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ギャグのノリを原点回帰してみるの巻
第九章 G.O.D.<日常>
第209話 √2-14 G.O.D.
 五月二日


 休日。それはもう清々しいほどに休日。大統領も驚きな見事なまでに休日。定期的に訪れる国民に約束された確固で遥かなる休日。ついでにローマな休日。
 今日は日曜日だ。

「ZZZZ」

 俺は八時になろうとする時を気にせず、いつも通り平常運行で安らかな寝息をたてていた。
 平日ならば学校へのダッシュ&ノーブレックファーストとなってしまうのだが、気兼ねなく日曜は酷い時はお昼まで寝過ごす。
 目覚ましも沈黙し睡眠を妨げるのを止めて鎮座してくれているのだが。

 ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ。
 
 なるはずのない目覚ましが、時計の針が”八”を指したところで今の今かと待ち望んでいいたかのようにけたたましく鳴りだす。
 誰かの実体験だと電子音が響くよりもアナログチックなベルが鳴る方が睡眠破壊には良いらしいが、俺は思うに五分五分だ。
 
「んん……?」 

 ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ。
 
 何事かと目を開いて行くと、そこには味気ないアイボリーの天井と傘点きの明るさ調整を三段階出来る証明が見えるのみ。
 
「なんだなんだ……」

 ぴぴぴぴぴぴ、ぴ。

 飽きないのだろうかと思うほどに長く鳴り続ける目覚ましの登頂部のスイッチを右手で押すと、ようやくその機械音は止まり部屋には静寂が訪れる。

「え……と」

 なぜ起きた? なぜ目覚まし?
 と、寝ぼけの三輪車の車輪ほどにゆっくりと回る頭で考える。

「……あっ」
 
 思い出す。そうだ、なぜ起きたのか……昨日約束したばかりだろうに。

「っ、っ」
 
 ぱちぱちと両頬を叩いて、仮覚醒を果たすと俺は自分の部屋を寝巻というより部屋着なよろよろ半袖半Tシャツを着ながら居間へと降りて行く。

「おはようございます!」

 居間に着くと、キッチンから聞こえるカチャカチャと聞こえる皿洗いの音と正座をして俺の開けた居間への扉
へと向き直る正座したホニさんが居た。

「ああ、おはよう……」

 ホニさんはかなり目が覚めている様子……というか、あれ?

「ホニさん、目の下にクマがあるけど……寝不足?」
「え、ええ!? そ、そんなことないよ? 我は元気いっぱいだよっ」

 元気には違いないがそれは寝不足をひた隠しにする空元気にしか見えないのは何故だろう。
 ホニさんはここに来るまで、あの山を降りてから周りの景色に新鮮さを感じていた。
 そうなれば、新しく整えたホニさんの部屋。自分の部屋を舐めるように見渡したのではないのだろうか?
 ホニさんは好奇心旺盛で、若干目新しいものには興味津々だ……ということは、だ。

「そういえば部屋どうだった?」
「すごいよかった! あんな軽い卓袱台も、ふかふかの寝床も、太陽さんのにように明るい上の何かも! なによりあの黒い箱っ、どうなってんだろうって気になって気になって、すっと見て――」

 そこで自分が口を滑らしたと言わんばかりに口元を押さえる。ちなみに俺は完全に理解していた。

「そっかー、それは良かった……で、どうなってるか分かったのは何時間ぐらい経ってから分かった?」
「……ごめんなさい、それで寝不足です」

 内心ではインターネッツがここまで普及する数十年前の深夜のテレビにかぶりつく男子学生かよ、とツッコんでおく。

「ホニさん、寝不足はあまりよくないから」
「……はい」

 しゅんとするホニさん可愛いなあともう一人の僕が思いつつも、口は本音がぼろぼろと出ていた。

「俺なんて最近は夜更かししたくても出来ないほどに睡魔が訪れて、うらやま――」
  
 ――しい、なんて思ってないんだからね! 色々凄いことが起り過ぎて疲労困憊故に直ぐに就寝しているのが虚しいわけじゃないんだからね!
 ……はぁ、厨ニ病と言われようが中学生のころは良かったよ。毎日U局で放送されるマニアックな深夜アニメに暗くなった部屋で一人テレビに被りついてみていたあの頃が懐かしい。
 まぁ、あの頃はアニメが凄い面白かった時期だったのもあるけどね。

「?」
「な、なんでもないぞ……で、まずは家事のことだけども」
「! うん、なになにっ」


* *


「うう……お姉ちゃんに反応してくれない」

 良かったですね、皿洗いしているおかげで涙がわかりにくくていいですよ?
 ということでバカ姉涙目、一方のユウジは洗濯のやり方を教えに洗濯室へと向かいます。

「でも、もしかしてこれもが放置プレイの一つだったとしたら……!」
 
 なんというか残念な方向にポジティブで私は若干引きます。前向きを向きを間違えるとおかしいものですね。

「……ユウくんったら」

 一見ただ気持ちの悪い発想をしているだけに過ぎませんが、この妄想のおかげで皿洗いがはかどるはかどる。
 ユウジが居た頃はわざわざスローでウォッシュしていたのに対し、凄まじい勢いで朝食で使われた平皿やら夜中に水分補給に使われたであろうコップをなんとものの二分間で洗い終えてしまいました。
 洗いぬかれた皿は鏡も飛びのくほどの光沢というより、ピカピカでした。おそるべきユウジの放置バースト。
 
 
* *


「まずは昨日出た洗濯物を準備する」
「うんうん、その衣類とかだね?」
「そうそう」

 ちなみに我が家では、まあまあ古い洗濯機の型故に音もなかなかダイナミックである。
 夜分にやれば近所迷惑になりかねないので夜十時以降は洗濯しない方針で、それ以降の入浴時等の洗濯物は平日ならば夕方まで放置、休日ならば朝に洗うことになっている。
 ということでこんもりと男枠と女枠で分けられた長方体の布で編まれた色違いの籠をラックから下ろす。

「これをこの洗濯機に入れる」
「質問!」
「はい、ホニさん」
「”せんたっき”とはなんですか?」
「洗濯物、汚れた衣服とかをこの箱に入れて洗剤を入れると勝手に洗ってくれる機械だぞ」
「なんと! ……我が知らぬ間に世の中は進んでるねー」

 ホニさんはまたまた洗濯機を好奇の視線でみる。しかし、この無邪気さ可愛い。

「洗剤というのは、これ。この白い粉をこの量入れるとちゃんと洗えるんだ」
「白い粉なら知ってるよ? ええと……なんだっけ、コカイ――」
「ああ、ホニさんそれ違う」
「そうなの? でも神石前でそのぶつぶつ交換? してるところ見たんだけどなあ」

 こんなチンケな町かつ、なんてとこで取引しているのかと。罰あたりだな、まったく天罰を下さない神様は何をやってるんだよ……って、ホニさん神様だった。それじゃしゃあない……法律的にはスリーアウト、チェンジだけども。
 ……やべえですよ、というかその知識があるせいで白い粉=アレなのはマズイ。でも変に食いつてきちゃまずいから、ここで寸止めしておこう。

「それで、蓋を開けて洗濯機に入れる」
「入れるー」
「籠が二つあるけどもまとめて入れるー」
「入れるー」
「あと、ここにある洗剤を入れるー」
「食べるー」
「……食べては駄目だなあ」

 間違いなく有害で一歩死に近づくだろう。そう考えるとどこぞのアニメで見た”皿洗い洗剤を油と間違える”というのは有る意味毒殺に近いのかもしれない。

「蓋をするー」
「するー」
「このボタンを押すとー」
「押すとー……東京消滅」
「え、俺一体なんでそんなボタン押しちゃったの?」

 なにそのいきなりのほのぼの大量虐殺。おい洗濯機さんよ、東京を日本から洗う前に洗濯物を洗ってくれませんかね?

「……ボタンを押すと動き出すからな?」
「え、歴史が?」

 洗濯物が洗濯機の轟音と共に廻り出すかのように、歴史も大きな音をたてて動き出した――その時歴史が動いた。
 ……ってやかましいわ!

「なんで、ホニさんはところどころネタを仕組むの?」
「え、え!? 我、変なこと言った?」
「……いいんだ、自覚ないなら」

 尚更タチ悪いけども。

「それで時間が経てば、洗い終わり!」
「なるほど! わかった、理解したよ!」
「おおそれは良かった」
「でも……」
「でも?」

「洗濯物はいくらでも綺麗に出来ても、汚れてしまった心と体は――」

「はーい、次いってみよー」

 地味にホニさんは地雷なのかもしれない。
 本人いわくの幾年を過ごしたことで謎の知識網が完成しているとしたら……

「どうしたの? 今震えてなかった?」
「い、いや?」

 これから巻き起こるかもしれない展開に身震いした。


* *


「はぁはぁ……ユウくん」

 バカ姉は未だにキッチンに棒立ち。

「まだかなあ……焦らすなあ」

 いや……当分来ないかと。というかバカ姉いい加減にしてくださいよ……

「ユウくんオ●ズにして●●●●●――」

 平気で放送禁止用語使わないでくれませんかねえ!? ピー音入れてるの私なんですから!


* *


「あ、そういえば飯食ってなかった」
「あ、ごめんね? 我が教えてもらうの催促したから……」
「洗濯のやり方は覚えた?」
「うん、それはバッチリ!」
「それならいいや。じゃあ朝食にするかなー。姉貴ー、飯ってどこ?」

「ああ、ユウくんユウくんユウくん――」

「姉貴?」

「ああ……ああっ!? ユウくん! ご飯!? ちょっと待っててねー」
「ああ、悪い」

 よくバレませんでしたね、バカ姉。


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