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割戸学園高校より
作:春野エックス



雪の花(4)


「亜美ちゃんのお父さんの、大宇宙拳の道場に面接に来たのは俺一人だけだったんだ」
「ひ、一人だけ? 変だな、四、五人いるようなニュアンスだったけど……」
 ハルカは首を傾げた。
「それに奇妙な事に道着を来て面接するって言うんだよ」
「ええっ、どうしてだ? 拳法する訳じゃないと思うけど」
「俺も訳が分からなかったけど、別室に通されて、亜美ちゃんがお茶を出してくれて、その後暫く待たされたんだ」
「そ、それで?」
「余り遅いから、様子を見に行こうとしたら、体が動かなくて倒れてしまった。そこへ亜美ちゃんとお父さんとが一緒に現れた。『良く薬が効いている』と言ってね」
「な、な、な、何だって!!」
 ハルカは大声で叫んだ。

「俺の飲んだお茶に痺れ薬が仕込まれていたのさ。そうしておいて俺が亜美ちゃんをレイプしている様に見せ掛けた写真を何十枚も取った」
「し、信じられない。先生がそんな事をするなんて!」
「これ以上聞きたくなきゃ話は打ち切っても良いぞ。俺は嘘は言ってない。でもハルカなら分かるだろう、ハッキリ言って亜美ちゃんは強い。
 俺も多少の格闘技の心得はあるけど、彼女の方がずっと上だろう。まして元太郎、彼女のお父さんが付いていて、レイプなんぞ出来る訳が無い。
 でも知らない人だと、その写真を本当だと思うかも知れない。なかなか巧妙な写真で彼女の肌に俺の歯形まで付けたんだ。
 俺は体が痺れて動かせないから、お父さんに顔を彼女の体に押し付けられると、どうしようもなかった」
「ううううっ、酷い! でもアタシ光輝を信じる。話しは最後まで聞く!」
 涙を零しながらもハルカは歯を食い縛って聞き続ける決意をした。

「辛い話で申し訳ない。その写真が何に使われるかは分かると思うけど、俺は水曜日までに一千万円の金を、元太郎さんの口座に振り込まないと事件にすると脅された」
「犯罪だ! 恐喝じゃないか、どうしてそんな事をする!」
 ハルカは悔しそうにしながら今度は小さく叫んだ。

「亜美ちゃんは嫌がっていたけど、お父さんは今回が最後だ、お金は十分貯まった、と言っていた。つまりは転校生に対してずっと同じ事を繰り返していた、ということになる。実際『今回はミルクさんから何も言って来なくて焦った』と言っていた」
「ミ、ミルクさんが一枚噛んでいたのか!」
 ハルカは激怒した。

「いや、少し違う。ミルクさんは恐喝の事は知らない様だ。ただ転校生にお灸を据えてくれと頼んだらしい。それを良いことに、あの亜美ちゃんのお父さん中本大元が恐喝する事を思いついたらしい。これで転校生達が行方不明になった訳が分かった。
 さっき歯形を付けたと言ったけど、一分以上も押さえ込んで、呼吸出来なくして死ぬ様な思いを何度もさせた。死の恐怖を何度も味わえば誰でも言う事を聞く。
 恐らく殆どの転校生はお金を振り込んで、何処か遠い街にでも逃げたんだろう。それと二度と学校に来るなとも言った。
 転校生達が一週間もしない内に消えてしまった謎が、それだったら完璧に説明出来る。仮に警察に訴えても、あの写真があっちゃ手も足も出ない。逆に犯罪者として捕らえられかねない。本当に悔しいけど見事な完全犯罪だ」
「ゆ、許せねえ。今回はアタシも利用された。しかもミルクさんからの指示も無かったんだよね?」
「そうだ。彼の口振りからすると、そう考えるのが自然だ。しかしそこが問題なんだ。つまり、自分の都合の為に、俺を勝手に悪者にして、痺れ薬まで使っての犯行だ。
 俺はその事から推理して、亜美ちゃんのお父さん、元太郎は、性根が腐りきっていると判断した。そんな男が今回で犯行を止める筈が無い。
 何とか次の犯行を止めさせる事と、亜美ちゃんにも罪は償って貰いたい。父親から決別する勇気を持って貰いたいんだ。こんな事をして大学に入っても、何の価値も無い。俺はそう思うけどね」
 衝撃が強かったのか、暫くハルカは無言だった。考えを整理しているのだろう。

「……だけど光輝は平気なのか? 何度も死ぬ思いをしたんだろう?」
 ハルカは当然の事に気が付いた。
「俺は特殊な訓練を受けているのさ。場所は言えないけど組織の学校の様な所があって、毎年何回か研修がある。それこそ地獄の特訓が待っている。
 様々な事を勉強するが拷問に耐える訓練もして来ているのさ。だからきつかったけど、さっき二時間ばかり眠ったから、すっかりストレスも回復したよ」
「凄い、本物のスパイみたいだ」
「今時の学校は、戦場に近い場合があるからね。それ位しないと通用しないんだよ」
「へーっ、……で、アタシは何をすれば良いんだろう?」
「泣いたり、怒ったりしていたと思ったけど、立ち直りが早いな。まあ、そう思ったからハルカを選んだんだけどね。
 ただ分からないのは薬なんだ。俺達は薬の勉強もしているけど、中本親子の使った痺れ薬は当然市販されていないだろうし、何処から手に入れたのか知りたい」
「そう言われてみれば、ミルクさんの所は健康食品のメーカーなんだよな。薬にも詳しいんじゃねえのか?」
「成る程ねえ。ミルクさんの線があるか……。それともう一つは中本大元の行動だ。これは俺の直感なんだけど、必ず何処かで遊んでいると睨んでいる。
 それで男の遊び場と言えば、ハルカが詳しいんじゃないかと思ってね。別に悪い意味で言っているんじゃないぞ。昔の事をちょっと思い出して欲しいんだけど。何度も言うけど、嫌だったらそう言ってくれ。絶対に悪く思わないからさ」

「ア、アタシは、ど、道具なのかな?」
「だから違うと言っている。気に触ったんだったら、ここで打ち切る。打ち切るか?」
「嫌だ、道具でも良いよ。ご褒美はあるんだよね?」
「はははは、そりゃあ勿論さ。ちょっと一休みしようか。ハルカ、これは結構本気のキスだぞ」
 光輝は立って行って、ハルカの隣の席に座り、熱烈なキスを始めた。激しくも甘味なキスが長々と続いた。
「えへへへ、本当にキスしてくれるとは思わなかったよ。あははは、頭がボーッとして来た。夢じゃないよな……」
 キスが終っても暫くハルカは陶酔し続けていた。












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