ひつじのけもの(4/4)縦書き表示RDF


掲載詩
 ●頭上で雲が●
 ●スプリング・エフェニエル●
 ●糸杉●
 ●バード終章●
 ●魔王●
ひつじのけもの
作:トカゲ



ひつじのけもの その四


 ●頭上で雲が●

 空を見る度に 奴を思い出すのではないのだが
 この日は たまたま奴に敗北を喫したあの日を思い出した
 空を流れる雲の形が あの日と似ているのであるのかな
 きっとそうだ
 のんびりとしているようで
 着実と前へ前へと進むあの姿に
 奴を見た訳ではない
 のんびりとしているようで
 最後に 目的地に達するのは
 きっと俺のような焦ってばかりの人間ではなく
 あの速度で進む人々なのだろうな
 今はそう思う
 思うこともある
 それでも俺の速度は変わらない
「悔しいのである」
 もっと素早くと 自らに言い聞かす
 頭上で雲が流れている


 ●スプリング・エフェニエル●

 雪解けの川に逸る
 生やるまだ春を知らぬ根の呼吸
 染み込む雪に代わる代わる背を撫でられ今を知る
 草吹くを 草吹くを 目覚めの時が来た
 山から下る風の中 暴発する緑花の息吹が混じる
 花咲くを 花咲くを おっどりゃんせと声がする
 彼は すぷりんぐ えふぇにえる
 寝ぼけ眼の熊


 ●糸杉●

 渦巻く月夜の下では糸杉が吠えている
 吠えているように見える と思う
 家から光が漏れているが 誰かが居るのであるか
 人の匂いがする
 やはり 誰かが居るのであるか
 この村の人々はこれほどの情景の中に居るというのか
 地図上で言えば この星に月夜はどの辺りなんだ


 ●バード終章●

 冒険が始まった当初
 エヴァンはまだ少年だった
 
 今 アララトの険しき頂に立つエヴァンは年老いていて
 旅の終わりを静かに見据えている
 旅が終わる もうじき終わる
 今度こそ終わる
 天を穿つ槍の如く岩山が幾重にも並んでいて
 その遥か遠く 黒雲に包まれた古の王国がある
 岩山や黒雲や霧に遮られ 星のような距離があるが
 険しきエヴァンの双眸には 確かに古の王国が見えている
 今 アララトの険しき頂より降り立つエヴァンは年老いていて
 旅の終わりを静かに見据えている
 一歩一歩と
 前が後ろに流れていく
 旅を終える もうじき終える
 今度こそ終える

 私はその勇敢なる後姿を見届けている


 ●魔王●

 (前略)
 俺は見た
 海から山から空から
 風から水から火から大地からと
 反乱や氾濫を求める有志が集う
 その 圧巻たる景色を
 (中略)




 新たに五つです。
 よければっ。













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