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第十一章 彼女は彼に気付かれない<生徒会の体育祭>
第315話 √a-15 彼女は彼に気付かれない
 どうしてこうなった。

 どうもユイだ。榊原でもなく堀江でもなく平沢でも小手川でもなく――巳原ユイだ。
 さてさてどこから話そうかなどと悠長に構えている場合は逆に有り過ぎて困るのだが、まあそうだな。

 ユウジが風邪で休んだ。

 いやまあ心当たりがないわけではない。
 おそらくは昨日の――アタシとの裸ニーソプレイの影響だろう。

『ねえよ!』

 お、おう。何故か居ないはずのユウジからツッコミが入ったぞ。どれだけ研ぎ澄ましたらそんな芸当出来るんだ。
 なるほどな、裸ニーソは露出度が高すぎる、と。ほうほうそれでは――アタシとのスク水プレイの影響だろう。

『う~ん、声だけなら可!』

 あ、ああ。目で見てないのにスク水プレイを認識出来るだと!?
 つまりは布擦れ音だけで判断する、と――とんだ変態さんだぜヒャッハー!

『俺の台詞偽造すんじゃねえ! 思ったとしてもそれは言うわけがないだろう』

 う、うむ。確かにユウジならば脳内で完結させて独りの時に楽しみそうだな。
 つまりはやっぱりヘンタイ様だぜヒャッハー!

『うる――』

 もういいから。
 まあ昨日の体操着姿で盛大に水を被ってしまったのが直接的原因に他ならないと、思う。
 で、つまりはアタシは朝はいつも通りのユウジとミナ姉よりもフライングしての通学路集合をし、ユウジが来ないことが分かっている。まあアタシは同居してるから分からないわけがない。

 更にどうやら会長も休んでいるらしくメル友のチサさん(注、書記)から今日メールが届いていた。
 メールによれば「アスちゃんが風邪でdfuhni」チサさんのあからさま動揺と会長が風邪で休んだということが理解できる。

 つまりは昨日体育用具を清掃していて水を浴びた三人中二人が風邪をひいたことになる。
 じゃあワタシは――

「ア、アタシはバカじゃないんだからね!」
「……いきなりツンデレ調に何を告白してんだよユイ」

 バカは風邪ひかないってのも風邪にひいていることに気づかないだけで本当はひいてるもん。
 そうだ、アタシには免疫力があったんだ。風邪を吹き飛ばすほどの大いなる力っぽいのを持ってたんだよ、うん。

「ユウジは今日休みかぁ」
「巳原さん、ユウジ様は風邪をひいてしまわれたのですか?」
「そーみたい」
「……お見舞いに行ってあげた方がいいかな」
「私もユウジ様が心配です」
「そうだな、きっとユウジも――」

 はっ。いやいや良く考えたらダメだろう!
 だって一応アタシも住んでるだぞ? ややこしいことになるからとアタシも理解して過ごしてきていたが――なにせ女のカンは鋭い、見つかるかもしれない。
 例えばリビングに備え付けられたテレビに繋いだハードディスクには――沢山の深夜アニメのデータが。
 まあそれはユウジも同類みたいなものだから、いいか。
 ……そう考えるとアタシって見当たる要素無くね? キャラ濃いようで薄いような、さ。
  
 なんか悔しいな。

「ユイ?」
「巳原さん」
「はーっはっはっは! 実はアタシ、ユウジの家に住んでます(キリッ」

 あ。
 
「…………え?」
「……えーと?」

 ああ、ノリで暴露しちゃった。ごめんユウジ、一応ごめん。どうにもならないだろうけど。
 ああ、何を二人は言うのだろう……ごくり。
  
「――あはははははは」
「――ふふふふ」
「え」

 二人は隠せずに盛大に笑い始めた。

「なんでそんな分かりきった嘘つくのー?」
「そうですよ。ユウジ様のお宅になぜ巳原さんが住む必要があるのですか?」
「そ、それは」
「大丈夫だよ、今日は三人でお見舞い行こ?」
「そうですね、風邪ならば何か喉越しのよいものを――」

 …………う、うーん。
 まあそっか、冗談に聞こえるよね。実際のところ本当なんだけどなあ。

「ユウジはフルーツゼリーとか好きだぞ」
「フルーツゼリー? ヨーグルトだった気がするけど」
「おかしいですね……公式ユウジ様ガイドブックには喉越し系だとヨーグルトと書かれています」
「そりゃまあ、よく冷蔵庫に入ってるからな”ユウジ”って書いてあるヤツが」
「「…………」」
「風呂のあとのゼリーは格別だー、とか言ってホニ様とよくテレビ見て……る」

 ここまで話して二人が怪訝そうな顔をしていることに気付く。

「ユイ? なんでそこまで詳しく知ってるの?」
「巳原さん? そんなガイドブックに書いていないような最近の出来事をいつ教えてもらったのですか?」
「あ、えーと」

 やばいやばいやばいやばいやばい。
 これは本当にバレそうなほどにベラベラ言っちゃったぞ。
 ああ、ごめんユウジ。
 
「――ユイ」
「――巳原さん」
「はい」

 来るのか? ってか何が来る? 


「盗撮しているなら言って下さいよ、巳原さん」


「本当にアタシは盗撮を……盗撮?」

 今とっても変な単語を聞いた気がする。

「そうですよー、私は未だ勇気がないのでユウジ様のお宅を撮影することは出来ませんし……その悪く思っているので学校内で留めているのです。それで巳原さんはどこにそんなカメラを?」
「いや、あのなー、アタシは盗撮じゃなくてだな――」
「もうーユイ、女のカンならそう言ってよー」
「カ、カン?」
「そうだよ、もしかしたらユウジの好きなモノもフルーツゼリーかもしれないね」
「…………そ、そうか?」
「じゃあフルーツゼリーとヨーグルト持っててあげようかなー」
「そうですね、それでは放課後参りましょう」

 …………この人達美人だけど、凄まじいわあ。

 ちなみに見舞いに二人の学校ヒロインが訪れ、ユウジは大層喜んだとのこと。
 アタシが住んでいるということは終始バレなかった。

 ……これはこれで傷つくんだが!


* *


 一日寝たのとホニさんの癒しと看病で熱もだいぶ下がった。
 夜を迎える頃には熱は引き、だいぶ体も楽になった、
 夕食も一緒に食べることになり、その光景に姉貴が号泣する反面ユイは眼鏡越しで分かる程に脹れっ面だった。
 
「なあ桐、なんでユイは機嫌悪いんだ?」
「知らぬわ、どうせギャルゲーの予約に失敗したんじゃろう」
「あー、有り得る」

「にゃあああああああああああああああああああっ!」

 ユイは突然猫っぽく吠えた。
 どうしたんだろうか?


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