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理想のヒモ生活 作者:渡辺 恒彦

二年目

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第七章2【交渉、完治】

 大急ぎで着替えを済ませ、駆け出したい衝動を必死に押さえ、早歩きで王宮の廊下を進んだ善治郎がその部屋に入ると、そこではすでにフランチェスコ王子が女王アウラと向かい合うように座り、言葉を交わしていた。

「ああ、来たかゼンジロウ」

「これは、ゼンジロウ陛下。失礼ですが、先にお話を進めさせてもらっております」

 善治郎の入室に、会話を一時中断したアウラとフランチェスコ王子がそう言ってくる。

 この場にアウラがいることに、一瞬驚いた善治郎であるが、考えてみれば当たり前だ。

 異国の王子を後宮に入れるという問題も、異国の王子から『治癒の秘石』を譲渡してもらう問題も、善治郎の独断でどうにかできる話ではない。

 ファビオ秘書官が、善治郎に連絡を入れると同時に、アウラにも連絡を入れるのは極当然である。

 すぐにそう思い立った善治郎は、「失礼、遅れました」と軽い謝罪の言葉を投げかけつつ、アウラの隣に腰を下ろす。

 女王と王配と異国の王子の会話。通常であれば、例え緊急性の高い非公式のものであっても少しは季節の挨拶などの前置きがあるものなのだが、今の善治郎にそのようなものに気をくばる余裕はないし、細かな常識を護るフランチェスコ王子でもない。

「ああ、これはゼンジロウ陛下も、よく来てくださいました。急な呼び出しで申し訳ありません」

 相変わらず邪気のない笑顔と、考えの足りなそうな言葉遣いのフランチェスコ王子に、善治郎はまず最初に一番気になっている点を尋ねる。

「いえ、とんでもない。こちらとしても、有意義なお話ですから。ところで、ボナ殿下の姿が見えませんが、彼女は?」

 善治郎の問いにフランチェスコ王子は、少しばつの悪そうな顔で答える。

「ボナには内緒です。彼女に話せば面倒くさいことになるので」

「ああ、確かに」

「それは、そうだろうな」

 フランチェスコ王子の言い分に、善治郎とアウラは頷くしかなかった。

 あの真面目なボナ王女が、『治癒の秘石』の譲渡を認めないのはごく当たり前に予想されることだ。

 フランチェスコ王子とボナ王女は、カープァ王国という異国の地にいるのだ。いざというときの生命線である『治癒の秘石』を譲渡するなどと平気で言い出す、フランチェスコ王子が非常識なのであり、それを知った場合阻止しようとするボナ王女はきわめて常識的なだけである。

 とはいえ、善治郎とアウラからしてみれば、非常識なフランチェスコ王子の対応こそが求めるものであり、常識を説くボナ王女がこの場にいないことは幸いと言うしかない。

 善治郎とアウラは、素早く目と目で互いの意思を確認しあうと、

「そういうことならば、わざわざボナ王女まで呼ぶ必要はないであろうな」

「ええ、彼女も忙しいでしょうし」

 そう、あっさりとこの場にボナ王女を呼ばないことを追認した。

「それでフランチェスコ殿下。『治癒の秘石』を譲って下さるとの話だが」

 冷静な表情は保っていても、アウラも内心は余裕がないのか、単刀直入にそう切り出す。

 その言葉に、フランチェスコ王子はあっさりと首肯し、

「ええ。ここに一つ持ってきています。ご覧下さい」

 と答えると、懐から手のひらサイズの白い石を取り出し、テーブルの上にのせた。

 形は『角を切り落とした直方体』と言えば良いのだろうか。綺麗にカッティングもされている、少しマーブル模様の入った綺麗な白い石だが、それ自体の価値はほとんどないだろう。

 だが、魔力視認能力のあるものが見れば、その手のひらに収まるほどの小さな石から、平均的な魔法使いにも匹敵するほどの魔力が立ち上っているのが見える。

「これを、お譲り戴けると?」

 対価の話もなく、いきなり現物を取り出して見せたフランチェスコ王子に、アウラは少し慎重になる。

 これまでにも、ビー玉に関する機密など、馬鹿としか思えないくらい気前の良いマネを繰り返したフランチェスコ王子だが、だからといって今回の話にも対価を求めないと決めつけるのは早計だ。

 だが、フランチェスコ王子の答えは、アウラの予想からかなり外れたものだった。

「いいえ。それは譲渡するのではありません。それを持って『私がカルロス殿下に使う』ので、直接お見舞いすることを許可して戴きたいのです」

 対価は求めない。しかし、使用は自分でするから、カルロスに会わせろ。

 この返答に違和感を感じないようならば、親としても王としても警戒心がなさ過ぎるというものだ。

 違和感の塊のようなフランチェスコ王子の要求に、アウラはいっそう慎重に問いを重ねる。

「なぜだ? そもそも『治癒の秘石』はフランチェスコ殿下にとっても貴重なもののはず。それをなぜ、カルロスのために使うと申し出るのか、その理由が知りたい」

「いやあ、何というか私は、カルロス殿下に『親近感』を感じてるんですよ。それに私は、双王国の人間ですからね。皆さんよりはずっと『治癒の秘石』を手に入れやすい立場にあります。
 だから、ひとつくらいなら問題はないんですよ」

 飄々とした表情でいうその言葉を横で聞いていた善治郎の耳に『親近感』という言葉が強く残る。

(あれ? 以前にもこの人同じようなことを言っていたような……そうだ。夜会で俺と初めて顔を合わせたときだ。あのとき、この人俺にも同じ事を言ったんだ。『親近感』を覚えるって)

 善治郎と、カルロスという親子にそろって親近感を覚える。これは、果たしていつもの口から出任せと切って捨てて良い言葉だろうか? 

 とりあえず後でアウラに確認しよう、と善治郎が内心で考えている間に、フランチェスコ王子と女王アウラの会話は続く。

「では、完全な善意からのご提案だと?」

「ええ、カルロス殿下が病魔の苦しみから解放されるのであれば、私としてはそれ以上なにも望みません」

『完全無償の好意』という言質を取るために、あえて聞いたアウラの問いに、フランチェスコ王子は警戒の欠片も見せずに、全面的に肯定してみせる。

 不信をより深めつつ、アウラは問いを重ねる。

「それならば、別段フランチェスコ殿下が直接『治癒の秘石』を使う必要はないのでは? カルロスに会いたいというのであれば、後日あの子の体調の良いときに、王宮に連れてこよう」

「ああ、それは駄目ですよ。こう言っては失礼ですけど、『治癒の秘石』は貴重品です。いかな第一王子とはいえ、今回絶対に使って下さる保証がないじゃないですか」

 少々は歯に衣着せぬ物言いになっているが、フランチェスコ王子の言い分も正論と言えば正論である。

 情愛にとらわれず、物事を損得だけで見れば、ここで『治癒の秘石』を受け取り、使用したと嘘を言い、実際には『九割』という分の良い賭に出るという手段も決して悪手とはいえない。

 まあ、そうして十分の一の不幸を引き当てれば、第一王子の命と大国双王国の信用を同時に失うのだから、普通はやらないだろうが。

 だが、そのことを懸念するというフランチェスコ王子の言葉に、ある程度の正当性は確かにある。

(まあ、何はともあれ、これで一つは確定したな。フランチェスコ王子は間違っても馬鹿じゃない。日頃のあれは演技だ)

 横で見ていた分、冷静さを保っていた善治郎はそんな結論を出す。

 この理路整然としたやりとりは、間違っても馬鹿にできることではない。

 やはり、日頃の馬鹿ぶりは演技だったのだ。では、その本国でも大半の人間を欺いてきた演技の皮を脱いでまで、カルロスとの面談にこだわる理由は何だろうか?

「いかがでしょう。本当に、ただお見舞いをするだけで良いですよ。もちろん、『治癒の秘石』以外はなにも持ち込まないですし、私一人で良いです。後日何かを請求することもしませんし、母国の人間が言語のそのことを盾に取る事も許しません。
 身体検査が必要でしたらそれも受け入れます」

 渋るアウラに、フランチェスコ王子はどこまでも譲りながら、それでも「自分が直接カルロスを見舞う」という条件だけは譲らない。

 ここまで来れば、アウラも明らかにフランチェスコ王子に相当大きな目的が隠されいてることを悟らざるを得ない。

「むう……」

「お願いしますよ、『アウラ陛下』や『カルロス殿下』、『カープァ王国』に害となることは、誓ってしませんから」

 顔の前で右手をピンと伸ばして、懇願するフランチェスコ王子の様はどうにもユーモラスであったが、言っている内容はそんなおもしろがっていいような軽いものではない。

 しかし、現実問題として、その条件でフランチェスコ王子が後宮に足を踏み入れても、何もできないことは確かだ。

 寸鉄帯びず、供も連れず、単身フランチェスコ王子がなにか悪巧みをしたところで、取り押さえるのは容易である。

 元々、フランチェスコ王子はその立ち振る舞いからも分かるとおり、武人としての訓練をほとんど積んでいない。

 背はそれなりに高いし、体格も良いが、その気になればアウラ一人でも取り押さえることは難しくないだろう。

 なにより、アウラも一人の母親として、我が子のために『治癒の秘石』を使ってやれるチャンスがあるのならば、逃したくないというのは本心である。

「……分かった。『治癒の秘石』を使用する見舞いということは、医師やジルベール法王家の治癒術士に準ずると判断する。特別に後宮への立ち入りを許可しよう。
 下手に人目を避けて後宮に招いた場合は、事が明るみに出た場合の対処が面倒故、いっそ『治癒の秘石』を使う見舞いという大義名分を表に出して、正面から堂々と入って戴く。フランチェスコ殿下、それでよろしいか?」

「ええ、問題ありません。ありがとうございます」

 小一時間も続いた交渉の末、ついに折れたアウラに、フランチェスコ王子は満面の笑顔で礼を言うのだった。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆





 さらに一時間後。

 善治郎、アウラ、フランチェスコ王子の三人は、後宮の廊下を歩いていた。

 後宮に入る前にボディチェックを受けたフランチェスコ王子は、衣類と『治癒の秘石』以外の全てを取り上げられており、逆にアウラと善治郎は日頃は下げていない鉄剣を腰に下げている。

 善治郎に剣を持たせたところで威嚇以上の意味はないが、アウラは並の騎士程度には剣が使える。

 体格は良くても武術の心得がないフランチェスコ王子一人ならば、問題ではない。

 とはいえ、ここまでして後宮に入ることを希望したフランチェスコ王子の目的が不明なこともあり、不安は残る。

 当初は、アウラの近衛兵を護衛として後宮に入れることも考えたのだが、諸々のリスクとメリットデメリットを考えた結果なしとなった。

 フランチェスコ王子の後宮への立ち入りを認めた時点で、ある意味彼を信用したと言えるのだ。アウラや善治郎自身が剣を履くだけならばともかく、本来立ち入り禁止のはずの武装した兵士を一緒に連れるとなると、フランチェスコ王子の言葉を全く信用していない、という意思表示に写ってしまう。

「へえ、後宮って言ってもやっぱり双王国の後宮とは随分違いますねえ。もっとも、双王国の後宮も六歳までのおぼろげな記憶しかないから、はっきりとは言えないんですけどね、アハハハ」

 お上りさんよろしく、キョロキョロ興味深げに周囲を見渡しながら歩くフランチェスコ王子には、全く緊張の色が見て取れない。

 ひょっとして、やっぱりこの王子は本当にただの馬鹿なのではないか? そんな考えが善治郎の脳裏に、再び浮かんで来てしまうくらいに、馬鹿殿そのものだ。

 やがて、三人はカルロス王子の寝室までやってきた。

「私だ」

 すでに先触れが話を通してあるのだろう。アウラの声に、特に驚いた様子もなく、扉は内側から開かれる。

「アウラ陛下、ゼンジロウ様、フランチェスコ殿下。ミシェル様とカサンドラ様は奥でお待ちです」

 扉を開けた金髪の侍女は、そう言って恭しく頭を下げる。つい先ほどまでは、別の侍女がカルロス王子の看病に当たっていたのだが、アウラが先触れを出した際、彼女と交替するように命じておいたのだ。

 この金髪の侍女は、ファビオ秘書官、宮廷筆頭魔法使いエスピリディオンと並ぶ、アウラの側近中の側近である。決して表には出せないが、直接的な戦闘能力を持つ二人しかいない後宮侍女の一人でもある。

「ご苦労、カルロスの様子はどうだ?」

「ちょうど先ほど、お休みになったところです。喉が痛いらしく、起きてる間中泣いていました」

「そうか……」

 きつく唇をかんだアウラは、部屋の奥へと歩み進む。

 その後ろにフランチェスコ王子が続き、さらにその後ろが善治郎だ。

 部屋の奥では、小さなベッドの上で眠る愛する我が子――カルロス=善吉王子と、その左右に立つ乳母のカサンドラと、ミシェル医師が待っていた。

「…………」

 無言のまま、そのふくよかな体を折るようにして深い礼をするカサンドラとは対照的に、ミシェル医師は、容赦なく厳しい視線をアウラと善治郎に向け、言い放つ。

「アウラ陛下、ゼンジロウ様。事情は聞きました。
 しかし、あえて言わせていただきますが、軽率です。『赤斑熱』は一度かかれば二度とかからないたぐいの病ではないのですぞ。
 お二人には、私が許可するまではこの部屋に近寄ることを禁じたはずでしたが」

 ギロリと睨む初老の医師の眼力に、善治郎は思わず首をすくめる。それはアウラも同様であったようだ。

「すまん。だが、事態が変わったのだ。許せ」

 そう言い訳がましい口調で、弁明する。

 これ以上この場で説教をしても、ラチがあかないと悟ったのだろう。ミシェル医師はわざとらしく溜息をつくも、舌鋒をそこでおさめる。

「それで後ろの方が、フランチェスコ殿下ですか? カルロス殿下のために『治癒の秘石』を持ってきて下さったとか」

 一介の医師と、大国の王子。普通であれば、ミシェル医師が直接声をかけるのは無礼きわまりないのだが、今のミシェル医師はカルロス王子の主治医という立場がある。

 患者であるカルロスに関わる事情に対しては、かなりの強権を有している。

 そのあたりの常識は双王国も同じなのか、それともただ単に鷹揚なのか、

「ああ、そうさ。これだよ」

 フランチェスコ王子は、ミシェル医師の言葉を気にする風もなく、そう素直に答えて、右手に握る白い石を見せる。

 強い魔力を立ち上らせるその白い石を見たミシェル医師は、やっと少し表情を緩める。

「そうですか。カルロス殿下の症状は今のところ安定しておりますが、すぐに癒やせるのならばそれに越したことはありません。
『赤斑熱』は、『森の祝福』と違い、自力で克服したからといってなにか良いことがあるわけでもありませんからな」

 これまでずっと動揺の一つも見せずに、看病に当たっていたミシェル医師であったが、やはり十人に一人は死んでもおかしくない病に冒された第一王子の命を任されるのは、結構なプレッシャーだったのだろう。

 そんなミシェル医師の前で、フランチェスコ王子は笑顔のまま、一歩カルロスが眠る小さなベッドに近づくと、

「うん、任せてよ。カルロス殿下の病気は私がちゃんと癒やすから」

 そう言って、開いている左手でドンと自分の胸を叩いた。

「では、フランチェスコ殿下。せかして悪いが、初めてくれるか」

 さりげなく、いつでもベッドとフランチェスコ王子の間に割り込める立ち位置を確保したアウラがそう言う。

 フランチェスコ王子は、もう一度頷くと、

「はい、でも最初に一つ謝らなくちゃいけないことがあるんです」

 そう、話を切り出す。

「……謝ること?」

 あからさまに膝を曲げて、体のバネを蓄えるアウラ。

 後ろで反射的に、剣の束に手を伸ばす善治郎。

 ごく自然な動作で、少しだけ身をかがめ、いつでもスカートの中の内ももに吊してある短剣を取り出せるように身構える、金髪の侍女。

 息を呑み、状況の変化を見守るミシェル医師らを尻目に、フランチェスコ王子は笑顔のまま話を続ける。

「ええ、実は私はこれまで嘘をついていました。
 私は双王国の人間だから、『治癒の秘石』はたくさん持ってきてるって言ったけど、あれ嘘です。
 元々、双王国にはジルベール法王家の治癒術士の人がいますし、私達シャロワ王家の人間は王都から外に出ることはありません。そのため、私達シャロワ王家の人間が傷病を患ったとしてもすぐに治癒術士にかかることができるので、王家のための『治癒の秘石』ってほとんどないんです」

「では、その右手の白い石はなんだ? 『治癒の秘石』ではないのか?」

 殺気すら感じさせるほど厳しい表情と声で、鋭く問うアウラに、フランチェスコ王子は笑顔を崩さず、朗らかに答える。

「いえ、これは確かに『治癒の秘石』です。でも、これ一個しかない虎の子なんです。これを使ったら、ボナに怒られてしまいます」

「では、どうする?」

 さらに体を沈み込ませ、腰の剣に手を添えつつも、アウラは目線で後ろに控える善治郎に、「早まるな」と自制を促す。

 フランチェスコ王子の行動は確かにおかしいが、これがカルロスを害する目的でここまで来たとしては、さらにおかしい。

 いかに王位継承権も持たないとはいえ、現役最高の付与術士としての価値だけとっても、フランチェスコ王子は鉄砲玉に使うには、惜しい人材のはずだ。

 それこそ、今の状態に持ち込んでカルロス王子を害することが目的なのだとすれば、ジルベール法王家の分家治癒術士を送り込んだ方が、ずっと効率が良い。

 ということは、フランチェスコ王子の目的は、カルロスを害するものではない可能性が高い。

 そんな緊張の中、フランチェスコ王子は、『治癒の秘石』を握っている右手ではなく、空の左手をカルロスの眠る小さなベッドに向けると、

「こうします。『この者の体を蝕む病を退け。その代償として我は、命霊に魔力二百八十六を捧げる』」

 そう唱えた。

 フランチェスコ王子の左の掌から、淡い魔力光がカルロスに降り注ぐ。

 効果は劇的に現れた。『赤斑熱』はその名の通り、顔や体のあらゆるところに、赤い斑点がポツポツと浮かぶのが特徴である。

 現に、カルロスもつい先ほどまでは、その愛くるしい顔に痛ましいほどたくさんの赤い斑点を浮かべていた。

 だが、今は斑点が綺麗さっぱりなくなっている。耳を澄ませば、苦しそうだった寝息を穏やかなものに変わっていることが聞き取れるかもしれない。

 フランチェスコ王子の『魔法』が効果を示したのは一目瞭然であった。

「『治癒魔法』……?」

 しばらくして、目の前の現象が何であるかやっと理解した善治郎は、ポツリとそう呟く。

「馬鹿なッ!?」

 一方アウラは、善治郎が初めて見るくらいに驚愕を露わにした表情で、呆然と立ち尽くす。

 アウラが驚くのも無理はない。

 フランチェスコ王子は、シャロワ王家の人間だ。それが、ジルベール法王家の血統魔法である『治癒魔法』を使ったのだ。この世界の常識では、絶対にあり得ないと言ってもいいくらいに非常識な出来事である。

「ええと、詳しい説明をしたいので場所を移してもよろしいですか? あ、ただし口止めの必要があるので、この部屋にいる人は全員しばらくの間、拘束をお願いします」

 そんな中、当事者であるフランチェスコ王子は、一人飄々とした態度を崩さす、そう宣うのだった。
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