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神様ですが何か?

作者: 春猫

下品なネタと感じるものが嫌いな方は回れ右してください


 朝、起き、いつもの様に脱ぎ捨てると消えていく室内着を意識の外に置きながら、気が付くと必ず用意されている衣装を(そう、服では無く衣装なのだ、装束と言ってもいい)身に纏う。


 鼻のすぐ下まで伸びて口元を覆い隠すタートルネック。

 その上に着込んだ上下共に白の和服と袴。


 白い足袋に白木の雪駄をつっかけ、何時の時代の人間だよ、おい、と言いたい格好となっているが、この21世紀になって既に相当の時間が過ぎて、漫画や映画の中でしか見なかった様な服を普段着にする人間すらいる現代日本においても、それほど珍しい格好ではないのだ、実は(・・・タートルネックを除く)。


 俺と同じ様な、お仕着せの衣装を与えらた者の数、日本全土で800万人。


 いや、正確には八百万柱と言うべきか・・・。


 そう、俺を含むこのどこかおかしな和服ベースの衣装の連中は・・・神様なのである。




 事が起こったのは今から数年前の事である。

 当時の俺は当然神様なんて代物では無い、ごくごく普通の一般ピープルであって、事の起こり等には全く関知していなかったのだが、この日本におわします神々の皆様が「そろそろ引退して楽隠居したいよねぇ」などと神無月に集まった際にノリで決めてしまったらしく、その翌年の元日、テレビでは行く年来る年が流れ、除夜の鐘の余韻が漂う中、それまでごく普通の俺同様のモブであった方々が、俺と同じ様に色々な神様にされてしまったのだ。


 隠居した神様方は、人間に混じって都会から田舎まであちこちにごく普通に暮らし始めたが、突然、神様の役割を割り振られてしまった側としてみればたまったものではない。

 そこら中の山や川は言うに及ばず、様々な生き物、モノ、現象、関係・・・・・・星やら花やらの自然系の神様なんかはいいけど、トイレやら押し入れやら下駄箱やら、トイレットペーパー、引きこもり、ニートなんてのまで神様が居る始末。


 特に俺なんかは自分が何の神様なのか口にしたくも無いレベル。

 もう、「いじめか!? これイジメだろ!」と旧・神様に殴りかかっても許されるんじゃないかってくらい。

 これが中学生や高校生の頃だったら自殺を図ったであろう事間違いない。

 そりゃ八百万も居るんだからこんな神様も居るんだろうけど、どこで生まれてどう祭られてたんだよ、と大声で喚き散らしたくなったのも無理の無い話だと、未だに自己紹介後同情の眼差しで見られる日々なのである。


 しかしながら、まあ、なんというか、実に日本らしい話なのだが、一月もしない内に皆慣れてしまった。

 

 海外からも取材なんか来たり、近くの五月蝿い国の方々は「なんで日本だけ!」とか喚き散らしていたけれど、日本の人々があまりにも当然の事として、ごく普通に神様になっちゃった連中と元神様を受け入れちゃった結果、俺も日本社会の一員として(主観的には)ごく普通に生きていけるようになったのである。


 神になる前はサラリーマンをやっていたが、神になってからは神とは言っても神社を作って盛大に祀る様な神でも無いしとフラフラしてる内に「是非、ウチに」と誘いのあった某医師会で半分事務、半分神様仕事といった感じで働いている。


 神様なんで、呼んで貰えれば途中経過無しに移動出来るんで出勤は楽。

 その日、一番最初に出勤してきた職員が、俺の仕事場でのベースとも言うべき神棚にお供えをしてくれるとお呼びがかかったと看做され移動出来る。

 大体が新人さんか、定年間際のおっさんかの二択である。

 人間だった時以上に女の子に縁が無くなってしまった今の俺にとって、今年入った新人の女の子はオアシスと言っても過言ではない。


 まあ、人間じゃないんで敬して遠ざけられてますけどねぇ・・・。


 

 今日はまだ時間に余裕があるけど、家の前まで出て少しストレッチをしていたところ、日本で一番偉い方と遭遇してしまった。


 アマテラス様・・・。

 なんか某ゲーム見て面白がった先代の天照様がノリで選んだだけあって、元々が人間じゃありません・・・うん、犬なんだ、今のアマテラス様。


 三丁目の大竹さん家で飼われてた雑種のアミちゃん(♀)当時5才。

 なんか大型犬の血が色々混ざってるっぽくて、コリーっぽい鼻面の長さと毛の長さ、ハスキーっぽい目つきの悪さ、シェパードっぽい筋肉質な体を持ったワイルドな娘さんだったんだけど、アマテラス様になって全身の毛が白く、しかも限りなく白に近い黄色光をうっすらと帯びて物凄く神々しくなっちゃいました。


 お陰で飼い主さん一家は神職に、犬小屋は神社になっちゃいましたが、神主さんになった元ご主人様にブラッシングをしてもらうのが楽しみ、ついで散歩が大好きという犬の頃の習性も残りまくり、神になったせいで人語も解し、知性も高くなったけど甘えん坊さん。


 なもんで、「お気に入り」に遭うと、こうして・・・・・・う、わふ。

 

 ・・・・・・ベロベロに嘗め回してくださいます、はい。



 まあ、ご利益は有り過ぎるほど有りーの、遥か彼方の位置とは言え、神に取っては上役で有りーの、というわけでガンジーさんよろしく無抵抗主義に徹せざるを得ません。


 実にフランクでフレンドリーな神様です、はい。


 まあ、恐ろしい事に日本なんで、表でのファンシー化、裏での萌え化が既に済んで居て、某掲示板(この掲示板の神様まで居るんだ・・・)では「アマテラス様、萌え~」などという書き込みやら【今日も】アマテラス様の聖地巡礼スレ第124スレ【モフフワ】などというスレッドが立ったりと、前・天照様が嫉妬で軽くヒキコになる程の人気です。


 

 ・・・お、そろそろかな、呼ばれてる感じがする。


 そんじゃ、今日も出勤、お仕事頑張りますか・・・。


 え?


 俺が何の神様かって?


 それ聞いちゃいますか、ここで?


 この格好見て分からない?


 あー、うん。



 ・・・の・・・の神様。


 え、聞こえないって!?


 よーっし、なら大声で言ってやる、耳かっぽじって良く聞きやがれ!!!


 俺はなぁ!


 包茎の皮の神様だよっ!


 なんで見てわからねぇんだ?


 あちこちの包茎手術の広告にも出てるだろうが、俺が!




ラブコメにも学園モノにも長編にしても使えそうな世界設定をあえて短編一発ネタにしてみました

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― 新着の感想 ―
[一言] うはwww これはいい短編! シリーズ化でほかの神様も見たいな。
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