ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第十三章 気になる彼女はお姫様で未来人で。<茶番劇>
第413話 √3-65 気になる彼女はお姫様で未来人で。
 ええとオルリスです、おはようございます。
 先日、私の好意を寄せていた殿方と付き合うことになりました。

「……色々あって、今はどうなっているのかわかりませんけれど」

 ユ、ユウジはどう思っているのでしょうか!? 私を彼女さんだと認めてくれているのでしょうか?
 ……不安です。ただでさえ色々な女性な方の好意が向けられていますから、もしかすると……あれは私をアイシアから連れ出すために気遣って――!

「そうなのですか……ユウジ」

 そういう気遣いは要りません……私のことなんて本当は、なのですか。
 守ってなどと言っておきながらこんな私なんて、守る価値なんて……本当に―― 
 
「――これではいけませんわ」

 ユウジは行動で私への好意を示してくれたのですから、守ってくれると言ってくれたのですから! 私がここまで弱気ではいけないのです!
 今日会えるのです、昨日のユウジの退院まで付き合っていましたが……特に話すこともできず、今日こそは! 

「……でも、会う前に。確かめておきたいですわ」

 あなたの声が聴きたいです、それだけ私は不安で弱いのです。
 電話では流石に迷惑ですよね……メールなどではどうでしょう?
 きっとユウジは真面目ですから、返してくれるはずです。そう何気なく、さりげなくですわ。
 当たり障りのない、そうですね――

『おはようございます。ユウジ』

 な、なんてつまらない文……なのでしょう。なんて私はつまらない人間なのでしょう!
 それにもう送ってしまいました!? 私のばかばかばかばかあああああああああああああああっ!
 そう、自分を責めていますと携帯が鳴りました。震える手で携帯の画面を見ると――

『――おはようオルリス、今日会えるのが楽しみだよ』

 あ、ああああああああああああああああああ会えるのが楽しみっ!?

「ユウジったら……だ、大胆ですわっ!?」

 そう言いながら嬉しくなって携帯を上げながららしくなくクルクルと回る私。
 ……ちゃんと想われているのですね。よ、よかったですわ…… 
 
「っ!」

 め、メール返しませんと! 自分が送ったメールで満足してしまう自己中心的な女だと……思われてしまうのは嫌ですわ!
 は、はやく返しませんと――


『t楽しみnにしています』


 間違えてしまいましたわあああああああああああああああああああああああああああああああ!?
 また焦って……さらにはこんな間違いだらけの! 短い文面でこれほど間違うなんて……そんな。
 どうしましょう!? 想像以上に私はおバカさんですわっ! と、とりあえず今後のために文面は直して――

 間違って再送信。


『楽しみにしています』


 やってしまいましたわああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?
 ど、どうすれば! 同じ文面を二回送ってしまうなんて、これはどうしようもありませんわっ!

 ……………………返信がないですわ。

 もしかして、この残念加減に呆れられた?
 さらには嫌われてしまったのですか?

 …………そ、そんな。せっかく結ばれましたのに、未来の私という卑怯な手を使って結ばれましたのに。
 こ、こんなことで……

「うう……」

 どうすればいいのでしょう。
 私はこれで、これでユウジとの関係は終わってしまうのですか。
 …………私、酷すぎます。  
 もしかするとこのメールそのものが嫌になっているのかもしれません。
 …………ああ、どうしましょう。
 で、でも。最後に謝らせてください、そう最後です。
 あなたに嫌われるのは辛すぎます。せめて、せめて――


『ごめんなさい。もしかして嫌いになりましたか』


 ユウジは返してくれます、そういう方ですから。
 優しい方ですから……この言葉にはしっかりと返してくれますよね? 
 泣きそうです、泣いたことなんてユウジが傷ついた時ぐらいですのに……こんなことで泣いてしまうなんて。
 でも、こんなことが私にとっては本当に大切なことで。そして運命の着信――


『大好きだよ』


 一気に幸せに。

 だ、だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ大好きっ!
 ユウジの気持ちはそうなのですかっ!

「……よ、よかった」

 嬉しさが私の中に満ちていきます、なんて幸せなのでしょう!

「大好き……大好き……ふふふふふふふ」

 はっ、これでは変な人ですわ。

「で、でも……」

 恥ずかしくもなってきましたわ……あ、顔が熱い。

「どう、どうあなたに会えばいいのでしょうか……?」

 


 結局待ち伏せすることに。
 ユウジの顔を真っ先に見たいのは確かですし、それに……

「(あの言葉だけが頭の中でグルグルしてどうにかなりそうでしたわ)」

 大好き……大好きですか。
 ふふふふふふ――そんな少しの言葉がこんなにうれしいなんて、本当に私という者は現金なのですね。

「――っ!」

 ユ、ユウジですわっ!
 ユウジが歩いてきますわっ! 

「(ああ……また顔が熱く)」

 言っては難ですがユウジの容姿も顔立ちもそこまで整っているとは言えません、けれどけれど。
 ――好きになってしまったあの方の顔を見るだけで、カッコよく思えて、気恥ずかしくなってしまうのです。

「(もうすぐですわっ――平静を装って、落ち着いてください。私、そうです。一国をいずれは担う姫なのです――)」

 深呼吸……深呼吸です――


「ユ、ユウジ……さん。おは、おはようございますぅっ」


 全然平然としていないですわぁっ!?

「おはよ、オルリス」

 ユウジは落ち着いて笑顔であいさつを……ああ、いい笑顔です。

「は、はいっ」

 ユウジとあいさつ! 今までは未来の私からがほとんどでしたけれど、もしかすると――初めてのおはようございます!?
 はじめておはよう記念日ですっ! ああ、こんな些細なことがどうしてこんなに嬉しい――
 

「おはよう、クランナさん! でも、どうしたの? 顔赤いよ?」


 っ! 篠文さんですね。
 ああ、この方はユウジを想っている方の一人。それも長い間、ずっと傍にいる――

 ――私はこの方を勝手に出し抜いて、ユウジを独占しようとしているのです。

 ……そう、想ってしまうと。私は罪悪感が溢れてきて、それで。
 その一方でユウジはこの方とも登校を一緒にしているのですね、とも……少し嫉妬してしまいます。

「……な、なんでもないのです。お気になさらず」

 ユウジに聞きたいことはあります。
 「どうして他の女生徒とも登校しておりますの? と、私と付き合っていますのに。 
 ……私は本当に想われているのでしょうか、と不安にもなって。
  
「オルリス、途中まで一緒に行こうぜ?」
「……はい」

 その気遣いが嬉しいと思う反面、誰にでもすることなのではないかと勝手に邪推して。ユウジと過ごせる時間の多い彼女たちに嫉妬して。
 ……嫌な女ですわ。

「(オルリスどうした?)」

 相変わらず、あなたはこういう時は鋭いのですわね。
 ……やはりあなたは好かれているのですね。と私は小声で呟いてしまいます……嫌味すぎます、最悪ですわ。

「(ユキとかと登校するのダメか?)」

 駄目とは言いませんが……不安なのです。魅力的な方々でもありますから、取られてしまうのではいかと。

「(じゃあカミングアウトする? 俺たち付き合ってますーって)」
「ダメですわっ」

 そ、そんなの恥ずかしすぎます!
 そこではっと気づくと私は大きな声をあげていたことに気付いて、

「ク、クランナさん?」
「クランナはん?」

 篠文さんもユイさんも驚いてしまうわけで。 

「な、なんでもないんですの! 驚かせてしまってごめんなさい」

 そう振り返って謝り二人とも「そ、そう?」「ぬ」とは言ってくれますが……この方たちを私は裏切るように――

「(で、なんでダメなんだ?)」

 それは……は、恥ずかしいではないですか、と。あと口には出せませんが……罪悪感もあります。
 そんな思いと裏腹に、彼は。

「(俺が相手だから?)」

 そんなことありませんわっ! あなたが役不足だなんて一度も思ったことはありませんっ……純粋に恥ずかしいのです。
 もしかすると、こんな初日にここまで不安に自己嫌悪に陥ってしまう私こそ役不足なのかもしれませんのに、この方は――

 そういう謙虚なところも私の好きなユウジですわ。

 私のか……彼氏さんは本当によく出来ていますね。 

「(まあオルリスの心の準備が出来次第ってことで)」

 っ!
 あなたは本当に……甘やかしすぎなくらいに優しくて、その気遣いが心から嬉しくて。
 
 ……はい。わかりました、色々ありがとうございます。

 私は自然に笑みを見せていました。
 私は彼に一生守ってもらいたいと、ユウジと一生一緒にいたいと改めて思いました。




 ユウジと離れるのは惜しいですが……留学した以上は学業もこなさなければなりません。 
 そうして自分の教室に着くと――

「ア、アイシアっ!?」

 そう、名前で呼んでしまいました。彼女は以前までは「岡 小百合」でした。
 けれど――

「おはようございます、オルリスさん」

 その姿は、銀髪で赤い瞳の――アイシアではないですか!
 隣の席の滝川さんも困惑している様子で、

「な、なあクランナ。岡なんだよな……? 岡って自称してて、イメチェンって言ってるんだが――」
「イメチェンです」

 イメチェンで黒髪四角縁眼鏡の大人し少女が銀髪灼眼女に様変わりするものですかっ!

「ってか今アイシアって……? え、もしかしてクランナは知って――」
「岡=アイシア=小百合です」
「「ミドルネーム!?」」
「そ、そうだったんだ……へ、へー」

 滝川さんものすごく動揺していますわ!?

「これからもよろしくお願いしますね、オルリスさん」
「……う」

 アイシア残るんですわよね……岡さんには違いないのですから。
 でも今考えればショックですわ……まさか親友だと思っていた方がよりによってアイシアだなんて。

「はぁ……」

 不安を感じさせる朝……ですわ。


* *


 それは今から未来のこと。
 単純に言えば――十年後のとある国での話。

「待たせてしまったかな?」
「いやいや今来たところですな」

 声を交わす主はどちらも言いようのない威圧感を持っていた。
 一人の男性は重低音とも言えるほどに渋く低い声で喋り、その女性よりも巨身でガタイの良い体つきで、何かの生き物の毛皮で作られたであろうコートを羽織っている。
 もう一人の男性は声は少し高く、年齢よりも若く見える、細身で長身で高級そうな黒いスーツを着込んでいた。

「会って早々とも難なのだがな」
「いえ、私もお伝えしたいことがありまして」

 二人はそれぞれ話したい事柄があるらしく二人そろって早々に会話を切り出していました。

「「私の娘が」」

 声は重なるアルトとバスの二重奏。

「はは、同じか」
「同じみたいですな」

 そう二人は笑みを交わす。

「では私から……はっきりと言わせて貰うが、貴公の娘との婚約を解消させて頂きたい」
「私も、あなたの娘との婚約を解消させて貰いたいんです」

 意見は面白いように被っていた。

「……まったく娘のしつこさには辟易したが、あそこまで強情になると手に負えなくてな」
「私の娘もお転婆で、もう一度言い出したら聞かないのです」

 共に苦笑。

「それにしても……なあ?」
「本当ですね」

 厳つい男性が細身の男性に同意を求め、あっさりと同調。

「「同じ男を好きになるなんて(な)」」

 同じ男性を好きになった、二人はまったくもって同じ感想を抱いた。

「私の娘は日本での留学の際だそうだ」
「私の娘も日本での留学もありますが、道楽の際に再会したそうです」
「ほう、そういえばその男は貴公の研究機関の一員だそうだな?」
「そうですね……技術も知識もありますが、少し――変わった方ですね」
「私の娘と散々結婚したいと主張してきた貴公の娘が変わってしまうものだから、その男は変わった者なのだろう」
「本当に驚きましたね。同性の婚約を自ら望んでいましたから」
「……偏見ではないにしろ同性とは個人的にどうかと思ったがな」
「同意見ですが、世継ぎをなんとか残す以上は仕方ありませんでしたね」
「出来れば異性と結ばれてほしい――貴公との考えは同じと考えていいかな?」
「はい、娘を思うならその通りです」

 二人はそんな会話をして、また笑みを交わす。

「そのこの世で一番の玉の輿な男は、どちらを選ぶのだろうな?」
「選ぶかもしれませんし、選ばないかもしません。または二人ともとか」
「それはそれで面白い、だがどちらと関係を早くに結ぶかは楽しみではあるな」

「おそらく――私のアイシアでしょう」

「いいや、オルリスだな」

「「ははははははははははは」」

 そう、これは二つの国の二人の王のとある会談。
 娘同士の婚約を解消し、思い人が出来たのだと伝え、一人の男性を奪い合う宣戦布告。
 そこでは過去も未来も現在も揺り動かす事実が交わされていた――


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。