自殺志願者の君へ。(3/5)縦書き表示RDF


自殺志願者の君へ。
作:yayu



決意。



放課後、朔は部活もそこそこに、同じ部活である坂井菜穂(さかいなほ)と共に帰路に着いた。
「この前の土曜日、うちのジジイがまたバイク買ってきたからさ、一発蹴りを入れてやったよ。――『家計を考えろこのすっとこどっこい!』ってね」
そう言って豪快にがはは、と男らしい笑い声を上げる菜穂。多少なりとも言葉遣いは良くは無かったが――選んだ言葉も古くさい――、そのサバサバとした言動に、朔は心の底で密かに憧れを抱いていた。

しかし、今朔の心中にあるのは『昼前の出来事』。

よって菜穂の言葉は右から左へ受け流し、相槌も適当だった。
それに気付いたのか、菜穂は声のトーンを落とした。
「――何かあったのか?」
朔はハッとし、菜穂の顔を窺う。
心配そうな顔つきでこちらを見ていた。
「何でもないよ。――ただ、疲れちゃっただけで」
朔は自然な笑顔になるよう気を配りながら作り笑いをした。

「何かあったのかは分からないけど、言いたくなったらちゃんと言いなよ」
菜穂は余計な詮索をしない。それをとある人は『他人に干渉しない冷たい人』と言ったが、今の朔にはその心遣いがありがたかった。

朔はお礼を言うと、菜穂と別れて信号を渡った。


いくらか歩き、家に着いた。この辺りは住宅街で、朔の家もその中のひとつ。2LDKの一戸建てだ。

「ただいまー」
朔が気のない声を玄関で響かせる。
スウェットに着替え、リビングのソファーに――正確には弟・綾斗(あやと)の隣に――どっかりと遠慮なく座った。

何をするんだ、という嫌悪の目で見てくる綾斗を無視してリモコンを奪い取り、ニュース番組に変える。

綾斗は悲鳴声を上げる。まだ中2で声変わりしてないせいか、かなり甲高い。

「何するんだよ姉ちゃんっ! せっかく大好きなアニメ見てたのに」
ぶつぶつ文句を言い続けるが、それは食い入るように画面を見つめている朔の耳には届かない。

綾斗は名前に似合って女顔だ。本人もそれを気にしているが、中身も少々子供らしいために、年齢より幼く見える。

『次のニュースです』
アナウンサーが画面を見ながら原稿を読む。

「アニメ見たいよ姉ちゃんってば!」
「黙って」
朔が冷たい口調で弟を制す。学校では見ることがない、素の朔だ。

綾斗はそのただならぬ威圧感に押し黙る。
『――T県○×市のマンションで、少女が飛び降り自殺をしたという110番通報がありました』

飛び降り自殺。
朔の心臓が跳ね上がる。
「あら、また自殺? 最近は物騒ねぇ」
テーブルに食事を並べる母が、リビングのテレビを見ながら言った。

『自殺したとみられるのは、○×高校に通う佐藤かなえさん、16歳です』

「まだ若いじゃないの。可哀想に。いじめとかあったのかしら」
母はそう言いつつも、最後に夕飯よ、と二人を促した。


夕飯も食べ終え、風呂に入り、寝る準備をしてから自分の部屋に戻る。
朔の好きな歌手のポスターが白い壁を陣取っていた。特に女の子らしい部屋でも無く、ポスター以外は割りと殺風景な部屋だった。

薄い水色を基調としたベッドにダイブする。この微妙な浮遊感が朔は好きだった。

ケータイを弄りながら今日の出来事を振り返る。
脳裏に焼き付くのは、あの少女の意志の強そうな瞳孔。
朔はある一点の考えに辿り着くとしばらく迷うように眉をひそめたが、やがて決心したのか、電気を消して布団を深く被った。

夜は(ふけ)る。
誰かの想いと共に。


決意。*end


ニュース番組最近見ないのでこういう書き方で良かったのか迷いました(__;)











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう