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ファーストキスはタバコ味
作:ウメ子


 薄暗くなった放課後の学校には、部活に励んだり、勉強をしたりと目的があって残っている生徒しかいなかった。そんな教室に、私は一人で残っていた。もちろん目的があって……。


 私は隣の席に目を向けた。私の隣の席には鞄が一つ残されていた。私の隣の席の男は、学校で一番の問題児とされている、いわゆる不良と呼ばれている男だ。彼は今の若者の中では珍しく、女に興味がないらしい。いつも不良仲間と一緒で誰も近づこうとはしない。そんな硬派な彼に密かな恋心を抱いている生徒は多い。私には理解が出来ないが、私の友達いわく、顔も良くて硬派な男は女心をくすぐるらしい。

「こんな男のどこがいいんだか……」

 ため息をつきながら一人呟く。もう一度、隣の席を見ると私はポツンと残された鞄を持って屋上へと向かった。廊下を歩いてみて気付いたが、もう校内に残っている生徒はいないのか、ひっそりとしていた。グラウンドからは、野球部の掛け声が遠く聞こえてくる。その声を聴きながら歩いていた。

「もう、何で私がこんなコトしないといけないのよ。ほとんど人もいないし」

 私の目的、それは彼を更生させるコト。なぜそんなコトになったのかというと、私はこの学校の生徒会長で、彼に唯一文句を言える女だから。そのため、教師の必死のお願いを渋々受けるコトになったのだ。屋上の扉の前に着き、扉を開けた。普段は閉められているのだが、なぜか開いていた。理由は分かっている。彼がどこで仕入れたのか知らないが、合鍵を持っているのだ。屋上に出ると、彼が寝転がっているのが見えた。彼の頭上では煙が立ち昇っている。

「ちょっと、何してるのよ。あんた未成年でしょ。しかも、また勝手に屋上に忍び込んでるし」

 私の声を聞いて彼はタバコを咥えながらこちらを振り向いた。

「俺の癒しなんだよ。これがなかったら、何か口寂しいんだよなぁ。ここも気に入ってるし。お前が来なかったら、最高なんだけどな。お前も暇なんだな」

 彼はそう言いながらゆっくり座った。私は何でこんな奴の相手をしないといけないのかと思うと腹が立った。

「私だって来たくないわよ。それに、あんた合鍵持ってんでしょ?何回取り上げても来てるし……来てほしくないなら鍵かけときなさよ」

 そう言ってから、彼に持ってきた鞄を投げつけ、彼に背を向けて帰ろうとした。すると彼が声をかけた。

「そんなに怒るなよ、鞄ありがとな。あと、ちょっと嘘ついた」

「嘘?どれが嘘なのよ?」

 彼の言葉が何となく気になった私は彼を見た。すると、彼が手招きをして私を呼んだ。私は何だろうと思って彼のほうへと歩いた。彼は自分の座っている隣と手でポンポンとしていた。座れというコトだろう。何だろうかと思ったが、とりあえず座ってみた。

「で?何が嘘?」

 私がそう言うと、彼はう〜んと言いながらタバコの火を消した。そして、私の質問を無視して話し出す。

「お前さ、俺を更生っての?させるんだろ」

「先生に頼まれたからね、不本意だけどそのつもりよ」

「生徒会長さんは大変だねぇ」

「何、他人事みたいに言ってるのよ。大変だって思うならこういうのやめてくれる?」

「ん〜……やだ」

 普段見ている彼と違う口調で話しているコトに驚きながらも、そんなコトは顔に出さずに言った。

「やだって……なに子供みたいなコト言ってるのよ」

 それだけ言うと、彼は再びタバコを取り出した。私は素早くタバコとライターを奪い取った。

「あっ何すんだよ」

 彼は眉間に皴を寄せて言った。

「だから、未成年でしょ。大体、私の質問に答えてないし」

「四捨五入したら二十歳だよ。質問って何だっけ?」

「四捨五入しないで。嘘って何?って聞いたでしょ」

 彼は、あぁという顔をすると笑った……というより、優しく微笑んだ。そんな彼の顔を沈みかける夕日が照らしていて、彼に一瞬ドキッとした。彼は、普段と違う優しい声で話した。

「だってさ、俺が更生したらお前もう来ねぇだろ?」

「まぁ、そうね」

「俺、本当はお前に来てほしいもん。だから鞄もわざと教室に置いてきたし、屋上の鍵も開けといたし」

 彼の言いたいコトがよく分からなかった。私が分からないという顔をしていると、彼は困った顔をした。

「お前さ、ここまで言われて気付かねぇの?」

「は?何が?」

「あぁ、もう。だから、お前が好きなんだって」

 一瞬、私の中で時間が止まった。少しして我に返り、顔を赤くしながら叫んだ。

「えぇ〜!あんた、女に興味ないんでしょ?何で私なのよ!」

「興味ないって……。んなわけねぇよ。あぁ〜でも、お前にしか興味ないな」

「だから何で?」

 私がそう言うと、彼は私の手をとり自分のほうに引き寄せた。私は彼に抱きしめられる形となった。私は自分の心臓の音を聴きながら、動けないでいた。彼は私を抱きしめたまま話す。

「お前は俺のコト何とも思ってねぇみたいだけど、俺は好きだから」

 彼にそう言われて、私はなぜか心臓がさっきよりドキドキしていると感じていた。私は思わず彼に聞いた。

「あのさ、私いますごく心臓がドキドキしてるんだけど……何で?」

 彼は少し驚いた顔をしたが、すぐに嬉しそうな顔になって私に答えた。

「お前は自分の気持ちにも鈍いのかよ。それってさ、俺のコト好きってコトなんじゃねぇの」

「えっそうなの?……不本意だわ」

 何でだよと言いながら、彼は私に顔を近づけた。そしてゆっくりと私にキスをした。私は今までで一番ドキドキして心臓が壊れてしまうんじゃないかと思った。

「何するのよ、すごくドキドキしちゃったじゃない」

 私が彼から視線を離しながら言うと、彼はまた私を抱きしめた。

「嫌じゃなかったんだ。やっぱ俺、お前が好きだわ」

 彼に好きだと言われて嬉しいと思った。そして、今度は私から彼にキスをした。彼は今日何度目かの驚いた顔をしていた。私はさっきから感じていたコトを彼に聞いてみた。

「ねぇ、私キスするの初めてなんだけど、キスってこんなに苦いの?」

「あぁ〜もしかしてこれかな?」

 そう言って彼はタバコを指差した。タバコってこんなに苦いんだと思い、私は彼を更生させる一つの作戦を思いついた。

「こんなに苦いキス嫌だから、タバコ止めてね」

 彼はえぇ〜と不満そうに言った。私は立ち上がって彼に笑顔を向けた。

「ダメよ、吸ったらもうキスしないから。更生もしてもらわないとね……それに、もう更生させるって理由がなくても一緒にいれるでしょ?」

 私の言葉を聞いて彼は嬉しそうにそうだなと言うと、私の手をとり屋上の扉に向かって歩き出した。

END


連載のほうは細かいところを直している最中で、なかなか執筆できていません。すみません(+_+)













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