第ニ章 俺達の戦いはこれから、だと思ったら既に開始。
第029話 2-18 俺達の戦いはこれから、だと思ったら既に開始。(終)
「なぁなぁ」
先程、グロ系の話題で発狂しユイ並みの変態振りを披露していたマサヒロが話しかけてきた。
「なんだ」
なんか馴れ馴れしいぞ?
「あのさー、この学校の裏に山あるじゃん?」
「ああ、まぁあるな」
この学校のある場所は町の”山側”に位置し、この学校と駅の反対方向には山がそびえている……しかし、そんなことを何故、今俺に聞くんだ?
「でさ、そこって墓地があるんだよ」
「へぇ」
いや、だからどうしたよ。
状況説明が微妙に長ったらしくて回りくどいのはラノベの典型だぞ。さっさと要約でも三行でもいいから言えや。
「だからさ……肝試しに行こうぜ!」
「……は? 今なんて」
思わず聞き返した……肝試し?
「肝試し。引きずり出すと血に塗れてる肝と書いて肝に、お試しの試し」
「……いや、わかるから」
先程の影響あって、グロマニアの本領発揮? なんと気持ちの悪い例えをするんだろうか。
そしてグロに転化できない試しの説明は至ってテキトーという。
「で……この春に肝試しなんかを?」
そう、見事なまでに春だ。
桜こそ散ってしまったものの、まだ春陽気。とても肝試しというイベントを連想出来ない。
「夏より涼しいだろ」
いやいや。肝試しって冷やかなイメージがあるから、あえて暑い夏にやるものだろう。
「墓地を抜けた先には古い神社があってな。そこには神様が祭ってあるらしい」
「神様ねぇ……」
多神教のこの国で、俺は特に崇めようという神も宗教もなく。それでいて信じないわけでもない、八百万とも言うしなー
「で、肝試しは墓地の初めからその神社の”神石”までの往復だ。行ったか行っていないかは、予め置いておく”神石”前のボードの上の貢物の有無で決める」
そこまで決まってんのかよ……妙に用意周到だな。
「というか”神石”ってなんだ?」
「分からないか……そうかそうか。分からないかぁ!」
なぜに突然にエラソーになったし。
もしやその祭ってある神はかなりに有名なものだとか……?
「”神を祭ってある石”の略だ」
わかるかっ! なんだよその略、”祭る”の要素が完全に消滅してんじゃねえか!
「で、貢物ってなんなんだ? なんかの王様にでも送るのか?」
まぁ、もちろん冗談だが。
「その神様へだ。貢物は適当でいい、自分が良いと思う物を持ってけばいいだろ」
「そこは適当でいいんだな?」
神に貢ぐ物なのに、そこだけ適当なのはどうよ……
「三日後やるぞ」
はやっ!?
「はええ! なんて強行スケジュール……っていうか、俺も参加する流れになってねぇか!?」
「はぁ?」
なんだよ。そのさぞ当たり前だろ、的な顔は。
「当たり前だ。ユイもユキも姫城さんも呼んでな」
いや、なんでだよ。しかも俺が誘うのかよ……
「人を巻きこむなよ……」
「いいではないか、ついでに祭ってある神に会えるかもしれん」
「ねーよ」
そんなのが出てきてたまるか。てか神様が”ついで”とか微妙どころか普通に失礼だろ。学業の神だったら滑らされるぞ。
「とにかく俺は他の奴にこのグッドニュースを伝えてくるからな! さらばだ!」
俺含めみんなにとってそれは”バッドニュース”なのだが。本当にこの流れだと参加するハメになるな……まぁヒマだからよいのだけど。
しかし、あれ? デジャブ?
「グッドニュースだぜぃ!」
と思っていると、ユイが全力疾走で机に滑り込んできた。机や椅子を巻きこんでガタガタガシャーン。
「勢いを付け過ぎたか……」
「付け過ぎだ! 机二、三個倒してるじゃねえか」
周囲の生徒が引いている。みんな、それは正しい適切な反応だ。この俺が心の中だが保障する。
「で、グッドニュースってなんだ?」
確実に地雷臭がするが、一応聞いておく。
「よくぞ、きいて、くれ、まし、た」
変な区切り方をするな。
「転校生が来るんだってサ!」
「ナ、ナんだってー……って、しかし入学式シーズンも過ぎて中途半端な時期だな」
「これは超能力が使える機関所属の男子高校生が来るに違いない」
三年間続きが出ていないスニー〇ー文庫の某作品の登場人物みたいだな(※当時)
「いや、超能力なんてあるわけないだろ」
「じゃあ、凄いS気が強い超絶お嬢様」
「なんだよ、その二択! 転校生のハードル上げんな!」
で、転校生が普通だったら落胆するんだろ? ……転校生が不潤過ぎるぞ。
「五日後に来るらしいぜぇ」
またマサヒロと同じように具体的な……
「……どうやったらその五日後の情報が手に入るんだよ」
「それは知ってはいけないことなのだよ、ナオトくん」
「誰っ!? ナオトって誰」
「見ればわかるっ!」
「何をっ!?」
「M&――おっと追手が来たようだ、さらばだ! ユウジ!」
「追手ってなんだ! お前どの危ない組織から、その情報手に入れてきた!?」
……まずい一気にツッコミすぎた。疲れる……心の中でもツッコんでるもんな。とりあえず次の授業まで体を休めておこう。と、机に項垂れるが――
キーンコーンカーンコーンと非情にも、授業の始まりのチャイムが鳴る。
この休みを奪われたイラつきと突然に俺の意見もお構いなしにスケジュールが埋められた鬱憤を何処にぶつけてみればいい?
ガツッと、とりあえず拳に怒りを込めて机を殴るが。ただ拳の骨に痛みが響くだけで、虚しさだけが残った。
はぁ。
午前授業も無事終えて今日は学食だ。いつも通りの四人に――
「ご一緒してもいいですか?」
と、姫城が言ってきたので――
「もちろんいいぞよ」
ユイ。
「大歓迎だぜぇ」
テンション高くマサヒロ。
「うん!」
そしてユキ。
「ユウジ様は?」
と、俺に不安そうな顔で聞いてくる。まあ、それには即刻答えた。
「聞くまでもなくだ。じゃあ姫城、ユキ他二人行こうぜ~」
それを聞いた途端に姫城は顔一杯に笑顔を広げ。
「じゃあご一緒させていただきますっ!」
と、嬉しそうに教室を出て歩き出す。
「他二人とはなんぞや!?」
「呼ぶのが面倒なだけだー」
「あたしゃサブキャラなのか! サブ止まりなのか!?」
「ユイ……諦めろよ、俺らサブは主人公を盛り上げることに徹すればいいのさ」
「くぅ……某も主人公になりとうございます! オンニャノコフラグを立てたいです!」
「いや、ユキとりあえずキャラ固定しような」
とそんな下らない雑談をしていた――その時のこと。
『―――――』
「!」
一瞬時が止まったかのような錯覚。ちょうど見えた女生徒に俺が心奪われたからだろうか。
人形のような白い肌にスレンダーな体格。整った顔立ちに伸びる深緑のストレート、頭の両方横からチョンと毛が出ている。
その女生徒には身から発せられる清楚さ、上品さがある。しかし彼女は他人を拒絶するような、冷たく沈んだ瞳を持っていた。
言葉で表せない不思議で、異質な人。そんな彼女が何故か俺の目には止まったのだ。
喧騒にざわめく廊下でただ一人。彼女は遠く前だけを見つめ、深く長い緑の髪を揺らしながら、俺らの横を通り過ぎて行った。
「…………」
それで俺は振り返ることも、彼女を追うこともしなかった。理由は学食に早く行きたかったと単純明快。
それに俺が、彼女にいくら興味があっても学年色も見忘れ、クラスも名前も分からないとあっては今後関わることはないだろうと思ったからでもある。
こうして俺達五人は駄弁りながら学食に歩を進めた――
* *
全てが揃うまでは行かなかったですが、しかし全てが集まる前に物語は始まります。
現実と架空が混ざり合うこの物語、そんな物語のプロローグは終わりを迎えました。
そして、全ての始まりの時。
それが今、この時、この瞬間。
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