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憐神
作:Siko



夢幻


 ぼやけていた景色がピントを持ち、徐々に焦点が定まっていく。
 風景は色を持ち、そして動き出す。


「良いか零児? 体裁きの基本は足使いだ。強くになるには何はともあれ移動の重要さを知らねばいけない。解るか?」
「うん」
「ならば武器はなんでも良い。さっき教えた足裁きでかかって来なさい」
「う、うん」


 山奥の……にある小さな道場。
 その小さな広場のような所で子供と大人が向かい合って立っている。


「まだだな。動きが平面的だ。お前ほどの才能ならばもっと身体を立体的に動かせるはずだ」


 あれは……父さん。


「いいかい、零児。いくらお前が私以上の才能があるとはいえ肉体強化型との一対一の戦闘はやはり不利だ。しかし私たちほどの能力者になれば軌道を読むのも容易い上に、禁じ手とはいえ一時的に自分の脳に侵入して肉体を強化することも出来る。さらに私たちの能力の根源は「解る」と言う事だ。すべてはそれの応用なのだから勿論空間把握能力も並の能力者より高い。だから障害物はあればあるほど有利になるということを覚えておきなさい」


 ああ、父さん……会いたかった。


「まだ出来るか? 零児」
「うん。まだまだ大丈夫だよ」
「よし、それじゃあもう一回だぞ」


 ああ……懐かしい。また、こうやって……。
 鍛錬のときは厳しくていつもは優しい……父さん。


「二人とも……お茶が入ったわよ。あなた、零児、いらっしゃい」


 誰……?


「ははは、それじゃあ零児。いったん休憩だ。休憩が終わったら、またやるからな?」
「うん、わかった」
「ねえあなた。なにもそんなに力を入れないでも。零児には私たちの後を継がせる気は無いんでしょ?」
「う……まあそうなんだけどな。でも零児の筋が良いからついつい力が入っちゃってな。まあ親子のこみゅにけいしょんってやつだ」
「もう、あんまり能力を使いすぎてどこか悪くなっちゃったらどうするのよ?」
「大丈夫だって。そんなヘマはしないから。それに零児だってそんなにヤワじゃないさ。何しろ私と……の息子なんだから」
「はいはい。でも程々にしとくのよ? 零児、こっちいらっしゃい」
「うん」
「あーっ、ふう、もう零児は本当にお・あ……子だなぁ。そんなんだと立派な男にならないぞ?」
「何言ってるのよ。まだこんな小さい零児に体術を教えているあなたのほうがよっぽど変なのよ。ねえ零児」
「ううん、でも僕強くなりたいから、別に辛くないよ。強くなって・・さんを守ってあげる」
「うふふ、ありがとうね零児。頼りにしてるわよ」
「ああ……零児に私のポジションが取られた。まさか幼な子に追い抜かれるとは……しくしく」


 だから誰なんだ? あの「僕」が嬉しそうに抱きついているのは。
 ノイズの中、途切れ途切れの景色に、世界が遠ざかっていく。



 風景は変わり、視点は俯瞰となる。これも、ありえない光景。
 紅い……。
 炎の色か、血の色か、或いはその両方か。
 何もかもが紅く染まっている。
 目に入る物はひたすら紅く、何が起きているのかもわからない。
 眼球は熱く、世界は揺らいでいる。


「零児……来るなっ!」
「そんな……いやだっ、僕は……」


 だから誰なんだよ。そこで倒れているのは。思い出せよ俺のこのポンコツな頭め。コレは思い出さないといけない事だ。

 そんな大切な事がわからないほどに出来が悪いクソ頭だと無いほうがマシだ叩き割るぞこの野郎!
 だから思い出しただろう?

 そう、それは、とても、大切な……。


「ほう、最上の跡取りか……? ふむ、武烈は薄情なのだな。……との最後の別れだ、させてやればいいではないか」
「宗全……貴様ッ!」
「来い……武烈ッ!」

 ガキィンッ!

 触れ合う刃と刃。

「……ふむ、流石は最上の宗家といったところか、まさかこうも簡単に右腕を持っていかれるとは……」
「殺す」
「覚えておけ最上武烈。その怒りが敗因となりえることを……」
「…………」






「そんな、僕が、僕が……を守るって言ったのに」
「零児……すまな、い」
「僕の、僕のせいだ。僕が弱くて……を守れないから」
「それは……違う。零児のせいじゃ……ゴフッ。ああ、あまり時……間も無いな。すまない……零児」
「そんな、あ、とう……さん?」
「ああ、家が焼け落ちる前に……外に出て……」

「う……?」





「ふぅ、はぁ、行くぞ……」
「僕が……僕がアイツを……」
「やめなさい。零児は……そんな……ことは……」
「あれ、父さん。なんで……そんな身体で能力なんか……使ってる……の?」
「コレは私の、わがままだ。本来、私に、こんなことを、する資格は無い。ああ……でも、こんなことを、私はやりたいと思ってしまう。もしかしてこれが……君の枷になって……しまうかもしれない。すまない。でも、どうしても、零児は、こんなことに縛られるべきじゃないって思うから……零児。はぁ。ダメな父親だったが……私の最後のわがままだ。抵抗を……弱めてくれないか?」

「う……うん」


「能力……開放……出力……最大……。読み取り、および、上書き開始」
「…………」


「……の事は、あぁ、忘れなさい。こんなこと無理には・・グッ……」
「…………」


「それから……ハア……持ってくれ私の体……まだ……伝えたい事が」
「…………」


「お前は自由に生きれば……いいさ。ハァ。正直……私は、お前に私と同じ道は歩かせたくない。もう、私達み、たいな人間は、必要無い時代になったてことかな……クッ……」
「…………」


「それから……それから……これから君が住む場所は……に、兄さんの家へ……」




 暗転。





さて、大分お話も進んでまいりましたが、まだ先は長いです。

ネタがあるって喜べばいいのやら完成が遅れるって悲しめばいいのやら。

取りあえず今回も読んでくださった皆さん、ありがとうございます。

ちなみに零児の父親の名前は武烈でぶれつと読みます。

皆さんちゃんと読めたでしょーか? 

それからつい最近投稿した短編の「天使」一応書いておくと作品分類はその他でコードはN3796Aですけど我ながらアレはちょっと無いなーって感じですね。

ちょびっと反省。ごめんなさい。

でもまあ本来は私は普段はああいうの書いててこの憐神だけが特異なんですよ。
まあああいうのだったらいくらでも書けるんですけどねー面白くしようとするのは難しいですねー。
でもコレもつまらないって人いたらゴメンなさい。
ああ、怒られる前に謝ってしまう小心なワタクシ。
そんな俺をみんな許してくれぇ! 
・・・ってなんのこっちゃ。
まあいいや。

ではまた。






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