪力である。うわっと。

バガァン!

オレが伏せたことで空を切った冬音パンチは廊下の壁に大穴を開けた。
こんなん食らったら死んでしまう!


ナイトメアと戦っている死神を見てみると・・・

「だからアンタに未発達なんて言われたくないってのよロシューーー!!」

「オーッホホホ!捕まえてごらんなさぁい!」

・・・いつも通りの喧嘩してた。

「あら?モニターに準くんが映ってるわよメア?」

「マジ?どこどこ?」

「うっそーん♪」

「殺す!《ブラックマターボール》!!」

ナイトメアは黒い球を連射した。

「《自画、大・絶・賛!!》」

自画自賛を圧倒的に上回り、凄まじい自己陶酔を表している死神の斬撃は黒い球を全て切り落とした・・・ってなんだこの解説?

「相変わらずのネーミングセンスね!このアホ死神!!」

同感だナイトメア。

 

「・・・ん?あ、ごめんごめん、なに?」

「話聞きなさいよーー!ロシュの馬鹿ぁぁぁ!!!」

完全に死神ペースだな。

「まぁまぁ、元気だしなよメア」

死神はナイトメアの肩に手を置く。

「最近出番少ないからってさ(エコー)」

「ガァァァァァン!!」

追い討ちかけやがったーー!


「(あ、メアったら隙だらけ♪)・・・くらえぇぇぇぇぇぇ!!《[東海林]と書いて[しょうじ]と読む》!!」

ドカァァァァン!!

メチャクチャだコイツーー!!


「ちょっと〈へぇ〉って思っちゃったわよーーー!!」

パタ

・・・よ、よし。ナイトメアは倒したな。

「おー、強いな死神よ。あのナイトメアって子もなかなかの手だれなんだが・・・」

「でしょ〜!」

冬音さんに誉められた死神は照れている。


さて、次はオレ達か。
ん?冬音さんの様子が・・・

「・・・準」
あ、まずい。

「・・・てめぇ」

出るぞ

『準てめぇいきなりファンタズマ抜けるとか言いだしやがって!!落とし前もつけずに抜けるのは道理に反してるだろうがぁぁぁ!!』

《悪冬音》キター!!戦闘力二倍♪

ドカァァァン!!

うわぁ!んなこと言ってる場合じゃねぇ!やべぇよ!!

「うひゃぁ〜、準くん、援護するよ!」

「ダメだ死神!おそらく悪冬音は夜叉さん達くらいに強ぇ!」

「えぇー!」

えぇー!って、お前以前悪冬音を連れて八大地獄温泉に押し入っただろ。

「いいからお前は離れて・・・ぐはぁ!」

悪冬音のミドルキックがオレの腹にヒットした。
吹き飛んだオレは壁に叩きつけられる。
いってぇ・・・。

「準くん!」

「大丈夫だ」

「冬音姉さん強すぎだよぉ・・・」

伊達にファンタズマの女性ヘッドをやってねぇってことだ。

『オラどうした準?やっぱ力抑えてんのか?』

横腹が超痛ぇ・・・。

悪冬音の対抗策はやっぱアレだな。オレは死神と視線を合わせる。

「死神」

「了解!」

死神はローブの中から本を一冊出した。そう、人格を変えさせる作戦だ。
実は冬音さんも大会に出場するだろうと踏んだオレは事前に図書館へ向かい、死神に本を持たせておいたのだ。
《みんな仲良し》という子供絵本を。

「よっしゃ死神!放り投げろ!」

死神は本を振りかぶり

「よいしょっ」

バサッ

『ん?なんだ?』

冬音さんに当たった。これでおとなしい系の人格になるはず・・・

『・・・』

黙り込んだ冬音さんは無言で死神に近づくと真剣な顔で肩に手を回した。

「え?え?」

様子が変だ。

『死神』

「はぇ?」

『戦いに身を投じることでロゴスを失ってしまう恐怖は確かにある。だがこのまま私は自分自身のパトスに身を任せたい。それが私の存在意義・アイデンティティなのだよ・・・』

何言ってんだー!!

「あわわわわ」

死神が珍しく目を回している。

オレは廊下に落ちた本を確認した。

・・・。

「何でまた《インテリ入門》なんだよ!」

「あわわわわ、間違えちゃった」

意味不明な《インテリ冬音》に絡まれる死神を引き剥がす。

「死神、とりあえずチャンスだ!」

「よっしゃ、ごめんね冬音姉さぁん!」

ズドーーーン!!

『ぐはっ』



丁度良いタイミングでカキぴーの実況が入る。

『ぅおーー!!ナイトメア・冬音、共に戦闘不能!!ルーキー対決を制したのは《里原・死神》ペアだぁーー!』


やれやれ、関門突破だ。

「うっ、あれ?負けちまったみたいだな・・・」

普通の冬音さんに戻ったみたいだな。

・・・。

「あの、冬音さん。ファンタズマのことなんですが・・・」

「気にすんな」

「は?」

「別人格の私が何を言ったか知らないが、確かにお前はファンタズマを抜けた。だがな、抜けても皆がお前の仲間だってことに違いはない。別人格も冗談のつもりだったろうさ。だから、気にするな」

「冬音さん・・・」

「オラ行け!私達に勝ったなら優勝しないと許さないからな!死神、準を頼んだぞ!」

「はぁい♪」

オレ達はその場を後にした。まだまだ大会は始まったばかりだ。



―――――――


「・・・《悪冬音》はきっと寂しかったんだよ準」

「ん・・・」

「お、目が覚めたか?」

「はい。それより冬音さん、独り言なんてどうしたんですか?」

「ん?私も女らしくならないと。ってな」

「・・・む。冬音さん、もしかして私のライバルですか?」

「さぁて、どうだかなぁ?見守るとか言っちゃったしな!ハハハハハ!!」


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