第ニ章 俺達の戦いはこれから、だと思ったら既に開始。
第020.5話 2-9.5 俺達の戦いはこれから、だと思ったら既に開始。
四月ニ六日
なんということでしょう、あまり寝れていません。
部屋着兼パジャマのTシャツ&半ズボン姿で階段を下り、洗面所で鏡を覗けば……そこには目の下にクマがある男子高校生が――
「あー、ねみぃ」
ふぁぁぁぁ、と目に少量の涙を溜めながら大あくび……なんとも間抜けな光景だ。
「さてと」
ばしゃばしゃ顔を洗ってタオルでふけば――
「(キリッ)」
なんということでしょう、あの眠気全開の残念青年の顔がキリッと引き締まったではあーりませんか。
もともとそんなに出来ていない顔立ちが寝起きで完全崩壊を起こしていたのに対し、洗顔によるリフレッシュ効果で大幅に改善されています。
リフレッシュもされるはずでしょう、そう青年の使う洗顔用石鹸は、竹炭を練りこまれているのです。
敏感なお肌にも優しい天然仕様、それでいて顔に付着した汚れを流しさり、かつ引き締まります。
まさに竹炭石鹸という「石鹸の匠」が青年のたるんだ顔を引き締めてくれたのです――
さーて”竹炭石鹸販売促進運動”もここまでして……朝飯行くかー
「姉貴おはー」
「おはーゆうくん」
洗顔後は姉貴が居間でお出迎え。
「ごめんねっゆうくん! 学校に早く行かなきゃいけないから、先いくね!」
そんな姉貴は既に着替えていて食パンを銜えながら黒いニーソックスを履いている最中だった。
「じゃあ、ご飯とお弁当置いておいたから――行ってくる!」
「ああ、行ってらっしゃいー」
姉貴を見送り、今の卓袱台周りに座る。 台上にはマーガリンの塗られた食パン二枚と卵焼き一つに味噌汁一杯がそこにはあった。
「……まだ温かい」
そう遠くには行っていないはずッ――って、姉貴出たばっかだけどさ、直前まで朝飯作っていたことが分かるなぁ。
「むしゃむしゃ」
ほーむっ、このトーストの絶妙な焼き加減がたまらないねェ! 食後の余韻ならぬ、食パンの余韻(?)を感じていると……
「むにゃむにゃ、ふわぁ」
「お、桐、おはよーさん」
「ぐっどもーにんぐじゃ」
何故エェングリッシュ? まぁいいや、俺もたまに言ってるしな。
「桐、顔を洗って出直してきな」
「なんじゃと貴様、上等じゃ、洗って来てやろう」
なんだこの会話、そうして桐は顔を洗いに洗面所に向かって行った。
「むしゃむしゃばくばく」
ふぅむぅ、朝食に目玉焼きが定番だと誰が決めたか! 卵焼きもいいものだ、おおう、醤油が効いてるなァ。深い味わいに舌鼓を打っていると。
「なんということじゃろう! みよ、この美女を予感させる整った顔立ちをッ! 幼女の時点でこれなら、二十歳になった暁には……イケる、イケるぞおおお!」
「わぁー、なんてすばらしいもぐもぐ」
「おにいちゃん! ご飯食べながら喋るのは行儀が悪いよぐしゃぐしゃ」
「食事中に頭を掻くなふごふご」
「だからお兄ちゃん食事中はもぐもぐウマー」
「喋る暇も惜しいぐらいに美味しいからだよっ!」
「ふむふむ……これなら仕方ないのうまぐまぐ」
「ごっそさーん」
「こらこら、北斗七星の方向に向かってお辞儀をしなさい」
「わかるか、んなもん! ごっそうさまでしたー」
「わしも、ごちそうになった」
「早っ! お前早食いだな」
「……これで本気かと思うか?」
「思わないからがんばれ、じゃあ着替えてくる」
「なんとも適当な返しにが不服にゃが着替えてくるがよい」
「着替えてきた」
「早っ! お主早着替え達人じゃと!」
「……これで本気と思ったら大正解だ」
「これが本気なのか! だとしても凄いのう」
「まぁ、わしがあくびしている間に着替え終わるとわな」
「いや、その表現では桐のあくびが長かった可能性も出てくる」
「ふむ、それじゃ……」
「皿を一枚重ね終わる前に着替え終わるとはな」
「いや、それじゃ”何枚も割ってしまって最終的に一枚重なられた”という解釈だと時間がかかったことにもなるぞ」
「そこまでごだわらん、とにかくお主の着替えは早い」
「まぁ、部屋着の内側に着ていたからな」
「……学ランをか? 先程のTシャツ内は四次元空間でも広がっておったのか?」
「俺……着やせするからさ」
「……布面積を無視するということは、錯覚でも利用しておるのじゃろうな」
「まぁ、そんなことより学校に行ってくる」
「おお、もうそんな時間か」
「いや、あと一時間はある」
「なぜ早くでるのじゃ?」
「まぁそれは……な」
「残念じゃが、目では伝わってこないのう」
「ユキとウキウキ登校して、教室でフツトーークしたいだけさ」
「なるほど拒否」
「わかった、桐が拒否したのはこんな理由だろう? ”私のダーリンを横取りするなんてこの泥棒猫が”」
「うぅむ、内容は大体あっているが反応にとてつもなく困るな」
「じゃあ行ってくる」
「おう、気をつけてな」
こうして俺は玄関で靴を履き、鞄をブランブラン揺らしながら玄関の扉を開いた。
そうして俺は家の門前で待っていた――
「おっはよ~」
おう、なんという天使……そう皆さんご存じのユキさんです。 なんと雪のように白く透き通った肌……俺が本気出したら三時間は見惚れるね。
「おはー」
と返す俺。
「いやー、春だね」
「いや、もう終わるぞ、春」
春という定義が微妙だが、もう4月も終わる……桜も散りはじめているしな。
「春と言えば、桜だよね」
「もう殆ど散っちゃったからなぁ」
「でもね、ユウジ」
「なんだ?」
「桜は私たちの心の中に咲き続けているんだよ」
「……桜は死んだ訳じゃないと思うんだ、来年になればまた元気に顔をみせてくれると俺は思うんだ」
ユキさん、それは死んだ仲間を想う台詞でっせ。
「うんうん、わかってる、楽しみだな~」
ユキさん、ちょっと天然入ってるけどGJですよっ。
「ところでユウジ」
「なんだい?」
「夏もいいよね~」
え。
「いや、いいと思うけど、さっき春の話してなかった?」
「季節は移り変わるもの……私のマイシーズンも移り変わるそんな時なんだよ」
「……夏ねぇ、俺は暑いから嫌いだな」
「えぇー、そんな暑さを無視して冷房のガンガンに効いた部屋でアイスクリームを食べながらバラエティをみるのがいいんじゃないー」
「うん、なんとなくわかるけど思い切り環境破壊だ、それー」
しかし夏のユキ……だとッ! ……イイかもしれないなぁ。
「でもね、でもね!」
「どうしたんだいユキさん」
「気温を下げる為に打ち水はしたよ?」
「おお、地球温暖化を防ぐ身近な第一歩だな」
「家の中にだけど」
「ええとユキさん、その後家はどうなりましたか?」
「水浸しになりました」
でしょうねー
「お母さんに怒られた……トホホ」
可愛いっ、トホホ、可愛いっ!
「でもそう考えると」
「? 考えたのか?」
「秋がいいよね~」
「うん、ユキさん。春夏秋冬一周するおつもりですか?」
「春夏秋冬一蹴?」
「蹴っちゃだめだろ」
「でもね、秋はいいよね」
「まぁ、そうだな……過ごし易いし」
「なにより食欲オンリーな秋だよね」
「芸術とかスポーツとか何処行ったと言いたいとこだが、そうだな」
「夕暮れの通学路を歩いていたそんな時、少し遠くから聞こえる焼き芋屋さんの声はそそられるよね」
「あ、わかるわ」
「そして横を通り過ぎる焼き芋屋さんの車」
「ああ、買いたくなるね」
「それで買っちゃう訳ですよ」
「そりゃ仕方ない」
「ダースで」
「ユキさんや、それはちょっとばかし食い意地というか、欲張りすぎなんじゃないですかい?」
「大丈夫、スタッフも美味しく頂いたから」
「スタッフそんなもん貰ってたのか!」
うらやま、ユキからの手渡しだと……俺、スタッフになろうかな。
「本当はスタッフじゃなくてお家のお母さんとかにだけどね」
「あー、やっぱり」
「余ったものは――」
「スパイスをかけて」
「ユキさん、それ台無し」
「え? スイカに塩の要領で、焼き芋に胡椒だけど?」
「惜しい、サツマイモじゃなく普通のダンシャクイモとかならセーフだったのに」
「ミスマッチ感が癖になるよね!」
「食べてないから分からないよね!」
ユキさん、それは自分にはわかりたくないです。
「いやぁ、ユウジと話していると楽しいね」
「俺ユキと話してると楽しいわ」
ああ、楽しい。なんだかんだで楽しいなぁ、ユキとの会話。
「そろそろ学校だね」
「だなー」
そうして俺たちは学校の昇降口へと足を向かわせるのだった。
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