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魔の現場
作:神名代洸


最近ちまたでは不可解な事件が起こっていた。
それはある一定の場所で起こることが多く、その現場は見慣れているはずの鑑識官でも気分が悪くなるほどの酷い状態が殆どだった。

その死体の殆どは恐怖で顔を歪ませていた。
手足がそれぞれ全く違う方向に折れ曲がって、全身を殴打された姿で発見された二十代の女性。
手足の指を全て切り落とされ、頭に包丁を突き刺した状態で白目をむいたまま息絶えている三十代の男性。
頭皮ごと全身を剥かれた男性。そしてその筋肉の間には針金があちこち埋め込まれていた。年齢は後に二十代と判明した。

他にも残酷な状態でいくつか死体がみつかると一人で歩くことを嫌がり、みな誰かと一緒に帰るのが多くなっていった。


連日のようにテレビでこの残虐な犯人の事を取り上げ、そのての専門家がゲストに呼ばれ、犯人像とその精神分析をしながら語っている。
その様子をテレビを通じて見ている男がいた。男は画面を食い入るように見ていたが、嬉しそうににやけた。今、日本中で自分の事を知らないものがいない。ある意味有名人になったのが嬉しくて仕方がなかった。
それから一週間何もしないでいたが、たった一週間行動しなかっただけで人々の関心が薄れてきたことに腹を立て、また事件を起こした。



今度の被害者は小学生の男の子。


学校の帰り道、たまたま目の前で友達と別れ一人になった所を後ろから襲った。ズボンのポケットに忍ばせておいたスパナを右手で持ち頭上から振り下ろしたのだ。男の子は抵抗する事も声を上げることも出来ないままうつぶせに倒れた。その少年を抱え上げ男はその場をあとにした。

翌朝、犬の散歩をしていた年配の夫婦が道端に人形が転がっているのを見た。しかし、その人形は頭部が無く、胸元に何かを抱き抱えていた。近づいた夫婦の目に飛び込んできたのは涙を流しながら恐怖している顔だった。その顔は行方不明になっていた男の子。身体は男の子のものだった。
酷い惨殺はすぐニュースとなり、犯人を捕まえられない警察に抗議電話が殺到した。刑事達も足を棒にしてまで付近の聞き込みをしたが、ある程度までしか絞り込むことが出来ず、みな苛立っていた。


男はまた事件が報道されると嬉しくなった。



そしていつものように夜布団に入り、眠った。
その日・・男は夢を見た――――。

男は夢の中で例の事件現場に足を踏み入れた。なぜそこにやってきたのかは男にも分からない。しかし、そこに来ると今まで殺してきた人間達の最後の瞬間を思い出す。助けを求め、最後まで泣き叫んでいたその姿を・・・・・。
その様子を思い出しながらボーッとしていると人が歩いてくる足音が聞こえてきた。
しかし、男がその足音に気付くと音はピタリとやんだ。

「けっ、こんなところに人なんかやってくるわけはないな。」

などと独り言をブツブツ言っているとまた足音が・・・。だが、足音だと思って聞いていると何か引きずっているような――――、時々異様な音が混ざったり、ネチャッ、ピチャッと何かが滴り落ちるような音が聞こえてきたりもしていた。

「何の音だ?人の足音とは違うような音が聞こえてくるが・・・。」

男は音がする方に向いてジッと見つめていた。しかし、音しか聞こえてこない・・・。

「何なんだよ。一体?」

男は声が裏返っていることにも気付いていなかった。
しかし、音は確実に男に近づいている。その事に悪寒が走り、その場から逃げ出そうとした。けれど足が動かない。そればかりではない。両足が物凄く痛いということにようやく気付いた男は自分の足を見た。
男の両足には針金が巻きついており、その針金はコンクリートに打ち付けられているかのようだった。

「な・・・なんだよ・・・これ・・・・。いてー!いてーよ!」

男が泣き叫んでいるとどこからか泣いている声が聞こえてきた。
その声は男の子だった。
男はわーわー喚きながらも何とか針金から足を出そうとしたが、どうやってもはずせなかった。

「お兄ちゃんどうしたの?」
「坊主、ちょっと手伝ってくれ。こいつが足にからまっちまってな―-。」
などと言いながら顔を上げると目の前のものに驚いて恐怖の叫び声を上げた。

「ギッ、ギャーーー!」

男が見たものは空中に浮かんでいる顔。
首から下はなかった。そう、男が殺した男の子だった。
男の子は真っ青な顔で男の前に浮かんでいたのだ。その横にも男が今まで殺してきた被害者も死んだときの姿で立っていた。
男は必死に謝った。
「ごめんなさい。ごめんなさい。」と。

「僕達も何度も助けてって言ったのにお兄ちゃん助けてくれなかったよね。それどころか笑いながら。僕お兄ちゃん許してあげない。」
男の子はそう言って男の顔のまん前に顔を近づけた。そして、上を向くと自分の首から血を滴らせながら肉を見せた。
そのあまりの生々しさに男はショックをうけ心臓が止まった。

男の顔は恐怖で凝り固まっていた。

その後男の死体を見た目撃者によって男の身元がわれ、それと同時に最近の惨殺事件の犯人だったということが分かり、この一連の事件は犯人死亡というかたちで解決した。














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