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おくじょうのかみさま

第1話 ひろいおそら

けんじ君は元気な小学二年生。
いつも休みの日は皆と元気に走り回っているけんじ君。
そんなけんじ君がある日、ふとした事から小高い山へ登ることにしました。
広い景色を思い存分見たくなったのです。
しかし、一人で山に行くのなんてお母さんはきっと危ないと言って
行かせてくれないにちがいありません。
 でもけんじ君はどうしても山に行きたかったので前日からそぉっと準備をして、
翌朝早くから家を飛び出しました。
自転車で山のふもとまで行くと、わくわくしながら山の階段をかけあがりました。

どれくらい登ったでしょう。
お日様がだいぶ高くなったころ、やっとけんじ君は頂上にたどり着きました。
山の頂上から見る自分の町は、けんじ君が想像していたよりも
もっともっと綺麗で大きくきもちのいいものでした。

「うわあ、頑張ってよかったなぁ。」
けんじ君が、大きく息を吸い込みながらぐるっと周りを見てみると、
とあるビルの屋上に人影が見えます。
けんじ君はじーっとその人影を見つめましたが、ぜんぜん動きません。
人じゃないのかなと思いましたが、そんなことはありません。
見れば見るほどそれは人です。

けんじ君は、屋上でじっとしている人を見て少し心配になりました。
あんなところで、一人で何やっているんだろう?
もしかして、飛び降りるつもりじゃないだろうな?
そんな事を思うとけんじ君は心配でならなくなりました。

 太陽はまだまだ高いです。
けんじ君はとりあえず、山を降りてそのビルまで行ってみることにしました。



第2話 おばあさん

けんじ君がビルの前に着いた頃には、もうだいぶ時間も経っていました。
あたりはほんのりだいだい色です。
けんじ君の見つけたそのビルは古い5階建てでした。

勇気を出してそのビルに入ったけんじ君は
辺りをきょろきょろと見回します。こんな所に入っているのを
大人にばれたら一大事です、絶対怒られます。どなられます。
もしかしたら、警察に連れて行かれるかもしれません。
そんな事になったら、大変です。
家に帰れなくて、お父さんとお母さんにまで叱られます。
そんなに叱られたら、けんじ君はもう泣くかもしれないと思いました。

これは絶対ばれてはいけないぞ。
気を引き締めたけんじ君は、そろりそろりと階段を登っていきます。
そのビルはいろんな会社が入っているようで、ドアの前を通り過ぎるたびに
大人の声が聞こえてきました。けんじくんはばれないようにそぉっとそぉっと
階段を上がっていきました。
 やがて屋上に着きました。ゆっくりとドアを押してみると、
ぎいいっと音を立ててその鉄の扉は開きました。
けんじ君はゆっくり屋上に出てあたりを見渡しました。

 するとどうでしょう、そこにはおばあさんが鉄パイプの椅子に座って
こちらを向いているではありませんか。
 けんじ君は大変驚きましたが、おばあさんはもっと驚いた顔をしています。
二人の間を冬の寒い風が吹きました。
 けんじ君は勇気を出して、声をかけます。
「おばあちゃん、こんなところでなにしているんですか?」
するとおばあちゃんは言いました。
「…わしゃこの町をいつもここから見守っとるんじゃ。」
「この町を見守ってなにしているんですか?」
「何って…それがばあの日課なんじゃけど。」
「へぇー、寒くないんですか?」
「寒ないよ。…わしゃ神様じゃからな。」
そういっておばあさんは、ひいひいひいっと笑いました。
すると、いきなり口から入れ歯が飛び出しました。
けんじくんは飛び出た歯を見てびっくりです。
 そんなけんじ君にかまうことなく、おばあさんは再び入れ歯を咥えます。
おばあさんの入れ歯は、もごもごしていてとてもおいしそうでした。

 入れ歯を咥えなおしたおばあさんは再び話しかけてきました。
「ぼくはここに何しに来たんじゃ?」
けんじ君は今日の出来事をおばあさんに話しました。
おばあさんは、そうかいそうかいと言ってけんじ君に飴をくれました。
けんじ君は飴を舐めると、おばあさんさようならと言って帰ることにしました。

 けんじ君は帰りの自転車に乗りながら、おばあさんのことを考えました。
おばあさんは自分のこと神様って言っていたな。もうおばあさんだから、
少し色んな所が弱ってきているのかもしれないな。
 そんな事を思いながら、家に帰っていくのでした。



第3話 神様の魔法

その夜、けんじ君は布団の中で考えました。
あのおばあさんおもしろかったなぁ、自分のこと神様なんていって。
あ、そうだ。よし。
けんじくんはあの変なおばあさんに少しいたずらをしてみることにしました。
うふふ、明日さっそく学校が終わったら行こう。
けんじくんはわくわくしながら、眠りにつきました。

翌日。
学校が終わると、けんじ君は家に帰らず、そのままおばあさんのいるビルへ向かいます。
そぉっと登って屋上に行くと、おばあさんは昨日とおんなじ所におんなじ様に座っていました。
おばあさんこんにちはとけんじ君が言うと、おばあさんも当たり前のように
こんにちはと返してきました。
 けんじ君はおばあさんの横に行くとこういいました。
「おばあさん、、昨日自分のこと神様って言ったよね?」
「そうじゃよ。」
「神様ってことはなんでも出来るの?」
「そうじゃよ。」
「じゃあ、僕がお願いしたら、なんでもしてくれる?」
「なにしてほしいんじゃ?」
けんじ君はそのビルから見える電車を指差して言いました。
「あの電車止めてみてよ。」
そういってけんじ君がおばあさんの顔を見ると、おばあさんはまたひぃひぃひぃっと
笑って入れ歯が飛び出しました。
けんじ君はまたびっくりしましたが見たのは2回目なので笑いました。
笑っているけんじ君を見ながら入れ歯を直したおばあさんは、またひぃひぃひぃと笑います。
「そんなことしたら、電車に乗っている人の迷惑になってしまう。
よし、もっと面白いことをしてやろう。」
そうおばあさんが言い、立ち上がるとある家に向かって手を指しだしました。
「あの家を見ていてごらん」
おばあさんがそういうので、けんじ君がその家を見ているとパッと家の電気がつきました。
「電気がついたね。」
けんじ君がそういうと、おばあさんはまた違う方向に指を向けます。
その方向を見ると、またその家の電気がつきました。
「わあ、すごい。」
けんじ君が驚いていると、おばあさんはうれしそうに言いました。
「いやいや、ここからが本番じゃ。さぁ、周りを見渡してごらん。」
おばあさんの言うとおり、周りを見渡していると町中の街灯がいっせいに点き始めました。
薄暗い町から一気に夜の街に変わります。けんじ君はとても綺麗だったので、
つい見とれてしまいました。
「さあ、もう遅いからお帰り。」
おばあさんはそう言い、けんじ君にまた飴をくれました。
帰り道、飴玉を舐め舐めしながらけんじ君は思いました。

あのおばあさんはもしかしたら本当に神様なのかもしれない。
その日の帰り道はいつもより明るい綺麗な町に感じました。



第4話 おそなえもの

 今日も学校帰りに、けんじ君はおばあさんのところに訪れました。
屋上まで上がってみると、少し様子が違います。
おばあさんの他におじいさんもいます。
けんじ君は少し迷いましたが、勇気を出していってみました。

 けんじ君がおばあさんの所まで行くと、おじいさんは「ほなまた」
といって帰っていきました。
 おじいさんが見えなくなってから、けんじ君は尋ねました。
「今のおじいさん誰?」
「ああ、あれは隣町の神様じゃよ。」
おばあさんはしれっと言いました。
「隣町の神様が何のようじ?」
「あぁ、明日な、この辺りに雪の神様が来るんじゃて。
普段はぜんぜん雪の降らないところじゃが、たまーに雪の神様が来てな、
どかーっと雪を降らせていくんじゃ。
明日は久しぶりにどかーっと来るんで、どうするか話してたんじゃ。」
「ふーん、で、どうすることになったの?」
「まぁ、のんびり雪みようかの。」
それだけ?けんじ君は驚いて聞きましたが、おばあさんは聞こえていないのか
何の反応もしませんでした。
「あ、そうだ。これ。」
けんじ君はかばんから、おかきを取り出しておばあさんに渡しました。
「おばあさん、いつも飴くれるけど逆だよね。
お供えものってのは、僕がしないと。だっておばあさん神様だもの。」
そういうとけんじ君はまた明日といって帰ろうとしました。
するとおばあさんは、
「明日は寒くなるから来たら駄目じゃ。
来るなら、もう少し暖かくなってから来なさい。」
と言いました。けんじ君は分かったよ、と言って帰路に着きました。
帰り際、おばあさんがおかき有難うと言った気がしました。



第5話 どかー

次の日、どかーっと雪が降りました。
さすが神様、言ったとおりです。けんじ君はすっかりおばあさんのことを
神様と信じ込みました。
 あまりにもどかーっと雪が降ったので、学校も休みになりました。
外を見れば、あちこちで車が滑っています。
会社に行こうとしている大人もつるつる滑っています。
けんじ君はおばあさんのことが心配になりました。
きっと、雪が降ってもあそこで座っているような気がします。
いや、きっと座っているに違いありません。
そう思うと更にどんどん心配になってきます。
けんじ君はもうじっとしていられませんでした。
一番暖かいジャケットを着ると、そのまま外へ飛び出していきました。

 おばあさんの所まで後半分と言うところまで来た時でしょうか、
いきなりすごい風と雪嵐がけんじ君を包みました。
けんじ君は立っていられなくて、道の端の電柱にしがみつきました。
電柱はとても冷たくて、どんどん寒くなっていきます。
けんじ君は手を離そうかと思いましたが、離すとよろよろとどこかに
飛んでいきそうになります。
 けんじ君は困ってしまいました。もう、体の感覚がありません。
歩くことも出来ません。体にはたくさんの雪が積もってきました。
けんじ君はまさかこんなことになると思わなかったので、
泣きそうになりました。
 ついつい我慢できずけんじ君の目から、涙が流れたとき。
突然風が収まりました。けんじ君が目を開けるとそこにはおばあさんが立っていました。
けんじ君は信じられないと思う前に、おばあさんにしがみつきました。
おばあさんは、たくさん服を着ていて、もこもこの暖かです。
シップのような「はっか」の匂いがとてもいい匂いに感じました。
「あほだのう、外出るなゆうたのに。」
おばあさんは、頭を撫でながら言いました。
「ごべんなさい。おばあさんが心配だったんだよ。今日もあの屋上に座ってるんじゃないかなって。
今日寒いからかぜひくよ?」
おばあさんは、そりゃこっちのセリフじゃといいました。
そして、おばあさんのマフラーをけんじ君に巻くと、ゆっくりとしゃがんで言いました。
「お前なんて名前じゃったかの?」
「けんじだよ。いってなかったけ?」
「どうかの、わしも年だからなぁ。まあ、けんじ君。早くおうちに帰りなさい。
雪の神様にはワシからよく言うて、けんじ君が帰るまで降らない様にしてもらうから。」
そういっておばあさんが立ち上がると、先程までの嵐がウソのように止まり晴れ間が広がります。
「わあすごい!!」
けんじ君は、おどろきましたが、おばあさんにはよ帰れと言われそのまま走って帰りました。
けんじ君が家に着くと外は大嵐になりました。
けんじ君はまたおばあさんが心配になりましたが、また出て行ったらさっきと同じです。
けんじ君は家でおばあさんのマフラーをずっと握っていました。



第6話 おまもり

 次の日、辺りは真っ白になっていましたが、場所によってはもう雪が解けてきていました。
けんじ君は学校でいっぱい雪遊びをした後、今日もおばあさんのところへ向かいました。
けんじ君がいつものように屋上へ行くと、そこにはおばあさんはいませんでした。
代わりに隣町のおじいさんの神様がいます。
「あれ、今日はおばあさんはいないんですか?」
けんじ君が聞くと、おじいさんは少し悲しそうな顔をして
「あぁ、あのおばあさんな、もう帰っちまったよ。雪の神様と一緒になぁ。」
そういうと、けんじ君の手元を見ました。
「それ、おばあさんのかい?」
おじいさんが聞いてきたので、けんじ君はそうだと言いました。
おじいさんは、ワシが渡しておこうと言い、けんじくんからマフラーを受け取りました。
「ねえ、おじいさん。おばあさんはもう帰ってこないの?」
「うん、帰ってこねえ。雪の神様はおばあさんをたいそう気に入っていたからなぁ。
あ、そうだ。ばあさんから、お前にこれ渡しといてくれって。」
そういうと、おじいさんはポケットから、小さな毛糸の袋を渡しました。
「お守りだそうだ。おばあさん、おめえの事、気に入ってたんだなぁ。」
そう言うとおじいさんは、歩いて屋上から出て行ってしまいました。
一人残ったけんじ君はおじいさんから貰ったお守りをあけてみました。
お守りには、

「けんじくんの人生に、絶え間なく、まんべんなく幸せが降り続きますように。
おばあの神様より。」

そう書かれていました。
けんじ君は、もうおばあさんと会えないかもしれない。
なんとなくそう感じました。
けんじ君が振り向くと、町の明かりがいっせいに点くところでした。
町は残った雪に照らされて、いつもよりキラキラしていました。
けんじ君はお守りを元に戻すと大事にかばんに入れました。
本物の神様がくれた、本物のお守りです。
きっとご利益があるでしょう。
けんじ君はとても寂しいはずなのになぜか少し暖かい気持ちがします。
なぜなんだろうな?
けんじ君は、その理由を考えながら家に帰りました。
 町の明かりはどんどん明るくなって、暖かい光でみんなを包んでいました。

おわり

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