蘭-side story3
蘭「・・そ・・・園子・・!」
物の隙間から、園子が見えた。
でも園子はこっちに気付きはしない。当たり前だ。
蘭は倉庫にある跳び箱の奥で段と段の隙間から見ているのだから。
先輩達は、園子の登場にほっておく訳がなく、
一瞬にして園子の周りを囲んだ。
しかし園子はそんな事にも怯えたりせず、
「蘭を返しなさいよ!!」 と、先輩達に言い放った。
そんな事をされては麗子が怒らないはずもなく、
メンバーの全員が園子に掛かって来た。
「・・・・っ!!!」
最初は何とか避ける事ができていた園子だけど、
やはり人数的に園子は不利で、直ぐに殴られてしまい、その場に倒れた。
私は、そんな園子をただただ見ている事しか出来なくて、
我慢ができなくなり、精一杯の力で叫んだ。
「もう、もうやめて!!やめて下さい!!!
お願い・・・もう、園子を・・傷つけないで・・・・」
私はその場で必死に叫んだ。
園子の前に出たいけど、足が上手く動いてくれず、悔しくて涙を流しながら叫んだ。
・・そして、私の声が聞こえたのか、園子が顔を上げた。
「・・蘭・?・・居るの・?・今・私が・・蘭を助けるから・・・」
園子が頑張って声を出している。でも、その間でも先輩達は容赦なく園子を殴る。
「・・蘭・っ・もし・・私がダメなら・・っ・・絶対に・・絶対に・・!!
・・新一君・・連れて来るから・・!!絶対・・絶対に蘭を助けるんだからぁー!!!!!」
そう叫んで、園子は気絶してしまった。
涙が止まらない。涙より感情がついていけない。
何故、園子は自分を犠牲にしてまでも私を助けようとしたのか。
・・でも、それ以上に今は・・悲しかった。
それから翌日、園子は高校には登校して来なくなった。
まぁ、正確に言えば来れなくなったのだけれど。
次の日、運命の日が来た。
私の精神は、もう限界という所まで来ていた。
もしかしたら倒れる可能性だって、あるかもしれない。
そんな時だった。教室のドアが思いっきり開いた。
夜の暗さでその人物がよく見えない。・・けど、分かってしまった。
「・・・お前ら、蘭に何をした・・・」
この声は・・一番会いたくて、待ち望んだ人の声・・
と同時に、先輩達が慌てだした。
不思議なくらいに落ち着いていた麗子さんを省いて・・・
しかも、いきなり彼女はもう私に関わらないと言う。
麗子さんの話しが終わる前に、彼が私の方へやって来た。
彼・・新一が、今目の前に居る。でもそこで私の意識が消えかかった。
最後に覚えているのは、私が新一に、お姫様抱っこをされた事。
でも私が意識を取り戻したのは思っていたより早く、
まるで眠っていたかのような感覚だった。
目を開けて一番に視界に入って来たのは、やはり新一。
まだお姫様抱っこをされているのだから、あまり時間は経っていないのだろう。
そしたら二日間会えなかった園子が私の前に来た。松葉杖が見え、とても痛々しい。
園子に手伝ってもらって新一の腕から降り、次に視界に入ったのは、
新一に良く似た男の人と、すごく綺麗で美人な女の人。
私と目が合った瞬間、女の人の方が私に話し掛けてきた。
どうやら彼女は「宮野志保」という名前らしい。
話しの内容からして、志保さんは医療関係の人なのかな?
とりあえず私は園子と共に志保さんに着いていく事にした。
私は、隣に立っている新一が気になり、
「ありがと・・・ね」と一言言って部屋に入っていった。
何故か志保さんは「先に入ってて」と言って戻っていったけれど。
新一の家なのに、部屋はもうお医者さんのように薬などがたくさん置いてあった。
すると志保さんが笑いながら戻って来て、
「とりあえず、一番酷そうな背中から診ようかしら?」と言った。
その一言で分かった。志保さんの瞳は、まるで新一、ううん、新一以上に
相手の思っている事が分かる人なんだと思った。
部屋に置いてあったイスに座り、上半身の服だけ脱いだ。
そしたらいきなりの園子の叫び声。途端に新一と男の人が部屋に入って来た。
・・ってちょ、ちょっと!私上の服脱いでるんだけど!!
背中の方を向いているのが何よりの幸いだったけれど。
ふと、志保さんが口を開き、そこから私を省き、みんなの推理ショー(?)が始まる。
その中で、「片吹敏也」という人物の名前が出てきた。
多分、今日麗子さんが言ってた「敏也」って人と同一人物なんだろう。
そしたら園子が私の告白の話をしだした。
もしかして、あの時の先輩が、「敏也」って人?
麗子さん、あの人が好きだったんだ・・・
それなのに・・私は・・断ったせいで・・・
そしてみんなの推理の結果、片吹さんは病院にいるみたい。
と、ここで推理は終わり、新一が私の話題に変えた。
新一には私が今、何を考えているのか分かるみたいだ。
私と会ってない間、新一は随分変わったな・・・・。
私の怪我の完治は2週間程掛かっちゃうのか。
高校も、休まなければいけないんだって。
そんなに私の怪我、酷いのかしら?
そして新一の部屋。みんなが帰った後、携帯電話を見たら、
お父さんはまだ事件が解決できそうになく、もう一週間程帰れない、とメールが来ていた。
私は今、新一のベッドを借りて、眠っているのだけど・・・ん?
誰か私の前で立っている。・・・だ、誰?
我慢できなくて、起き上がったら・・新一の姿が見えた
・・・って事は、さっきのは新一?って言っても一応ここは新一の家なのだから普通か。
・・って、あ!私、今まで新一を待っていたのに何にも言ってなかった!!
今からでも、間に合うかな?
とりあえず笑顔で「おかえり」と言ってみた。
一瞬、時が止まった。
気付けば新一の腕の中にいた。
理由を聞いても新一は何も答えない、でも分かってしまった。
新一の肩が震えていた事に。だからこれ以上何も訊かなかった。
とりあえず新一を慰めるように新一の背中に腕を回した。
途端、私の頭の中で、一つの考えが浮かんだ。
もしかしたら、志保さんは、新一の・・彼女なのでは?
そう考えれば、次々と当てはまっていく。
あの部屋の時、志保さんが笑って入って来る時も、志保さんの後ろには
真っ赤な顔をした新一が居たのが見えた。何かあったのかな?
だから今、志保さんに申し訳なくて震えているの?
だとしたら私は二人の・・邪魔をしている。
なのに私ったら・・新一にこんな事してもらって・・
ごめんなさい、ごめんなさい。
もう「新一」なんて呼んじゃ志保さんや、新一に悪いよね・・
だから、私は新一に向かって、
「工藤君」
と言った。あまりの辛さに、思わず顔を伏せた。
なのにシンイチはさっきよりも強く抱きしめる。・・・・どうして?
考えるより先に、シンイチは「ごめん」と何度も何度も言って来る。
何で?どうして?意味が分からないわ。
でも、シンイチの心の中が分かった気がした。
シンイチは今、自分を責めている。
私は助かっているのに助かってないと思っている。
だから、「間に合ったのだと」シンイチに言ってあげた。
そして、今日の疲れがたまっていたのか、
私は深い眠りに堕ちて行った。
明日という、希望に期待して・・・・・
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