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掌編小説集1 (1話~50話)

タイミング

作者: 蹴沢缶九郎

まず、作者はこの話の登場人物のモデルとなったタレントさんの大ファンであり、それ以外の他意はありません。

それをご理解した上で読んで頂ければ幸いです。

日もとうに暮れ、辺りは既に暗くなっている。そんな時間帯、ある地方の寂れた駅から、細身で髭をはやした一人の中年男性が出てきた。


彼、稲山淳三はタレントである。稲山は怪談タレントとして有名だった。

稲山の話す怪談は一級品で、話の間や雰囲気といった怪談の世界観に人は誰しも魅了された。夏の時期は多忙を極め、テレビやラジオへの出演、怪談ライブを開催して全国を飛び回っている。


そんな稲山には人に言えない秘密があった。彼には霊感といったものが全くなかったのである。人に話す怪談は全て人の体験談であった。

自分の体験談ではないので、それではさすがにリアリティーがないという事で、仕事が落ち着く夏以外の時期には、こうして心霊探訪、いわゆるネタ探しに地方を訪れるのだった。


駅前でタクシーを拾い、目的とする場所へとやってきた。そこは心霊スポットとして有名な、木がうっそうと多い茂る森であった。


「来ましたねぇ、うーいいなぁ。やだなぁ、恐いなぁ、こういう所は出るんですよねぇ。」


人からよく恐怖体験を聞いているので、稲山は知っていた。そこから稲山はひたすら待った。幽霊が出現するのをただ待ち続けた。しかし特に何も起こらない。「今回も無駄足だったかな」と思ったその時だった。


突然まばゆい光が稲山を包んだ。上空から何かに照らされている。目を細め上空を見ると、それはUFOだった。


UFOから宇宙人が降りてきて稲山に言う。


「どうもこんばんは。突然驚かせてしまってすいません。私達は太陽系外からやってきた宇宙人です。私達は是非、地球の方々と友好な…」


「ああストップストップ。すいませんがねぇ、他の人の所へ行ってもらえませんか?私が会いたいのはあなた方じゃないんですよ、ええ。先週は地底人、その前は未来人、さらにその前は確か巨人族だったかな。

「あなたは選ばれた勇者だ!どうか我々の世界を救って下さい!」なんて言ってた異世界人もいたな。当然断りましたけどね。私が会いたいのは幽霊なんですよ。」


そう言うと、稲山はがっくりうなだれて帰っていった。訳がわからず、呆然と立ち尽くす宇宙人。そのそばの木から髪の長い白装束の女が現れる。女は透けていた。女は宇宙人に言う。


「あら、幽霊の私を見て驚かないなんてあなた変わってるわね。」


「それはお互い様ですよ。あ、さっきまであなたに会いたがってる男性がいましたよ。もう行っちゃいましたけど。」


「それは残念。もう少し待ってれば会ってあげたのに。どこの世にもタイミングが悪い人っているものね。」

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