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ファンタジーショートショート:スライムと魔王

作者: ウーフー

 とある家の中、椅子に座り編み物をしている老婆に孫達が取り付いた。

「おばあちゃん!お話聞かせて!」

「はいはい。」

 かわいい孫達の為にその老婆は孫達の一番好きな物語を聞かせるのであった。

「あるところに1匹のスライムがおりました。そのスライムは頭がよく、喋る事が出来ました。他のスライムはただウロウロしながら獲物を溶かしたりするだけで喋るなんてできませんでした。」

「そんな自分は特別なスライムだと思い込んだ彼は旅をすることにしました。特別なスライムを欲しがってくれる所があるに違いない。そんな自分の居場所を探す旅でした。」

 孫達は目を輝かせながら聞いていました。

「ゴブリンやオーガ、ドラゴンや悪魔など様々な所へ売り込みに行きました。でもどこへ行っても『スライムがなんの役に立つ』といって断られました。そしてここでダメならもう元の平原へ帰ろうと魔王様の住む城へを向かったのでした。魔王様へ直接売り込みに行ったのです。スライムが売り込みに来たという珍しさに興味本位で魔王様が直接見にこられました。そこでスライムは今まで自分がどんな所へ行きどんな物を見てきたのかなどを書き記した旅行記を見せました。スライムとは思えぬ立派な旅行記に魔王様も驚き『スライムとて侮れぬ、今度その体を活かして記録係りを任せる』スライムの居場所が出来ました。

スライムはその粘着性の体を石の隙間などに潜り込ませながら魔王様に会いに来た人物。その会話、所持品など細かく記録していきました。隠し持っている物などこのスライムの前には筒抜けでした。しかし戦闘力は未だスライムのまま、魔王様は『非常時には我の玉座の下にでも隠れていろ』と言われていました。スライム自身戦えないとは思いつつも魔王様の前に現れる客人なども見るたびにいつか自分も等と考えては魔王様とともに戦う己の姿を妄想したりしていました。」

「あるとき魔王様にピンチが訪れます。人間達から勇者が送り込まれてきたのです。そのあまりの迫力にスライムは玉座の下でぷるぷると震えていました。しかし勇者の余りの力に魔王様も苦戦し、敗北が濃厚になってきました。勇者はこれで止めとばかりに聖剣での突きを繰り出しました。その瞬間玉座の下からスライムが勢いよく飛び出し勇者の顔面にべとっと張り付きました。慌てふためく勇者その隙を逃すことなく魔王様は力を振り絞り、見事勇者を倒しました。しかしその張り付いたスライムは全身全霊での勇者へ体当たりを敢行した為体の一番大切な核にまでひびが入り瀕死の状態でした。」

 そこまで話すと孫達は「どうなっちゃうの!」と泣きそうな顔になっています。

「何も心配することはありませんよ?その己の体を犠牲にまでした行いに痛く感動した魔王様はスライムをまず癒し、その後ありとあらゆる効果を付与しここに最強のスライムが誕生したのです。こうしてスライムは魔物の中でも最高位を獲得し、また様々な特徴を持った仲間を生み出し、見事人間達を敗北に追いやることが出来たのです。スライムは夢を叶えたのでした。おしまい」

そう話を終えると孫達は興奮気味に「じゃあそのスライムが僕達のご先祖様なんだね!」とそのぷるぷるした体を揺らしました。老婆も「えぇそうですよ。」とゆっくり体を揺らしました。

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