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理想のヒモ生活 作者:渡辺 恒彦

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第三章1【避暑の昼休み】

 善治郎がアウラから、『言霊』の存在を教えられてから、数日後。

 カープァ王国の気温は日増しに上昇を続け、ついに一年でもっとも暑い季節が始まろうとしていた。

 正確な気温は分からない。持ち込んだ温度計は、四十度越えを記録した日以降、精神衛生上の理由から、見えないように裏返しにしてある。
 体感的には、四十度越えの日よりもさらに気温は上昇しているように感じられるが、吊してある温時計をひっくり返して確認するだけの勇気が、善治郎にはもてなかった。
 ここ数日は、流石に「不健康」などとも言ってられず、善治郎は後宮の木戸を全て閉め切り、真っ昼間からLEDスタンドライトを灯して一日を過ごしている。

 だが、そんな溶けるような暑さも、善治郎にとっては悪い事ばかりではない。
 まともに活動しては、死人が出かねない気温が続くこの時期、王宮では正午から約三時間にわたり、休息時間を設けているのだ。
 おかげでここ数日、善治郎は夜だけでなく、昼も妻であるアウラと後宮で二人の時間を過ごす事ができていたのだった。






「ふう、暑かった。執務室と比べれば、ここは天国だな」

 木戸を閉め切った後宮の一室に入ってきたアウラは、まず真っ先に迷うことなく冷蔵庫へと向かった。

「あ、アウラ。お疲れ様」

 冷蔵庫をあさるアウラに、善治郎はソファーの上に寝っ転がって携帯ゲームをピコピコやりながら、声を掛ける。

「おう」

 アウラは善治郎に背中を向けたまま短く返事を返し、手慣れた様子で製氷室からザラザラと氷を取りだし、冷蔵庫横に供えてあるかき氷機に入れる。
 かき氷機の取っ手をグルグルと回し、ガラスの器に山盛りのかき氷を作ると、冷蔵の中で冷やしてある赤い瓶に入ったイチゴのシロップを遠慮会釈なくドバドバとかけまくる。

 ゲームをやりながらも、目の横でその様子を見ていたのだろう。善治郎が、慌てたように抗議の声を上げる。

「ちょっと、アウラ! それ、かけすぎ!」

 しかし、アウラは全く動じず、

「けちけちするな、減るものでもあるまいし」

 そう言って、キャップを閉めた苺シロップの瓶を冷蔵庫に戻し、かき氷を入れたガラスの器を片手に、善治郎が寝そべるソファーへと歩いていくる。

「減るよ! これ以上ないくらい明確に減るよ!」

 抗議の声を上げつつ、善治郎はパタンと携帯ゲーム機を閉じて、寝そべっていた体勢からソファーに座り直し、アウラが座るスペースを空ける。
 向かいにもう一つ大きなソファーがあるというのに、わざわざ座り直してまで同じソファーに座るあたり、なんだかんだ言っても夫婦仲はうまくいっているようだ。

 アウラは、苺シロップで真っ赤になったかき氷を長い銀のスプーンですくい口元に運ぶ。

「大丈夫だ。今、城の料理人達に果実の絞り汁と黒砂糖を使い、似たようなものを作らせている」

 自信を持ってそう答えるアウラに、善治郎は興味を引かれた口調で、

「へー、それって美味いの?」

 そう、問いかける。

「……だから、このイチゴシロップは私がもらう。お前は、城の料理人達が丹精込めて作った特製果実砂糖汁を使うがよい」

「ねー、それって美味いの?」

「……おう、頭がキーンとなった。このキーンがたまらぬ」

「なあ、結局今のところうまくいってないんだろ……」

 婿殿のジト目に少し罪悪感を覚えたのか、女王は目を逸らしながら、白状した。

「うむ……向こうの世界の食文化というのは、実に優れているな。まったく同じものを再現するのは、難しそうだ」

 素直に白状した女王の言葉に、善治郎はため息をつく。どのみちあまり期待はしていなかったが、ちょっとがっかりだ。

「はあ……だったら、大事に使おうよ。イチゴ、メロン、ブルーハワイ、それぞれ一本ずつしか持ってきてないんだから」

「うむ、イチゴは任せろ」

「いや、俺もイチゴが一番好きなんだけど、って、まあいいや」

 衣食住の全てを嫁に養って貰っているヒモ旦那の身としては、それくらいは嫁に譲るのが夫婦円満のコツというものだ。
 善治郎は、携帯ゲーム機をテーブルに置くと、ソファーから立ち上がり冷蔵庫へと向かう。
 そして、冷蔵の中で大量に冷やしてある絞った濡れタオルを一つ取り出すと、ちょうどかき氷を食べ終えたアウラへ放る。

「アウラ、汗」

「おう、すまぬ」

 水分を取って全身から汗が噴き出ていたアウラは、素直に冷タオルを受け取ると、それで顔や身体の汗を拭う。

「…………」

「…………」

 真っ昼間ではあるが、現在この部屋は外の熱気と陽光を遮断するため、木戸を閉め切ってかわりにLEDスタンドライトを灯している。
 まるで夜ような雰囲気の中、服を着たままとはいえ、タオルで身体の汗を拭く愛妻の姿に、善治郎は自然と視線を奪われる。
 そんな善治郎のあからさまな視線に気づいたアウラは、艶やかに笑いながら、もったいをつけるように少し善治郎に背を向けように身体の向きをずらし、話しかける。

「しかし、私はゼンジロウが持ち込んだものの恩恵に授かるばかりで、礼を返せていない気がするな。何もしなくてよい、などと言っておきながら、礼儀、常識、魔術と学ぶことを強要しているようなものであるし」

 アウラの言葉は事実である。毎日、口にする冷えた飲み物。氷塊と扇風機を使った涼を取る仕組み。常夏で知られるカープァ王国でももっとも暑いこの時期を、これほど快適に過ごした記憶は、アウラにはない。
 強いて比較するとすれば、まだ幼子だった頃、水辺の高山に築かれた王家専門の避暑地で過ごした夏くらいのものだろうか。

「いいよ、その辺は気にしなくて。持ち込んだものはどれも俺が自分で使いたくて持ってきた物だし、仮にも生まれ育った国とは違うところに根を生やすんなら、最低限その国の文化風習を覚える必要があることぐらいは、最初から覚悟してたから」

 一方、そう答える善治郎の言葉にも、嘘偽りはない。いかにアウラが「なにもしなくていい」と約束してくれていたとは言っても、食べて遊んで寝るだけの座敷犬のような生活が出来る可能性は、そう高くないと最初から踏んでいた。

 地球の歴史を見れば、王の側室のような日陰者でも、公的な行事には駆り出されるのが常だ。そう考えれば、最低限、王室に恥をかかせないくらいに、常識や国の歴史を学ばされることは必然と言える。

 それに、就業時間が日没に左右されるこの世界での『仕事』など、日付が変わる前に帰宅できれば「今日は早く帰れた」と感じる善治郎のサラリーマン生活と比べれば、どうということもない。

 そんな事情を察することは出来ないアウラは、汗を拭き終えたタオルをテーブルの上に置き、念を押すように尋ねる。

「のう、ゼンジロウ。なにか、不自由しているものはないか? 私の立場を正しく理解してくれているお前が、意識的に他者との接触を断っているのは分かっている。そうすることで私が助かっているのは事実なのだが、こうもお前の自由を束縛したままで、なにも返せないのは心苦しい」

 善治郎が婿入りしてからそろそろ一月弱。我が儘も言わなければ、迷惑も掛けてこない婿の言動が、自分と自分の妻の置かれている立場を十全に理解した上で、あえて迷惑を掛けないよう自制していることに、アウラもいい加減気づいている。

 ついでに言えば、侍女や専属料理人など、後宮に務める使用人達の善治郎に対する評判も今のところはすこぶるよい。

 手間が掛からず、我が儘を言わず、威圧的な言動も取らない主人だ。使われる身としては、これほど楽な相手はいないだろう。
 聞き取り調査を終えた後、アウラは思わず厨房の責任者と侍女頭にわざわざ「現状が当たり前だと思わないように」と警告をしたほどだ。
 人間とはなれる生き物である。手間の掛からない主人になれきった使用人が、主人の唐突な我が儘に対応できなくなると言うのは、意外とよくある話である。
 どうもアウラの基準では、この異世界から連れてきた婿殿は、必要以上に周りのことを気にしすぎて、自分の欲求を押し殺すくせがあるように見える。

 しかし、そうは言われても善治郎としては、これと言った要求はない。

 確かにそろそろ後宮の外に出てみたいという欲求はあるが、そうすることで生じる面倒な事態を考えてもなお、押し通したいほどの我が儘ではないし、暑さや食べ物に対する不満は、いかにアウラが女王でもどうにか出来るものでもあるまい。
 そうして、自己完結してしまう『物わかりの良さ』が、アウラからするともどかしいのであるが、元々も生まれも育ちも庶民に過ぎない善治郎には、思うがままの我が儘を口にすることを『見苦しい』と捉える価値観があるため、話は簡単には進まない。

「まあ、今のところは満足してるよ、うん。不満があったらちゃんと言うから」

「不満を言うのではなく、希望を言って欲しいのだがな。まあ、いい。とにかく、遠慮は無用だぞ。私はお前の献身に少しでも報いたいのだ」

 優しげに笑い、そう言うアウラの笑顔に、善治郎は愛おしいと思う気持ちと同時に、ちょっとしたイタズラ心を覚える。
 チラッと横目で現在時刻を確認し、昼休みがまだ十分に残っていることを確認した善治郎は、ソファーに座っているアウラに近づくと、冗談めいた声を上げてアウラに飛びついた。

「よし、わかった。そこまで言うなら……身体で払え!」

 冗談めかしてぶつかってくる夫の意図を瞬時に察した女王は、両手を広げて夫の行為を受け入れた。
 抱きついてくる夫をしっかりと受け止め、ガッチリとその身体を抱きとめる。

「分かった。……ンン」

 そして、両腕をしっかりと善治郎の背中に回し、情熱的に唇をあわせる。

「…………」

 しかし、夫の反応は予想外のものだった。毎夜であれば、こうして抱き合えば、積極的に口を合わせ、こちらの肢体に手を這わせてくる筈の夫が、なぜか人形のように身動きもせず、身体を硬くしている。

「……どうしたのだ? ゼンジロウ?」

「…………」

 善治郎は無言のままアウラから離れると、部屋の隅に移動し、しゃがみ込む。

「ど、どうしたのだ、ゼンジロウ? なぜ、そんな部屋の隅っこで絨毯を指で突きながら、暗い顔をしている?」

 情熱的な抱擁をしてきたかと思うと、一転して落ち込む旦那の急変ぶりについて行けないアウラは、戸惑いの声を上げる。
 その声に、善治郎は部屋の端っこで小さくなり、のの字を書いたまま、嗚咽混じりに声で答えるのだった。

「……いや、確かに俺も全力じゃなかったよ? 本気でぶつかった訳じゃないよ? でもさあ、嫁さんソファーに押し倒そうとしたのに、ガッチリ正面から受け止められて、あまつさえ押し倒そうとした事実にも気づかれなかったって……」

 別段善治郎は、肉体的頑強さをプライドのよりどころとする『マッチョ』な精神構造をしているわけではない。しかし、それでもやはり、一人の男として、嫁に自分の体当たりを受け止められてしまうというのは、ちょっと悲しいものがある。

「あ……」

 ゼンジロウの物言いに、アウラはあからさまに顔を引きつらせた。

(しまった。やけに情熱的に抱きついてくると思ったら、あれは私を押し倒すつもりだったのか)

 王宮騎士ほどではないが、長年実戦も経験しているアウラの身体は、戦士として十分に鍛えられている。自分より少し大柄とはいえ、善治郎のような素人の突撃ぐらいは、笑って受け止められるくらいの体力はある。

 しかし、こちらの世界は現代日本以上に、男社会であり、また肉体的頑強さを美徳とする価値観がある。嫁を押し倒そうとして受け止められてしまった夫の悲哀を、アウラは善治郎以上に深刻にとらえる。

 どうすればいいのだろうか? 意図せずに、夫に恥をかかせてしまった女王はしばし考え込む。そして、

「き、きゃあ」

 困り果てたアウラは、わざとらしい声を上げて、自らソファーに倒れ込んだのだった。

「遅いよ! 俺そんな時間差で効果現れる特殊なタックルした覚えないよ!?」

「……きゃあ」

 善治郎の突っ込みにもめげず、アウラはソファーに倒れたまま、わざとらしい悲鳴を上げ続ける。

「いや、だから……」

「……きゃあ」

「…………」

 悲鳴を上げるアウラが、ソファーの上で身をくねらせると、その拍子に深いスリット入ったスカートがめくれ、小麦色のその足が太股の半ばまであらわになる。
 毎晩見慣れている光景ではあるが、これはよいものだ。

「……うりゃあ!」

「キャッ!?」

 欲望に負けた善治郎は、結局、時間差タックルが成功したことにして、ソファーに倒れる愛妻に覆い被さっていったのであった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 それから約一時間後、ソファーの上で、共にいい汗をかいた善治郎とアウラは、再び冷蔵庫から取りだした冷タオルで身体の汗を拭いただけの半裸姿で、勉強会へと突入していた。

 善治郎がパソコンに向かって座り、アウラはその斜め後ろに立っている体勢だ。
 善治郎が座るパソコンの横には、アウラが持ち込んだ竜皮紙の束が置いてある。
 竜皮紙に書かれている内容は、去年の国内の地方別納状況である。
 納税関係の書類というのは、基本的に『地名』と『個人名』と『数字』だけで構成されているため、この世界の文字と発音を覚えるのに最適だというのが、アウラの主張だ。
 その意見を鵜呑みにしたわけではないが、善治郎は素直に毎日、アウラが書かれている単語を一つずつ指さし、読み上げる様をデジカメの動画で撮影し、その画像を頼りにパソコンの表計算ソフトに竜皮紙に書かれている内容を、打ち込んでいった。
 総数三十からなるこの国の文字も、すでに数日前に全て、マウスでドット絵を描く要領で『外字登録』をすませ、キーボードの各文字に割り振っている。
 一文字打つ度に変換しなければならないので非常に非効率的だが、こうすることで一応パソコンでもこの世界の文字を打ち込むことが出来る。

 そうやって善治郎は、アウラから受け取った税収書を、この世界の文字表記と、カタカナ及びアラビア数字表記を並列して打ち込み、文字の読み方を一人で勉強するための資料を作成したのだ。
 わざわざ昨年の税収書類を用いる辺り、アウラには他の思惑があるようにしか思えないのだが、表向きの理由はそうなっている。

「それで、ゼンジロウ。書類は完成したのだな?」

「おう。昨日のうちに打ち終わったよ。今、プリントアウトする」

 善治郎は、ここ数日の努力の結晶である表計算ソフトに打ち込んだデータを、プリンターで印刷する。このプリンタは捨てるのももったいないので持ってきた代物だ。コピー用紙はともかく、インクの換えが各色予備が三つずつしかない貴重品なのだが、どのみち使わなければ目詰まりを起こして、駄目になるだけだ。
 プリンターに関しては特にけちるつもりもない善治郎は、景気よく昨晩打ち込んだデータをプリントアウトしていった。

 機械が自動的に紙を吐き出す様子を興味深げに見ていたアウラであったが、やがて用紙の排出は終わったのを確認し、その紙の束を手に取り、ザッと目を通した。

「よし、それじゃ読みが正しいか確かめてみるか。ゼンジロウ、一枚目から読み上げていってくれ」

「分かった、始めるよ、最初は、アウベニス伯爵領、税収は竜皮が一千枚。麦が二千袋。木材が……」

 プリントアウトされた用紙をアウラが見ている横で、善治郎はパソコンのディスプレイを直接見て、読み上げていく。
 いちいち頷き、相づちを入れながら聞いているアウラは、途中発音や数字がおかしいところを指摘する。

「あ、そこは『ボニージャ子爵』ではなく、『ボニーヤ子爵』だ」

「オッケー、ジャじゃなくてヤね」

 確かに地名、家名の類は固有名詞のため『言霊』が働かず、誰が口にしてもちゃんと正しい音が耳の届くので、文字に慣れ親しむのは良いかも知れない。しかも、王家の税収書に名が乗るような名門貴族の存在を、善治郎が優先的に覚えられるという副産物まで付く。

 そう考えればこの、『税収書』で文字の基本的な読み方を覚えるというのも、あながち間違ってやり方ではないのかも知れない。
 単語を百も二百も覚えれば、例え知らない単語でも、何となく文字の読み方は分かってくるものだ。
 どのみちこの世界には、現代日本の小学一年生用『国語の教科書』のような、初心者が文字を覚えるために最適化した書物は存在していない。

 やがて、税収書を使った文字の読み方講座が無事に終わったところで、最後にアウラがふと疑問に思っていることを口にする。

「なあ、ゼンジロウ。所々数字が『赤文字』で印されていたり『青文字」で印されていたりするところがあるのだが、これは一体何なのだ?」

 アウラの問いに、善治郎は珍しく含みのある笑みを持って答えた。

「ああ、それは実際に書かれている数値と、表計算ソフトが計算した数値が異なっているところを色別にして分かりやすくしてあるんだ。赤文字は少なく間違っているところで、青文字は多く間違っているところだよ」

「ほう……」

 善治郎の答えに、アウラは表情の消えた顔で、小さく声を上げる。

 一般的に、王家に提出される税収書とはいえ、その数値が間違えていないか、王宮サイドで全て再計算しているわけではない。
 なにせ、数が数だ。とてもではないが、全て再計算などしていては、竜皮紙も人件費も馬鹿のようにかさんでしまう。
 通常は、ザッと目を通し、一目で分かるくらいに数字がおかしいのを洗い出した後は、抜き打ちでランダムに数枚取り出し、再計算するだけで済ませている。

 その抜き打ちのランダム抜き出しも、「なぜか」国内の大貴族や調査官と懇意にしている貴族の領地はほとんど対象にならないという有様だ。

 しかし、表計算ソフトを駆使する善治郎ならば、この程度の計算は、一人でも全く問題にならないレベルである。なにせ、やることは基本となるフォーマットを作って、そこに数値を間違えずに突っ込んでいくだけなのだから、ある程度会社で事務仕事をこなしたことのある人間ならば、誰でも出来る。

「ゼンジロウ、これを少し借りてもよいか?」

 アウラのその言葉を、十分に予想していた善治郎は出来るだけ邪気のない笑顔を取り繕い、答えるのだった。

「うん、いいよ。手加減は忘れずにね。って、これは俺ごときが言うことじゃないか」

「分かっておる」

 頭を掻く婿の言葉に、女王は苦笑を持って答えたのだった。
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