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オタクな彼女!
作:川野ながれ


 オレの名前は小林翔。「しょう」じゃなくて「かける」だ。2年6組サッカー部の期待の補欠。
 最近かなり嬉しいことがあった。ずばり・・・彼女ができた!!イエイ・イエーイ!!
 彼女いない暦14年(=年齢)だったオレがつい3日前、校舎裏に呼び出され・・・この先は自分の胸だけにしまっておこう。誰にも話したくないほどうれしいんだよっ!
 しかも彼女はむっちゃかわいい。めっちゃじゃなくて、むっちゃだ。
 名前は星野愛梨。隣の5組。アニメみたいな名前なんだけど、マジ、アニメの主人公みたいにかわいい!色白でさぁ、髪の毛が栗色のセミロングで、目がおっきくて、背だって低めで、まん丸の眼鏡はちょっと似合わないけど、とにかく好みのタイプだし、かわいいんだ!!ひゃっほーう!!
 今日もオレは星野と帰るんだ。ホントは「愛梨」って呼びたいけど、まだ付き合って3日だからキスもしてない・・・
 でも!今日はがんばって手をつなぐところまではいってやる!!


 ・・・つないでる・・・。ヤバ、あったかいし、やわらかい・・・。
 俺の手汗ばんでないかな・・・。・・・なんかすげぇ癒される。こころぽっかぽか。・・・これが、愛・・・かぁ・・・。
「今日の給食カレーだったねぇ」
「え!?あ、う、うん!星野カレー好き?」
「うん、好き!小林くんは?」
 御主何故そのようなかわゆい瞳で見つめてくるのじゃ・・・!しかもその甘ったるい声がツボる!!
 だがオレも大人。冷静に受け流す。・・・てか、カップルの会話ってこんなもんなのか?こんなんでいいのかなぁ・・・?もっと、こう、「愛してるゼ」「わたしも・・・」「君のためなら、世界中を敵に回したって構わない・・・!」「ステキ・・・」「ステキだ・・・」みたいな会話が毎回繰り返されるものかと・・・。まぁ、オレも星野も初カレカノだしその内言うようになるかな。
 そうだ!デートに誘おう!!そうして親密になれば・・・!
「星野!!日曜ひま!?」
 日曜なら部活ないし!
「えっ!?カレーは!?・・・・・・え〜・・・」
 この反応は・・・ダメ?英語で言うと「well,,,」。・・・って訳してる場合じゃねぇっ!押さねば!!
「2人で遊びに行こうよ!!」
「ごめん」
 え、即答?
「あ・・・そう・・・都合悪かった?」
「あ、えっと・・・あの・・・誰にも言わない?」
 もじもじしてるのカワッ!この時点で許してるけどオレはあえて怒ってる顔で星野に耳を近づけた。
「・・・バイトあるの・・・」
 星野はオレの耳に唇を寄せることなく小さい声で言った。ちょっとがっかり。
「・・・バイト?ってあのアルバイト??え、中学生だよね?」
「学校に内緒で・・・」
 星野はうなずいた。
「・・・あ〜、そ〜なんだ。うん。じゃあがんばって。じゃあな!」
「言わないでね!」
「もち!」
 もちろん言うつもりなんか毛頭ない。アイ・ラブ・ホシノを守るため!オレは学校を敵に回したって構わない!・・・あ!このセリフは・・・



 ・・・バイト先聞いとけばよかった・・・。見にもいけねぇ。ひま・・・。
 そんなときになる電話。友達でありますよ〜に!セールスだったら般若信教を唱えてやる。
<もしもし翔?オレ、オレだけど!>
 オレオレ詐欺じゃん・・・
「拓也?なに?」
<ひま?ひまだろ!>
「うっせー!そのとおりだよ!」
<じゃあさ、秋葉原行かね?>
「はぁ??おまえその道に走ったのか?」
<ばっか、んなわけねえだろ。でもさあ、一回行ってみたくね?・・・実はさぁ、そこにあるメイド喫茶のちらし拾ったんだよ!>
「道に落ちてるもん拾うなよ!!」
<まぁ、とにかく・・・行かない?どうせひまだろ?だったら日本の新境地に行ってみよーよ!>
 ・・・確かに、ちょっと行ってみたい気もする。
「・・・行くっ!」


 来た。・・・すげぇ!オタクだオタクだ!!眼鏡かけてるし!リュックしょってるし!ドラマで見たのがいっぱいいる!!うおっ、あいつコスプレしてるよ!
「・・・オ、オレらすげぇとこに来たなぁ・・・」
 あの拓也が引いてる・・・。
「あ、ああ・・・」
「きっと人はオレラのこと冒険者って呼ぶゼ・・・」
「名前にひねりが無いけど・・・多分そうなるだろうな・・・」
 メイド喫茶は、メイド喫茶だった。いや、なんていうか、頭にフリフリつけたフリフリのエプロンつけた子がいた。やけにかわいこぶりっこした声で外に歩く人を中へと誘う。こういうのを「萌え系」とかいうんだろうか・・・。
「・・・いくか、翔・・・!!」
「え、やだ。もういいじゃんっ」
「男になるんだ!」
 メイドたちはオタクっぽい人にばかり声をかけていたから逆にオレたちが入っていくと驚いた顔で見てきた。
 中は・・・うわあ・・・。やはりここは新境地だった。
「いらっしゃいませぇ!2名様ですね!!」
 さっそく。
 ・・・やっぱ帰ろう・・・。オレと拓也は一瞬で通じ合い、後ろでオレ達の答えを待っているメイドを振り返った。
 ・・・・・・え??
「・・・あれ?小林くん??」
「!!??」
 気がつけば、オレは拓也を引きずりながら、秋葉原を後にしていた。



 ・・・まちがいない、カナ?
 あれは・・・星野だった、カナ?
 ・・・・・・星野だよ・・・。星野がメイド服で・・・。
 あれがバイトかよ!!
 ・・・ってことはもしかして星野はあっちの人間??!・・・いや、きっとおうちの家計が厳しいんだ・・・。だからしょうがなしにあんなところで・・・。うん。そうだ。
 これから星野と帰るし、詳しいこと聞けばいいよな。
 

「小林くんもああいうとこいくんだね!あたしもなんだぁ!バイト以外でもよく行くの!!」
 ・・・・・・。
「え・・・い、いや、オ、オレはたまたま・・・」
「あ、そうなんだぁ・・・じゃあ今度2人で行こうよ!!あたし、案内してあげる!!」
 かわいい。なんか、すごい生き生きしてる・・・。これがあの道の会話じゃなかったら・・・っ!!
「星野、アニメとか好きなの・・・?」
「うん!大好き!!」
 「大好き」か。オレもまだ言われたことなかったのに・・・。
「もう、物心ついたときからアニメ見ててね、離れられない!!・・・だから校則違反でバイトしてたの」
「へ、へえ・・・」
 考えてみれば、星野は結構、アニメの住人だ。姿かたちはもちろん、眼鏡もまん丸ってアニメぐらい?声も声優みたいだし・・・。これで髪や目の色が赤とか青とかだったらそのままテレビに入れてもだいじょぶそう。もしそんな星野がテレビに現れたらオレは真っ先にスイッチを切るが。
「・・・でも星野、まえ、服作りが好きって言ってたけど・・・」
 まさか。
「うん、それも好きだよ!アニメのキャラが着てる服を自分で作ってるの!買えたらいちばんなんだけど、お金ないから・・・だからバイトしてるんだけどね!!ほかにもフィギアとかCDとか同人誌とか欲しいし!」
 そう得意げに語る星野はとてもかわいかった。・・・同人誌ってなに?
「でもバイトの仕事も好きなんだぁ・・・。友達・・・っていうより、同士かな?そんな人たちがいっぱい見れて。情報交換もできるし!!」
「・・・・・・」
 これは、末期か?病院に・・・それとも保健室??心の教室??今ならまだメンタルケアに詳しい大谷先生もいるだろうし。
 ・・・まてよ・・・。確かに星野はオタクだが、星野は現実世界の俺にほれてんだ。・・・ほれてる・・・いい響きだ。っじゃなくて!・・・だったらまだ救えるものがあるんじゃ!?
「星野!!」
「??」
「オレのこと好きになった・・・その・・・きっかけを教えて欲しいんだけど・・・!!」
「え・・・」
 とたん、星野は真っ赤になった。よし、普通の女の子だ。その時点でオレはほっとし、満足だったが、この際聞いてみるのもいい。
「・・・えっと・・・入学式のひとめぼれだったんだけどね・・・」
 恥ずかしさからかだんだんと小さくなっていく星野の声。
 入学式・・・1年以上前から星野はオレのことを・・・!
「小林くんて、起動戦士ガンタロウにでてくるアコムそっくりなの・・・っ!!」
 ・・・末期だ。
 ダメだ・・・別れよう・・・。オレには彼女は無理だ・・・。
「あ、あの・・・星野・・・。オレさぁ、そういうの興味ないっていうか、苦手っていうか・・・だから・・・」
「あ、じゃあ、あたしがいろいろ教えてあげる!」
「へ??」
「ビデオとか、DVDとか、いっぱい持ってるし、一緒に秋葉原まで遊びに行こうよぉ!」
 おねだりするようにそう言いながら星野はオレの服の袖を引っ張った。
 こ、こんな積極的なのって初めてっ!!
「で、でも・・・」
「ね?小林くんも好きになろうよ・・・」
 下から熱い視線で覗き込んでくる大きな瞳。
 ・・・ダメだ・・・。
「・・・じゃ、ちょっとは努力してみるよ・・・」
 すごく嬉しそうな星野。心の中では「同士が増えた!」と叫んでいることだろう・・・。
 オレは気づかれないようにため息をついた。
 結局、オレもある種オタクだったのかも・・・。
 星野愛梨オタク。
 それが、つないだ手の間で思うことだった。














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