どうしてだろう。
おじさんは、いつもそこにいる。
何故ですか。こんな寒い日に。どうして立っているのですか。
駅前に、いつも立っている。
そして、僕を見ている。
満面の笑みを浮かべながら。
僕は、とうとう話しかけてみた。
「どうしてあなたはそこにいるんですか?」
何も言わなかった。
「聞いてるんですか?」
何も話してはくれない。
それからというもの、僕は毎日駅前にいる人に話しかけた。
僕は、恋をした。
二十歳になってやっとだった。
その時からだった。
駅前にいる人は、いなくなった。
「どこへ行ったのだろう」
土砂降りの日にさえいたのに、今はいない。
僕は、駅員さんに聞いてみた。
でも、そんな人はいなかったと言う。
見えなくなってから二年後、僕は母と話をした。
「駅前に、人がずっといたんだ」って。
母は言った。
「私も、昔は見たわ。でも、結婚してから見えなくなったの」
同じだった。
母は続けてこんなことを話してくれた。
駅前にいる人
それは
死んでしまった
おじいちゃんだって。
信じられなかった。
どうしておじいちゃんがいたのか。
母は分かっているようだ。
僕にはまだ分からない。
駅前にいる人
どうしてあなたは
そこにいるの。
僕は歳を取った。
六十歳。
そして、死んでしまった。
今では分かる。
どうして駅前におじいちゃんがいたのか。
今では僕が
駅前にいる人。
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