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割戸学園高校より
作:春野エックス



モンスター組(4)


「ポロロロロロ―ン!」
 一時限目の開始チャイムが鳴った。まだまだ沢山聞きたいことがあったが、授業開始では仕方が無い。光輝は英語の教科書を出して、綾姫に今日の所を聞いて支度を始めた。
『何もして来ていないから、ちょっと拙いかな?』
 そう思ったが、今更仕方が無い。慌てて今日の分の勉強をし始めた。偽学生の彼にとって幸いな事は、何度も経験している同じ教科書だった事である。それでも英語の得意でない彼にとってはなかなか厄介であった。

 しかし先生は五分過ぎても現れない。
「先生が来ないみたいだけど?」
 不思議に思って、綾姫に聞いてみた。
「ちょくちょく遅刻する先生なのよ。やる気が無いんじゃないのかしら?」
「へえーっ、それって拙いんじゃないの?」
「大いに拙いわね。原因は分かっているんだけど……」
 そこまで言った時、若い女の先生が慌てて入って来た。

「起立! 礼!」
「お早う。ああ、君が新しい転校生ね」
「はい、小寺井光輝です」
「ええ、聞いています。ええと、他にちゃんと八人居るわね。じゃあ、早速勉強を始めましょう。二十ページを開いて下さい」
 遅れて来たことを謝りもせず、きちんと名簿も取らずに、その女の先生は遅れを取り戻そうと、どんどん授業を進めようとした。
「ええと、ここは、転校生君に読んで貰おうかしら……」
 光輝はギクリとしたが、その前にミルクが手を挙げた。

「何でしょう、ミルク、さ、ま、……」
 ミルクの表情の厳しさに、その先生は、強張こわばった顔で指名した。
「柴田先生、遅刻の理由をお聞かせ願いませんか」
「か、体の具合が悪くて、少し休んでいたものですから」
「ここのところ何度も遅刻されていますよね」
「え、ええ」
「いっその事、暫く休養を取られたらいかがですか?」
「あ、有難う御座います。ですが、一度休職すると、復帰が難しい場合が御座いますので」
「分かりました。ただ、申し訳ないのですが先生としての資質に疑問を呈する生徒が、このクラスに何人かおります。その疑問を払拭する為にも、ここの一文は、是非先生に読んで頂きたいのですが」
「わ、私に指示をするのですか!」
 柴田先生はミルクを睨み付けた。

「理事長代理としてお願いしています。読んで頂けませんか?」
 ミルクの言葉は丁寧なのに、まるで刀の切っ先の様に柴田先生の胸に突き刺さった。
「わ、分かりました。じゃあ、一度だけ読みます。…………」
 光輝には上手いのか下手なのか、良く分からなかったが、殆どの生徒の顔に失望が浮かんだ。ミルクは静かに立ち上がって言った。

「理事長代理として申し上げます。柴田和代さん、今のは英語ではありません。私どもは二年の時から、発音の拙さを指摘しておりましたが、一向に改善されていません。
 そればかりではなく、授業時間中、特定の男子生徒に対するセクハラ行為に対してもご注意致しましたが、何度も繰り返されました。
 しかもその生徒が先月アメリカに留学すると、途端に毎回の様に遅刻して来ています。その様な先生には、ここを辞めて頂くしかありません。即刻自宅にお帰り下さい。給与や退職金は今月中に振り込ませて頂きますので」
 ミルクは柴田先生を首にした。光輝は唖然とした。まさか転校初日の一時限目にその様な事があろうとは、夢にも思わなかったのである。

「ははははっ! 理事長代理が何だって言うのよ! ミルク!! お前なんか!!」
 柴田和代は激高し、つかつかとミルクの側に歩いて行って、右手を大きく振り上げて平手打ちにしようとした。
「痛い、痛い、痛い!」
 何時の間に側に寄って行ったのか、ハルカが柴田先生の振り上げた腕をぐいと後ろに引いて、間接の逆を取ったので、激痛が走ったのだ。
 もう少し強くやれば、先生は後ろにひっくり返るところだった。
「ミルクさんを叩いたら、首になるだけじゃあ済まないんだぞ! 分かってんのか!!」
 ハルカが叫ぶと、悔しそうにしていた柴田先生は、はっと我に返り、顔面蒼白になって、怯えた様子で慌てて教室を出て行った。 

「皆さん、ご覧の様な状況ですので、この時間は自習にして下さい。早急に代わりの先生を派遣して頂きますので、今週はちょっと無理ですが、来週位からは何とかなると思いますので」
 ミルクの提案に一応皆納得したのだが珍しく、
「はい!」
 夢見ココが挙手をした。

「何でしょうか、夢見さん」
「あのう、不愉快な者がもう一人この教室に居ます。自習したい人はそのまま自習していて良いと思いますが、詮議をこの時間を利用してやって頂けませんか。私は明日まで待てません」
 夢見ココは名前を言うのも汚らわしいと言わんばかりだった。相変わらず全く光輝を見ようとはしていない。
「そうですね、賛成の人は挙手をして下さい」
 賛成は、ミルク、ココ、ハルカ、朝日奈、の四名だった。
「それでは反対の人は挙手をして下さい」
 反対は、綾姫、光輝、の二名だった。
「賛成多数なので、小寺井光輝さんの詮議を再開します。尚自習している人がおられますので、なるべく静かにお願いします」
 一難去ってまた一難。明日までは繋がると思っていた光輝の首が、直ぐにも飛びそうだった。












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