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名犬ジョディ
作:まっく


無骨に見えて本藤雪紀は目端の利く男である。

「あれ菊野さん。彼氏でも出来た?」

「ぅ……ぇ、な、なんでわかるの?」

ランチを済ませてコーヒーを含みながら目をやった、彼女の指先への質問は相当に突拍子もないものだったらしい。菊野はティースプーンで掬いあげていた角砂糖を梃子の要領でどこぞにぶっ飛ばしてしまった。

『付き合っている事は内緒にしておこうね』なんて、研修先で出来た新しい恋人と約束させたのに。結局のところ自らその秘密を暴露して、語るに落ちてしまっていた。

「だって、ホラ、薬指」

「え?」

指輪などつけていない。だいたいそんなに自慢げにしていて、内緒にしておこうも何もない。

「ネイル、指輪みたいにしてるでしょ?」

『あ』と言う口になった。

そうだ。昨日ネイルアートの教室で『自分なりのデザインを作ってみてね』と講師の女の子に言われた菊野は、ちょっとしたイタズラ心で大き目のラメを5つ、横に並べてデザインしたのだった。

「あぁ…あの、えっと、これは」

上手い言い訳を探そうとする分、もう言ってしまったも同然である。

結局、他に聞いている人がいなかったせいもあって『内緒ね』と雪紀に懇願する羽目になった。

「大丈夫ですよ。他には言いませんから」

内緒にする必要なんてないのにな、なんて呟きながら雪紀は苦笑いを浮かべた。

雪紀の観るところ、菊野真奈穂と言う人は恥ずかしがり屋で、口下手で、それがゆえの人見知りから冷たい印象を持たれがちである。
でも実際には、かなり甘えたい願望が強いタイプだと思うし、だから彼氏はいつも年上になってしまう傾向があった。

仕事の上では慎重でしっかり者だから「決してばれないようにしよう」と決めて、色々と気を張っているのかも知れない。けれどその一方で自分の幸せを密やかに自慢したくなったと言うか、自分のすぐ傍で、薬指に細工してまで確かめたくなったというのが…まあ、コトのいきさつではないだろうか。


なんでだろう…雪紀には菊野の”そういうこと”が分かる時があった。

『昔ホレてたからかな』

「や、やだな、もう」頬を膨らませて真っ赤になっている先輩を見てボンヤリ思う。

子供っぽいといったらそれまでだが、クールな才媛と思われてる彼女だって、ほのぼのした一人の女の子だって事だ。


『……惚れていた相手に彼氏が出来る…か。』


考えれば、もう少し悔しくても良いような気もするのだが、しかし存外悲しくはなかった。

幸せならそれでいいかなあ、とか思えてしまう。

男としてどうなんだよ?
どこぞの名犬でもあるまいし、そんなに”イイコ”でいいのかよ?
なんて営業の前田あたりに知られたら、また説教くらいそうだな…。

でも悪いな、そんな事ァ知らないよ。
なんとなく、それでいいし、そんなもんだろう?


「今度紹介して下さいね・・・・てか、知ってる人だったりして?」

「ぅええっ、ち、ちがうわよ」

「まあまあ。デュベルのレッドか、ヒューガルデンあたり一杯オゴリでいっすよ」

「ええ!そ、そんなあ」

かわいい年上からかって、あんな困った顔見るのも結構楽しいもんな。

そんな風に思う今日この頃である。


昔書いた話を勢いで載せてみました…が大後悔。なんて読みにくいのこれ!!
毎度、意味とかテーマ性に欠けてますが、良かったら感想下さいませ。













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