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今回はやわらかめ。最後にむかっているこのお話。そして、ワンクッションおいて突っ走りたいと思っています。このまま読んでいただけたら幸いです。
第18話
 魔物が次々と亡き者に変えられてゆく。
「ちくしょう、一体何匹いやがんだ!?」
 ベルバーが先頭に立ち、拳で魔物を倒していく、さらにバルタルが術で追い打ちをかける。
 倒しても倒しても出てくる魔物達、さすがに嫌になってきたのか嘆きだした。そんな主をベルバーに仕える小精霊が喝を入れる。
「何言ってるんです? まだまだこれからじゃないですか!」
 物凄く楽しそうに話す小精霊。武器のトンファーでどんどん目の前の魔物を倒していく。
「…楽しそうだな湖満こみち
 湖満と呼ばれた彼女は外見は男の子みたいに青の髪をショートに切り、白のTシャツの上から青のベストを身につけ、動きやすそうな黒の半ズボンを履いている。
「楽しいに決まってるじゃないですか! そういうベルバー様はつまらなそうですね?」
「ああ、物凄くつまらん」
 お互い目の前の敵は倒していくものの、思っていることは正反対の二人。というか既に服が魔物の血だらけの湖満は女の子に見えない。
「こういう時、ベルバー様はいつもイガード様と競いあってましたもんねぇ」
 そう、ベルバーはつまらなくなると勝手にイガードと競い始める。
「そだ! 私と競いません? どちらが一番倒せるか」
 やる気のない主を動かす一番手っ取り早い方法、『競争』を提案してみるがベルバーは鼻で笑い言い放つ。
「バーカ、お前が俺に勝てるわけないだろうが」
「…ふっふっふ、分からないですよ?」
 不適に笑う湖満、手は休むこともなく近くの魔物を殴っていく。そんな湖満を見てベルバーはにやりと笑い。
「俺に喧嘩を売ったことを後悔させてやるよ」
 それを真似して湖満もにやりと笑い。
「じゃあ…私の喧嘩を買ったことを後悔させてあげますよ」
「………」
 この言葉にベルバーは何も言い返せず、口を開けてぽかんとしている。
「まぁいいや、時間は?」
「無制限! お三方が帰ってくるまで!」
 ベルバーの問いに明るく返す湖満、彼女の答えにまた笑い拳を握りなおす。それを見て湖満もトンファーを握りなおす。
「よし、いくぜ。レディー…」
「「ゴー!!」」
 二人同時に叫び、二人同時にカウントを始める。
「一…六…十…ベルバー様! 私十四いきました!」
 湖満のペースは先程よりも早い、もちろんベルバーも負けていない。
「やるなぁ…俺は十五だ」
「カウント誤魔化さないでくださいね!」
「するか!」
 ペースが上がったのはもちろん、二人は楽しそうだ。

 その頃後方のバルタルは。
「なんか楽しそうね、あの二人。傍から見たら変な人ね、イっちゃってる人」
 バルタルは決して独り言を言っているのではない、相棒がいるのだが、これがまた物凄くしゃべらない。必要な時にしか話さない、彼いわく、話すにも体力がいるから話したくないらしいのだ。
「あの、氷榁ひむろ? 相づちぐらい打ってくれないかな、このままだと私も変な人の部類に入ってしまうんだけど…」
 目の前にいる相棒の背(白い髪に真っ黒なコート姿)に再び問い掛けてみる。すると、攻撃をしていた手を止め振り返り、無表情で主に言う。
「可哀想に……あなたも早く攻撃再開してください…」
 釣り上がった目のおかげで更に彼の冷たさを感じた。
 そう言うと再び魔物目がけて大術発動。
「…え、終わ」
  ガガガガガガガガ…
 無情にもバルタルの声はかき消される。
「…あ」
 急に攻撃をやめた彼、氷榁の目の先には怒っている様子のベルバーと湖満の二人がいる。
「何すんだ!」
「痛いじゃない!」
 どうやら二人に術が当たってしまったらしい、すると氷榁は頭を下げて詫びた。しかし顔は未だ無表情、笑みを浮かべることもない。
「ごめんなさい……目の前に敵が来てますけど…」
 彼の言うとおり、二人の目の前に魔物がまたもや現われる。二人はまた何かを叫び、目の前の魔物を倒していく。
 ふう、と一つ息を吐き、今度は細かな術で少しずつ倒していくことにしたらしい。
 バルタルは思った。きっと心の中では物凄いことを考えているのではないかと、例えば、『うぜーな、お前らがウロチョロしてるから当たっちまうんだろ』とか、『しょうがない人たちだな、ここは僕が大人になんなきゃね』みたいな…どちらにしても怖いにはかわりないが。
 そんなことを考えていると肩をぽん、と叩かれた。目の前には氷榁、いつもの無表情で言い放つ。
「何してるんです?……早く手伝ってくださいよ…」
「ごめんなさい」
 彼の主であるはずのバルタルが負けました。
 その二人の更に後方、シュートゥは数人の小・中精霊たちと共に、前線で戦うベルバー達に回復や補助呪文を使い援護を行なっている。
「シュートゥ様、少しお休みになってください」
 シュートゥの横で援護を担当していた小精霊が言った。ちなみにシュートゥは主に回復担当だ、回復のほうが体力を使うので援護よりも倍疲れる。
「でも…」
「大丈夫です。私たちだけで支えられますから」
 青い顔をして立っていたシュートゥに小精霊がにっこりと微笑む。
「…わかりました、少し休ませてもらうわ。おねがいね、蒼葉あおば
「はい」
 蒼葉と呼ばれた精霊(藍色のショートヘアーに全身うす緑色の服装)は今まで出てきた精霊達とは違い、落ち着いた感じで安心できる存在だ。
 シュートゥは回復のために少し食事を摂ることにした。ポケットから固形の食料品を取出し、口に入れる。
 固くて塩辛いそれは、口の中の水分を容赦なく奪い取っていくようだ。
「シュートゥ様」
 蒼葉が前を見据えたまま声を掛けてきた。
「必ずみんなで帰りましょうね」
 しっかりとして温かみのある声で蒼葉は言ってきた、すこし焦り始めたシュートゥの心が落ち着いてゆく。
「…そうね、みんなでお城に帰りましょう」
 蒼葉は分かっていたのかもしれない、シュートゥの顔が青いのはただ術を使いすぎたのではなく、長く塔に入った仲間の心配もしていたのだと。



 塔の最上階、そこには再びイガードが椅子に縛り付けられていた。
 そしてその横にはナイフで床に印を描いていく史遠の姿。
  ギィ ギギッ
 部屋の端には椅子に座り煙管キセルをくわえている老人が一人。
「まさかここにいらっしゃるとは…グラダ・バスク様」
 イガードが口を開いたが史遠は咎めようとはしない、黙々と床を彫り続けている。
 グラダと呼ばれた老人はゆっくりと顔だけをこちらに向ける。
「…良いのかい? 私と話をしてしまって、それに今の私の地位に『様』は合わないだろう?」
 そう、彼はライク・バスクの父親、今は反精界派の人間として追われている身。見た目は八十前半の老人、しかし本当は齢千八百を迎える。
 本来精霊は、長い寿命を持つがグラダはまたまだ若い容姿であるはずの歳、何故彼だけが年老いているのかは息子であるライクが関係している。
「息子さんが随分あなたを捜していましたよ」
「…ライクか?」
「はい」
 イガードは決して相手を怒らせないように、徐々に話を聞き出していく。
「…そんなに探らんでも、私がここに居るのは伝えてあるよ」
 その言葉はイガードを驚かせた、ライク達からはその話は聞いていなかったのだから。
「何故ここに居るのかも全てな」
 老人はまた煙管をくわえ、窓の外を見る。
「…あなたは一体何をしたい?」
 イガードの問いが聞こえていないのか、老人は煙を吸い、吐く。
 窓の外を見つめるその目には自分の息子の姿が写っていたそうだ。


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