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割戸学園高校より
作:春野エックス



ミルクの館(4)


「ココさんも呼んだんですか?」
 光輝は不思議そうな顔でミルクに聞いた。
「私だけけ者にしようたって、そうは行かないわよ」
 ミルクが答えるより早くココが言った。

「ははは、俺が嫌いだったんじゃないんですか?」
「貴方を嫌いだなんて言った事は無いわ。貴方の顔は嫌いだったけど」
「でも身長が足りないから、やっぱり嫌いなんでしょう?」
「だから、嫌いだとは言ってないわよ。それに私は同盟の一員なのよ。お嬢様同盟のね。同盟三人のメンバーの内の、二人がご馳走を食べるんですから、当然私にもその権利がある筈よ」
「なーんだ、料理を食いに来ただけか。食い意地がはっているねえ!」
 ハルカがちょっと軽蔑的な言い方をした。

「ハ、ハルカさん! そういう言い方はないでしょう! 勿論小寺井さんの歓迎パーティに、参加しに来たのに決まっているでしょう。もう、冗談だって事位分からないの!」
 ココはちょっと喧嘩腰になった。
「ちょ、ちょっと二人とも止めて下さい! ここで喧嘩は拙いです!」
 ミルクは二人を制した。
「あ、ああ、そうだよな。わ、悪かったよ」
「す、済みません」
 ハルカとココは二人ともミルクに謝った。一応それでその場は収まった。

「それではメンバーも揃った事ですし、今から小寺井光輝さんの歓迎パーティを開催いたします。大した物も御座いませんが、うちの料理長、平井光男の心を込めた料理を堪能してみて下さい。あの、小寺井さん、何か一言お願い致します」
 ミルクが立って挨拶をした。指名された光輝はちょっと戸惑った。
「ええと、うーん、今日は歓迎パーティ有難う御座います。少しでも分かり合えれば良いなと思って参加しました。まあ、そんな所です」
 挨拶などすると思っていなかった光輝はぎこちなかったが、何とか短い言葉でまとめる事が出来た。
 それから光輝にとってはやや緊張した食事になった。本格的な料理のマナー等知らない者にとっては、本式のコース料理はちょっと苦手だったのだ。

「ええと、フォークとか、スプーンとかは外側から使うんだったよね?」
「ああ、でもあんまり気にする事もないさ。アタシだって大して知らないんだからさ。まあ、ミルクさんの真似をしていれば間違いないよ」
 その後も光輝は殆どハルカとだけ喋った。他の連中はどうも気軽に声を掛け辛い。

「あのう、ここにレディが一人いるんですけど? 隣に座っているレディに何も言わないのはマナー違反ですわ」
 暫くしてからココは光輝とハルカの会話に割り込んで来た。
「良く分からない人ですね。ココさんは俺を相手にしていないと思ったんで、声を掛けないんだけど、声を掛けて欲しいんですか?」
 幾分不快そうに言った。

「だ、だから、マナーに違反すると言っているんです。わ、私とお話出来ることは凄く幸せなことなのよ。皆がうらやむ事なのよ」
「俺はココさんとお話し出来ても幸せだと思わないし、羨ましいとも思わない。俺にとってはココさんは同級生ではあっても、アイドルじゃないからね」
 光輝は断言した。それは正直な感想だった。

「わ、私がアイドルじゃない! 日本中の人が認めているこの私がアイドルじゃない? あ、貴方はどうかしているわ。 不、不愉快だわ。私帰らせて、……」
 ココは帰らせて貰う、と言い掛けたが、言葉を飲み込んだ。
「今月の末から、二ヶ月に及ぶ映画の長期ロケがあるの。当分お会い出来なくなるから、少し無理してスケジュールを空けて貰ったのよ。
 私はやっぱり悲劇のヒロインだわ。意地悪されてもじっと耐え忍んで、逃げ出したりしないのよ。いつかきっと貴方にも分かって貰える日が来ると思うわ」
 ココは自己陶酔しながらそう言った。

「ふふふふ、いやあ、参ったね。こういうところでめげない所が良い所なんだろうね、多分」
 光輝は苦笑しながら言った。
「へーえ、あれだけカッカし易い、ココがねえ。お前、まさか光輝に惚れたんじゃねえだろうな」
 ハルカは女の勘を発揮して言った。
「馬、馬鹿ね! あははは、そういうのを下種げすの勘ぐりと言うのよ。私がこんなイケメンでも無い、背も高く無い男子を好きになる訳が無いわ。それだけは絶対違うわね」
「でももし嫌いだったら、ここにゃ来ねえよな。長期ロケがあって当分お会い出来なくなるだって? おめえ、何時からそんなにしおらしくなったんだ? 似合わねえ事言うんじゃねえよ」
 ハルカもバッサリ切った。ココはムッとしてふくれたが、それでも帰らなかった。

「もう、ハルカさんとココさん、いい加減に止めなさいね。これじゃあ歓迎パーティだか、何だか分からなくなっちゃうわ」
 ミルクはこのままでは拙いと感じて、
「それじゃあ、お食事も一段落した事ですし、ここでちょっとしたゲームを致しましょう。皆さんも宜しいですか?」
 と、食事を少し早めに切り上げる提案をした。
「ああ、良いですよ。もうおなか一杯です」
 必ずしもお腹一杯ではなかったが、ココと隣り合せで食事をするのが苦痛であったので、そう言った。

「じゃあ、青空さん、食事はここでお仕舞にします。片付の方宜しく」
「あの、俺も手伝おうか?」
 親切心でそう言った。
「申し訳御座いませんが、私達の仕事ですので」
 ハルカの母親はきっぱりと言った。
「ああ、そうですか、分かりました」
 光輝はハルカの母親の毅然たる態度に感銘を受けた。
『立派なお母さんじゃないか。何も恥じる事なんか無いのに』
 そう思いながらハルカを見ると、うつむいたままだった。何か辛そうだった。












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