憐神(6/24)PDFで表示縦書き表示RDF


えへへ、ややバイオレンス注意です。

あとSikoお兄さんから読むときのポイントです。

各段落始めのただの数字は主人公視点。

幕間とついたらほぼ同時刻の他のキャラクター視点で物語りは進行します。

今まで説明なしですみませんでした。

では、今回も読んでくださると嬉しいです。

憐神
作:Siko



VS剣姫






ふう、ひどい目にあったぜ。
姉さんの方には取り合えず今日は夜には帰っているからということで納得させたが……。
まったく鏡子姉さんにも困ったもんだぜ。

と、先生はそろそろ行く時間かな?


「それじゃあもう出るわよ?」

そう言った先生はもう行く準備が出来ていた。

「あ、随分早いんですね。やっぱ先生は早くに学校行くモンなんですか?」
「うふふ、勿論それもあるだけどね。実は私剣道部の顧問なのよ。それでね、部の朝錬があってね」
「へえ、そうだったんですか。って言うかうちって剣道部あったんですか、初耳なんですけど」
「それがね、去年出来たんだけどね。どうしてもやりたいって子が居てね、でも顧問になる人が誰も居なくてね。でも熱意のある子だったから、新任の年だったんだけど私が顧問になったって訳。その子が今の部長なんだけどね」
「へー、まだ出来たばっかりなんですね」
「ええ。だからまだ部員が少なくてね。最上君も暇だったら入ってね」
「うへえ、入りたいのは山々なんですが俺は帰宅部って決めてるんですよ。じっちゃんに部活は帰宅が限るって言われてましてね」

 嘘だ。大体集落に学校無かったからじいさんは学校行ってなかったし、八百屋だし。

「ふうん。それじゃあしょうがないわね」

 うわっ、渾身のギャグだったのに、流されちゃったよ。

「それじゃあそろそろ時間ね。行きましょ?」
「ああ、そのことなんですけど……」

 そうだ、これ言っといた方が良いよなぁ。

「バラバラに出ましょうよ。俺どうせ学校行かないんだし」
「え、なんで? 病院行くにしても、あの外科でしょ? 途中までは同じ道じゃない」
「いや、そうなんスけどね。俺は全然構わないしむしろ先生と一緒に行ければ嬉しいですよ? でも先生は先生なわけだし俺が先生と一緒に同じ部屋から出るのもしも誰かに見られたりしたら少し先生まずいんじゃないかと思うんですけど……」
「う、まあそれはそうなんだけど……でもっ!」
「まぁ、そう言う訳で俺は先に出ようと思うんですけど先生は五分後にでも出てもらえれば……」
「わ、わかったわよ」

 よし、解かってもらえたし、行くか。

「もう、ホントに変に気が利くのに妙に鈍感なんだから……」

 ん?

「ほへ? 何か言いましたか?」
「な……何でもないわよっ! 早く行きなさいよ」
「う、わかりました。じゃ」

 う……俺なんかマズイこと言ったのかなあ?
 まあいいや、先生には世話になったし、ここで迷惑かける訳にもいかんだろ。
 こういう時は気を使いすぎるって事は無いだろうしな。
 そう言うわけですぐに部屋を後にすることにする。

 そう言うわけで部屋を出ようとしたんだが

「あ…………」

 先生の声が聞こえたような気がした。


「あれ、先生。今何か言いましたか?」
「あ……ううん。なんでも無い。ちゃんと病院行くのよ」
「へーい。お世話になりましたー」
「あと……」
「は?」
「何があったか知らないけど、もうケンカしちゃだめよ?」

 そ、それは、また絡まれたらどうなるか解からんしなぁ。

「うぅ、善処します」
「善処じゃ無くてしないのよ!!わかった?」
「は、はーい。それじゃあありがとうございましたー」

 そうして俺はこれ以上言質を取られないうちに先生のマンションの部屋から出た。
 
 そして一階まで降りて表へ出る。
 朝日は目に痛いほどに眩しく、さわやかな風が吹いていて心地よい。空気も暖かく本当に気持ちの良い一日だ。

 今日も良い天気でよかった。
 さて、また一日が始まった訳だ。


 2


 そうして路地裏に行く。
 病院へ行くのは面倒だし、そんな必要俺には無い。ここで終わらせる。


 そうして自分の内面へ潜り能力を開放する。
 
 身体の状態をチェックしてその情報を脳へ送る。

 異常チェック。異常個所をマッピングし、対処方法を考える。
 スキャン終了。傷は貫通しているが、この程度の大きさなら治療への問題は無い。

 そうして能力を装填する。自分の殻を外しそこに能力を送る。

 解析終了。自己治癒能力を理解しろ。
 感情を読み取り、操作できる俺だ。
 ならば実態のある肉体、ましてや自分の肉体ならばコントロール出来ないはずはあるまい。

 そうして自己の細胞を操作して、その力を治癒へ向かわせる。


 ………ズッ……ッ!!!

 
 能力停止


 ふぅ、流石に疲れた。力を使うと流石にな。
 一瞬酷い痛みが頭に走ったが、でもまあこれで一日もすれば傷は塞がるだろ。ふぅ。

 そうして壁に凭れかかって休んで疲れを取っていると路地の入り口に変な男が立ってこちらを凝視しているのが見えた。



 その男は何かが変だ。

 まず容姿。

 サングラスをしている赤い髪の毛の、若い男。
 さらにこの季節ならまだ少し肌寒いだろうに、上半身はタンクトップ一枚の姿。
 腕には幾何学きかがく模様のような妙な刺青。この通りに格好もすでに変だがそんなのは大した問題では無い。

 何か、頭の辺りにピリピリとした妙な感触が走る。
 まるでその男が近くに来れば来るほど、何かが頭に入れられていく感じ。これは……?

 と、その男はこちらに歩いてきて、俺の近くまで来ると気安く笑いながら話しかけてきた。

「うひ、ひひひひひ、昨日は大活躍だったじゃねえか。いや正確には今朝か? お前に敬意を示してあの二人には手を出さないでやったぜ」

 む、俺はこんな奴は知らないんだが。

「お前、誰だよ。俺はお前なんて知らないぞ?」
「くぴ。何言ってんだよ冷てぇなァ。お前昨日会った能力者だろ。それとも能力開放している間は別人格になるってタイプなのか?」
「ッ!! なぜそれをお前が。……そうか、貴様も能力者か」
「ああ、俺は常に能力が開きっぱなしな上に、研究所の中では最高クラスの能力だったんだぜ? まぁ、流石に「原典」のお前の能力の純度とは比べ様も無いがな」
「原典……? まぁいい。それでお前は昨日俺に会ったと?」
「ああ、昨日のお前の能力は凄かったぜ? 存在するだけでその空気をも侵食する様な能力の純度は……ひひひひひ。見てるだけでイきそうだったぜ。で、出るっ! てな」
「ふう、なんか色々と変だと思ったんだけどまた「俺」が目覚めてたのか。そう言えばちょうど満月も近かいし血が少なかったし、そう言うこともあるだろ」
「それで聞きたい。お前は今は能力が閉じているようだがさっき一瞬だけ使っただろ。それを元に俺はお前を辿ったんだ。能力者は能力者を感じることが出来るからな。それにしても、機能のことを覚えていないって言は、お前はやはり能力を使うときは別人格になるのか?」
「いや、そんなことは無い。確かに使ったときはやや自分の欲望に引きずられるが。一応普段は俺はただの人さ。ただ一つ……普段は閉じている物を開くだけだからな。能力を使うことは今の俺の人格のままで別に可能さ」
「ほぅー、じゃあ昨日のお前はなんなんだよ」
「ああ。昨日、ね。意識は無かったんだが、大体起こった事は解かる。俺の意識が落ちている時、つまり睡眠時や気絶時なんかの意識が無い時に、強く俺の能力に反応すると俺の常識や記憶とは離れた部分にある人格が勝手に目覚めてしまうことがあるんだ」
「へぇー、成程。つまりは二重人格でどっちでも能力が使えるって訳ね、すげえのな。ウヒョヒョー」

 二重人格……か。

「まぁ簡単に言ってしまえばそうなんだが、でもその人格も、あくまで普段の俺の記憶とか常識が切り離されただけの存在。確かに人格とは記憶の積み重ねではあるからな、その人格も別人格と言えば別人格だが、しかし元を辿ればヤツも俺さ」
「なるほど。それで……お前の能力のタイプは?」
「それは言えない。お前が言わないのに俺だけ手の内を明かすのはフェアじゃないだろ?」

 ふ、馬鹿め。流れで話すとでも思ったのか。

「ぐひ……それもそうだな。それほど馬鹿では無いって事だな。確かに、俺も言えない。ひひひヒヒゥ。でも普段はお前は能力を閉じているんだよな?」
「ああ。俺は出来るだけ一般人相手にはこの力を使いたく無いからな」
「ふぅん? それでか……。この町に居たのに今までお前に気づかなかったわけだ」
「ああ、まあ、普段の俺は唯の人間だからな」
「ほぉー、俺なんかは能力が常に開放しているからな。まあ能力を閉じれないと言った方が正しいかも知れんけどさ、でもそのおかげで常にやりたいことが出来るぜ」
「ほう」
「まぁ、早い話が貴様はコントロール可能なようだな」
「ああ、そうだそして普段は能力を閉じている」
「へぇー、そうなんか。それならアドバイスがあるぜ。出来るだけ能力は使わないほうが良い。俺達の犠牲で能力だけ獲得できるようになった技術を得た研究所は、そこから能力だけ獲得した出来そこないどもを作って、俺みたいな実験体を始末して回っているらしい。当然お前も能力の使用時に自己の欲望に引きずられる面を僅かだが残しているのだから狩られる対象になるぞ」
「研究所……って、一体何のことだよ?」
「チクショウ、チクショウチクショウ! 何で俺が刈られなきゃなんねぇんだよ。なんもワリー事してねーってのによう!」

 ダメだコイツ。人の話全然聞いてない。コイツ、ジャンキー……か?

「チクショーッ! 狩られるなんて我慢なんねぇ! まぁ確かにさ、俺は今まで何人も殺し犯ししてきたさ。だって気持ち良いんだからな。当然俺を捕まえようとしてきた警察のヤツラもな。だから人間社会全体から見たら俺は邪魔者だろうよ。しかしだ。しかしだよ。これは動物としてあるべきカタチなんだよ。食いたい時に食い、犯したいときに犯し、殺したいときに殺す。そして俺は獣だ。それをする資格がある。なのに何故それを止める権利がヤツラにある?」
「さあな、俺にはお前の事情なんてわからんさ。ただな、」
「ただ……なんだ? 貴様も俺を邪魔するのか? 俺を殺すのか? ひひひひひ。そうだって言うなら俺だって抵抗するぞ。確かに純度は貴様の方が上だがそれだけで勝負が決まるわけでも無いからな」
「いや、今はそんな気分じゃない。ただ疑問なのは、何故俺に俺達を狙う物が居るのを教えたんだ? お前は自分の欲望のままにだけ動くんだろ? ならば俺に俺たちを狙う者が居る事を教える必要は無かったはずだ。なのに何故教えた?」
「ふ、フヒヒひひひひ、それか。そんなことか。それはな、昨日のお前に触発されただけさ。能力者だろうと人間の欲望は性欲だけじゃ無いんだろ。名台詞だなぁ、感動しちまったようひゃひゃひゃひゃ!」
「は? 昨日の俺? だから俺は覚えていないんだが」
「ふひふふ、そうか」

 まぁ、いいか。
 
「それじゃあ俺は行くぞ?」
「お……待てよ。二つ言っておく事がある」
「なんだよ、手短に頼むぜ」
「一つ目は、俺達を追っているのは精神干渉できるタイプじゃないらしい。ただ単純に能力で肉体強化されているだけらしいぜ? ただし俺が侵入しようにも精神へのプロテクトは掛かっているらしいから俺の攻撃はまったく受け付けないだろうな。何しろ能力者には能力に対する免疫があるからな。俺じゃあ歯が立たん。一番会いたく無いタイプだぜ」
「そうか。で、あと一つは?」
「ひひひ。おう、それなんだけどな。昨日のお前との会話で能力者の、そして俺の欲望は性欲だけじゃない事はわかった。でもな、勿論性欲もあるんだよ。と言う訳で……」
「というわけで……?」
「愛し合おうぜ?」
「は?」
「セックスするんだよ。二人とも能力を開放してさ、愛し合いながらお互いの快感を増幅して伝え合うんだよ。ひ、ひひひ、最高だと思わないか…………?」

 ウゲッ、一瞬リアルに想像しちまったよ。なんてオゾマシイ。

「お……思わない。い、イヤだ!」
「そうかー? んーそれは残念だなーくぴ」

 大体俺はゲイじゃない。

「それじゃあ……俺は行くぞ、じゃ、じゃあな」
「オイ待てよ!……ってチッ、もうみあたらねぇ。逃げ足の速いヤツだぜ」 



 幕間1  山園綾子SIDE
 

 まったくあの子は気が利かないんだから。別に最悪他人に一緒に居るところ見つかっても適当に誤魔化しときゃ良いのよ。
 そんな些細な問題よりも、朝に誰かと一緒に家を出るって……なんか憧れるじゃない?
 私はそう言うのしてみたかったのに……。
 まったく最上君はもう少し女心を勉強するべきよね。うんうん。

 と、職員室を出てからそんな事ばかり考えていたら気がついたらもう闘技場の前に居た。

 闘技場とは体育館に隣接されている畳張りになっている剣道部と空手部専用の闘技スペースだ。
 空手部が一昨年廃部になってからは剣道部と、後は体育の授業で偶に使われるくらいなのだが、かなり広い。
 そうして中を覗くと剣道部の朝錬の最中だった。
 ちょうど五人……か。本当にもう少しは欲しい所だ。
 それに強いのが主将一人と言うのも困る。

 私も学生時代に少しだけ剣道をやっていたのでわかるんだけど、このレベルの低さは酷い。
 そのかわり主将の武田由里香たけだゆりかさんだけはとても強い。なんていうかよく人間離れした動きをしている。きっとかなりの段持ちなんだろう。

 おそらく彼女なら試合になっても勝ち抜きならば大体の相手に五人抜きできると思う。
 でもそれじゃあ部の為にならないし、一人だけ勝ってもしょうがないので大会になどは出ていないのだけども。

「こてめえええんッ!!!」
「一本!!」

 と、ちょうど試合形式で練習していたとこらしい。
 勿論、武田さんの完勝だ。相手は手も足も出ていない。

「ふう、もうちょっと手応えが無いと練習にもならないではないか。情けないぞ」
「そ、そんなこと言われても、武田さん強すぎ……」

 あ、部長の武田さんの叱咤が聞こえる。相変わらず良く通る綺麗な声よね。


 この剣道部男女合同なのだが武田さん以外はみな男なのだ。しかし武田さんも今では珍しいポニーテールにしている美人なのだが少し性格と話し方が独特、と言うか男っぽい。何て言うか、質実剛健だ。
 どうも古風な家で男の子が欲しかったらしいのだが生まれたのは武田さんだけだった。だからどうしても男っぽく育てられて……みたいな話をどこかで聞いた事がある。

 でも美人だから部の開設当時は武田さん目当てで結構男の部員は入ったのだ。でもまぁ、部員の男の子達が弱いのは武田さん目当てであるような人たちばっかりだからなのだから。

 まあ武田さん本人はその事に気づいて無いようだが。えてしてそんな物かもしれない。

「まあそう怒ることも無いでしょう?」
「あ、先生」
「たしかにみんなちょっと情けなさ過ぎよ。もうちょっと頑張りなさい。でも武田さんは確かに強すぎね。みんなが勝てないのはしょうがないわよ」
「しかし先生、彼らはあまりに腑抜け過ぎる! 先生、もう少し手応えのありそうな人は居ないんですか?」
「う、手応えのありそうな人ねぇ。そんな人は……」

 って、なんでそこで最上君の顔が浮かぶのよー私は!
 しかもなんか一割増しくらい良い男になって爽やかに微笑んでる所が。

「先生、誰か心当たりあるんですか? ならば是非我が剣道部に!」
「あ、いや、そのね。彼はだめなのよ彼は!」
「彼……やはり誰か心当たりがあるんですね?」

 うわぁ、私墓穴った?

「い、いやね、あの子は帰宅部だって言ってたし……」
「何故ですか先生? 帰宅部ならさらに都合良いじゃ無いですか。それに帰宅部のような暇人なら長く拘束できるし……」

 拘束……剣道部として拘束。長く一緒に……。

「長く拘束……そうね、そうよね。何とかして誘って見るわ」
「そうです。その意気です先生!」

 とその時誰かが闘技場に入ってきた。

「ゆりちゃーん。もうすぐ予鈴なる時間だよ……って先生?」
「あら、片山さん?」

 そこに居たのは今年から私のクラスになる片山光さんだった。
 あぁ。そう言えば普段から武田さんとは仲良さそうにしているわねこの二人。

「ふむ、すまないな光。すぐに行く準備をする」
「うぅん、そんなに急いでは無いけど……。山園先生って剣道部の顧問だったんですか?」
「ええ、そうよ。それじゃあ私は行くから二人とも遅刻しないように気をつけるのよ」

「はーい、先生」
「わかりました」

 ふぅ、私もホームルームに遅れないように行かなきゃね。


 3


 そうして俺はやることも無いので町をうろつく。
 あーくそー、暇だなー。先生にああ言った手前学校に行くわけにもいかねーしなー。
 誰か遊び相手とかいねーかなー。

 でも勿論さっきの赤毛野郎と愛し合うのはイヤだけど。

「あれ……零児じゃん。珍しい、サボりなんて」

 む……非常に失礼な聞き覚えのある声がしたような。

「って、おう、隆貴じゃん。失礼な。俺はサボりじゃねえよ」
「じゃあなんなんだよ。まあいいや。俺はサボりだし」
「またかよ」

 こいつは松山隆貴まつやまたかき
 確か今年も俺と同じクラスになったヤツだがまあコイツは小学校の頃からの腐れ縁だしな。
 長身の金髪で先生に目をつけられる格好こそしている絵に書いたようなチャラ男だが、少なくとも友人関係としては根っからの善人だ。
 しかし生活態度は最悪だ。サボってばっかだし今もタバコ咥えてるし。

「しかし、そうか。隆貴。お前今日もサボったのか」
「馬鹿じゃないの零児? 出席は必要数だけすれば良いんだよ」
「あっ、でもお前が女と一緒に居ないなんて珍しいな。ええとお前の彼女……美香ちゃんだっけ?」
「馬鹿、それいつの話だよ。今の俺の彼女はキュートアンドラブリーな恭子ちゃんなの」

 って、また彼女変ったのか。と言うか、コイツの場合はセフレと言うんじゃないだろうか。

「はあ……相変わらず早いんだな。だって美香ちゃんとデキタのは二ヶ月前だろ?」
「ふふふ……零児。恋愛はその瞬間さえ真剣だったら良いんだよ」
「はあ、相変わらず女の敵なんだな。よくホテル代持つよなお前」
「は? アホじゃないの零児。女子高生なんて物はね、公園の繁みかトイレでいいんだよ」

 こ、コイツは……。

「ふ、ふふふ。大丈夫だ。俺は何も聞いていない。何も聞いて無いから安心しろ」
「何がだよ。まあ何でも良いんだけどさ、お前金持ってる?」
「持ってはいるが……貸さんぞ?」
「いや、今回はそう言うことじゃないんだが」

 そう言ってヤツは自分の財布を出して中身を見る。
 どうも顔色からいうとあまり入って無いようだ。

「よし! 零児、ゲーセン行こうぜ!」
「ってお前何財布覗いてから言ってるんだよバカー貸さないぞ? 奢らないからな。っておい待てよ奢らないって言ってるだろうがオイ待てよちょっと馬鹿お前待てアホくぁwせdrftgyふじこl……」





 ちゃーららーららーららーズンドコズンドコちゃーららー


「なあ隆貴?」
「なんだい零児きゅん?」
「なんで俺は昼間っから男二人で太鼓叩いてるんだ?」

 しかも暴れン某将軍。

「いや、楽しいじゃんか太鼓の鉄人ああズンドコズンドコてぇーい」
「いや……楽しいっちゃ楽しいけど。お前普段からこんなことやってんの?」

 このダメ人間が。

「ふふふ……よくないよくないよくないなあぁぁよう零児さんやあっ!!」
「は?」
「人生楽しめないと損するぜええッ!!!」

 お前は楽しみすぎだっつーの。それにこれは……。

「俺の金だけどな」
「あ、あああああぁ、そうだパンチ力。パンチ力はかろうぜあの「終わりの一歩」のマシーンでさぁ」

 ふぅ。

「まぁ、こう言う日もあっていいか。わかったよ。わかった。パンチ力は負けねぇぞ?」
「おおぅ、強気じゃないか最上君。ちなみにお前の金でな」
「わかってるって。まあそれくらいのは良いや。貸し一つな?」

 はぁ、まあ、少なくとも当初の目的通り暇は潰せてるしな。


 幕間2 片山光SIDE


「起立、礼」

 そうしているうちに四時間目が終わった。
 ふぅ、昨日最上君に助けられたお礼を特に出来なかったから今日こそしようと思ったのに……。

 何故か彼は今日は休んでいた。
 さらにそう言った校内の事情には詳しくなかったのだけど、山城君についての良く無い噂を昨日のことを相談したユリちゃん……つまり武田さんから聞いたので少し心配だ。
 例えば最上君が山城君から復讐される可能性があるとか……。

 あ、そう言えば四時間目はちょうど現国だったおかげで、今担任の山園先生が前に居る。
 担任だし連絡とか受けて何か欠席の原因を知っているかも……。

 と言う訳で先生が行っちゃう前に聞いて見ることにしよう。

「すみません先生」
「あら、片山さん?」
「はい。あの、最上君って今日なんで休みなんですか?」
「あら……彼に何か用なの?」
「はい。その……少しだけなんですけど用があって」
「ふう、その用って言うの、人が居ない所に場所変えれば話してくれる?」
「え、それってどう言う……?」
「私は彼の欠席の原因は知っているわ」
「ほ、本当ですか?」
「ええ、でもそれに関係もあるかもしれないからアナタの彼への用って言うのも話してくれる?」
「わ……わかりました」

 と、突然先生は教科書とかの荷物を纏めて立ち上がった。
 
「それじゃあ少し待っててね。鍵持ってくるから」
「へ……かぎ?」

 鍵って、一体何処に……。



 がちゃん……ギキイーー―ッ


 そうして扉の開いた先は……町並みを一望でき海も見える素晴らしい景色だった。

「わぁ……凄く良い景色ですね。先生」
「そうでしょ? 普段は閉められているけど先生なんだしね。良いでしょ? これくらい」
「えへへ、そうですね」

 そう。そこはこの学校の屋上だった。
 たしか数年前に飛び降り自殺した子が居るって言う話でそれから閉めきられているらしい。
 でも、なんでもそれから夜になると人の影が見えるとか……良くある七不思議と言うヤツだ。
 ちなみにうちの学校にも四不思議くらいしか無いのに七不思議と言われている。
 まあどこの学校にもあるよね。そういうのって。

「それで、最上君はなんで休んだんですか?」
「その前に、片山さんは、最上君に何か用なの?」
「あの、それは昨日少し……」
「昨日?」

 そうして説明する。

「はい、始業式のあとに山城君に呼び出されて、それで私その、彼がそう言う人って知らなかったから行ったらなんかその……」
「その……?」
「え……っと裸になれとかその撮影だとか訳のわからない事言っててそれで断ってた所に、最上君が通りかかって何事も無いように山城君を殴り倒して助けてくれたんです」
「へえ、あの山城君をね。強かったのね。彼」
「はい、卑怯ではあったんですけどスッゴイ強かったですよ。一瞬でやっつけちゃいましたから」

 そう、体格差もあるのに、私もビックリした。

「へえ、少し意外ね。でもそこで山城君とかかわってたのね。だからあのあとあんな怪我して追われてたのね……」

 って怪我……?

「先生! 最上君が山城君になんかされてたんですか?」
「いや、怪我は逃げる途中にしたみたいだけど追われてたのは確かね」
「そんな、私のせいで……」
「でも大丈夫よ彼なら。まったく片山さんのせいだなんて思わないから大丈夫。ほら、噂から言っても彼ってそう言うの気にしなさそうでしょ?」

 勿論、それはそうだけど……。

「でも先生。彼怪我してたんでしょ」
「うん、でも今朝には治っていたから大した事無いわよ」

 ん、今朝……?

「先生、今朝最上君に会ったんですか?」
「あ……う、うん、そのね、今朝ね……。あ……会ったわよ。それで怪我見せてもらったら治ってたのよ。ホントよ?」

 ん? 何か先生は挙動不審だ……。なんでだろう?

「先生、何か隠してません?」
「な、なななにも隠して無いわよ? それよりそれより。なんか今朝は今朝で肩に大怪我してたんだけどそれでも学校に来そうな勢いだったから止めたのよ」
「大怪我って……ッ!!! どんなですか……?」
「うん、なんか肩に穴が空いてたんだけど」
「穴? なんか良く判らないけどそれって凄い怪我じゃないですか! それで最上君は大丈夫なんですか!?」
「うん。そりゃあ大丈夫。ピンピンしてて今日も学校来ようとしてたくらいだったから私が急いで止めたのよ」
「ふう、それなら良いんですけど」

 でも肩に穴って言う状態は……どう言うことなんだろう?
 良く判らない。


 と……その時。

 先生はフェンスの方へ歩いて行った。
 そしてしばらく黙ったまま立っていたのだが急に振りかえってこちらを見る。

 自然とぶつかる視線。
 海からの風に先生の長い髪がなびいている。

 はあ、やっぱり先生は綺麗だなあ。やはり同じ女としても羨ましくもある。
 もちろん私だって自分の容姿にある程度の自信は持っているし周りもそう言ってはくれている。
 でも、それは必ずしも言って欲しい人からの言葉じゃない。

 それに先生の魅力と言うのはいかにも大人の女って感じがする。
 その少し落ち着いた雰囲気に……まだ子供である自分はやっぱりそう言う物に憧れてしまう。

 と

「ねえ片山さん?」

 先生が話し掛けてきた。何故か少し寂しそうな顔をして。

「はい?」
「やっぱり片山さんはさ……最上君の事好きなの……?」

 ……って……? 今、何を?

「はい?」
「だってそんなに気にしてるじゃない。それとも嫌いなの?」
「いや、そんなことは……」
「じゃあ好きなんでしょ?」
「いや、その……」

 こんなことを聞くなんて、突然どうしたんだろう。
 いや、しかし、そもそも私は彼のことをどう思っているんだろう……?

 視線がこちらを見る先生の真剣な眼差しと交錯する。
 そうだね。なんとなく先生になら素自分の正直な気持ちを直に話してもよさそうな気がする……。

「私は……よく……わからないです。やっぱり昨日みたいなことになった時になんにも求めずに助けてくれたりしたし……でもその前から噂を聞いたり、その自然な態度を見るたびに、彼のことを他の人より……その……少しだけ意識をしているとは自分でも思います」
「ふぅん、そうなんだ」

 先生は相変わらず少し寂しそうだ。
 そうして少しの間の後、先生は話し出した。

「あのね……片山さん」
「はい」
「実はね、私もね…………」


キーンコーンカーンコーン

 先生の掠れかけた小さな言葉が海からの風とチャイムでかき消される。

「……もう予鈴鳴ったわね」
「え……あ……は、はい」
「それじゃあ遅刻しないように戻るのよ。うふふ、昼ご飯たべ損ねちゃったね……」

 そう言うと先生はわたしに出るように促した。
 鍵を閉める先生を見ながら思う。
 先生は結局私に何を言いたかったんだろうか……?

 でも取り合えずお昼ご飯については三時間目の後に食べていたって事だけは秘密なんです。


 4


「ふう、ああ、遊んだな零児?」
「ああ、俺の金だけどな……」
「良く無いなあ零児君。そんな細かいこと気にしてたら人生楽しめ無いぞ?」

 む、細かい……。

「細かいこと……お前の中では1日でゲーセンに七千円使うのが細かいことなんだ?」
「う……いや、お前暇そうだったじゃん。これは俺の慈善活動さ」
「ははははは、正しくは俺がお前にたかられたんだよ。しかもその冗談つまらないな、もし本気で言ってたら……俺キレちゃうよ?」

「……………………。お、お前さあ偶にメッサ怖い顔するよな。あ、あ、あ、ああまあ悪かったって……」
「ふぅ。まあ、良いだけどさ。貸しふたつな?」
「う……善処する」
「ああ、じゃあな。明日は学校こいよ?」
「あ、すまん。俺青春十八持ってるんだけど一枚残っててそれの期限が明日だから旅行してくる」
「はあ。また一人旅かよ。でも出席足りてるのか?」
「ああ、大丈夫だって。じゃあな」
「おう。またな」

 ふう、隆貴の馬鹿はいっちまったか。また暇になっちゃったな。
 さて、そろそろ夕方か……。

 あ、そうだ、学校の屋上行って夕陽でも見るか。
 今日は綺麗な夕暮れになりそうだし。そうだな。そうしよう。



 幕間3 山園綾子SIDE


 さてと、実力テストも大体出来てきたしそろそろ剣道部の様子でも見てこようかな。
 普段はテスト一週間前から部活はないんだけど実力テストは成績には入らないからテスト前の部活禁止もないんだよね。
 と言うわけで職員室を出て闘技場に向かう。


 そうして闘技場前に着いたのだが中から練習の掛け声は聞こえない。
 あら? もしかしてみんな来ないから休みになっちゃったのかしら?

 まあやる気があるのが武田さんだけだから誰も来なければ流石に彼女も帰るだろう。

 
 と思ったら何か中から話し声が聞こえる。
 これは……武田さんと……片山さん?


「でも良いのユリちゃん? 私部外者なのにお茶なんかご馳走になってて」
「いいんだ光。気にすることはない。むしろ他の腑抜けに飲ませるよりは光に飲ませたほうがまだマシというものだ。大体うちの部員のていたらくさと言ったらもう……。そうだ。光も剣道部に入ったらどうだ? 運動神経も悪くは無いし、うちの部の男子たちよりは強いと思うのだが」
「え……えーっ? そんなことないよ。私なんて全然。でも、そんなにひどいんだ」
「ああ、それはもう。来ても試合をニヤニヤして眺めているだけだ。たまに練習相手にさせても弱すぎて練習相手にすらならない。それに最初はまだある程度人数がいたのだがみな練習相手にすると泣き言を言って辞めてったりして話にならん。まったくあの者達には本当に剣道をやろうという心とがあるのだろうか?」
「う……。それについては、まぁ、ユリちゃん美人だから。なんかそのことについてはみんなユリちゃん目当てだったんじゃない? 私はそんな噂どこかで聞いたよ?」
「まさかそんな……。私みたいな男っぽい女なんかを見たがる男など居ないだろうに。私は光のように可愛らしくはないのだし……」
「そ、そんなことないよ。ユリちゃんは可愛いよ!」
「む……そんなことはないと思う。あ、そんなことよりよりも先生が骨がある人を紹介してくれるとか言っていたから楽しみにしているんだ」
「あ、そうなんだ。それで他に誰も居ないのに闘技場で待ってるんだ」
「うん。先生が早く来てくれるといいのだが」


 あらら。武田さんは私を待ってたんだ。
 それじゃあ入らないわけにはいかないわね。


「ごめんなさい。待った?」

「「先生!?」」

「うふふふ、話が外にも聞こえてたわよ」
「そうですか……。あ、それでその骨のある生徒って?」
「あ、ごめんなさいね。彼は今日欠席なのよ」

 と片山さんが不思議そうに聞いてきた。

「先生、その骨のありそうな人って誰ですか?」
「ふふ、片山さんが今日も話してくれたじゃない。彼よ」
「今日休んでて私が話したって言うと……最上君ですか?」
「ええ、彼強かったんでしょ?」

 と、武田さんが首をかしげている……。

「最上というと……光から聞いたけど昨日あの山城から光を助けてくれたという……」
「ええ、その最上零児君よ」
「最上零児……そういえば聞いた事のある名前だったな。なんでも自分の正しいと思ったことは曲げない頑固者……みたいなことで校内では有名な人と言う話だったと思うが」
「違うわよゆりちゃん。それじゃあただの自己中心的な人じゃない。最上君が有名なのはその正しいと思うことが自分のためじゃなくて常に他人のためを向いているって所ででしょ? で、なぜか人が何か困ってたり何か問題があったときには率先してそれを自分で解決しようとするんだって。で、その相手が誰であろうとあまり気にしないって所から知る人ぞ知るって感じで有名になってるのよ」
「ふうん。随分と奇特な男なんだな。確かにそういう男は最近見ないな……」

 うんうん、そうよね。

「うふふ、彼、今年は私のクラスなのよね。彼なら少しは武田さんの相手もしてくれそうでしょ? それにうちの部員よりは手ごたえがありそうじゃない」
「はい。それはそうですけど……」

 と、なぜか武田さんは少し考え込む仕草をした。

「ん……どうしたの? ゆりちゃん」

 不審に思ったらしい片山さんが聞いている。

「いや、そういった男なら断られることはないような気もするけど……そのあからさまな善人の性格につけ込んだ善意に甘えるのは少しなんと言うか……」
「ふうん? 武田さんて真面目なのね。でもいいのよ。そうすれば……」

 そうすれば……どうだというのだろう。
 もっと……彼と一緒に居られる……か……。

 生徒の事情にまでかこつけて……嫌な女ね。私って。

 

 そうしてしばらく三人で話しているとふと武田さんが窓の外を見てつぶやいた。

「あ……もう夕方になってるんだ。きれいな夕日…………」

 そう言う武田さんの目は本当に嬉しそうだった。そうね、彼女にも見せてあげたいわね。

「ねえ武田さん?」
「はい……?」
「夕日とか見るのとか好きなの?」
「あ、はい。実は昔から綺麗な景色とかは好きなんです。だから実は風景写真とかを撮るのも好きなんです」
「へえ、そんな趣味あったんだ」

 と、何故か嬉しそうに片山さんが話す。

「えへへ、先生? 実はユリちゃんキレイなものが大好きなんですけど、それだけじゃなくて可愛い物も大好きだから実はぬいぐるみとかもとっても好きなんですよ?」
「……ッ、光ッ!?」

 と、なぜかとても武田さんは顔を赤くして慌てている。

「ん……? どうかしたの?」
「いや……だって先生……私変じゃないですか」
「……え? 何が?」
「だって……全然女の子っぽくないのにそういうものが好きって……」

 ああ、そんなことを気にしてるのね。

「んー。確かに意外って言われれば意外だけど別に変じゃないと思うわよ。武田さんだって可愛らしいわよ?」
「そ、そそそそんなことないですッ!!」

 んー。どう武田さんは自分に少し自信がないみたいね。あんなに美人なのに……。
 あ、そういえばそんなこと話そうとしてたんじゃないわね。

「それより武田さん、夕日とか見るの好きなんでしょ?」
「あ、はい、勿論です」
「ならとってもよく見える場所あるんだけど……見に行かない?」
「よく見える場所……?」
「ええ。すごいわよ?」

 と……片山さんはいち早く気づいたらしい。

「あ、先生。もしかして昼間のあそこですか?」
「うふふ、そうよ。じゃあ鍵持って来るから待っててね?」




「へえ、屋上ですか。それは知らなかったですね」

 そうして屋上へ行くために一度体育館に隣接されている闘技場から校舎に戻り階段を上る。

「ええ、鍵ないとは入れないからね」
「あ、ゆりちゃん、もうすぐ着くよ」
「そうか。確かに階段は結構上らなきゃいけなかったけど……ふふ、楽しみだな」

 と……ついたわね。

「ふう、ここの扉ね、今鍵を開けるから……って、あれ?」
「どうしたんですか?」
「おかしいわね。鍵が開いてる……?」
「それは変ですね? 誰か予備の鍵で出たとか?」
「ん……? でもここの鍵は1つしかないわよ?」

 と

「先生?取り合えずいってみましょう」

 そういって片山さんはドアを開けた。



 そこには、

 紅い夕日に照らされた燃えるような街を見下ろすようにして立つ見慣れたシェルエットが1つ。
 あれは……最上君?


 5


 ふう、やっぱり来て正解だったなあ。何回見てもこの景色はいい。

「ああ、やっぱり何度見ても綺麗だよなあ……」

 と、思わずため息が漏れる。

 すると……。

「ええ、そうね」

 と相槌があった。


 …………。
 …………。

 ってえええっ!?
 急いで振り返る。
 と、そこにいたのは……。

「今日は学校休みなさいって言ったわよねえ? 最上君?」
「てゲエッ!! 先生!?」
「ゲエって言うのは随分な挨拶ね」

 ひいいいいいいっ!!! 今一番会いたくない人に……!

「それより何やってるのよ最上君!! 傷は? 病院行ったの?」
「いや、それは……」
「まさか行ってないとは言わないわよね?」
「あははは、いやその……」

 病院行かずにゲーセン行ってましたなんて言えないよう。


「もういいわ、傷口見ればわかるから見せなさい!!!」
「ってひいい、先生何服脱がそうとしてるんですか?」
「そうですよ先生。いきなり最上君の服脱がそうとするなんて……」


 はれ? また一つ声が増えた……って?

「片山さん、と……道着美女?」

 そこにいたのは我がクラスの片山さんと……剣道着を着た知らない美女だった。
 その道着美女はやや切れ長なツリ目が印象的な色白な綺麗な娘だった。
 そしてポニーテールにしてある髪が目に付いた。ああ、いいよねポニーテールって。
 最近あまり見ないから少し残念だけどさ、あのうなじの辺りとか俺好き。


 ってそんなこと考えている場合じゃない!!

「ッて先生! 脱がさないで、病院行ったから大丈夫ですって!!」
「本当?」

 う……嘘をつくのは心苦しいが傷はもうほとんど塞がっているのでまあいいか。

「ええ、もう大事無いですよ」
「ふぅ、もう最上君はいつも心配かけるから……」
「あはは、すみません」
「ん……まあ大事無かったんならもういいわよ」

 はぁ、ひと段落かな……?

 と……そこで先生の目が鋭くなりこちらをジト目で見てきた。
 嫌な予感。

 こういう時は……戦線離脱!

 ああ、我々は勇敢に戦ったさ。しかし逃げることも戦略の一つ。
 ってわけで……。

「そ、それじゃあボクかえろっかなー」
「待ちなさいっ!」
「ひぃ!」

 なんか嫌な予感ビンゴっぽい。

「最上君、1つ聞きたいんだけど」
「は、はひ、なんでしょうか?」
「最上君はどうやってここに入ったのかなあ……?」

 ギクッ!

「いやあ、実は鍵があい……」
「鍵が開いてるはずはないわよねえ。私が昼間入ったときに閉めてから私が鍵を管理してたし」

 ギクギクッ!!

「そういえば、少し前にここの鍵が盗まれたことがあったのよね。しかも次の日に鍵は目立つ所に落ちていたのよ。ねぇ、最上君。一日ってコピーを作るには十分な時間だと思わない?」

 ギクギククッ!!!

「は、いやぁ、ボクわからないなー」
「じゃあどうやって最上君は入ったのかなぁ?」
「そ、それは……」

「うふふ、可愛い最上君だし先生も鬼じゃないから条件次第じゃあ先生このまま帰ってもいいわよ?」
「な、何が望みですか……?」
「ふふふ、剣道部に入り……」

「それは断ります」

「なさ……って、何でなの?」

「そ……それは」

 長時間の闘争心や戦闘は俺の能力が開いて欲望に引きずられやすくなるから……なんて言えないよなあやっぱり。

「いや、少し事情がありまして」
「そう、残念ね。でも話だけでも聞いてくれない? 彼女……」

 そう言って先生は剣道着ポニー美女のほうを向く。

「武田さんの話も少し聞いて欲しいの」

 へえ、武田さんって言うんだ。

「初めまして。武田由里香だ」
「あ、どうも初めまして。最上零児です」
「最上零児……話は光から聞いている。昨日は光を助けてくれてありがとう。礼を言う」

 と、片山さんも出てきた。

「あ……その最上君? 私も昨日ろくにお礼いえなかったけど……ありがとうね。それになんか山城君に怪我させられたって……」
「あ、いや気にすんなって。これは俺がガラスの切れ端持って手え切っただけだからさ」

「そうなの……? でもありがとうねホントに。今度なんかお礼するから……」
「いや、別にそんなことを求めてた訳じゃねえしさ。良いって事よ」
「いや、最上零児、確かに純粋な善意だったのかもしれないけどこちらもそのままじゃ気がすまない。取り合えず闘技場のほうに来て本格的に話をしないか? お茶菓子と暖かいお茶くらいなら出すぞ」

 む、お茶菓子か。甘い物好きなんだよな俺。
 それにそろそろ冷えてきて暖かいお茶は今の俺にとっては値千金だし。

「ん……それは魅力的な提案だな。でもいいの? 俺そんなこと言われたら遠慮しないよ?」
「うん、そのために提案したんだ。こんな物では礼にもならないが君にはぜひ来てくつろいでもらいたい」
「そうか。じゃあお邪魔しようかな」


 6


 そうして闘技場に来たら座布団を出される。
 着いたとたん武田さんはどこかへ行ったので先生と片山さんと適当に話しておく。

 そうしてしばらく待っていたらお盆に急須やら湯飲みやら色々載せた武田さんが現れた。

「粗茶だけど……」
「おっ、うまそうじゃん。あ、その大福もしかしてお茶菓子? ラッキー、俺大福好きなんだよね。大体の甘い物は好きだけど」
「ふふふ、変な男なんだな。甘い物が好きとは」
「いや、変か? まあいいじゃん。男と女は違うところはあるけど個人の趣味趣向は自由であるべきだぜ?」
「ふふ、そうだな」

 と、先生と片山さんは何かメモしている。

「ふうん、最上君は甘い物が好きなのね」
「最上君は甘党……っと」

 …………。
 二人とも何メモしてるんだか……。


 まぁ、とにかくお茶とお菓子をいただく。

 ぱくっ、ムシャムシャッと、それでいてゴックン。


「ふうーとけるー、うわー幸せーなんだかいいのかなこんなVIP待遇してもらって。なんだか気分はとってもセレブ」
「ふふふ、お茶菓子とお茶の御代わりはまだまだあるぞ?しかしそんなに大福をおいしそうに食べる人は始めてみたな」
「いや、そうか? 美味そうに食うって美味いモン食ったら普通はこうなるだろう? それにしても和菓子に緑茶って合うよなー」
「ふふ、そうだな。君とは趣味が合いそうだ」
「そうか。あ、それよりさ、なんで俺を剣道部に入れたいんだ?」
「それは実は」


 ここで、武田由里香による剣道部の事情の説明ターン!

「なるほど、そういう訳でか。部員が弱すぎてかくかくしかじかと……」
「かくかくしか……どういう意味だ?」
「いや、気にすんな。しかしそうかー。ふうん。それは確かに気の毒ではある。でもどうして俺に?」
「いや、昨日一撃で山城を倒したと聞いてな。それだけ強さと運動神経があれるのなら剣道もある程度は出来るだろ?」
「いや、剣道は技だろ。経験がそのまま強さになるんじゃないのか?」
「いや、しかしセンスはやはり重要だと思う」
「ふーんそうか、で、ルールってさ、用は面と胴と小手にあたらなきゃいいんだろ?」
「う……まあ大雑把に言えばそうではある」
「へー、俺よくわかんないけど一試合やってみようかな」
「ホントか?」
「うん、ワリと楽しそうだし。あ、ただし1つだけ条件がある」
「なんだ?」
「俺防具なしでやりたい。怪我とかも心配ないし、それにそのほうが動きやすそうだ、何より防具つけるのもメンドイ……ってあれ?」

 なぜか武田さんは急にうつむいてプルプルと震えだした。

「あのー武田さん?」

 はてな? 何かあったのか? あ……おしっこ我慢してるのかな?
 それにしてもまた突然だな。

「どうしましたー」
「……クッ」

 おかしい、無言でプルプルしてて。ここは1つ聞いてみるか。

「どうしたん? トイレか? なら我慢は身体に悪いとおも……」

 ブチ

「あれ、今ブチッて……?」
「それは私に対する侮辱と受け取っていいのだな最上零児ッ!!!」

 ドッカーン!

「ひいっ! って今のアンタからした音だったのか? 健康にわるそうだなあオイ!」
「それは私の攻撃なんか当たりはしないという自信か?」
「いやそんなこ……」
「それとも私の攻撃などあたっても怪我もしないくらいにヘナチョコということか?」
「いや誰もそんなこと言って……」
「いいだろう。そのままで全身に剣道の恐ろしさを刻んでやる。さあ受け取れ」

 というと竹刀を俺のほうに投げて自分でも構える。 
 いかん、この娘の剣道の腕を疑うように聞き取れかねない発言は地雷だったか!

「ただし、もし私に勝てなかったときはそのまま部員だからなッ!!!
「ってうわー、最初の印象と違って無茶苦茶だアンターッ!!!」

 
 そうして相手の第一撃。
 相手も防具はしていない。


 クッ、速いッ!

 取り合えず相手の腕力は未知数なためバックステップでよける。

 さらにせまりくる攻撃。見切って逆方向にジャンプ。
 それで追い詰められた俺に向かって来る攻撃を地面に転がりながら反対側へ逃げる。

「クッ、逃げに徹するか卑怯者!」
「バカッ、作戦だっつーの」

 とは言ったもののそろそろ逃げてもいられんな。
 という訳で次に来る面への攻撃を受けることにする。

 速さ、見た感じの体重のかけてる雰囲気から行っても面胴などのコンビネーションではない。
 だから渾身の力を持って受ける。

 バンッ!!

 お、重い……。

 オカシイ、異常だ、この細腕からはどう計算してもこの重さは出ない。
 重さに対抗するため能力の栓を微かに開き最適な力の使い方をロードして対抗する。

 その瞬間……!

 流れ込む意識。

 なんだこれは? 意識に反応する物体あり……凄く近い……誰かが能力を使っている?
 しかし俺に進入しようとする物はない……。

 そういえば……思い出す赤毛の言葉……。

「…………。
そこから能力だけ獲得した出来そこないどもを作り、俺みたいな実験体を始末して回っているらしい。
…………。
ただ単純に肉体強化されているだけらしいぜ?
…………」

 ま……まさか彼女が?
 そ、そんな馬鹿なッ!

 そのとき俺の奥底から声が響いてきた。

「殺せよ。まだばれてはいないようだがそのうちにばれる。下手するとこの試合中に殺されるぜ。竹刀とはいえあの腕力なら人の一人くらい殺せるだろ。俺らも殺されるぜ?」



 う……うるさああああいっ!! 黙れ!
 だまれ!
 黙れ黙れ黙れ黙れええッ!!

 とにかくさらに能力をつぎ込み竹刀を撥ね退ける。

「…………ッ!」

 敵の息を呑む声が聞こえる。うるさい。余計な物を聞いている暇はない。
 迫り来る攻撃、これは……?

 相手を見ろ、筋肉の動きから次の動きを予測しろ。

 読込終了

 小手面のコンビネーション。

 チイッ! つまり小手を受けてたら面に入れられる。
 能力で計算し導き出した最適な力の配分筋肉の行使を行っても間に合わない。

 なんて速さだ。

 いや……速さだけならおそらくまだ互角。
 俺は基本は精神干渉型だが、ある「方法」を使うことで肉体も強化されるタイプと同格まで強化することが出来る。

 しかし相手のほうが先手を取っている以上同じ速さでは間に合わない。
 よって最適な軌道を読み込むも相手も長年の剣道の訓練からかほぼ同じだけ隙がない。

 しかし、敵は剣道のセオリーどおりにしか動けないという弱点もある。
 右手を離し……よしッ!


「な……柄で受けるだと!?」

 柄で敵の攻撃を受けそのまま無事面まで受ける。
 が、相手はさらに攻撃を仕掛けてくる。

 これは……読み込み終了、しまった胴はフェイントで面狙いか?
 間に合わない……ならば……。

 そのまま身体を捻り、そのままの動きでまわし蹴りを出し、敵の攻撃を避けつつ竹刀の付け根のほうを蹴る。

 軌道がずれて避けきれる。
 そし、敵の隙が……出来た……ッ!!

 この隙に竹刀を胴狙いで打ち込む、が敵も間に合う。
 
 しかしそれはすでに計算済み。
 その体勢が崩れた所が狙いだ。

 相手は剣道家、今の体勢からどこかを撃ってもおそらく守られる。
 さらに言えば敵の握りは半端無い。竹刀では重さが足りない。

 だから出来た敵の隙にそのまま一回転し重さを載せた回し蹴りを相手の竹刀めがけて入れる。

 
 バシイッ


「な……ッ!!!」

 そうして竹刀は彼女の手を離れ吹き飛んでいった。
 これで、竹刀が地面に付くまでに敵に打ち込めば勝負はつ……ズッ!!


 頭の中で……声が……。


「コロセよ。コロセ。今なら何の問題もなく殺せる。確かに叩いて殺すのは難しい。しかし竹刀は棒状だ。だから突けば簡単には折れない。喉でもいい。いや、違うか……目だ。そこを突けば簡単に竹刀は脳まで達し死に至る」

 嫌だ、ダメだ、殺してハア……だまあえるの

「コロセよ、コロセ」

 嫌だ。

「コロスニハ目だ。そう……予測によればその最強の結果は……」


 そうして確かに脳に浮かぶ風景。
 俺の竹刀が彼女の頭部を貫通し血と脳漿を撒き散らしながら死んでいく。
 残った目も色を失い口からも血が吹き出す。
 地面に倒れた彼女は片目がつぶれ血の海は次第に広がっていく。

 そんな風景。

「う、うううううわああああああああああああああああっ!!!!」
「……っ……!」

「「最上君?」」

 い……今の風景は……幻覚か……?

「う……オエエ……ごめ……うっぷ……は……吐くぅ……気持ち悪い……」

「ちょっと……大丈夫なの?」
「しっかりして! 最上君!」

「…………」

 いや、ちょっとこれ我慢できないかも。
 あ、でも、ここで吐いちゃまずいよな。

 そ、それよりもっ!

 取り合えず武田さんを見る。
 彼女は呆然とはしているがちゃんと生きている。

 大丈夫だ。大丈夫。

 でもホントに幻覚でよかった。
 うん、俺は人を殺してなんかいない。よし。

「ねえ、本当に大丈夫……?」
「しっかり……ッ!」

 二人が背中をさすってくれるが……無理っぽい。

「うぼう……あがあ……は……吐いてくる……」
「うん、一人で行ける?」
「あああああ。ダイジョブう……」
「じゃあ行ってきて……」
「ヴい」

うへえ、しまらねえなあ。カッコわりい。
とにかく、トイレへダッシュだ……。








はい、今回は長いです。

ひたすら長いです。そのくせ盛り上がりません。

なんていうか毎回山場的なものを一つは入れようと思っているのですが今回はなかなかストーリー的に盛り上がらなくて一章分が非常に長くなってしまいました。

そのため更新遅くなってすみません。

しかし毎回ドタバタやっているだけでは話は進まないのでこんな回もあるんです。

どうかご了承ください。

さらにこういうツッコミもあるかもしっれませんね。

ラブが少ない。こんなの恋愛じゃないと。

むしろラブコメって書いてあったのに・・・看板に偽りアリじゃないか。

もっともです。

ああ、もっとラヴを書こうぜ俺・・・。

あと、感想もらったの初めてだったので大変嬉しかったです。

読みにくい所があるという意見もとても参考になりました。

ありがとうございます。

次からはもう少し推敲に時間をかけて注意します。

これから忙しくなるのですが、出来るだけ更新も頑張りますんで読んでもらえると嬉しいです。

それでは長々とした蛇足の、こんな部分まで呼んでもらってありがとうございます。

ではまた。






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