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ぼそっとエッセイ
作:春晴秋明



ただいま、行ってらっしゃい


お腹が減った。


何かお腹を満たすものを買ってこようか。 お菓子と柿の種だけが、ある。

だけど、そのどちらも食べたくない。


おにぎりか、サンドウィッチか、パスタか、お弁当・・・・

考えただけで、お腹と背中がくっつくぞ! ってほど、お腹がぺちゃんこではないけど。


でも・・・

もう少しで彼が到着するって、メールが入ったし。

すれ違いになっちゃうの、やだし。 早く逢いたいし。


だけど、お腹減ったよ〜


『ピンポ〜ン』

あ! 彼だ!


ドタドタと、玄関までの超短い距離を走って、鍵を開け、ドアをガチャリ。


「ただいま〜」

「おかえり〜」


二人で住んでいるわけじゃないけど、彼は、そう言って入ってくる。

私も、そう言って迎える。


「これ、食べよ。 チープだよ。」

「何?何?」

「カップ麺と、お菓子と、コンビニスイーツだよ。」

「やったー!」


思わず、空腹を満たすそれらに喜び、彼に抱きつく。

そんなに感動のシーンじゃないはずが、お腹グーグーの私には、感動のシーン。


「お腹が減ってたんだよぉ。」

「チープな昼食をとろう!」

「お湯沸かそう!」


おー! とばかりに、カップ麺のお湯を沸かすのだ。


「君は、こっち。僕はこれ。」


醤油が彼で、味噌が私。 ラーメン屋さんでも、チョイスは一緒。


カップ麺の中の小袋を開けて、乾麺の上に開けていく。


「どうして、スープ入れないの?」

「これ、後から入れるんだよ。」

「えー、私、全部入れちゃった。」

「食べるときは、一緒だよ。」

「そうね。」


4分間は、尽きない二人の会話。 でも、そんな、どうでもいい会話。 

だって、4分しかないもん。 


お腹ぺこぺこの私は、ズルズル食べたよ。 普段よりも、ハイ・スピードで。

お腹も満たされてきた頃、顔を上げて彼を見ると・・・・

完食! 早っ。

勝者は彼だった。 なかなか勝てない。


私が食べたカップ麺は、横浜のラーメン博物館に出店されているところのもの。

お互い、行ったことのある博物館の話になった。


「一軒しか行けなかったよ。」

私が言う。

「僕は、3軒かな。 でも、そんなに食べられないよね、ラーメン。」

「うん、それよりも、並ぶのがいや。」

「そうね、並んでまで食べたくないよね。」


やっぱり、私達は面倒くさがりなのかな。



たっぷりあると思われた時間は、あっという間に過ぎてしまう。


その前に、二人でコンビニスイーツを食べた。

生クリームたっぷりのプリン。 イェーイ!って、心の中で親指立てたよ。


「このデザートには、このチープなプラスプーンがマッチしてるでしょう。」

彼が言う。

「そうかも〜。気にもしたことなかったよ。 確かに、このプラカップのプリンにはプラスプーンがぴったしかもね。」


そんなこんなで、あっという間に二人とも完食。


そして、バイバイする時間。

もっと一緒にいたいな。 ずっと、一緒にいたいな。

そう思っても、二人ともその後の予定は避けられない。



「じゃ、行って来ます。」

「うん、行ってらっしゃい。」


玄関先で、バイバイしなくちゃいけない彼を送り出した。

『寂しいな』

そう、思いながら。



今度、「ただいま」を言う彼に逢えるまで・・・・


『行ってらっしゃい。』












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