Atomic No.7:「兵庫県南部、大雪警報」
1996年3月14日
まだ冬。飲み物:ホットミルクBGM:ガッツだぜ!/ウルフルズ
AM5:45、朝は一人だ。
3つ上の兄貴は、僕が高校に入ると同時に大学の近くに下宿。両親はこの時間にはすでに仕事。しいて言うなら姉ちゃんが、まだ寝てる。
サッカー部の朝練は強制ではなかったけれど、僕は毎朝、7kmのロードワークを欠かさない事にしている。
朝ご飯は自分で作る。
メニューは毎日同じ。目玉焼きと食パン。
朝、起きるのは早いものの、寝起きは悪い。しかし、その日は素晴らしい目覚めだった。
窓の外は、一面銀世界、大雪だった。しかもなんだか猛吹雪き。兵庫県の南部には、それはそれは珍しいことだった。
朝のテレビ、天気予報が僕に言う。
「兵庫県南部、大雪警報」
珍しい事があるもんだ・・・。
地方によって、違うらしいけど、「大雨、雷雨、大雪」の警報が発令されたら、学校は休みだ。僕は、急遽の休日をとりあえず「二度寝」に使った。後でビデオでも借りに行こう・・・
母からの電話が鳴る。学校が休みであることの確認だ。電話を切った直後、僕は眠りについた。三時間くらいして、また鳴る。母は早とちりをする人。「二度電話」はよくある。
「何?一回で済ませろよ」
「はい、じゃあ一回で済ませまーす。」
いつもの返事をしたつもりだが、少なくとも母ではない。
「今日みたいな日でもランニングするかなーと思って、学校で待ってたのに・・」
「え?!」
「嘘うそ。それはないでしょ。」
「それは無いな・・・。驚かすな。」
「何してるの?って大体わかるけど。貴重な睡眠時間を割いてしまってごめんなさい。」
「いや・・・いいけど。」
僕は、寝起きのため、事態が上手く飲み込めずに、適当に歌里那の言葉に返答した。
「すごい雪だね。」
「ああ、すごいな。珍しい。大雪警報だと。」
「遊びに行こうよ。」
「ああ・・・いいよ・・」
「じゃ、能勢口ね。待ってまーす。」
そう言って歌里那は電話を切った。
・・・・やってしまった・・・。
今からこの大雪の中を、僕は歌里那駅まで向かうのか・・・。
僕は、寝起きのため、事態が上手く飲み込めずに、適当に歌里那の言葉に返答してしまったようだ。
「ツイタヨ!」
ポケットベルが僕を少し驚かせる。嘘つけ・・・。僕は買ったばっかりのコートを着て歌里那駅に向かった。
大雪警報が出ても、電車は走っている。
不思議と、人は多くて、みんなどこかに出かけるようだ。
渓谷を通り抜ける田舎の電車は、雪景色が良く似合う。曇ったガラス越しに、
僕は少し遠くを見ていた。
平野、多田、鼓滝、鴬の森、滝山、絹延橋、川西能勢口
7つの駅を10分ほどで各駅停車しながら通過する間に、
僕はなにか不思議な気分になった。
僕と歌里那は、不思議と、お互いに自分の心の中の話をしたことがない。
底抜けに明るい歌里那の、不思議と僕はいつもその向こう側が気になった。
僕について、学校について、家族について・・・・いろんなこと。
ただ楽しい歌里那との時間は時々、僕を困惑させた。
「あ?」
駅に着くと歌里那はいない。僕は急いで公衆電話からベルを打った。
「ツキマシタガイカガイタシマシタ?」
「イマカライキマス」
着いたんじゃなかったっけ?歌里那の家は駅から5分。僕のベルの後でも十分に間に合う。
駅の窓ガラス越しに、まったく急がない歌里那が見えた。
僕は缶コーヒーを買って飲んでいた。
「間に合った?」
「・・・いやいや、さっきは着いたって言って・・・」
「どっか連れてってよ。」
歌里那らしいむちゃくちゃ加減。僕はいろいろあきらめて笑った。
「よし、行こうか。」
僕と歌里那は、大雪警報が発令されているその中で、
さらに箕面の山に向かうことにした。 |