無名ホテル(1)
「あ、あのう、それが一番安い部屋ですか?」
光輝はやっぱり恐る恐る聞いた。
「はい、割戸学園高校の3Aの学生さんですから、特別にお安くしております。あのうもし都合が悪くても、キャンセル料として、二万円は頂く事になっておりますので、遊んで行かれた方がお得ですよ」
何が何でも二万円は取る積りの様である。光輝はその時、
『確かハルカが言っていた、お子様クラブ、と言うのがあったな。ひょっとするとここでその情報が手に入るかも知れない』
そんな風に考え直して、遊んで行く事にした。
「わ、分かりました。じゃあ、二万円」
右のポケットから万札二枚を抜き取って支払った。
「はい、確かに頂きました。それじゃあ、女の子はこちらで指名させて頂きます。もし他の子が宜しい場合は、指名料としてもう一万円追加料金となります。
部屋に名簿が御座いますので、それを御覧になってお決め下さい。じゃあ、あゆみちゃん、25号室にご案内して! ああ、そのバックは、こちらで責任を持ってお預かり致します。持ち込みは禁止になっておりますので、ご了承下さい」
「じゃあ、お願いします」
幸いなのはバックの中身が大した物ではない事である。
『昨日、オヤジの物を全部売り払っていて良かったな。こいつ等に盗まれて、売り捌かれるのはベルト一本でも癪だからな!』
光輝は中身が覗き見られる事をこの時点で覚悟していた。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
キンキラしたガウンを羽織り、同じ素材で出来た紐で縛っただけの、生足にサンダル履きの若い風俗嬢らしい女性が、フロントの隣のドアを開けて現れた。
『要するにここは風俗系の遊び場なんだろうな。ホテルなんて外には看板が掛っていなかった筈だ。この近辺にもホテルはあるけど、外からはここがホテルと気が付く者はいないだろう。
何か硬そうな商売のビル、そんなイメージだからな。……でもこの女の子のスタイルは、前に綾姫がやったのと似ているな』
あゆみと呼ばれた女性の後を付いて行きながらそんな事を考えていた。
少し歩いてからエレベーターに乗って二階に行った。ただ気になったのは、エレベーターの前まで、階段が無い事だった。
『普通は直ぐに階段がある筈なんだが、それが無いとなると、建築許可が下りないんじゃないのか? 待てよ、元は階段があったのかも知れない。
でも何かの都合で、例えばお客の逃亡を防ぐとかの理由で、ベニヤ板とかで覆ってしまうとかか? ふうむまあそんなところだろう、しかし……』
光輝はこのビルに何か謎があると睨んだ。
エレベーターを降りて少し歩くと直ぐ25号室はあった。
「ふふふ、こちらでーす!」
風俗嬢はなかなか愛想が良い。光輝は研修の名目で、中年の女性教官から性の手解きを受けた事があった。また、中年の男性教官から、風俗通いの自慢話なども聞かされたことがある。
『今から考えると、全部嘘っぱちだったんだって事が良く分かる。しかし風俗嬢にも色々あって、可愛い奴もいれば、そうではない奴もいるって事は多分本当だろう。この女子は妙に愛想が良くて可愛い感じだものな』
光輝は覚悟を決めたせいか、初めてにしては落ち着いていた。
部屋に入るとそこはラブホテル同様のつくりだった。ベットは回転などしない普通のものだが、風呂場のスペースがやや広くエアーマットなどが敷いてあって、色々エッチな遊びが出来る様になっている。
あゆみは部屋に入ると直ぐ、
「あの、もし私がお気に召さない場合には、この中から選んで下さい。マスターも言っていたと思いますけど、私以外の子を選ぶ場合にはもう一万円頂きます。でもね二万円出せば、もう一人呼べるのよ。3Pプレイが出来てとっても、嫌らしくって良いわよぉ」
と、しっかり営業しながら下着姿の写真付きの名簿を光輝に手渡した。
『なかなか商売上手だな。まだ多分17,8位の娘だと思うけど、ここでしっかり稼いで将来は自分の店を持つ積りなのかも知れない』
心の中ではそんな事を考えていたが、
「いや、あゆみちゃん一人で良いよ。何処までやれるのかな? 本番オッーケーなのか?」
少し慣れた感じで言ってみた。あゆみは気分を盛り上げる為なのか、返事は耳元で囁いた。
「本番は当然よ。それよりお酒とか飲まない? それから高級なタバコをおいてあるんだけど吸わない? お腹が空いていたら食事も出来るわよ」
『相変わらず営業第一って感じだ。しかし俺を未成年と思っているのに、食事はともかく飲酒喫煙を勧めるなんて! 一口一万円もするんじゃないのか?』
光輝はまだここがぼったくりバーの類かも知れないと疑っていた。風俗営業の許可を取っていない様なので、その可能性は十分にある。
「俺は酒もタバコもやらないんだ。お腹も空いていないしね。しかし、綺麗な肌だね。もっと見せてくれよ、ああ、オッパイが何とも良い形だ……」
そうあゆみを褒めながら光輝は情交を始めた。相手のペースに乗らない為にマットプレイは無しにして貰い、ベットの上だけで一時間近く濃厚な性行為をした。あゆみはすっかり満足した様子だった。
「ああ、す、凄い。私、すっかり感じちゃった。ああん、最高!」
あゆみは光輝に本気のキスを何度もした。余程気に入ったのだろう。しかし光輝はあゆみに色々聞きたい事があった。あゆみは二度目の情交を光輝に迫ったのだが、光輝は受け付けなかった。
「ねえ、まだ一時間あるわ。もう一度して欲しいんだけど、ねえ、して、ああん、……」
あゆみは更にキスを繰り返して催促したが、
「もう一度する積りは無いよ。ちょっと聞きたい事があるんだけど、少し離れて貰えないかな」
と、彼の仕事に入った。あゆみはとても辛そうにしながら渋々離れてベットの上に座った。光輝と二人並んで全裸でベットに腰掛ける形になった。
「聞きたい事って何!」
期待した情交をして貰えなくて不満なのかあゆみはちょっと怒って言った。
「ははは、怒ったのか?」
光輝は慰めの積りで言った。
「べ、別に怒っていないけど。そこは立っているのに、男の人はしなくても平気なの?」
あゆみは光輝のそれがエレクトしているのを見てそう言った。
「あははは、本能は君としたいんだけど、理性が許さないんだよ。あゆみちゃんは素晴しいから、やり始めたら俺だって止められないよ。そうしたら聞きたい事が聞けなくなっちゃうよ。十一時過ぎる恐れがある」
「時間の延長をすれば良いのよ。一時間の延長で一万円で済むんだから。お金はあるんでしょう?」
「お金はあるけど時間が無いんだよ。なるべく早くここを切り上げて、行かなきゃならない所があるのさ」
「そうなの。でも女は大変なのよ、一度火のついた体を、冷ますのはね」
あゆみは愚痴っぽく言ったが、徐々に落ち着いて来た。漸く情欲が収まって来た様である。
「それで聞きたい事って何?」
諦めがついたのか、あゆみは下着を身に付けガウンを羽織ってから光輝に聞いた。光輝も服を着てから改めてベットに腰掛けて話を始めた。 |