1秒のズレ
夕焼けに赤く染まる放課後の教室。
その教室には2人の人間がいた。
少年と少女が1人ずつ。傍から見ればそれは青春の1ページのように見える。
しかし、2人の間にはその状況には相応しくないものがあった。
目覚まし時計。
それが2人の間にあるものであった。
「いいか、この時計をよく見てろよ。」
少年がそう言って時計を睨みつける。
沈黙が部屋を制す。
10秒、20秒と時計は時を刻む。
尚も時計の針は進む。
そして、針が30秒を指そうとする。
その時不意に針が逆に動いた。
一瞬の出来事である。
しかし、確実に起こった事実だ。
少女が悔しそうに顔を歪ませた。
変わって少年の方は満足そうだ。
「どうだ。これで信じたろ。」
「確かに戻ったような気がしたわね。」
「気がしたんじゃなくて実際に戻ったんだよ。」
「そんなこと言われたって1秒だけ時間を戻されても実感わかないし・・・」
少女は再び時計に目を落とす。
時計は通常通りに動いている。
「だいたいなんで1日に5回しかできないのよ。どう使っても役に立たないじゃない。」
「確かにそれはそうだが、こうやって自慢するにはもってこいだろ?」
「ま、確かにそうかもしれないけど自慢する相手はいるの?」
「う・・・いねえよ。だから唯一自慢できるお前にこうして披露して見せたんだろ。」
「そ。それじゃあアンタの気が済んだんなら私は帰らせてもらうから」
「え?あ、ちょっと待てよ。せっかくなんだから一緒に帰ろうぜ。」
少年は時計を鞄の中に放り込み教室から出て行こうとする少女の後を追いかけて行った。
既に季節は夏に向かっているというのにその老婆は服の上から黒いマントのようなものを頭からかぶっていた。
そんな普通ではない恰好に人々は視線を集めていた。
しかし、それ以上に視線を集めていたのがブツブツとつぶやいている言葉だった。
その老婆は今まで様々なことを的中させていた。
次の日の天気、その日に起こる事件、株価の変動など他にも様々なことをピタリと一致させてきたのだ。
ただ、ここ数日はにわかには信じられないようなことをつぶやいていた。
日付、そしてその日に地球が滅びると言っているのだ。
しかし、その日付は1日前である。
そこは少年と少女の通学路であり、もちろんその2人も老婆のつぶやいていた言葉は聞いていた。
「まだ、やってるのねあのお婆さん。結局、昨日はなにも起きなかったし。」
「確かにな。ま、今まで100発100中とはいえどさすがに地球が滅びるってのは突拍子もない事だったからな。」
少年は得意気な顔をし、続ける。
「変わって俺のは1日5回までの範囲なら100発100中だけどな。」
「だからと言って何の役にもたたないけどね。」
「それを言うなよ。」
その時、少女は妙な違和感をおぼえた。
1日5回、1秒間だけ時間が戻っているのだとすれば1日に5秒ズレが生じるということだ。
そして、それが積み重なればたった1秒が1日に変わってしまうこともありえるだろう。
だとしたら今日は何月の何日なのだろうか。もしかするとあの老婆が言っている日にちはまだなのかもしれない。
そこまで考えて少女はため息をついた。
自分は本気であの老婆の言うことを信じているのだろうか。
いくら今まで100発100中で予言を当ててきたといっても地球が滅びるなんていう馬鹿げたことを信じられる筈がない。
「それにしても今日は以上に熱いな。なんか太陽もいつもより大きい気がするし。」
「確かにね。なんか太陽が近づいてきてるみたい。」
「太陽が近づいてきてるって、凄い表現するな。ま、こんな日にはさっさと帰って涼しむにかぎるな。」
そう言って少年は歩きだした。
ありえる筈がない、と少女は再び自分にいいきかせ少年の後を追った。
胸の内にある小さな不安感を残して・・・
まずは、こんな作品を読んでいただきありがとうございました。
最初は少年と少女のほのぼのしたものを書こうとおもってたんですがいつのまにかバットエンドになってしまいました。
実は本編には書いてない設定が2つあります。
まず1つ目は、お婆さんも超能力者であり、未来予知ができました。
それで2つ目が地球が滅亡とかいうのは少年が時間を動かしすぎたせいです。
よろしければ次回作も読んでください。
さらによろしければ感想とか書いてもらえたりするとうれしいです。
それでは後書きまで読んでくれた方々、ありがとうございました。