憐神(15/24)PDFで表示縦書き表示RDF


憐神
作:Siko



面会(2)


 1



 能力を開放し、方向を確認しながら階段を駆け上がり二階の廊下を走る。
 まだ誰かが残っているのなら全員を外に出さなくては。そうして職員室の近くに来たその瞬間、職員室の中から見覚えのある紅い頭が出てきた。
 赤毛の頭、アイツは……。

「よう、お久しぶりだな、最上クン?」
「貴様、いったい何のつもりでこんな事を……」
「ああん? そりゃあアンタに会いにきたんだよ。アンタの居そうな場所って言ったら学校くらいしかないだろ?」
「それなら何故教師を二階から落としたりした!?」
「ああ……アイツね、そりゃあ名簿を見てアンタを探す俺の邪魔をしたからだ。だからアイツが悪い」
「それだけ……たったそれだけでか?」
「ああ、俺は俺のやりたいようにする。それを邪魔する奴は誰だって容赦しない。それは例え相手がアンタでもだよ? ウヘヒヒヒ!」


 クッ……ああそうだよ、コイツはそういう奴だったよ。忘れていた俺が悪いんだよ。


「クソッ、取りあえず……まだ職員室の中に人はいるのか?」
「ああ、三人くらいはいたぜ?」
「そうか、なら全員解放しろ。お前が用があるのは俺なんだろう?」
「ふん、開放してやらなくも無いがー、そうだな、そうする事による俺へのメリットはあるのかー?」
「ああ、取りあえずお前の話の用件だけでも聞いてやる。ただしその答えをどうするかまでは今は言えないがな」
「よし、その条件ならいいぜ」

 そういうと赤毛野郎は職員室の中へ顔を突っ込み叫ぶ。

「おーいアンタら。邪魔だ、さっさと出て行け」
「な、なんなんだね君は、突然入ってきて佐伯先生を窓から放り投げたり出て行けといったり……馬鹿なことはやめなさ……」
「オイ、俺は「出ろ」って言ったんだ。アンタ方もさっきの男と同じ方法で外に出たいんじゃなければさっさと出て行け」
「……ッ! わかった。出よう」

 む、話はついたか。しかしここで先生方に俺の姿を見られるのは得策じゃないな。


 そういうわけで柱の影に身を隠し去っていく先生たちを見守る。
 ん……何か話してる……?

「しかし教頭先生……いいんですか?」
「ああ、仕方がないだろう。後はもうすぐ到着する警官隊の人に任せようではないか……」
「そう……ですね」


 なに? 警官隊が来るだって? それは拙い。何しろ彼らは銃を持っている。
 もしこの赤毛野郎と接触でもしたら全員気に食わないっていう理由で操られて自殺でもさせられるかも知れない。
 これは……急いで何とかしないとな。


 そうして階段を下りていく先生が見えなくなってから話しかける。

「それで、用件は何だ?」
「ああ? ああ、それなら俺は知らねえ」
「は? お前、俺を馬鹿にしてるのか?」
「ちげえよ、そうじゃねえって。俺は本当に知らねえんだよ。アンタのお仲間が用があるって言うからついてきただけだしいー?」
「……仲間?」
「ああ、おんなじ「原典」だぜ? まあ奴はそれ以上の化け物かもしんねーけどな、っと来たぜ。アイツだ」

 む……?


 2


 そうして近づいてきた男はひたすら黒かった。
 いや、別に肌が黒いとかそういうわけではない。ただ……。
 全身を黒い服で固めその上黒いロングコートを着ている黒髪の長髪の、2メートルはあろうかと言うような長身の男。
 堀の深い顔をした、痩せ型、と言うか、筋肉質な中年の男だ。
 その背の高い男が全身黒い格好で歩いているのだからまるで影が歩いているみたいな印象がある。

「あんたは?」
「ふむ、久しぶりだな、最上零児よ」

 何を言っているこの男は? 俺はこんな男知らない。知らないはず。


 ズキン……。なぜか心臓が一度大きく跳ねた気がした。


 紅い……。


 いや、違う、知らないはずだ。知らないはずなのに……何故この男を見ている猛烈な怒りが沸いてくる。


「貴様は……いったい?」
「ふむ、そう言えば自己紹介もまだだったな最上零児よ。私は物部宗全もののべそうぜんだ」
「そう……ぜん?」
「ふむ、やはり思い出さぬか。武烈もなかなか強力に……」


 ぶれつ……父さんの名前だ。こいつは父さんを知っている?


「アンタ……父さんのこと知ってんのか?」
「ああ、古い馴染みだ。それだけではないぞ最上零児。お前とも会った事がある」
「は? 俺あんたなんか知らないぞ?」
「それは忘れて……いや、忘れさせられているだけだ。なに、すぐに思い出させてやる」


 はてな。何の事か良くわからんが。


「いや、それよりアンタ、なんの用だ?」
「ふむ、用件は一つだ。私と共に来い」
「は、どういうことだ、それ?」
「深くは言わん。が、答えは二者択一だ。来るのか? 来ないのか?」
「よく意味が解らない。だから答えられない。ちゃんと説明しろ」

「ふむ……。あの武烈の息子がコレほどまでに俗物だとはな。まあいい。それならばその寝ぼけた頭を覚まさせてやる」
「は?」


 そう言ってその宗全と名乗った男は右手をやや前に突き出し、その手をゆっくりと握る。
 その瞬間……!


「ズッ!?」


 流れ込む意識。濁流する意思。沸騰する肉体。揺れる脳髄。壊れたポンプ。逆流する血液。そして逆行する記憶。
 感覚は内面を向き、外の情報は遮断される。神経は役目を果たさなくなりただ自分の殻堕を守るためだけにある。
 しかしそれヲも無視し、ハイってくるもノガある。


「ふむ、流石は腐っても武烈の息子か。このレベルの能力をも遮断するとは」
「クッ、き、貴様……精神干渉……型の……」
「ほう、まだ喋れるか。そういえば最上家はそちらの方向の宗家であったな。だがな、精神干渉型という言葉はあの里がなくなった今もう使われていない。今はそのタイプの能力者をハッカータイプという。これは全国共通だ。覚えておけ最上零児よ」
「は……かー……?」
「ああ、いや、まだ口が動くとはな。ならばこれでどうだ?」


 そうして手に力を籠める宗全。



 ズズズズッっっ……!!
 ああ……頭が……割れる……神経が……死ぬ。痛い。
 でも……痛いって感じられるってことは、まだ神経が生きているということ。守れ……ダメだ……痛い……痛い。
 痛い痛い痛いいたいいたいイタイイタイイタイイタイいたい。止まらない。痛覚が止まらない。
 それを止めようと能力を回そうにも今は全力で自分を守ろうと生命としての自己を守ろうと自我を守ろうと皆総動員してるから回せるだけの能力よりきがない。
 ああ……でもこのままこの痛みが続けば自我自己自分自意識が死ぬ前に痛くて、痛みで身体が死んでしまう。
 ああ……痛い。でもなんで俺はこんなに自分にアイツが入るのを拒否する? 


「ふむ、痛いだろう最上零児よ。その痛みはお前が自分に張った防護膜が上げる悲鳴だ。お前の意思がどうであろうとお前の能力者としての免疫が私の能力を跳ね返そうとする、その摩擦なのだ。ああ……苦しいだろう最上零児。その苦しみから解き放たれたければ、何、簡単な事だ。能力を意識して弱めろ。そうすればすぐに抵抗は無くなり力の流れはスムーズになり痛みは消える。今の君のその痛みは銅線に電流を流したときに抵抗を置くと発熱するだろう? その熱がその痛みだ。だから恐れる事はない。意識して抵抗を消せ。ならばすぐにでも楽になる」
「そう、ぜん?」


 ああ……なんてこった。最悪。もういいじゃないか。こんなの我慢できねえよ俺。
 しかも何より我慢できねえのがさっきまでのあのアイツの嫌な声が今はまるで天上の美声に聞こえる。
 ああ、なんつーかまさに神の慈愛をも含んだ声みたいだ。あんな奴の声がこう聞こえるなんて。


 あれ? そういえば俺は奴の何がそんなに気に入らないんだ? 会ったことあるらしいけど覚えてないし。
 ただ初対面の時に吐き気を覚えるほどの嫌な気分になったからってそれだけで人間を決める事か……ああもうダメ、物事が考えられん。

 もう入れてしまえばいいじゃないか。仲間になればいいじゃないか。着いて行けばいいじゃないか。死ぬよりはいいだろう?



 いや、ダメだダメだ。あいつに見せてはいけない。アイツを入れてはいけない。アイツに俺を許してはいけない。
 だって解る。俺の中の俺も知らない、何かが自分をあいつに見せるなって叫んでる。
 もしもアイツに俺を許してしまったら俺は、死ぬよりもつらい事がおきて、死ぬよりも辛い事になってしまう。


 だから……だからまだだ。マダダ。マダだ。まだ抗える。まだ逆らえる。与力など残すな。
 いま、例え今ここで死ぬとしても、アイツだけはこの聖地に入れてはいけないッ!!



「ふむ……まだ抗うか。腐っても宗家の跡取り。やはり純粋な力勝負だけではどうとも成らんか。まあいい。そういえば最上零児」
「クッ……ヒ……ひぐぅ……な……何だ!」
「ふむ、いや、何故お前は里を出たか覚えているか?」
「な……そんな……事ッ……父さんが……死んで……ただ父さんは僕には普通に生きて……欲しいって……」


 あれ……いま……俺……僕って……。


「ふむ、武烈のことは覚えているのか」
「勿論……だ……忘れるわけ……ないだろ……う……」
「ふむ、ならばその父親の死因はなんだ?」
「父さんの……死因? そんなの病気で……」
「ほう、ならば里はまだまだ平穏にあるんだな」
「ああ……当たり前じゃ……」


 燃え盛る炎。紅い森。紅い家。木霊する悲鳴。交錯する怒号。血の匂い。
 夜なのに明るい村。いるはずのない人間。そして……紅い視界。


「あ……当たり前じゃ……当たり前じゃ……ないか……知らない。今の景色なんて……知らない……」

「ふむ、まだ少し足りんか。そういえば最上零児よ。その里には近しい肉親は居ないとは言え親戚は居るのだろう? お前は一度でも里帰りをしたか?」
「は……何故そんな事を……するわけ無いだろ……」
「なぜだ? 小さな村とはいえ友や親戚の居なかったわけではなかろう。何故一度も帰らない?」
「う……ぅぅううるさい!! お前には関係無い! 邪魔だお前! 出て行けお前! 帰れ!」
「ふむ、まだ直視出来んか……ならば……」



 幕間1  山園綾子side



 降りてきた教頭先生たちから取りあえず教師は先に集まって話を聞いて中の状態は大体わかった。

 不審者はややジャンキー風の赤い髪の若い男。凶器を持っている上にとんでもなく強いらしい。
 ただ、なぜか教頭先生ら3人には加藤先生は放送を入れている最中に殴られたけど無事に解放されたりしていて何が目的かは不明だ。
 救急車が到着して重症の佐伯先生。後やや重症の加藤先生は運ばれていった。

 更に後10分もすれば警官隊も到着するという。普通の警察官二、三人で相手にするには危険すぎると判断した結果らしい。
 とにかく、相手はそれくらい危険な男だそうだ。教頭先生の話によると雰囲気もおかしかったらしい。薬物中毒の可能性も高いそうだ。
 しかしそう考えると、佐伯先生と加藤先生には悪いけどそんな危険な男が入って生徒に被害が出なかった事は不幸中の幸いかもしれない。
 どの教室の先生も不審に思って全校生徒無事に非難させたみたいだし……とりあえずは一安心かな。

 よし、それじゃあクラスの皆に説明に行かないと。



「はいみんな聞いてねー」


 説明は一応校庭に固まっているクラスごとに行われる。


「不審者の人が入り込みました。もうすぐ警察の人も到着するのでここはもうすぐ立ち入り禁止になります」


 ん……流石に皆ざわついてるね。


「はいはい静かに。とにかく今日のテストは中止です。みんな、速やかに下校してください。ちなみに校舎に忘れ物が会っても明日以降にしなさい。今日はもう校舎は立ち入り禁止です。定期、または財布を置いてきてしまって帰れないって言う人は教頭先生のところまで言ってください。それじゃあ……解散!」


 そうして数人の生徒は教頭先生のもとへ行き、大多数の生徒はざわつきながらも帰っていった。
 と……。


「山園先生!」

 ん……向こうから走ってくるのは……。

「あら……片山さん? どうしたの? あなたも早く帰らないと……」
「先生! 最上君は、多分まだ中に居ます」
「へ……? 今、なんて……?」
「だから、最上君は多分まだ中です」 
「え、そんなわけ……だって教室出るときには確かに……」


 そう言って廊下に生徒を出したときのことを思い出す。確かにあの時何となく見た最上君は松山君と話していた。


「それが……佐伯先生が窓から放り出されるのを見て忘れ物とか訳わかんない嘘を言いながら急いで中に入っていったんです。私も止めたんですけど危ないから来ちゃいけないって言って振り切って走って行っちゃって……」
「危ないから来ちゃいけない……?」


 なんでだろう。確かに人を窓から放り出すほどの相手なら危険というのはわかりきっている事だろうに、そんな事の念を押すなんて……。
 それに、一番解らないのは最上君自身も危険性を認識していたってことだ。ならなんでわざわざ中に……?


「先生、いったい不審者ってどんな人なんですか?」
「それが、かなり危ない人らしくって、薬物中毒者の恐れもあるらしいわ。凶器も持っていて力も強いみたいだからもう暫くしたら警官隊が到着するそうよ」


 そうよ、不審者は凶器を持っているのに……ああもう生徒に被害がなくて良かったって思った矢先に……なんでよりによって最上君が!!


「警官隊……そんな……! 私、最上君呼んできます!」
「へ……何言ってるのよ、ダメに決まってるでしょ!? 危険な相手なんだから!」
「危険な相手だから……です。最上君に何かあったあらどうするんですか!?」
「それは……そうだけど、でもダメよ。片山さんにも何かあったら……」
「もういいです。私、行きます」
「ちょっと……どうしても行く気なの? 片山さんが行っても何かが出来るって訳じゃないのよ!」
「でも……最上君を、連れ戻してこないと……だからっ!」

 う……この子がこんなに積極的だなんてね。恋は女を変えるってことかしら。でも……それなら私だって。

「ふう、片山さんがこんなに頑固だったなんてね……わかったわ。いいわよ。行っても」
「え? いいんですか……行っても?」
「ええ、何となくだけど気持ちはわかるわ」
「でも……そういうのって先生が認めたら立場的に……」
「ええ、勿論マズいわよ。だから勿論こっそり行くんだから……」
「行くんだから……って、先生も来るんですか?」
「当たり前じゃない。生徒だけに危ない目は合わせられないわよ。それじゃあ……体育館脇から行くわよ」



 3



「それならば最上零児。質問するがお前の中ではお前の父親は天寿を全うして死に、里はまだ平穏の中にあり、そうしてただ家業を継がせたくなかったお前の父親がお前を能力の影響の少ない一般世間へ縦横させるためだけにこの街にやった……そういう事なんだな」
「ああそうだよ。なんか文句あるかこの野郎!」
「ああ、あるな。全く武烈には失望した。まさか息子にこれほどまでにくだらない幻想ゆめを見せようとはな」
「うるせぇ黙りやがれテメエには関係ねえだろうがこのスカタンノッポが!」


 ああ気に食わない気に食わない。何が気に食わないのか解らないけどこいつを見ているだけでマジで胸がムカムカする。
 大体人の心を能力でこじ開けようとしながら尋問するなんて屑のすることだああそうだとも気に食わないねコン畜生!


「ふむ、あくまで直視できんか。ならば最後の質問だ。零児、お前は父親のことはよく覚えているんだろう?」
「ああ、さっきからそういってるだろうがこの中年ボケがよ!」
「ならばだ、お前の母親は、どうしたんだ?」



 幕間2  武田由里香side



 そうして木刀と日本刀を入れた袋を肩に担いで学校内を走る。
 一応目立つわけにはいかないから避難する生徒の混じって外に出てから闘技場近くの窓から校内に入った。
 不審者が何物かは知らなかったけどさっき強い能力が香った。感じた事のない匂いだったけど、そうなると今回の不審者は能力者ということになる。
 目立つわけにはいかないけど、だからといって校内で犠牲者を出すわけにはいかない。


 そうして匂いの強いほうには知っていっている途中に途端に強いに匂いを感じた。それは今までに感じた事がないほどキツく、暗い香り。
 何があったのかはわからないけどとにかく急ぐに越した事はない。


 そうして辿っていった先は、職員室前の廊下だった。
 そこに居たのは見た事の無い長身の黒い男と例の赤毛の男、そして零児だった。

「零児! こんな所でいったい何をして……」

 そしてその私の声をさえぎる長身の男の言葉。


「ならばだ、お前の母親は、どうしたんだ?」




 4



 俺の……母親?

「母さんは……母さんは、知らない……んだ」

 震える唇。なぜか奴の能力の圧力はもう感じない……のにさっき以上に震えるココロ。

「知らない……か。ほう、面白い事を言う。ならば貴様の母親は貴様を生んですぐに死んだとでも言うのか?」
「いや、そんな事は……無い……けれど」


 あれ、そういえば母さんって……。


「どうした? 歯切れが悪いが」


 母さんは……死んだなんて話は聞いた事が……思い……出せない。


「ふむ。思い出せぬか。という事は武烈は私と怜の記憶は息子にとって苦しみの素と考えたか。全く、何処までも甘い……」


 れい? 怜……か? なんだろう、何か、懐かしい、コトバ……。


「ならば思い出させてやる最上零児。いや、お前の話は武烈と怜のからよく聞いていたぞ」
「な、なにが、怜って……」
「昔はよく言っていたんだろう? 「僕強くなりたいから、どんな鍛錬も別に辛くないよ。強くなって母さんを守ってあげるんだから」と」



 守る。俺が、誰かを。


「な、何を、突然、いったい何が……」


 そんな事、言った覚えが……言った覚えは……。

 でも、母さんのことなんか、怜って、守るって、でも、ああ、あれ、だから違うって。


 そうだ、僕は、僕は、僕は父さんのことは思い出すけど母さんのことは、なんだか、記憶の、胸の、中から抜け落ちたみたいで……。
 いや、抜け落ちたと言うよりは何かが引っかかっていて先に進めない……そんな感じが……。


「しかし貴様の腕ではそれもかなわぬ夢だ。甘い希望しか持てず実現不可能な夢を持つのは人として正しい。しかしよもや失敗したその事実さえも無かった事にしようとは。最上家も堕ちた物だな。いや、しかしそれ以外の要因も在ったとはいえ支流のひとつの物部に敗北を喫した時点で最上の運命は決まっていたのだから……か」
「何の、話だ。それは?」


 ああ、もうダメだ。何か、決定的なものが壊れ、決定的な物を取り返そうとしている。
 心に懸けられた誰かの暖かい遺志は、それを知るなといっている。必死にそれに気づくなと叫んでいる。でも、しかし、


 しかし、それを、知る義務が俺にはある。


 例え、それによって決定的な何かが失われようとも。例え、それによって以前とは、同じように笑えなくなろうとも。
 俺には、それを知る義務がある。


「話せよ。宗全」
「ふむ、ようやく知る気にはなったか」
「ああ、話せ」
「ああ、お前は確かにこういっていたな。「僕が母さんを守るって言ったのに」と」
「母さんを、守る……俺が?」
「ああ、しかし武烈に無理であった事をお前が行える道理はない。現実を知れ。最上零児よ。ああ、あの時はこう言っていたな。「僕のせいだ。僕が弱くて母さんを守れないから」か。全くその通りだ。当時は認識できていたんだが何処で思い上がったか。思い出すがいい。お前は弱く、だからお前は私から守れなかったのだ。おまえ自身のの母親の最上怜をな……」
「もがみ……れい……」



 紅い視界。ごうごうと燃える々。肌をも焼き尽くす灼熱。逃げ惑う人々。戦う人々。その中で。


 確か、その中で、僕は泣いていなかったか?


 もう動かない大好きだった誰かを見ながら。僕のせいで、僕が弱くて母さんを守れないからと悔やみながら。




 開錠、開始、凍結、解除、解凍、開始。



 パリンと、頭の中で何かが割れる音がした。
 それとともに頭から消え去っていく温もり。



 それは、誰か大切な人の遺志だったんだろう。



 そうして、俺の記憶は、その時間へと帰っていく。


 解凍、完了。








申し訳アリアン船ありません。Sikoです。
いや本当にごめんなさい。更新、大変遅れました。
メッセージを下さった方がいらっしゃってとても嬉しかったです。この場を借りて御礼申し上げます。
本当はすぐにアップしたかったんですが、いや、展開が速いって言うのは言われてみれば・・・。
こう言う事は結構自分では解らないので本当にありがたかったです。
それで推敲のしなおしなどで結構時間がかかりましたが、また何か言ってもらえると嬉しいです。
さて、遅れた理由ですが・・・。ちょっと私生活のほうが最上君もビックリのテンパリようでもう大変で・・・。
お待ちしていてくださった人、大変申し訳ありませんでした。
ただ、言い訳さしていただくと、私生活が本当に大変で、ちょっとヤヴァかったです。
なんだか人が津波のように押し寄せて、いや、だから俺んちは旅館じゃねえって。
一時期はこの七畳半の狭い部屋に私含めて男二人女二人入った事もあります。
いや、別にお泊りとかじゃなくてただ遊びに着ただけですが、まあ泊めるのは一人が限界ですから。
布団の枚数もありますしでっかいピアノもあるから。
ってそんな事はどうでもよくて、さらにその他もろもろの理由でちょっとドドドド鬱になって更に身体も病気になって心身ともに死線を彷徨ったりもう大変でした。
いや、まだ鬱は抜けてないんですがなんとか頑張れそうです。
という訳で、今後とも読んでいただけると嬉しいです。
次回は、能力者がどういうものかという事へとも話しが行きますんで、どうかお楽しみに。






http://19320925.blog104.fc2.com/





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう