青い輝き(1)
ミルクと舞は高校の制服だったが、ハルカは穴をたっぷり開けたGパンと、かなり短くておへその見えるTシャツだった。
『穴あきのGパンは、ボロボロのむしった様な穴だと、かえって暑苦しい感じだが、ハルカは綺麗に地図っぽく切った穴を開けている。これだと涼しげだな』
光輝はちょっと感心して、
「ハルカ、そのGパンの穴は、自分で開けたのか?」
と、聞いた。
「ああ、そうだけど、ちょっと行き過ぎてるかな?」
ハルカは光輝に嫌がられるのではないかと心配して言った。
「いや、綺麗に切ってあるから、涼しげでとっても良いよ。夏らしい季節感があって、なかなか良い」
光輝に褒められて、ハルカは身を少しよじって、
「えへへへ、褒められちゃった」
顔を赤らめながら、嬉しそうに笑った。ミルクと舞の目にはチラッと嫉妬の光が見えたが、直ぐに顔を背けて歩き始めた。
「あのうこちらですわ」
ミルクが皆を引っ張って行く。しかし目的の場所になかなか着かない様である。
「ミルクさん、いい加減喉も渇いて来たし、そこいらのファストフードの店とか、牛丼屋とか、軽食喫茶の店で良いんじゃないのか?」
かれこれ二十分ほども歩いているので、ハルカが痺れを切らして言った。
「大丈夫、もう着きましたから。ほらここよ」
ミルクが指をさしたのは、割戸スカイホテルだった。
「えーっ! ここってホテルじゃねえか。泊り掛けでアレ、する積りか?」
ハルカは直ぐに、エッチに結びつけた。
「もう、そんな訳無いでしょう! ここの最上階のレストランが、とっても素敵だから、皆で一度行けたら良いなと思っていたのよ。ここは割引が効かないんだけど、どうかしら?」
「しかし、高そうだからちょっと、……」
光輝は尻込みした。
「あ、あの、ちょっと、言葉が足りなかったわね。一応その、無料なのよ。祖父の大造が経営しているので、無料お食事券が何枚かあって、今まで余り使うチャンスが無かったんだけど、今回それを使おうと思うの」
「何だ、それを早く言ってくれよ。要するにただなんだろう?」
「ええ、そうなんだけど、……」
ミルクは少し引っ掛る物の言い方をした。
「何か都合が悪いんですか?」
一瞬間を置いてから、今度は光輝が聞いた。
「券が二枚しかないんです」
舞が補足した。
「えーっ! じゃあ、そのう、じゃんけんで決めるとか?」
ハルカは冗談っぽく言った。
「皆同じ物を食べて、半分ずつ出し合うのはどうですか?」
光輝は一つの案を出した。
「ああ、それが良い。そうしようよ」
ハルカは光輝の案に即座に賛成した。ミルクと舞は顔を見合わせて、肯きあって、
「じゃあ、そういう事に致しましょう」
ミルクがそう言って、四人はスカイホテルの最上階を目指す事になった。だが近くに見えても、スカイホテルになかなか着かなかった。
それ程の巨大ホテルだったのだ。四人が最上階のレストランに着いたのは更に二十分後の事だった。
「ふえーっ! やっと着いた。もうお腹がペコペコだぜ。ええと、レストランの名前は『青い輝き』、か。洒落てるね。それに輝きって、光輝の輝と同じ字だよね」
ハルカは何と無くはしゃいでいた。
「はい、光輝さんの、一字が入っています」
ミルクはそう言うなり、見る見るうちに顔が赤くなった。
「へえーっ、……」
ミルクの顔の赤らみを見て、ハルカは何か拙そうな顔をして、ちょっと考え込んだ。
「あ、あのう、ミルクお嬢様、お席はこちらで御座います」
ウェートレスの案内で四人は特に見晴らしの良い席に座った。窓に向って左側奥に光輝、その隣にハルカが座った。本当は光輝がハルカに窓際を譲ろうとしたのだが、
「ア、アタシは高い所が苦手だから、光輝が窓際に座ってくれよ」
と、光輝に譲ったのだった。勿論光輝を喜ばせる為である。光輝の向かいにミルクが座り、その隣に舞が座った。
「へえっ! す、凄い景色だな! 古扇家ビルと同じ五十階でしたよね?」
光輝はちょっと興奮気味に言った。
「ええ、でもこっちの方が十メートル位高いんですのよ」
「どうしてかな?」
ミルクの言った事に光輝はちょっと疑問を持った。
「ここのレストランもそうなんですけど、所々天井の高い所があって、それで違いが出来ているみたいですわ。でも一説には、こっちの方が後で出来たので、見栄を張ったとも言われていますけど」
やや自虐気味に言った。
「なーんだ、金持ちの見栄って奴か!」
ハルカが少しきつい調子で言った。ミルクは内心ではムッとしたが、
「そ、そうかも知れないわね。……それであの、何にします?」
と、話題を変えた。
「えーっと、初めてだから何が良いのか分からないな。ここのお勧めは何だろうね? でも、お勧めだからといってやたら高いのだとちょっと困るけどね」
光輝はミルクに向かって言った。
「カツカレーはどうかしら? ここの目玉商品だから、他のに比べると割安で、税込みで千二百円なんだけど、無料お食事券を使えば半額の六百円で済みます。
ここのカツはとっても美味しいのよ。サクサクしていて、下味に使った塩コショウが良く効いていて、カツの厚みも厚過ぎず、薄過ぎず、七、八ミリの歯で噛み切り易い、絶妙の厚さなのよ。
カレーも結構強いとろみがあるのに、意外にあっさりしていて、豚肉の濃厚な旨味と良くマッチしていて、本当に美味しいわよ」
ミルクの説明に皆唖然とした。
「ミルクさん、何て言うか、本当においしそうだし、まるでグルメの達人みたいな言い方だな」
光輝は感嘆して言った。
「ははは、ミ、ミルク、さん、料理の評論家みたいだな。す、すげえな。アタシも料理は色々作るけど、そこまでは考えてないな」
さすがのハルカもちょっと脱帽だった。勿論四人が食べたのはカツカレーだった。 |