あるべきカタチ
1
タスケテ
ヤメテ
ダレカタスケテヨ……ダレカ
ココカラダシテヨ……
何かが聞える。その声で目が醒める。
そうして今の自分の状態を把握する。
現在時刻午前三時。
思考は冴え渡り、身体の隅々、世界中に自由にならないものは無いというばかりの綺麗な感覚。
暗闇でもなんの障害も無く見える俺の眼が見たものは……。
取り合えず自分はなんかいつもとは違った小奇麗な部屋にいる。
そしてその中のふわふわのベットで寝ているようだ。
ふん、何か良い匂いのするベッドだな。雌の匂いがする。
部屋を見渡すとソファーには毛布を着た美女が一人寝ている。
どくりと言う音がして、一瞬視界が歪んだ気がした。
ふん、この女が俺の寝ているベッドの本来の主だな。
ああ、この女の、「俺」に対する警戒心ゼロの姿は実にいい。
コイツはいい女だ。
自然と自分の性器に血液が集まって行く。
犯すか。
今この部屋の中に俺より強いものは居ない。
いや、生物としての強さとして言うならば、少なくともこの街には俺よりも強い者は居ない。どうしようが俺の自由だ。
そうして女を劣情を持った舐める様な目で視姦する。
長めの黒のストレートがいい。俺の好みをよくわかっている。
胸も大きい。なかなかの上玉だ。
そうして女の近くまでいき毛布を剥ぐ。女は起きない。
女はシャツのような物を着てはいるが下半身は下着だけだ。
ふん。誘っているのか? よほど犯られたいとみえるな。
まあいい。存分に楽しませてもらおうか。
そうして、女のシャツに手をかける。
あ。
なにか? 俺、は、この女に世話になったらしい。なんだ、そうなのか。
ならば今はさっき聞こえた俺を起こした声の出元をつきとめるのが先だろう。女は後で構わない。
しかし病気の女を犯して自分に風邪なんかがうつるのは気分が悪い。
取り合えず女をソファーじゃなくて、俺の寝ていたベットへと移す事にする。
女を抱き上げて自分が寝ていたベッドまで運ぶ。
女は柔らかく持っているだけで自分の劣情に火がついていくのがわかる。
ああ、決めた。やはり犯そう。ここで獣のように。激しく。壊れるまで。
今は力が開放されているせいかこの女の感情が流れ込んでくる。ふん。この女は俺に良い感情を抱いているようだな。
くくく、その緩やかな感情は心地いい。壊すのは惜しいが、だからこそ壊すのも良いかもしれん。そのカタルシスはきっと何事にも替えられない快感を俺にくれるだろう。
そうして取り合えずベットに女を置いてシャツのボタンを全て外す。
さぁ、頂くか。
「君自身が正しいと思うことに……」
チッ、なんだ今の声は?
急に萎える性器を感じながら、女から手を離す。
興がそがれた。やめだやめ。つまらん。やめた。詰まらん事はしない。
だがしかし、このままではこの女も風邪を引くだろう。布団くらいはかけておいてやる。
そうして今度は自分の上着を探す。と、壁際にハンガーで吊ってある。
それに腕を通し、声の方向をたどる。
ふん、声の方角は耳ヶ崎の方だな。
この部屋は何階だ? ふ……三階か。
ふん、この位なら構わん。
取り合えずベランダへ行き地面まで飛び降りる。
そのまま着地し……と、なんだ。ここは塩山の商店街か?
耳ヶ崎まで、走れば三分とかからんな。今の俺の足なら。
2
無人の夜の街を駈けて耳ヶ崎へ来る。
途中見えたのは赤信号の光と街灯の光だけだ。
夜の集合住宅にも人の気配はなく、巨大な蟻の巣のようなその姿は廃墟のように、生の気配のしないこの世界を演出している。
ふん、舞台としては悪くは無いな。
そのまま、走る。
そうしてその声の発信源へ行く途中に、俺は「ヤツ」に出会う。
「イヒヒヒヒヒヒ。うひゃ、うひゃ、うひゃひゃひゃヒャヒャヒャヒャヒャ。オイお前」
なんだか耳障りな笑い声がする。
声の方を見れば、異様な格好をした男が独り、この世界に立っている。
赤い頭のその男は、初対面ながら、まるで十年来の友人のような気安さで俺に近寄って、話しかけてきた。
「オイ、どうするんだよお前。せっかくの面白い状況状況? ウヒ、お前も見て楽しめよ」
「ふん。そこのお前。この声の根源の方向はこの路地の裏か?」
「オイ何故だ、何故行く? そうか、お前も混ざりたいのか。ああそれも良いじゃないか、なら俺も行くかな。イヒヒヒヒヒ。うじぇへへ、一緒に仲良く犯し、食らい、殺そうぜ?」
「いや、今回は、俺は問題を解決させてもらう」
「なんでだ? お前も能力者だろ? 一緒に研究所脱走組同士仲良くしようぜ?」
「ふん。貴様の言っていることはよくわからんな。それも悪く無いがどうやら「俺」自身が今のこの街を気に入っているようなのでな、この声を聞き続けるのは不快だ。解決すれば静かになるのならば、俺は解決する」
「オイ貴様!! どう言う了見だ? 能力者は自身の欲望に忠実に動くはずだぞ。性欲でも食欲でも良い。だから、ここで犯して殺すんだよ。それとも、まさか貴様も能力だけ獲得した出来損ないなのか? ならば彼らは国の犬になると聞いたからここで殺さなければな」
「お前が何を言っているのかは全く解からんが、俺は自分の欲望に忠実さ。だから今もやりたい事をやろうとしているだけだ」
「ク、く? ククヒャヒャヒャ。うひぇへやひゃひゃひゃ。それは面白いな。問題の解決がお前の欲望か。ウヒヒ、それが本当ならなんて面白い! でも一応調べさせてもらうぜ、その能力の強さと、種類もな、ケケけくああ」
ゆらりと、男の影が揺れた。
見ると男は狂ったような笑顔のままゆっくりと右手を俺のほうへ突き出している。
そして、奴はそのまま「力」を解放した
ム……。
これは、意識に、進入しようとしている……?
これは、ヤツも俺と同種か。
しかし、奴の力はこの程度か。何か劣化している力を感じるな。
この程度の力ならな、出て行ってもらおうか……ふんっ!
そして、俺が奴の力を遮断した瞬間に、奴は弾かれた様に震えて、笑顔のまま俺のほうを見た。
「イヒ、いひ? 貴様は……一体? 俺の精神干渉能力は研究所最強のはず。なのに俺の精神介入をはじいただと? 貴様はなにもの?」
「だから研究所って何のことだよ。下らん話に付き合ってあまり遅くなると声の元へ間に合わんから行くぞ俺は?」
「ま、まさか……貴様が「原典」なのか?」
「何を言っているお前。よくわからんがまあ良い。とりあえず声の中心の場所はあそこのバーの中か?」
「ああ……まあ止めたいならすきにしろ。それに例えお前を止めたくても俺にはお前を止めれんさ。ブグヒイヒヒッ。多分似たようなものでもお前と俺にはガンダムとジム位の性能差はあるからな。いひひひふひひ、いい例えじゃないかようひひひ。せっかく俺がヤツラの精神にお邪魔して操ってこの状況をセットしたんだが」
「そうか。悪いな。潰さしてもらうぜ。まあお前は運が悪かったのさ」
「ケ? まあいい。ウヒヒヒヒヒ。しかしお前もなかなか面白いヤツだな」
「う、そうか? 言われた事無いぞ?」
「まあそうかもな。俺には面白かったが。じゃあな」
「ああ」
そうして、赤い頭のその男は、そのまま夜の闇へと消えていった。
幕間1
小汚いバーの一室。
カウンターに座ってひたすら酒を飲み続ける金髪の男がいる。
この男こそ、この耳ヶ崎一帯を仕切る暴走族のリーダーである山城真一その人であった。
どれだけの酒を飲んだのだろうか。カウンターの上には空になった酒瓶が大量に転がっている。
大量の酒瓶。そう、普通の人間ならば泥酔して死に至りかねないほどの大量の酒瓶が。
自制心があれば、まともな人間なら、例え人生捨てた不良でもこんな自殺行為はしないはずである。
しかし、山城真一は、焦点の合っていない目のまま酒を煽り続けている。
そこに、もう一人の焦点の合っていない目をした男が入ってくる。
そして、山城の酒瓶を取り上げて話しかけた。
「おい、昼間攫っておいたヤツの撮影すんぞ」
「ああああ、ううううう、馬鹿テメェ、何勝手に俺の酒取ってんだ。殺すぞ。もっと飲ませろよ……?」
「ばか、山城お前、もう金も酒もねえだろ、だから稼ぐんだろ?」
「あああぁ、そうだったな。金持ちのオッサンはどうしてる」
「ああ、なんか家から器具持ってくるとかはしゃいでたぜ。真性の変態だぜあの親父」
「ヒヒヒ、そりゃあ酷いな。本当なら高校の片山光ちゃんも混ぜて撮りたかったんだけどな、お前も追っかけただろ? アイツに邪魔されてさ。うふひひひひ、明日にはブッ殺す」
「いや、明日にはぶっ殺してるんだぜ俺たちが。ああ……それにしても片山光ちゃん可愛いよな。多分うちの高校では一番。お前が逃がさなけりゃ今ごろ親父の前に俺が味見してたのによー」
「馬鹿! うるせえよ、俺が先のはずじゃんかさ。それに今日の姉弟も上玉じゃんかさ。っつうか姉が良い。さすがに俺美形でも男はどうでも良いもん」
「そうか ?俺あの弟も可愛いと思う。なんか目覚めそうだモン」
「うほっ、お前変態だったの? うわ、キモッ! 寄るな変態。でもさー、大体さ、穴あいて無いじゃん」
「バカッ、後ろにあいてるだろ?」
「ひひひ、そうだな。アレは確かにいいかも。じゃあ親父より先に俺たちで楽しもうぜ。奥に閉じ込めてあんだろ?」
「おう、鍵は……っと開いた」
3
取り合えずバーの前についた。
そしてドアを開けて中に入る。が、誰も居ない、か……?
しかし奥の方の部屋から声が聞えてくる。
「お前らッ!!何のつもりだ! もしも姉ちゃんに手を出したら絶対許さないからな!」
まず、若い男、というか少年の声が一つ。この声は、さっき聞こえた声の一つだ。
「んー、勇ましいでちゅねー」
「ひいひひひいひひひ、ボクも自分の心配した方がいいでちゅよ―?コイツがまるでマイ○ルみたいな発言してたからねー」
そうして、「俺」は聞いたことの無い野卑な声が二人分。
「うるさいうるさい。姉ちゃんに何かあったらお前ら殺してやる」
「ひひひ、でもそうだね。二人同時にやっちゃうか」
「そうだな、取り合えず……俺ズボン脱がすー」
「じゃあ俺スカートー」
「や、やめて。もう……やめてください。もう、私はいいから……弟にだけは手を出さないで」
ここで、もう一人分、今度は少女の物と思われる綺麗な声が聞こえた。
この声も、さっき聞こえた声だ。
「ッ!! 何言ってるんだよ姉ちゃん!!」
「んー健気な姉弟愛ですねー。でもお兄さんたち両方いただいちゃうつもりなんだなー」
「ん、むーんむーん……いただきまーす」
やはり俺の眠りを妨げた声の出処はココか。どうやら間違い無いようだな。
ならば、お邪魔するか。声を止めるために。
取り合えず、このドア鍵かかってるし……蹴破るか、フンッ!!!
バキイッ!!!
「「「「なッ!!!」」」」
よっしゃ軽いぜッ!!
中には二人のチンピラと、一人の少女、一人の少年が居て、全員が新しい登場人物である俺のほうを見ていた。
「おいおい、面白そうな事してんな。俺も混ぜろよ」
俺がそう言うと、二人のチンピラは俺の顔を見てパクパクと死にそうな金魚のように口をあけている。
何だコイツ等は? 俺の顔を知っているのか?
「きっ、貴様は、昼間のっ!」
「馬鹿野郎ッ!!!テメエなんか混ぜるわけねえだろ!!? よくもこの山城を舐めてくれたな。ブッ殺すッ!!」
そう言って二人の野卑な男がナイフを抜いた。
何だコイツ等。この「俺」に刃向おうと言うのか。馬鹿な奴らだ。
死にたいとしか思えないな。全く。
しかし、妙な空気を感じる。
普通の町の喧嘩ならこういう時のナイフは脅し道具だが、今のこの二人組からは何故か殺気が感じられる。
と言うか少し目が逝っちゃってる。自分の意志では無いようなそんな感じ。
さっきの変な奴の言ってた精神にお邪魔してうんたらかんたらとか言うのと関係があるのか?
しかし、いくら強力に操られようと、コイツ等自身にテクニックが伴ってないので特に恐れは感じないし、どうでもいいことなのだが。
まあ相手がナイフ使うならこちらも使うか。
ふふふふふ、俺も刃物は大好きだぜ。
研ぎ澄まれた感覚から服の中にナイフが入っているのが解かる。
そうしてポケットをあさると……ってこれは違う、生徒手帳だ。
取り合えず手帳を投げ捨てて探すと……あった。
と言うわけで手持ちの折りたたみナイフを開く。
む……? 右腕には何故か包帯が巻いてあるな。
まあいいか。こんな雑魚共は別に利き腕じゃなくても大丈夫だろう。
そうして左手で構えたときに山城と名乗った方じゃない方……茶髪の野卑なチンピラが切りかかってきた。
遅い、その上にナイフの使い方が間違っている。
避けれると言えばそれはもう百回でも避けれるが……
軌道を読みその間の周りの状況把握さらには敵のその後の行動をロードするために戦いのためだけに能力を集中して開放する。
瞬間、脳に入ってくる圧倒的な量の情報、空間を全て把握できるだけの情報と、それを行動に移せるだけの肉体行使状態へと移す。
敵情報読み込み。
弱い……。これなら当たってもろくにダメージは無いな。
と言うわけでタイムロスをなくすため役に立たない右手でガードする。
結果、学生服を少し刃が通って軽く右腕が斬れたが……別に構わん。
そのままナイフを握った左手で腹を殴りつける。
その最強のポイントは……見えたッ!!!
その瞬間、殴った感覚と共に、バキボキッ、と言う敵の肋骨を折る妙な音がした。
「グボアッ!!!!」
敵は奇声を発しながら、口から血を吹き出して三メートル以上吹っ飛び壁に当たって止まった。
多分アバラの二、三本は……む、読込完了。三本は持っていった。
「ッ……て、てててテメエナニモンだッ!!!?」
「別に。どうした? オマエ、山城とかいったか? 俺を殺すんじゃなかったのか?」
「うッうるせえっ、今殺してやるよッ!!」
「そうか。こいよ」
山城とか名乗った下品な男の得物は……スティレットナイフか。突く事に特化したナイフだ。
使い方も、流石にさっきの雑魚とは違うな。
「フンッ」
と、山城が突いてきた。
読込はすでに完了している。軌道も突くタイミングも前からわかっている。
そして、その中からの最強の反撃の結果も。
相手の右手から繰り出される突きをこちらの左手のナイフで受け流し、体勢が崩れた敵の首を掻っ切る。これが最強だ。
取り合えずナイフを逆手に持ち直しロード。
この行動は、今の最上零児の身体能力で可能か? 勿論可能。
今の能力を開放した俺ならばこの程度の敵など百度殺しても余りある。
という訳で相手の切先を睨む。まさに、今、突きを繰り出そうとしている瞬間。
しかし、その動きは今の能力を解放している俺にとっては、あまりにも遅い。
……まだまだ甘い突きだな山城。お前はこれで終わりだ。
「俺」の方と貴様は知り合いでも、俺自身は知らないが……まあいいか。
お前はここで死ね。
と言うわけで山城を殺すためにヤツのナイフを受け流そうとした、その瞬間。
「殺し……気分の…殺しては……いけない」
また、頭の中で声がした。
ギ、なんだ今の声は……?
あ。それは、この行為は俺がしてはいけない事ではなかったか?
コロス。いや、ダメだ。
あ、でも、そんな躊躇してる暇は……。
「ズッ……!!!」
気づけば、俺の肩に山城のナイフが刺さっていた。
何が起こったんだ。今? 情報処理終了。
そうか。
声に止められて動かなかった隙に山城のナイフが俺の肩を貫通したのか?
「ヒヒヒヒヒ……雑魚め、死ねッ!!」
そうして山城のナイフが肩から抜かれ俺の心臓の辺りへ軌道を向け直す。
身体は……動かない?
まずい、奴のナイフは、真っ直ぐに俺の心臓を狙っている。
そして、俺の身体は動かない。
ならば、俺は、ココで、死ぬのか?
こんな雑魚に、こんな馬鹿に、殺されるのか?
そんな馬鹿な……ふざけるな……フザケルナ!
「ふざけるなああッ!!」
「ヒギィッ!!?」
突然動く身体と、あたりに響き渡る、骨の折れる音。
あれ、何が起きた?
あ、そうか。
身体が動いて山城にローキックを叩きこめたのか。
そして、奴の足の骨は砕けたわけか。
みると、山城は折れた足を引きずりながら引き下がり、脅えた顔でこちらを見上げていた。
だが、躊躇などしない。そのまま奴の方へ踏み出す。
「ひ、ヒィッ、て……テメエ、化け物!?」
「ふふふ、さあな。さて、どうしてくれようか」
「こ、こここ殺すのか!?」
「ふ……貴様なんか殺してもナイフの錆にしかならんな。だが、取り合えず左足もだっ。フンッ!!」
そして、また部屋に鈍い音が響く。
「ヒヤガアッ……ッ!?」
「黙っておけよ、お前……と、黙ったか」
ふ、どうやら山城は失神したらしい。おかげで静かになったな。
と、雑魚どもが持っていたナイフが目に入る。
ふん、なまくらだが無いよりマシな戦利品ではあるな。いただいておこう。
二本のナイフをポケットへ仕舞って置く。
そうして捕らわれてた男女、会話から推察するに姉弟を見る。ふん。やけに美形な姉弟だな。
が、二人とも震えて抱き合ったまま恐怖の表情でこちらを見ているだけだ。
む……二人とも脅えて声も出ないか。
まあ今の光景を見れば当然かもしれん。
さて、どうしたものか……。
俺の睡眠を邪魔してまで起こしたのは許せない。だが、声さえ止めば俺には文句は無い。
それに俺の能力の基本は強い感情を読み取ると言う事だから、つまり二人はそれだけ辛かったてことでもあるな。
「俺」はどうしたい?
とりあえず震えている二人に近づく。
「な……何するつもりなんだようッ!! 姉ちゃんには手を出すなよッ! う、っていうか……お願い、姉ちゃんだけは……」
「すみません。弟だけは、お願いですから……」
ふう。この状況でも相手を思いやるか。美しきかな、か?
俺は自身の欲望には忠実だけど別に人間の欲望は性欲だけじゃ無いさ。
ならば、俺はどうすればいい?
と、その時!
「もしもしー? 山城く〜ん?オジさん道具持ってきたよーん?」
変なおじさんが空気をぶった切って入ってきた。
そう、まさに変なおじさん。身体的特徴を言うのは控えようと思うが、こいつは間違いなく相当な変態だ。
そして両手には最強の変態を証明するように……その流石の俺でも口にするのが憚られるような、これでもかってくらいにエロい道具持っての登場だった。
うん、これは酷い。
事実姉弟は二人とも顔が真赤だ。
「あらまー綺麗どころが三人も集まって……これ全部いただいて良いの? おじさんうれぴー」
三人って、俺も入ってるのか……っつうかやっぱり見た目通り両刀使いなんだ。
流石の俺でも……コレに犯られたら……死ぬかもしれない。
一応だが、能力で予測し、シミュレートする。
その結果、目を背けたくなるような最悪の未来がシミュレートされた。
無理だ。これに犯られたら生き延びる未来は無い。
この未来は、実現させちゃいけない。
「うーん。そうだねー、じゃあまずは……君に決ーめたッ!!」
って俺ぇ? マジでかよ?
「んー、君名前なんて言うの?おじさんが愛してあげるからねー?」
「……」
どうしたものか。そうだな。
「……」
「へぼしッ!!!」
ドサッ
取り合えず無言で殴って潰す。見なかったことにしよう。うん。
そうして変なおじさんが気絶したのを確認してから姉弟を見る。
さっきより更にビクビク脅えてる。まあ当然か。
っつうかなに言おうとしてたんだっけ……変な親父のせいでタイミング逃したな。
ああ、そうだ、思い出した。
「あぁ……あー、おまえら?」
「「はっはいぃっ?」」
「なんだ、なんかこうさ、世の中はこう言う風に危ない奴いるからな、アレだよ。さっさと気をつけて帰れよ?」
「「え……?」」
二人ともポカンとしている。
あ……アレか? 俺があいつらの同類と思ってたのか?
夜中にこんな所いるし、俺も混ぜろとか言ったし。
しかし、それは根本から違う。そうだよ。
「っつうかさー、お前らが煩いから、俺呼ぶから寝れなかったんだよ。じゃあな」
そう言ってこの部屋を出る。血まみれの男や、変なおじさんがいっぱい転がってる部屋には長くは居たく無いし。
「「ぁ……ぁああありがとうございます!!」」
後ろから聞こえる感謝の言葉を流して外へ出る。
ちっ、ガラじゃあねえなぁ。
そうして家路を急ぐ。
空はもう薄く明るくなり始めてる。
あれ、俺の家は駅前なのになんで商店街の方に来てるんだろか?
あれ……あ、そうか。
今日俺はこのマンションに居たんだ。
そうしてベランダからベランダへと飛び移り、三階の部屋のベランダまで飛び乗り、部屋の中へ入る。
中には相変わらず美女が寝ている。
さっきは欲情したがもう疲れてそんな余力も無い。
寝よう、つ……ッ!
そうか、山城に刺されたんだったな。
クソッ、今更になって貫かれた……肩が、痛てぇな。
まあいい、寝れば回復するさ。
そうだ、もう、寝よう。
おやすみ。
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