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第109話 危険度デストロイ! 生体機関《TATARIGAMI》
【準&死神 in メインストリート中間】

――――――――

 一言で言えば、メチャクチャ強い。
 それがオレのベルゼルガに対する感想だ。

 戦闘狂の性格でありながら、射撃精度は精密を極め、間合い取りも完璧。

 聞くところでは破壊業者ってやつらしく、まぁその名の通り破壊やら戦闘に関しては滅法強いのだそうな。
 納得だね。

『おいおい、銃撃相手に打撃じゃあ難しいだろ! さっきの《G・O・インパクト》とかいう奴出せよ』

 二丁の銃からどんどん放たれるエネルギー弾を必死で躱す。
 脇に死神を抱えて。
 こいつは避けるという事を知らないらしいから。

「突撃だよ準くん! 突撃ー!」

 無茶言うな!
 あれだけの連射で弾幕を張られちゃ近付けねえよ。
 だから黒ローブを抱えて後退するしかない。

 だが後退しすぎると……。

『甘いっつーの!』

 ベルゼルガは背中から大きなライフルを引き下ろし、トリガーを引く。

『怨恨砲!』

 うわぁ!

〈ドォォン!〉

 さっきから呪詛だの怨念だの怨恨だのカーズだの、気味悪いことばかり言ってる。

「あうー、たぶんアイツは《呪術師》みたいな力の使い方をしてるんだよ」

 と死神。
 それが聞こえたのか、ベルゼルガは肩を震わせて笑った。

『おーおー、そんな感じだぜガキ。デストロイに的を射た見解だ』

 ライフルを背中に戻し、片手の銃で肩をトントン叩く。

『呪術師みてぇなまどろっこしい呪詛の使い方はしねぇ。大気中の呪詛を収束して、エネルギー弾として敵にぶち込む。それだけの話だ。それを可能にしてんのがこの……』

 言いながらベルゼルガは自分の胸を親指でつっついた。

『オレの胸ん中にある生体器官。《TATARIGAMI》の能力だな』

 タタリガミ?
 どうやらその能力でエネルギー弾を作り出しているのだという事らしい。

 隣に下ろした死神は顎に手を当ててうーん、とか唸っている。

「タタリガミ……タタリガミ? どっかで聞いた事があるよー?」

 オレは全然知らないけどな。

『ウチの家系は生まれつき備わってるもんだけどな。親父ほど上手くは使いこなせねぇが、まぁ十分役に立つ』

 生まれつきの、血統書つきの破壊業者ってやつか。
 強いはずだよ。

 死神の奴はまだ唸ってはブツブツ呟いている。

「なんだっけー? お父さんに聞いたんだっけー? そういえばベルゼルガって名前も引っ掛かるにゃあ……」

 あぁ。ちなみにコイツはのんびり喋ってるけど、ベルゼルガの攻撃が再開したから再びオレが抱えて走ってたり。
 呪詛使いってやつか。
 つーことはベルゼルガの話からして弾は無限にあるって事だな。
 厄介な能力だよタタリガミ!!

『あーもー、逃げてばかりじゃデストロイつまんねぇだろ!』

 ベルゼルガは指で銃をクルリと回し、そのままじっと何かを考えている。

『……謎。デストロイ謎だよてめぇら』

 ?

『男の方は普通の人間より身体能力がずば抜けてる。加えて一瞬だけ現れたあの目。ありゃあオレよりワルの目つきだ……』

 死神といい奴といい、独り言ばっかりだ。

『ガキの方も謎。重力魔法使いなんて限られてる。おまけにコイツ死神だ。でもってタイプジオっぽい技。謎。謎謎謎謎謎……』

 ここでベルゼルガはクルクル回していた銃をパシッと握り、斜め前のビルに向かって一発発射した。

『オレは戦力が把握できない敵には手を抜かねぇ』

〈ガァン!〉

「ぐあぁ!」

 な、なにぃ……!?
 足にエネルギー弾が擦った!?

 いつ撃った?

 撃ったのはビルに向かっての一発だけだ。

 ………。

 !!

「跳弾か!」

『ご名答だ!』

〈ガァン!ガァン!ガァン!〉

 ついに本気か黒ヘルメット。
 ビルに当たったエネルギー弾は方向を変え、オレの横から襲ってくる。
 それを避けても、まるで予測していたかのように避けた位置に別のが着弾する。
 もー、感動的なくらいに強いよコイツー。

「ねぇねぇ、ちょーだんって何?」

 さすがに脇に抱えた死神もおとなしくしている。
 跳弾ってのは、放った弾をモノに当てて軌道を変えるとんでもない高等技術だ。
 軌道計算なんてもんは関係ない。撃ちまくった経験で身体に感覚として染み付く技術。百戦錬磨の代名詞だ。

 さすがに相手が悪かったか?

「なるほどー。でも私が居れば安心だね準くん!」

 ……どういう事?
 つーか、もう避けるのがかなり難しい。このエネルギー弾、マジでヘビーだから本当に骨がもっていかれるぞ。

『ギャハハハハハ! オレとタタリガミの連携は無敵なんだよ!』

「黒ハゲはちょっと黙ってろい!」

『ガーーン』

 やかましいベルゼルガに死神の注意が入った。
 ところで、コイツは自分が居れば大丈夫みたいな事を言っていたわけだが……。

「お前、何か策があんのか?」

 ピコピコと足をばたつかせながら死神はふふん、と笑った。

「重力魔法ってね、銃なんかよりずっと強いんだよ?」

 ほー。意味深だ。

「すごい自信だな。何でだ?」

「ここから先は《一文字につき500円》だぜ準く……」

〈ぺしっ〉

「ふぎゃ!」

 高ぇよ。

「うー。あのね、簡単に言えば、重力魔法には射程距離が無いって事なんだよー」

「おぉっ!」

「はい、今ので《17500円》だぜー!」

〈ぺしっ〉

「ふぎゃ!」

 おぉっ! とかリアクションしたは良いが、正直あんまし理解していないオレ。
 射程距離が無い?
 オレの手を離れ、隣に立った死神は両手を腰にあてて胸を張った。

「《百円でいっぺんにおかず》だぜ!」

 きっと《百聞は一見にしかず》って意味です。
 死神は膝を折り曲げてその場にしゃがみ、ぺたんと両手を地面につけた。
 そんな無防備な格好してたら滅多撃ちをくらうに決まってんだろ。

『おいおいガキ、遊びは公園でやるもんだぜ! ギャハハハハハ!』

 悪鬼のように死神をあざけ笑うベルゼルガ。
 だが。
 異変はすぐに起こった。

『ギャハハハハハ! チビッ子は寝てやが………れ……。 ああ!?』

 ベルゼルガが……動かない。
 否、動けなくなってる。
 両手の銃を必死で持ち上げようとしているが、動きが重々しくぎこちない。

『か、身体がぁ……お、重く……』

 身体が重い?
 はっと気付いたオレはしゃがみこんだ黒ローブに顔を向ける。
 死神は無邪気な笑顔を見せていた。

「えへへ、地面座標を調節してベルゼルガの周囲だけ重力を三倍にしたんだよ♪」

 さらっとすげぇ事を言った。
 つーか三倍!?
 三倍になった自分の体重に耐えるベルゼルガは動きがかなり鈍い。
 つーか鈍いながらも動けてはいるのがまたすげぇ。

「アップ・デ・スポップスポップのおかげだぜー♪」

 とんでもない代物をプレゼントしちまった。
 だが死神はむぅ、と浮かない顔になる。

「でもアップ・デ・スポップスポップの効果は使用期限があるの。今回の戦闘できっと腕輪の魔力はなくなっちゃうよ」

「うーむ。RPGなんかだとお決まりの効果だな」

「アハハハハ!」

 おっと、そんな事言ってる場合じゃない。

『ぐぐぐ………くそぉ……』

 チャンスだ。
 ベルゼルガは銃をこちらへ向ける事すらできていない。
 これを逃す手はないぞ!

「死神、もう一回アレやるぞ!」

「グラマラス・お姉さん・インパクト?」

 誰その衝撃的なお姉さん。

「いいから頼むぞ!」

「あいあーい♪」

 手を振る死神を残してオレは駆け出す。
 チャンスもチャンスだ。死神が意外なほど戦力になったなぁ。

 ほとんど身動きのとれないベルゼルガを警戒しつつ、腕に再び重力魔法が加わる感触を確認する。

 多分この一発で決まるだろう。

『や、ややや、やべぇ! デストロイやべぇ! ぎぎぎぎ……!』

 あ、あいつ腕を持ち上げはじめやがった!
 焦ったオレは更に加速してスピードを上げる。

「ここで決めないとなっ!」

『さ、さっきのタイプジオ攻撃か……。間に合わねえ、ドゥーエ・シリンダーに補充した呪詛エネルギーをTATARIGAMIへ戻すしかねぇ!』

 む。
 一瞬、二丁の銃が黒色に輝いたぞ?
 気にしてる暇はないな。

「G・O・インパクト!」

『怨念障壁、デストロイ展開!』

〈バチバチバチバチバチィ!!〉

 …………っ!!

「んな……っ!」
『ギャハ……』

 三倍にされた身体を動かしたベルゼルガは両手の銃を盾にし、更に黒い壁を張ってオレの打撃を受けとめた。
 だが重力魔法を加えた打撃は………強い。
 オレもびっくりだ。

〈ビキビキビキビキ〉

『あー、やっぱ厳しかったかぁ』

〈バガァァァァァン!〉

 障壁は割れ、拳はベルゼルガの銃に直撃。
 黒き破壊愛好家は砕け散った銃と一緒に後ろへ吹き飛んだ。

 まぁ……。

 オレも一発もらったけどね。
 三倍に重くなった前蹴りを、腹に。

『ぐはぁ!』
「ぐはぁ!」

――――――――

―――――

―――

「――くん! 準くんってば!」

 あ。
 意識飛んでた。
 地面に倒れた時に頭ぶつけたみたい。

「起きれ! 準くん起きれー!」

 うっせぇ。

「起きれぇぇぇぇぇ!!」

 うっせぇ。

「………」

 ………。

「えっと、《尖った石》は……」
「おはよう死神!」

 危ねぇ。死ぬとこだった。

「やっと起きた! 大変だよ!」

「大変って、ベルゼルガはもう……」

 言いながら、首を回す。
 砕けた地面、若干の砂煙。

 その中に……。

『きひ、きひひひひひひひ』

 だらりと両腕を垂れ下げた黒ヘルメットの男が立っていた。
 タフにも程があるだろ!

 しかし武器である二丁の銃は砕け散り、背中のライフルも銃身が曲がって使い物にならないだろうな。
 満身創痍。
 オレもだけど。

『おい』

「?」
「?」

 ゲホッ、と咳き込みながら話し掛けてくる。

『オレの異名を、教えてやろうか』

「わかった! 《ですとろいトロいです》だっ!」

 巧い!
 ……じゃなかった。オイ!

『違ぇよ! 《ブレイクショット》だ!』

 ブレイクショットだと?
 ラビットなジョーカーさんが気を付けろと言っていたな。

『ブレイクショットってのは、ビリヤードの用語だ。一番最初に強烈な一発で、固まったボールを散らすことだな』

 嫌な予感がするのはオレだけだろうか。
 死神は腕輪の方を気にしてるみたいだし。

『わかるか? 戦場で、一番最初に放つ強烈な一発。一気に軍隊が散らばるような壊滅的一撃』

 言いながらベルゼルガは両腕を持ち上げ――

 胸の前で両手の指を絡ませた。

「あれは」
「うん、《印》を結んだみたい」

 オレと死神が茫然と見つめる中、ベルゼルガはなにやら呪文のような言葉を唱え始めた。
 妙に落ち着いて、妙な不安感を抱かせるオーラを放っている。

『《悔恨の果て後悔の果て終焉の果て永遠の果て……》』

 ……。
 おかしい。
 胸騒ぎがする。
 だがアイツに武器は見当たらない。
 アイツが呪詛を弾としてぶちこむ為の媒体が無いのだ。
 攻撃なんて……。

『《恨め恨め恨め恨め恨め恨め恨め恨め。恨み重ねよ幾重にも……》』

 だが。
 この胸騒ぎは。

 ………。

「準くん、なんかヤバそうだよ」
「ああ。だが武器は見当たらない」
「もしかして……」

 死神がオレの袖を引っ張る。無意識らしい。

「もし、あの銃は呪詛を弾丸に変えるだけの装置だとすると……」

「だとすると?」

「もし、タタリガミの能力とは無関係だったとすると……」

「だったと……すると」

 だんだんと、オレにも予想ができてきた。

『《祟れ祟れ祟れ祟れ祟れ祟れ祟れ祟れ。祟り重ねよ幾世にも……》』

 ようするに、あのタタリガミって能力が大きな役割を担っていて、ドゥーエ・シリンダーみたいな武器は膨大な呪詛エネルギーを調節する、言わば補助装置みたいなもんだったわけだ。
 それら補助が無くなった状態で、ベルゼルガは攻撃を仕掛けようとしているわけか。
 なるほどねー。

「ふむふむ、わかったぞ死神」
「でしょー? つまりぃ、今までは収束してチョットづつ放っていたエネルギーを……」

「一気に大放出ってか」
「そーゆーことー!」

「ハハハ」
「アハハ」

「………」
「………」

「笑ってる場合じゃねーーー!」
「笑ってる場合じゃねーーー!」

 ヤバいぞ、アイツはその異名となった由来でもある攻撃の準備をしてたのか!
 ヤバいぞヤバいぞヤバいぞヤバいぞヤバいぞ。

「ど、どうやら呪文詠唱に時間がかかってるみたいだ!」

「そ、そうだね! 今のうちに早く倒さないと!」

「こうなったらオレも必殺技出してやるよ」

「私も大技出すぜー!」

「これで最後だ」

「うん!」

「重力魔法よろしくな」

「まかせて!」

 非常事態のため、手早く打ち合せをしてオレはまたベルゼルガに向かって走りだした。
 珍しく死神も大技を出すんだとさ。
 重力補助は脚部か。

『《蠱毒の器に蠢く呪詛共、呪符を以て鬼に囲まれ、三千鳥居に封じられし呪詛共……(チッ、奴ら気付いたか。呪文詠唱がデストロイ長ぇのがネックだぜ。間に合うか?)》』

 ちくしょー。
 間に合うか?
 もうベルゼルガはあの一発に賭けているらしい。完全にノーガードで呪文詠唱に集中している。

『《祟り神の名に於いて命ず! 破壊と災害と破滅をもたらせ!》』

 くそ、詠唱が終了した!
 オレは地面を蹴って跳び上がり、重力魔法を纏った膝をベルゼルガの顔面にぶち当てるべく腰を捻る。

 あー、オレが必殺技なんて……。

「空間断裂、《G・O・ドライブ・ディバイダー》!!」

 技名長くてゴメーン!

 オレが膝蹴りを繰り出した相手。
 ベルゼルガは、黒いヘルメットのフェイスガードをガパッと開いた。
 中から黒い光があふれ出る。

『ヒャハ、ヒャハハハハ! メインストリートが消えるかもだが仕方ねぇ!』

 膝蹴りが当たるのが先か、黒い光が放たれるのが先か………!

『これがオレの大破壊攻撃! 《デストラクト・ディザスター》だぁぁぁぁぁ!!』

 オレの膝蹴りは……。

 ギリギリでスウェーバック回避をしたベルゼルガのヘルメットを擦る。

 しまった、外した!

 ベルゼルガの頭部から、黒い光が膨らむ。

 だがオレはすぐにその場を離脱した。

 オレの背後からは紫色の球体が飛んできているからだ。膝蹴りはただの目くらましにすぎなかったのさ。

 忘れちゃいけないよね。

 死神の存在を。

『!』

 紫色の球体がベルゼルガに炸裂。
 次の瞬間、奴を中心に紫色の結界が生まれ――

 メインストリートの地面が丸い形に沈んだ。

 こ、こりゃあ……。

「にゃはははは!! 重力結界、《メガ・グラビトン》だぜー!!!」

 伝説的大技キターー!

〈ベガァァァァァァァァン!〉

 一瞬にしてベルゼルガは地面に膝まで沈んだ。自分の重さで。
 もう重力が何倍になったかなんて想像するのも怖い。

『なぁがぁぁぁぁぁぁ!』

 倒れない。
 ベルゼルガは、埋まった脚部を軸にして踏張っていた。
 な、なんつー怪力だよ。

『くおぉぉぉぉ……! メ、メガ・グラビトンだとぉぉぉぉぉ……!?』

 膝蹴りを外したオレはすぐにビルの影に隠れたので、かろうじて死神の大技に巻き込まれずに済んだ。
 だが完全に無防備だったベルゼルガは今やメキメキと音をあげながら地面に沈んでいく。
 それでも、決して倒れない。
 大破壊攻撃の光も消え、その黒いヘルメットにはヒビが入っているのに。

『ごあぁぁぁぁぁ……! これは……ギルスカルヴァライザーの……やっぱりあのガキ……』

 もはや下半身が地面に埋まってしまったベルゼルガ。
 とんでもない執念のオーラを漂わせながら、隙あらばいつでもオレに襲い掛かってきそうな……目。
 割れたヘルメットから見えたベルゼルガの片目は――

 怒りに満ち溢れていて――

 メチャメチャ楽しそうだった。

『ギャハ、ギャハ、ギャハハハハハ! オラァ! 早くトドメ決めねぇと、てめぇら瞬時にデストロイだぜ!』

 死神は鼻をムズムズさせながら重力結界を持続させるのに集中していたが、最後のトドメは――意外にも呆気なかった。

 何故ならトドメは――

「はっくしゅん!」

〈ベゴォォォン!〉

『うぎゃぁぁぁ!』

 トドメは死神のくしゃみだった。
 くしゃみの勢いで魔力が強まり……ベルゼルガの体重が更に倍加されたのだ。

『デ、デストロ……イ……』

 漆黒の破壊愛好家は、アホ神のくしゃみでトドメを刺されたのだった。

――――――――

―――――

―――

 漆黒の破壊愛好家ことベルゼルガ。
 異名は《ブレイクショット》。
 武器は二丁銃の《ドゥーエ・シリンダー》と大型ライフル。
 能力は呪詛を吸収・放出できる驚異の生体兵器、《TATARIGAMI》。そして跳弾。
 異名の由来にもなった最強技。大破壊攻撃、《デストラクト・ディザスター》。

 とんでもなく強いし、とんでもなく恐ろしい生粋の破壊業者だ。

 そいつは今――

『デストロ〜イ……』

 地面に胸まで埋まるという、なんとも情けない状態で身動きがとれなくなっていたり。

「さぁ! 私をグラマラスだと認めなさい!」

 んで、死神がその前にしゃがんで無茶を言っていたり。

『認めたくても、認める要素が……』

〈ベシッ〉

『あでっ』

 完全に扱いが敗者だ。

『くそー、デストローイ!』

「うるせえ!」

〈ベシッ〉

『あでっ』

 ひ、ひでぇ……。
 身動きができない男のヘルメットをベシベシと叩く死神。
 ベルゼルガも観念したのか呆れたのか、もはや抵抗すらしなくなった。

『わかった、わかったよー。グラマラスだよてめぇは〜』

「やっと理解できたようね!」

『できたできた〜。デストロイグラマラスだ〜』

「ふふふー♪」

 もう強制的に言わせてるだけじゃん。
 相手をするベルゼルガはわりと大人だ。

『それより良いのかよ? 一番塔の仲間が心配なんじゃねぇの?』

「あっ、そうだった! 早く言いなさいよ!」

〈ベシッ〉

『ふごっ』

 ………。
 そうだ。冬音さん達のトコへ向かわないと。

「行くぞ死神!」

「うんっ!」

 オレと死神は埋もれたベルゼルガを残して駆け出し、メインストリートの先へ向かったのだった。

『えっ、おいちょっと! オレこのまんま!? オイこら! デストロイ動けねぇよ! おぉぉぉぉい!』

 さてと、オレも死神も疲労困憊。
 さすがに魔導社内部へは突っ込めねぇなぁ。
 オレ達はここらで戦線離脱といこうかね。
 まぁ、敵のボスとやらは……あの人がキッチリと片を付けるだろうさ。

「準くん早くぅー!」

「人の背中に乗ってる奴が言うな!」

【《準&死神》 VS 《ベルゼルガ》 デストロイ戦闘終了♪】

――――――――

――――――

――――

【魔導社最上階、社長室】

 ウフ♪

 ウフフフフ♪

 傀儡製作者、《韋駄天》。
 無限粉末師、《タイタン》。
 破壊愛好家、《ベルゼルガ》。

 三人共、負けてしまわれましたか。とってもお強い方々ですが。
 制圧時にラビットと戦闘させたのは失敗でしたね。私が直接出撃するべきでした。

 韋駄天さんの機動歩兵は三機のうち一機が制圧時に大破。
 そしてもう一機、魔斬刀を装備した《セメタリーキーパー》までもが防衛時に大破……ですか。

 タイタンさんも高振動手甲の駆動系が制圧時に故障しておられました。
 その駆動音が原因で防衛時に《リゾルヴ・パウダー》を見破られてしまったみたいです。

 ベルゼルガさん。最前線での突撃を引き受けてくれた彼がもっともダメージを蓄積していました。
 無数にあった呪詛兵器も制圧終了時に残ったのはたった三つ。
 防衛戦ではあの《TATARIGAMI》まで破られたようです。

 破壊業者の御三方には無理をさせてしまいました。
 報酬は奮発させて頂きます。

『ボ、ボス!』

 窓から外を眺めていた私、ジャッカル・ジョーカーは狼男に呼ばれて振り替える。

「報告有難うございました♪ 貴方もダイダロスへ避難して下さい」

『グル……撤退……ですね』

「ええ。まったく、予想以上にやってくれましたよ♪」

『……我らが三日も保たなかったとは』

 私も意外です。正直、一週間は余裕だと見込んでいたのですが。

「刃狼隊は?」

『ほとんどが魔導社郊外で倒れていました。全員搬入完了です』

「ご苦労様♪」

『さぁ、あとはボスだけです! 早くダイダロスへ……』

「先に行きなさい」

『な、なにを仰って……』

「いいから行けと言っている!!」

『しょ、承知!』

 慌てて社長室から出て行く狼男。
 ごめんなさいね♪

 刃狼隊はそのほとんどが郊外で壊滅……ですか。塔を目指していた三組の侵入者とは違いますね。

 うーん?

 私はジャッカル頭を傾げながら部屋をクルリと見回す。
 しかし本当に広いですねぇ、この部屋は。

 ウフフフフ♪

「戦うには絶好の広さだとは思いませんか? 《馬鹿ウサギ》さん♪」

 そいつは――

 いつの間にそこに居たのか――

 社長室のソファで足を組んで座っていた。

『ホホホホホ♪』

 憎たらしい声。
 忌々しい名前。
 私の大嫌いな、ジョーカーという名前。

『少々、おいたが過ぎますよ♪ ジャッカル・ジョーカー』

 必ず来ると思っていた。
 やられっぱなしで放っておく程、この男は優しくない。
 そう。
 私を黙って逃がす筈が無い。

 私はジャッカル頭の着ぐるみの中から、目の前に立つ白スーツのウサギ頭を睨んだ。

「ラビット・ジョーカー。やはり戻ってきましたか」

 嗚呼……。
 理性を保っていられない♪
 頭に血が上ってくる♪

 私はジョーカー一族が大っ嫌い!

『さあジャッカル、お仕置きの時間です♪』

 いつも。

 いつもいつも。

 いつもいつもいつも。

「私を舐めるなぁぁぁぁぁぁ!!」

【最終戦 《ジャッカル・ジョーカー》 VS 《ラビット・ジョーカー》 戦闘開始!】


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